
行政サービスを一つに集約する総合ポータルアプリ
令和5年6月に「佐賀市公式スーパーアプリ」をリリースした佐賀市。スマホを通じて行政情報・サービスを提供できる同アプリは、進化しながら市民の生活に浸透し、行政と市民が常時つながれる“接点”となっている。
※下記はジチタイワークスVol.38(2025年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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左:政策推進部 DX推進課
スマートシティ推進室
室長 菅 祐亮(すが ゆうすけ)さん
右:政策推進部 DX推進課
スマートシティ推進室
主任 山岡 勇介(やまおか ゆうすけ)さん
“みんなで創る”をコンセプトに、市民の声を反映して進化するアプリ。
“佐賀市スマートシティ推進方針”のもと、デジタルを活用したまちづくりを進めている同市。市民サービスにおけるDX推進を図るため、行政情報・サービスを“ミニアプリ”にして一つに集約した“佐賀市公式スーパーアプリ”を公開。デジタル市民証をはじめ、各種電子申請やごみカレンダーなどのミニアプリを提供。その結果、リリースから約2年で7万件以上のダウンロード数を記録している。
この普及の背景には、市民・地域・企業・行政が一体となり、“みんなで創る”というコンセプトがある。市民の声を反映しながら、継続的にバージョンアップを行い、便利なサービスや機能を提供しつづけていることが大きな要因だという。「デジタル市民証は、電子タクシーチケットや地域振興券を発行する際の本人確認や、イベント参加・避難所のチェックインにも利用されています。暮らしの様々なシーンで、市民サービスを提供するための共通のツールとして、庁内の各分野で連携して活用が進んでいます」と、菅さんは話す。
学校出欠連絡やイベント情報などのミニアプリを導入して得た成果。
ミニアプリによる利用者の利便性向上や時間の有効活用にも力を入れている同市。保護者から学校に出欠の連絡ができる「れんらくん」が本格運用されると、利用者が大きく増加。「導入校は、令和7年3月の時点で32校、登録者数は8,000人を超えています。全校導入を目指しており今後も登録者は増える予定です」と山岡さん。同市の調査によると導入の効果として、約10カ月間でおよそ2,348時間分、学校業務の時間削減が図れたという。また、電子申請も利用が進み、令和7年3月時点で88手続きに増加。身近な申請がデジタル化されて便利だと市民からも好評のようだ。
さらに、佐賀県で開催された「国民スポーツ大会」では、ミニアプリ「SAGA2024」をリリース。データを活用して競技情報や駐車場の空き状況をリアルタイムで配信した。市内外を問わず、訪れた利用者から高く評価され、大会期間中には5万件以上のアクセスがあったという。これまでは、市内向けの運用を主としてきたが、今後は市外への発信にも注力し、関係人口づくりにも役立てるねらいがあるそうだ。
また、ミニアプリを集約する利点として菅さんは、「例えばSAGA2024の利用者が観光ミニアプリにもアクセスし、そこからタクシー配車ミニアプリに遷移するなど、相互に作用することで、さらに利便性が向上します。こうした連携をしやすいのが強みです」と話す。
アプリを共通のツールとして自治体の垣根を越えつながる。
同アプリは、同市が蓄積したノウハウも含め、他自治体に横展開できる共通プラットフォームとなっている。共同利用を通して開発・運用コストを下げられるだけでなく、自治体間の連携が可能に。新たな付加価値を創出し、さらなる市民サービスの向上が期待できるという。例えば、観光分野では自治体の垣根を越えたデジタルスタンプラリーの実施などが可能だ。防災分野では、災害時に市民が近隣自治体の情報をリアルタイムで確認し、より安全な避難行動を選択するといった活用が考えられる。「これまでは共通のツールがなかったため、近隣市町と連携しようとしても“何を使って実現するか”から議論する必要があり、これがハードルとなっていました。当市の取り組みがモデルケースとなり、ほかの自治体にも展開されれば、連携の可能性が広がると思います」。
市民だけでなく、観光客や企業、他自治体など“みんなとつながる”ことができるアプリ。全国への普及により自治体同士の連携が進めば、防災や観光面だけでなく、広域でサービス全体が向上し、
便利で快適な暮らしが“当たり前”の社会に近づくのではないだろうか。
佐賀市の詳しい導入経緯を知りたい場合はこちらから。