ジチタイワークス

京都府京都市

新たな課税で、住宅確保と空き家対策の両立を図る。

全国の自治体で初の空き家・別荘に対する新税導入

京都市は、空き家や別荘などの非居住住宅に対する課税を全国の自治体で初めて導入し、令和8年以降に開始予定だ。様々な空き家対策がある中、課税という手段を選んだ理由や背景について、税制課の担当者に聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.33(2024年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

京都市
行財政局 税務部 税制課 担当係長
大田 衛(おおた まもる)さん

子育て世帯向けの住宅確保と空き家対策の両立を図る。

同市では、空き家問題にいち早く着目し、国に先駆けて、平成25年に空き家対策に関する条例を制定。空き家の発生予防や適正管理、活用・流通の促進といった総合的な取り組みを進めてきた。「平成30年の住宅・土地統計調査では、市内の空き家率が全国平均を下まわるなど一定の効果が出ていました」と大田さん。他方で、市内の不動産価格は年々上昇。「20~30代の子育て世帯が求める広さ・価格の住宅が少ないなどの影響で、“若年・子育て層”の市外流出が大きな課題となっていたのです」。

そこで注目したのが、活用されていない空き家だ。「居住可能な状態の空き家を市場に流通させることができれば、住宅需要の受け皿を創出できます。また、空き家によって発生する防犯や景観維持などの課題も解消できるのではと考えました」。有識者会議で議論を進める中で、対象が広範囲にわたることから課税という手段を選択。税収を用いてさらなる取り組みを進めることとした。目的はあくまでも住宅の流通・利活用促進のため、活用が困難な物件は課税の対象外としたという。市議会も新税のコンセプトに理解を示し、令和4年3月に「非居住住宅利活用促進税」の導入を定めた条例案が可決された。
 

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約1年をかけて国と協議を行い新たな税制の導入を実現。

本税は法定外普通税にあたるため、総務大臣の同意が必要だった。他自治体で別荘に対する課税はあるが、空き家も含めた課税は全国初。そのため、国との協議には1年ほどの期間を要したという。「課税対象の特定方法や課税逃れの防止策などを問われ、運用基準をかなり細かく検討しました。数え切れないくらいやりとりをしましたね」と大田さん。そして、令和5年3月に大臣の同意が得られ、導入が正式に決定した。

課税の開始は令和8年以降の予定で、まずは納税者への周知に力を入れている段階だ。市民の関心は高く、すでに問い合わせが相次いでいるという。「一部批判的なご意見をいただくこともありますが、制度についてはおおむね受け入れられていると感じます。また、導入が決定してから、空き家相談窓口への相談件数が増えました。課税開始前でも、本税の存在が、空き家所有者に自ら行動を起こさせるきっかけになった側面もあるのではないかと思います」。

年間では約9.5億円の税収を見込んでいるそうだが、額は重要ではないという。「税収は主に空き家対策や移住促進対策の財源とする予定ですが、財源確保そのものが目的ではありません。空き家が減ってこの税の税収が減っていくことが理想です」。

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