
市民の疑問解決を目指す“総合”コンタクトセンター
問い合わせ窓口として、電話だけでなく、問い合わせフォームやチャットなど多様なチャネルで対応する自治体が増えている。神戸市でも、さらなる市民サービスの向上を目指し、コンタクトセンターを一新したという。
※下記はジチタイワークスVol.38(2025年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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左:企画調整局 広報戦略部
カスタマーDXマネージャー
藤本 貴之(ふじもと たかゆき)さん
右:元・市長室 広報戦略部
係長 東 伸也(あずま しんや)さん
入電数が多い原因は、“選択肢不足”と“情報の分かりにくさ”にあった。
“職員が電話対応に時間を取られ、本来の業務に集中できない”という悩みをもつ自治体は多い。同市でも、過去には入電数が年間200万件を超える時期もあり、長年の課題となっていた。そこで、この改善に取り組むべく、平成23年度から開設していた「総合コールセンター」と、代表電話交換とを合わせて業務委託し、ホームページの改修などを進めてきたそうだ。
FAQや広報の強化も同時に進め、問い合わせは減少傾向にあったものの、その大半が電話によるもので、全体の97%以上を占めていたという。「市民へのアンケート調査では、電話以外の問い合わせ方法を希望する声も多数寄せられました。連絡手段が限られている状況では、利用する側に選択肢はありません。市民サービス向上の観点からも、現代のライフスタイルに合わせて、対応のあり方を見直す必要がありました」と東さん。そもそも、問い合わせが起こる背景には、“発信されている内容が分かりづらい”という困り事がある。職員側の負担軽減だけでなく、どうすれば市民にとって分かりやすい情報発信ができるかを同時に考えていく必要があった。
そこで、令和5年2月から“あり方検討”を開始。専門家の意見を取り入れながら、市民や職員にとって最適なコンタクトセンターのあり方を検討するものだ。まず、現状の課題を徹底的に洗い出し、改善テーマを絞り込んだ上で、今後必要な機能や体制を具体的に決めていった。
最終的にまとめた仕様にもとづき、コンタクトセンターの構築・運用業務の委託先を公募。市民の生活の変化に合わせた体制への整備が始まった。
ただDXを推進するのではなく、市民にとって最適な姿を描く。
あり方検討を通して、新たなコンタクトセンターが目指すべき姿は明確になった。「DXを推進することが目的なら単にツールを入れればいいですが、市民の問い合わせ対応を改善するためにはそれだけでは不十分です。質問に回答するための体制を整え、職員へのフィードバックを行い、既存のFAQなども含めて、より分かりやすい形にするところまでがセットだと思います」。そこで、電話で話さずとも画面上の操作だけで完結する、いわゆるノンボイス機能の拡充を決定。市民との接点を増やしつつ、“いかに手間をかけずに疑問を解消できるか”が最優先事項となった。
そのためにまず、令和6年3月から市が発信する情報を一元的に管理する集約基盤を構築。各課が担当するイベントや制度の改正など、公開前の情報も含めて管理システムに登録する流れが整備された。また、イベント情報は専用サイトにも反映されるようにして、集約と発信を一体的に行う運用を開始することに。システム上の情報は委託先のコンタクトセンターが一元管理し、必要に応じてオペレーターに周知を行う体制だ。
「センター内には、市民視点で発信内容をチェックする“庁内サポートデスク”という新しい役割を設けてもらいました。各課がホームページや印刷物で情報発信をする際、必ず事前に庁内サポートデスクが目を通して、市民にとって分かりやすい形になっているかを確認。さらに、所管課に対して改善提案までを担ってもらいます」。
申し込み方法や問い合わせ先といった基本的な情報に漏れがないかなどをチェックし、より伝わりやすい表現を提案。市民がスムーズに手続きを完了できれば、おのずと問い合わせの減少につながるというわけだ。同時に、多忙な職員に対して具体的な改善提案を行うことで、修正にかかる手間を最小限に抑える効果も期待できる。
問い合わせの接点を増やし、所管課ともやりとりを重ねる。
新たな「神戸市お問い合わせセンター」は令和6年12月から運用を開始。新しいサービスとして、「折り返し電話予約」を導入した。夜間や混雑時など、電話がつながらない場合に予約でき、月に平均400件程度利用されている。
「ホームページのチャットボットの強化も行い、それでも解決しない場合はオペレーターにつながる仕組みもつくりました。合わせて月に平均6,000件程度の利用があり、“電車に乗っている間に疑問が解決したのでとても助かった”という声も寄せられています。チャットは、通信状況が混乱している災害時にはさらに利用メリットがあると考えています。有人チャットへのモード切り替えや職員による臨時対応など、運用方法を検討しているところです」。
入電数や問い合わせ内容は、システムでリアルタイムに把握できる状態になっている。庁内サポートデスクでは、これらのデータも活用しながら所管課への改善提案を行っているという。「例えば、問い合わせが多かった内容について所管課と連絡を取り、“ホームページのこの部分に補足を入れましょう”“こうすれば市民の困り事が解決すると思います”といった形で、改善に向けたやりとりを行っています。特にFAQについては、頻繁に提案をもらっており、運用開始から約4カ月で、1,000件ほど更新や新規作成が行われています」。
過去のデータを蓄積して、今後の入電数削減につなげる。
市や職員への問い合わせ内容を記録・蓄積すると同時に、分析しやすいデータとして可視化。「行政では毎年継続して実施される事業も多いため、過去の問い合わせ内容を整理・分析しておくことは、翌年度の入電数を減らすための有効な手立てになるはずです」。データ可視化の成果は、市民から見えにくい部分ではあるものの、コンタクトセンターが所管課とともに事前に準備をしていることで、よりストレスの少ないスムーズなコミュニケーションができていくのではないだろうか。
「“市民の困り事”を未然に防ぐためには、行政の業務と市民視点との間にあるギャップを見つけ出し、その都度改善していくことが重要です。コンタクトセンターという優秀なツールと体制を活用することで、よりスピード感のある対応が可能になると期待しています。今後は、この取り組みを通じて、実際に入電件数の削減につなげていきます」と、藤本さんは力を込める。広報戦略部として、業務効率化をさらに進め、現場主体で問い合わせ数の減少を目指し、デジタル窓口導入の検討が進むような流れをつくっていきたいという。
「私たちが変わっていくことで、最終的には“市役所の説明は分かりにくい”“電話でなければ問い合わせできない”という既成概念を崩していきたい。そして、市民の疑問が減り、希望する手段で問い合わせできることが当たり前になるのが理想です」。
ありたい姿を設定して最適な方法を導き出す
「トランスコスモス」は自治体のありたい姿を描く段階から伴走し、その自治体にとって最適な提案を実施。神戸市の“あり方検討支援業務”では、職員と一緒に複数の課題を洗い出し、電話依存からの脱却など施策立案を支援した。
様々な分野での経験を活かした丁寧な設計と準備
1. オペレーターに必要な業務知識を事前研修でしっかり伝える
事業や業務の背景理解まで含めたカリキュラムを組み、数日間かけて研修を行う。問い合わせ対応の際、単なる一問一答方式にならないよう、周辺知識を身に付けた上で、業務を開始する。
2. 自治体業務の背景を理解し、よりよい対応のヒントを提案
窓口業務や税務、給付金関連など、様々な分野で自治体のコールセンター業務や事務業務を受託。自治体業務に長年携わってきた経験から、業務フローを用いて具体的な提案が可能だという。
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