公務員の福利厚生は、民間企業と比べて手厚い制度が整備されていると言われている。しかしその具体的な内容や特徴を詳しく知っている公務員は意外と少ないのではないだろうか。
この記事では公務員の福利厚生について詳しく解説する。これを機に、提供されている制度を正しく理解し、日々の仕事を充実させるとともに、よりよいワークライフバランスを実現するために役立ててほしい。
【目次】
• 公務員の福利厚生は民間より手厚い?
• 公務員の福利厚生「手当」を確認しよう
• 公務員の福利厚生「休暇」を確認しよう
• 公務員の福利厚生「保険・年金」を確認しよう
• 公務員の福利厚生「祝金・見舞金・弔慰金など」を確認しよう
• 福利厚生制度を確認し、活用しよう
※掲載情報は公開日時点のものです。
公務員の福利厚生は民間より手厚い?
福利厚生とは、給与以外で職員およびその家族に提供されるサービスや制度のことを指す。
公務員の福利厚生は自治体や共済組合、互助会などによって提供され、その種類は多岐にわたる。
自治体による福利厚生
諸手当、休暇、退職金など法律にもとづく福利厚生
共済組合による福利厚生
共済保険、人間ドックの利用補助など
互助会による福利厚生
祝金の給付、財形貯蓄、宿泊施設の利用補助、スポーツ施設の利用補助など
職員厚生会による福利厚生
プライベート旅行への費用補助など(自治体ごとに異なる)
公務員の福利厚生は民間企業よりも手厚いとされる。実際にどのような手当や保険、休暇制度があるのか詳しく見てみよう。
公務員の福利厚生「手当」を確認しよう
公務員の給与は「給料」と「手当」で構成されている。
手当は、職員の業務内容や生活環境に応じて追加的に支給される。ここでは主な手当を分類して詳しく紹介する。
民間でいう残業代やボーナスなど「職務関連」の手当
大都市圏ほど多い?「地域手当」
勤務地の物価や生活水準に応じて支給される。大都市圏ほど物価が高いため支給額が多くなる傾向がある。
危険な現場での作業や不快な作業を行ったときに!「特殊勤務手当」
危険な作業、健康を損なうリスクのある作業に従事したときに支給される。
長時間働いたときに「時間外勤務手当/超過勤務手当」
法定労働時間を超えた勤務に対する賃金。いわゆる残業代。
夏は6月、冬は12月「期末手当・勤勉手当」
民間企業でいうボーナスに相当し、勤務実績や評価にもとづいて支給される。
課長級以上に対して支給「管理職手当」
管理職に就いている職員が対象で、責任の重さに応じて支給される。
家族や住居などに関する「生活関連」の手当
2025年度から段階的に廃止?「扶養手当」
配偶者や子どもなどの扶養家族を持つ職員に対して支給される。2025年度から、国家公務員に対してこの手当が段階的に廃止されることが決まった。共働き世帯が増加している現代の社会状況に対応するものだ。
自治体によって額は異なる「住居手当」
家賃が一定額を超える場合、その一部を補助する制度で、特に単身者や賃貸住宅の職員に役立つ。
距離に応じた加算額が設定されている「単身赴任手当」
家族を残して遠方に赴任する場合、生活費や移動費を補助する。
一級地から四級地までのレベルによって額が変わる「寒冷地手当」
防寒地在勤の職員に、11月〜3月の5ヶ月間に限り暖房費の補助として支給される。
そのほかの手当
物資を運ぶのが難しいと思われる場所が対象「特地勤務手当」
離島や山間部など生活が不便な地域に勤務する職員に支給される。
家から職場まで片道2km以上が条件「通勤手当」
公共交通機関や自家用車で通勤する際の交通費を補助する。
勤続20年以上で平均支給額1,000万円以上「退職手当」
退職時に支給される一時金。国家公務員退職手当法にもとづき支給される。
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公務員の福利厚生「休暇」を確認しよう
公務員の年間休日は、土日や祝日、年末年始を合わせると約125日で、民間企業の平均より10日ほど多い。有給休暇や特別休暇、病気休暇といった制度も充実しており、休暇の取りやすさという点で民間と比べて優位性がある。
次から、公務員の休暇制度の具体的な内容を詳しく見ていこう。
民間の平均よりも多い!「年間休日」
公務員の年間休日は約125日で、これは民間企業の平均年間休日110.7日よりも多い(※1)。年末年始や夏季休暇は以下のように定められている。
年末年始の休日
12月29日から翌年1月3日までの6日間。
夏季休暇
主に7月から9月の間でリフレッシュを目的として職員が申請する。自治体によるが、通常は5日間程度の取得が認められる。
任用と同時に付与がうれしい「年次有給休暇」
公務員の年次有給休暇は、原則として1年当たり20日が付与される。任用と同時に付与されるため、民間企業のように勤続半年以上などという条件がない点が特徴だ。
未使用分の有給休暇については、最大20日まで翌年に繰り越しが可能である。そのため、合計で最大40日間の有給休暇を保有できる仕組みとなっており、長期休暇の計画を立てやすい点がメリットだ。
有給休暇の取得率についても、公務員は民間企業に比べて高い傾向にある。令和4年のデータでは、民間企業の取得日数が10.9日にとどまる一方、地方公務員は12.6日となった(※2)。 この高い取得率は、職場全体の取り組みや休暇を奨励する制度の運用が背景にあると考えられる。
※2出典:ポスト・コロナ期の地方公務員のあり方に関する研究会 報告書(令和5年9月)
安心して療養できる「病気休暇」
けがや病気で療養が必要な際に利用できるのが病気休暇である。年次有給休暇とは別に設けられており、公務員の病気休暇制度は民間企業と比べて保障が手厚い点が特徴だ。
病気休暇の取得期間は最大90日間で、その間の給与は全額支給される。職員は経済的な不安を感じることなく療養に専念することができる。自治体ごとに詳細は異なる場合があるが、病気休暇は公務員にとって働きやすい環境を支える重要な制度の一つである。
子どもの看病や親類の不幸などの際に使用できる「特別休暇」
特別休暇は通常の年次有給休暇とは別に、私生活や社会生活上の特別な理由で勤務しないことが相当と認められる場合に取得できる。その内容や条件は自治体ごとに異なるが、以下のような特別休暇が設けられている。
結婚休暇
職員本人の結婚時に5日以内で取得できる。
忌引休暇
身内の不幸時に休暇を取得できる。父母が死亡した場合は7日、そのほかの親族の場合は自治体により規定日数が異なるが、一般的には国家公務員の規定に準じていることが多い。
産前産後休暇
産前6週間、産後8週間を確保。給与は満額支給される。
男性の育児参加休暇
主に産前産後のうち5日以内で取得できる。
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子の看護休暇
子どもの病気やけがの看護のために5日間(2人以上の場合は10日間)取得可能。
官公署出頭休暇
裁判員制度への参加など、官公署への出頭が必要な場合に取得可能。
骨髄などドナー休暇
骨髄移植や臓器提供のために必要な期間を取得可能。
ボランティア休暇
社会貢献のため、職員が自発的にかつ報酬を得ないで行う活動について認められる。1年に5日以内で取得可能。
このように公務員の休暇制度は、職員が多様なライフイベントや不測の事態に対応できるよう設計されており、民間企業よりも手厚い内容が特徴だ。
休暇制度を必要に応じて活用することで、仕事と生活のバランスを保ちつつ、充実したライフスタイルを築くことができるだろう。
公務員の福利厚生「保険・年金」を確認しよう
公務員が加入する保険や年金制度は民間の制度と共通する部分もあるが、公務員特有の仕組みによる手厚い保障が特徴である。以下では、短期給付事業(公的医療保険)と長期給付事業(年金)について詳しく解説する。
短期給付事業(公的医療保険)
公務員は、共済組合が運営する短期給付事業に加入している。これは民間企業の健康保険に相当し、病気やけが、出産、休業、災害などに対する給付が行われる。短期給付事業は大きく分けて以下の3つからなる。
法定給付+附加給付「保険給付」
病気やけがの際の診療費用の一部負担をカバーする。法律で定められた法定給付に加えて、共済組合独自の「附加給付」があるのが特徴だ。高額医療費や家族療養費など、組合員だけでなく被扶養者も対象になる給付もある。
病気やけがになっても安心して休める「休業給付」
病気やけがで長期間仕事を休む場合に給与の一定割合を補償する制度。傷病手当金、出産手当金、休業手当金、育児休業手当金、介護休業手当金がある。休業中の収入保障が充実しているため、安心して療養に専念できる。
事故や災害に遭ったら「災害給付」
業務中や通勤中に事故や災害に遭った場合には弔慰金、災害見舞金が支給される。被扶養者が災害に遭った場合は家族弔慰金が支給される。
長期給付事業(年金)
公務員が加入する長期給付事業は、退職後の生活を支える重要な年金制度だ。かつては「共済年金」として3階建ての仕組みを持っており、特に3階部分の「職域加算」が公務員特有の手厚い保障を特徴づけていた。
しかし平成27年の年金制度改革により、公務員の年金は厚生年金と統合され、民間企業と同じ仕組みで運用されるようになった。それでもなお公務員には独自の「年金払い退職給付」が提供されており、公務員は退職後も安定した収入を得やすい環境が維持されている。
※3出典:国家公務員共済組合連合会「被用者年金制度の一元化と年金払い退職給付の創設」
共済組合の運営による独自の上乗せ給付も含め、公務員の年金は民間企業と比較して充実度が高い。退職後の生活の安心感が、公務員という職業の大きな魅力の一つとなっている。
公務員の福利厚生「祝金・見舞金・弔慰金など」を確認しよう
公務員の互助会では、会員の人生の節目や予期せぬ出来事に応じて、様々な金銭的支援を行っている。その代表例が「祝金」「見舞金」「弔慰金」だ。その内容を詳しく見ていこう。
人生の喜ばしい節目に!「祝金」
祝金は、会員の結婚や出産、子どもの入学など、人生の喜ばしい節目に対して給付される。例えば、結婚祝金や出産祝金、永年会員祝金などがある。
困難な状況への支援として「見舞金」
見舞金は、会員やその被扶養者が病気やけがなどの困難な状況に直面した際に支給される。入院見舞金が代表例であり、長期の療養や入院が必要な場合に経済的な負担を軽減するための支援が提供される。治療上、個室に入院することになった場合の入院差額料という見舞金もある。
不幸に見舞われたときに「弔慰金」
弔慰金は、会員やその被扶養者が不幸に見舞われた際に支給されるものだ。死亡弔慰金がこれに該当する。家族や親しい人を失う悲しみを少しでも和らげるために、組織としての配慮がなされている。
これらの金額や種類は互助会ごとに異なるため、あまり知られていない福利厚生も多いかもしれない。ぜひこの機会に制度の内容を把握し、自分や家族の生活をより豊かにするために活用してほしい。
福利厚生制度を確認し、活用しよう
そのほかにも公務員の福利厚生には、旅行やレジャー、テーマパーク、ジム、映画館、外食などで割引を受けられる「福利厚生代行サービス」が含まれている。これらの制度は、日々の業務に追われる職員にとって、リフレッシュや家族との時間を充実させる貴重な機会を提供するものだ。
特に、自治体が地元の資源を活用した優待や補助制度は、地域ならではの魅力を享受できる。観光施設の割引や地元特産品の優待など地域に根ざした取り組みは、職員の生活を豊かにするだけでなく、地域経済の活性化にもつながっている。
こうした制度は意外と知られていない場合も多いかもしれない。ぜひこの機会に自分の自治体で利用可能な福利厚生制度を確認し、日常生活をより豊かにするために活用してほしい。うまく活用することで仕事と生活のバランスが取りやすくなり、地域の活性化にも貢献できるだろう。