ジチタイワークス

群馬県

教員として働く魅力を語り継ぎ、学校に多様な人材を呼び込む。

教員採用試験の志望者数を増やそうと、採用活動に工夫を凝らし、魅力をPRしている群馬県。動画制作や大学訪問などで、教員や教育委員会担当者が自らの経験を語ることは、本人のモチベーションアップにもつながっているようだ。

※下記はジチタイワークス別冊「センセイ・ダンス」(2025年3月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

群馬県 教育委員会事務局
学校人事課 担当者の皆さん

学生と年齢が近い若手教員のリアルな声を動画にまとめた。

全国的に教員の志望者数が減少する中、同県でも倍率の低下や、年度途中での募集の難しさを課題に感じているという。そこで令和4年度にICTを活用した教育現場の取り組みなどを動画で紹介。令和5年度実施の採用試験では、受験者数が8年ぶりに前年から増加した。同年度には、さらにメッセージ性を強めた動画をつくることに。教員志望の大学生をターゲットとし、主に20代の現役教員が仕事の魅力や働き方などを伝える内容だ。

動画では、県内公立校の教員19人が、仕事の魅力・職場の雰囲気・ワークライフバランス・試験対策などについて思うことを話す。約1時間のインタビューから厳選した内容を、3~8分程度の動画6本にまとめた。“もっとうまく授業ができれば……と実力不足を感じる”といった若手教員ならではの悩みや、採用前後の印象の違いとして“同僚や生徒に助けられる場面もあり、自分一人で背負わなくてもいいんだと思えた”など、率直な気持ちを語っている。

「撮影では硬くならないよう、雑談の中で自然な言葉を引き出すことを大事にしました。私も元教員なので、共感できて会話が弾みました。教員を目指す人へのメッセージを一人ひとりが直筆で伝える動画もあるのですが、もともと予定していたものではなく、インタビューの中で生まれた企画なんです」と、担当者。「出演した教員に、制作中の動画の確認を依頼したところ、改めてやりがいを再認識できたとの声がありました。自身を振り返り、前向きになってもらえるのはうれしいことです」。

教員志望の大学生と直接話して疑問や不安の声に応える。

動画での発信以外にも、教員の魅力を伝える機会をつくっている。令和4年度からは、教員経験をもつ職員が県内外の大学十数校を訪問。教員の一日の流れや、休暇制度などを説明する。質疑応答をメインとする座談会では、子どもとの印象深いエピソードも披露し、学生の決意を後押し。「学生からは仕事の大変さについて、『ブラックですか?』と聞かれることがあります。子どもたちと一日を過ごし、そのほかにも色々な対応があるので確かに大変。でも、そもそも大変ではない仕事って、ないですよね。『子どもの成長を近くで見守ることができ、自分自身も一緒に成長しながら楽しめる。これは教員ならではのやりがいで、大きな魅力だと思います』……というふうに、等身大で伝えています」。

同県では、小・中学校間でも人事異動が行われるという特色がある。「私は中学校の資格のみをもって採用されました。その後、小学校に配属になった際は、働きながら通信課程で資格を取得しました。両方の校種を経験できたことで、教員としての幅が広がったと思います」。

また、令和6年度実施の採用試験からは、大学3年次に採用試験の一部の科目が受験可能に。通過すると、4年次は専門科目の準備に集中することができ、3年次で通過できなかった場合も再度チャンスがある。学生が安心して試験に臨める環境を整えているそうだ。

様々な経歴をもつ教員の言葉で、より幅広い人材に呼びかける。

令和7年1月には、新たなコンセプトの動画が完成した。社会人特別選考の枠で転身した人や、他県から転職してきた人、ベテラン教員など多様な人材が出演。子どもたちに伝えたいこと・教員になった理由・休日の過ごし方などについて語っている。民間企業から転身した高校の教員は、小・中学生にスポーツを指導した経験から、「子どもが目を輝かせ、成長できることに携わりたいと決意した」という。小学校6年生を担任する教員は、「子どもたちに今のクラスでの時間を悔いなく過ごしてほしい」と話す。ワークライフバランス編では、休日を家族と過ごしたり、趣味を楽しんだりしているとの声や、就業時間が長くなることもあるが、自分が必要だと思う勉強には自主的に取り組んでいるとの声もある。「新卒はもちろん、ほかにも様々な人に教員を目指してほしいですね。別の職業を経験している人こそ、子どもたちに伝えられることがたくさんあるはず。多くの人の選択肢になればと考えています」。

応募者数が増えた年はあるが、倍率も向上させられるよう、これからも工夫を続けていくという同県。最後に、担当者が思う教員の魅力を語ってもらった。「教員の仕事はクリエイティブな側面が強いです。どうやったら子どもたちに授業を楽しんでもらえるかを工夫するのは、料理をつくるシェフのよう。そして、自分の料理を食べているお客さんが目の前にいて、その反応を見ることができるのは教員ならではの魅力です。こんな経験ができる教員は、最高の仕事だと思っています」。


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