子育て女性の就労意欲の喚起と支援
女性の就業率低迷と、地域中小企業の採用難という2つの課題を抱えていた堺市は、“いつかは働きたい”と思っている子育て中の女性に注目。コミュニティ運営で女性の悩みをくみ上げ、企業の環境整備も支援することで、採用へとつなげている。
※下記はジチタイワークスVol.34(2024年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[PR]株式会社マミー・クリスタル
堺市
産業振興局 産業戦略部
雇用推進課
圓城寺 朗也(えんじょうじ あきなり)さん
今すぐ働くことが難しい女性にとって、就労支援施設はハードルが高い。
女性の就業率が、政令市の中で2番目に低かったという同市。基本計画において、5年間で約5%アップという目標を掲げた。「これまでも、さかいジョブステーション※1という施設で女性の就労支援を行ってきました。しかし、施設に足を運ぶのは、すでに就労意欲が高い人。いつかは働きたいけれど、育児との両立が不安で求職活動に至っていない人もいます。目標を達成するには、求職活動の手前の支援が必要だと感じていました」と雇用推進課の圓城寺さんは振り返る。
※1 若年者や女性などに向けた就職相談・合同企業説明会・職業紹介などを行う施設
一方で、働き手の受け皿となる企業側の課題もあったという。「当市の基幹産業は製造業で、従業員数50人未満の事業所が多くあります。こうした中小企業では女性の採用実績が少なく、女性用トイレや更衣室などが十分でないことも。補助金で設備投資のサポートはしていましたが、就業時間や制度など、ソフト面の支援も必要だと感じていました」。
そこで、潜在求職女性の掘り起こしと企業支援を目指してプロポーザルを実施。3社の中から委託先として選ばれたのが「マミー・クリスタル」だった。同社はコミュニティ運営とイベント企画に強みをもつ企業。子育て女性を中心とした地域コミュニティ「マミクリ」を、各地でゼロから立ち上げてきたという。
※令和4年 マミー・クリスタル主催の子育てイベントに参加した女性223人へのアンケート結果より
※2 令和6年3月31日時点の延べ人数
サークル活動で強みを見つけ、悩みも共有して意欲を高める。
令和4年度から始まったこの事業では、同社が「いつかは働きたいママの就活部 マミクリさかい」と題したサークルイベントを通じ、意欲喚起やヒアリングを実施する。そこで吸い上げた声を、中小企業へのコンサルティングへとつなげてきた。
イベントで毎回行うのが“ママの強みワーク”。「会場には保育士がおり、子どもを預けることができます。つかの間とはいえ自分だけの時間を取り戻し、どんな働き方が理想かを考えることで、仕事をするイメージが湧く人も多いようです」。
また、同社のスタッフは全員が子育て中。そのため、“子どもがすぐに風邪をひくから迎えに行けるか心配”“両立のスケジュールが想像できない”といったリアルな悩みを引き出すのが得意だそう。これを企業側に伝え、勤務時間をはじめ具体的な対策を一緒に検討している。「雇用推進事業は求職者向けの施策に偏りがちですが、受け皿となる企業への働きかけは、表と裏の関係。やはり一体的に行うのが効果的だと感じます」と圓城寺さん。
交流してお互いのリアルを知り、無理のないマッチングへ。
両者がつながる場として用意しているのが“おしゃべり交流会”だ。「企業人事部と参加者がケーキやお茶を楽しみながら、リラックスして話をする会です。参加者からは“自分では探さないような仕事の話が聞けて楽しかった”という声を聞きます。企業にとっても“同僚に迷惑をかけてしまうのが気になる”といった生の声を聞けるのが、貴重な気づきになっているようです」。
同事業は現在3年目で、年度ごとによりよい形を探ってきたという。例えばイベント会場にさかいジョブステーションのスタッフが出席し、その場で会員登録ができるように変更。「1年間で約200人が登録しました。施設で待っているだけでは掘り起こせなかった層なので、貴重な一歩です」。そのほか、参加者の要望から生まれたのが“託児付き企業見学ツアー”だ。「職場を見学できるだけでなく、将来の上司にも会えます。実際にこのツアーがきっかけで就職した人もいます」。
もちろん最初からフルタイムで働けない子育て女性も多い。だが圓城寺さんはこう語る。「時短勤務の導入で、企業の手間は増えるかもしれません。しかし短時間でも能力のある人に働いてもらうことは、地域の活力につながります。今後も潜在求職女性と企業、両者への働きかけを進めていきたいですね」。
CHECK!
各地でコミュニティを運営中
大阪エリア 約4,000人
北海道エリア 約3,000人
その他エリア 約400人
これまで10年以上、様々な地域で子育てコミュニティをゼロから立ち上げ、運営してきたノウハウをもつ同社。子育て支援や就労支援を検討中の自治体は、気軽に相談を。
コミュニティの力に気づきました。
交流会や見学ツアーでは、子育て女性と企業が具体的な悩みを共有しています。ただ集まるだけでなく、こうした関係を築けるのがコミュニティの魅力ですね。今後も無理なく就労につながることを期待しています。