老朽化の早期発見を支援する水道データ配信サービス
水道は生活に欠かせないライフラインだ。設備の老朽化や人口変化に合わせた管路更新など、対処すべき課題は多い。備前市では水道データ配信サービスを導入し、少人数での効率的な業務遂行に役立てているという。
※下記はジチタイワークスVol.34(2024年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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産業建設部
上下水道課
係長 中村 仁彦(なかむら よしひこ)さん
山間部や離島の検針員不足だけでなく設備の老朽化も課題となっていた。
全国で少子高齢化が進む中、社会インフラの維持に頭を悩ませている自治体は多いだろう。同市も例に漏れず、水道メーター検針員の高齢化や担い手不足は深刻な状況。時には、職員が代理で各戸を訪問することもあったという。
加えて、管路や住宅内に引き込んだ水道管も老朽化が進んでいる状態。山間部が多い土地柄でもあり、冬季に凍結した水道管から漏水するトラブルが起きていたという。中村さんは「検針のタイミングは2カ月に1回程度であり、気づいたときにはかなり漏水した後ということも珍しくありません。大量の漏水により、広範囲で断水する可能性がある場合、職員が1軒ずつ住宅をまわって破損箇所を探します。そのため、通常業務にも支障が出ていました」と、当時を振り返る。
自治体職員も年々減少しているのに、検針員不足をカバーする場面は増えるばかり。市域にある瀬戸内の島々には船で移動する必要があるため、時間的なロスも大きい。そのため、効率化を考えなくてはならない状況になっていたという。
そこで長年の課題を解消するために、水道データ配信サービスに関するプロポーザルを実施。導入したのが「愛知時計電機」が提供するサービス「アイチクラウド」だった。
電波が悪い場所でもつながりやすい、マルチキャリア型が採用の決め手に。
同サービスは、スマート水道メーターと防水型無線送信器を各戸に設置し、クラウドにデータを集積。検針に行かずとも、手持ちのパソコンやスマホから、インターネット経由で水道使用量などの各種データを確認できる。システムやソフトのインストールは不要で、設置機器などは内蔵電池により約8年間連続稼働が可能だ。「最も評価したのは、“マルチキャリア対応”であったことです。場所によってつながりやすいキャリアを選べるので、とても助かっています」。
財源には「デジタル田園都市国家構想交付金」を活用。全世帯の約2割にあたる2,800戸にスマート水道メーターと防水型無線送信器を設置。山間部や離島から順次、自動化していったそうだ。
市内の設置業者にとって、スマート水道メーター設置は初めてのこと。業者の負担は、懸念事項の一つだったという。「現場での対応をできる限り減らすため、スマート水道メーターと送信器をつないだ状態で納品してもらいました。煩雑になりがちな使用機器と各戸との情報ひも付け作業も、製品固有番号ラベルを持ち帰って作業できるため、現場作業を最小限に抑えることができました」。大きなトラブルもなく、全戸分の設置は期限内に終了。大規模な取り換え作業ではあったが、事前の工夫で設置業者の不安を取り除けたという。
水道インフラの維持管理を、データ活用でさらに効率的に。
サービス導入により、検針や漏水確認業務の処理スピードは向上。水道使用データを日ごとに確認でき、漏水については一定時間のモニタリング後にフラグが立つため、素早い発見と対応が可能だ。また、検針が不要になった地域の検針員を別地域に割り振ることで、人員不足の解消にもつながっている。
同市では新たな試みとして、工場地域にもスマート水道メーターを設置。「季節ごとの水道使用動向がより細やかに把握可能になりました。配水量の需要を予測することで、省エネや効率的な漏水の発見につなげていければと考えています」。今後、市内管路を更新する際のデータ活用も見据えている。
機器を設置した世帯では、任意で高齢者の見守り事業もスタート予定だ。「一定時間に水道使用が確認できない場合、遠隔地に住む家族に自動で連絡が入るものです。プライバシーを極力守る形で、住民の安心感につなげていければと思います」と中村さん。水道事業を維持するための試みが、安心して住みつづけられる地域づくりにまでつながっていきそうだ。
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