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「公務員デザイナーという仕事 」公務員から公務員へ、現場を学べる一冊

“デザイン×公務員”という組み合わせは、あまりなじまないように感じるかもしれない。
しかし今、行政においてもデザインの力を活用した政策立案や地域課題の解決など、“デザイン思考”が求められる時代になってきているようだ。

長崎県島原市(しまばらし)で“公務員デザイナー”として活躍する塩士さんは、もともと民間企業でプロダクトデザインに携わっていたそう。転職後は行政の情報発信に民間とは異なる難しさを感じ、民間時代に培った視覚的な表現力やユーザー視点での思考力などを活かして、「伝わるデザインとは何か」を模索してきたという。

本書「公務員デザイナーという仕事」では、その実体験をもとに、行政デザインの考え方や、効果的な情報発信のノウハウを紹介。自治体職員としてデザイン業務に携わる人はもちろん、広報やブランディングに興味のある人、公務員の新しいキャリアの可能性を探る人にとってもヒントになるのではないだろうか。

※著者の所属先及び役職等は2025年3月公開日時点のものです。
※記事の掲載情報は公開日時点のものです。

塩士 敬一郎(しおし けいいちろう)さん
【著者】
塩士 敬一郎(しおし けいいちろう)さん

長崎県島原市
シティプロモーション課


プロフィール
長崎県島原市 シティプロモーション課 所属。1993年長崎県南島原市生まれ。プロダクトデザイン企業で製品の企画開発を経験。ものづくりビジネスを通じてプロダクトデザイン・パッケージデザインを学ぶ。長崎県島原市ではデザイン力を活かしたシティプロモーションや情報発信を行っている。みんなの観光ポスターコンクール最優秀賞 ほか受賞。

 

公務員デザイナーという仕事 

【書籍】
公務員デザイナーという仕事


【本の内容を要約すると?】

“行政のデザイン”に関わる人にオススメの一冊。
現役の「公務員デザイナー」として、デザインを活用して地域を盛り上げる仕事の内容やノウハウを公開。
今、全国の自治体で増えている公務員デザイナーについて知りたい方にぜひ読んでほしい本です。

公務員デザイナーとしての挑戦、行政のデザイン・広報とは?

住民ニーズに沿った情報発信が重要視される昨今。

地方自治体でも行政職だけでなく、公務員デザイナー(デザイン・クリエイティブ枠)の募集が増えてきました。著者である私も長崎県島原市(しまばらし)で公務員デザイナーとして働いています。

増えてきたといっても、公務員デザイナーは全国的にはまだ数が少なく、自治体によって仕事の進め方や考え方も様々です。公務員デザイナーとして採用されたものの、“民間のデザイン”と“行政のデザイン”の違いに戸惑ってしまう人も多いかと思います。私自身、入庁したばかりの頃は“どのように情報発信をしたらよいのか”“地方自治体に必要なデザインとは何なのか”に大変悩まされてきました。こういった職種が増えていくことは、とてもいい傾向だと捉えていますが、 行政のデザインを行う際、同じような悩みを持つ人も増えていくのではないかと思っています。

そこで、現役で公務員デザイナーをしている私が、同じ境遇の公務員デザイナーや行政職員に、今まで培ったノウハウを伝えることで、行政のデザインに関する悩みが少しでも解消されればと思っています。また、このような取り組みをすることで、“行政のデザイン”に携わる人たちとのつながりが増え、地方自治体や日本全体の“伝える力”が強くなればと考え、出版に至りました。

伝わるデザインとコミュニケーションの極意。

この本は“公務員デザイナー”や“行政のデザイン”に興味がある人や、デザインの発想法を身に付けて仕事に役立てたい人、実際に公務員デザイナーとして働いていて現状に悩んでいる人に向けて執筆しました。

「公務員デザイナーの役割」「伝わるデザインを生み出す」「心を腐らせずに公務員デザイナーを続ける」という大まかに3つの内容で構成されています。スキマ時間でもサクっと読めるように、極力文章量を減らし、伝えたい部分だけを凝縮したようなつくりになっています。とくに第二章の「伝わるデザインを生み出す」では、私自身の実体験も踏まえながらデザイン力向上のための考え方を学ぶことができます。

“デザイン“という響きだけを聞くと、華やかな印象をもつ人も多いかもしれませんが、そういったインパクトがあるものだけがデザインではありません。特に、地方自治体などのデザインでは“伝えたい人にちゃんと伝わること”が何より重要だと考えています。

書籍の中でも紹介していますが、いいデザインを生み出すためにはコミュニケーションが必要不可欠だと思っています。適切なコミュニケーションを取っていると、相手が求めているもの、住民が求めているもの、自治体が求めているものが見えてきます。それを具現化していくのが公務員デザイナーの役割なのです。
しかし、コミュニケーションが大事だからといって単純に会議を増やせばいいというわけではありません。例えば、日常的な雑談や軽い会話からも大きなヒントが得られる場合があります。私自身も、同じ自治体の職員だったり、住人の皆さんだったり、いろいろな人と積極的に会話をするようにしています。デザイン業務を行うにしても、“真っ当な発言をしなければならない”といった空気感の会議より、肩の力を抜いてリラックスした状態の立ち話などがいいものをつくるカギだと思っています。

この本は、そういった日常的な意識しだいで変えることができる部分、いわゆる“デザインソフトの使い方”以外の部分にフォーカスして執筆しています。異動でいきなり広報紙をつくることになった職員や、デザインを外注する職員にもオススメの一冊です。

情報発信の未来へ。デザインを通じたつながりと挑戦。

この書籍の出版は1つのきっかけづくりにすぎません。

同じような境遇の人や広報媒体制作に携わっている人、全く別の職業の人まで、この書籍を起点に、様々な人との接点ができればと思っています。

昨今、デバイスやインターネットの進化は著しく、スマホやパソコンを使えば、欲しい情報が瞬時に手に入ります。グローバルに、企業・個人の壁を越え、国境も越えて、膨大な情報が飛び交う時代です。そんな“超情報化社会”で目に留まる情報発信をするのは大変ですが、本当にやりがいのある仕事だと思います。これから、この記事を読んでいる皆さんと一緒に、デザインを楽しみながら情報発信を盛り上げていければいいなと思っています。

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