2050年カーボンニュートラルを実現するには、国民一人ひとりが脱炭素を意識した生活を送ることが重要だ。自治体は、住民や企業、団体などが脱炭素を実践できるよう、支援する体制を構築する必要があるだろう。令和5年度からは、環境省が推進する「デコ活」を取り入れ、様々な取り組みを始めている自治体も増えている。本記事では、デコ活とは何か?をあらためて説明するとともに、脱炭素実現の具体的な方法を示したデコ活アクションや、各自治体が独自に行うデコ活の事例を紹介する。
デコ活とは
デコ活とは、「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」(環境省ホームページより引用)のことで、二酸化炭素(CO₂)を減らす(DE)脱炭素(Decarbonization)と、環境に良いエコ(Eco)を組み合わせた造語である。デコ活には、“二酸化炭素を減らす環境と暮らしに良い活動”の全般が当てはまる。
2050年カーボンニュートラルおよび2030年度削減目標を実現するためには、国や企業だけでなく、各個人が温室効果ガス削減を意識した生活を送る必要がある。そこで政府は、自治体、企業、団体などと協力して一般消費者に脱炭素を意識した消費と行動を促すとともに、脱炭素関連の需要を創出するためデコ活をスタートさせた。
自治体や企業、団体などが「デコ活宣言」を行うことで、環境省の「デコ活(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)」のポータルサイトに、取り組みを紹介してもらえる利点もある。
13のデコ活アクションで脱炭素を実現
「デコ活アクション」とは、デコ活につながる具体的な取り組み方法を示したものだ。脱炭素を実現する方法として、以下の13の実践方法を環境省が提示している。
◆まずはここから4つのアクション
◆ひとりでにCO2が下がる3つのアクション
◆みんなで実践6つのアクション
このように具体的な方法や利用できる助成金・補助金、ポイント制度、脱炭素への取り組みのメリットを提示することにより、生活の様々な部分で脱炭素が可能であることを一般消費者も容易に理解できるようになる。
上記に限らず、脱炭素に貢献しながら暮らしが豊かになるものはデコ活アクションと考えられる。各自治体で独自のデコ活アクションを提示し、地域にあったデコ活を推進していくことも一つの方法だろう。
デコ活の事例紹介
ここからは、独自のデコ活を実施している3つの自治体事例を紹介する。これからデコ活を推進していきたい自治体は、事例を参考に仕組みづくりを進めてみよう。
Case1.入間市「サスティナブルウォークいるまいる」
入間市では、スマートフォン用アプリ「SPOBY(スポビー)」を活用し、ガソリン車で移動する代わりに徒歩やランニング、自転車による移動を行った市民にポイントを付与する「サスティナブルウォークいるまいる」を実施している。
本事業は脱炭素型ライフスタイル推進事業として、地域の企業・店舗とともに、脱炭素に向けた取り組みを市民に促進するもの。
スマートフォンアプリを通して脱炭素ポイント(移動距離)、ジュエル(歩数)をためると、協賛企業・店舗にて利用できる食事券などの特典や抽選に参加できる仕組みだ。
SPOBYは、移動距離に対してどれだけ脱炭素が達成できたかを計測できる。アプリ内の入間市コミュニティに参加した市民は、徒歩や自転車による移動でどれだけ脱炭素に貢献できたかを確認しながら各種特典を受けられる。
実証の結果、令和5年1月12日から2月12日までに合計746.4㎏の脱炭素を達成している。
関連記事|健康ポイントとは?仕組みと各自治体の取り組みをご紹介
出典:入間市「人も地球も健康に!『サスティナブルウォークいるまいる』(脱炭素型ライフスタイル促進事業)」
Case2.広島県「冬の光熱費節約チャレンジ」
広島県では、1年で最も光熱費の高くなる冬期間に家庭の省エネを応援する「冬の光熱費節約チャレンジ」を令和5年12月15日から令和6年1月15日の間に実施している。
本事業では、光熱費節約にチャレンジした県民を対象に、抽選で75人にQUOカードpay1,000円を付与する。
チャレンジへのエントリーは専用WEBページ上で行い、併せて「うちエコ診断WEBサービス」にて年間で削減できるCO2量を調べ、入力することで当選確率がアップする仕組みだ。
また、冬の光熱費節約チャレンジのページでは、光熱費削減のポイントや気候変動リスクに関する情報を記載しており、光熱費の削減が家計を助けるだけでなく、脱炭素への取り組みに貢献できることを伝え、県民に広く協力を求めている。
Case3.岩手県「いわて脱炭素経営カルテ」
岩手県では、県全体での脱炭素を目指して「いわて脱炭素経営カルテ」の活用を企業などに推進している。同カルテは、CO2 排出量を減らす取り組みを記載した「地球温暖化対策計画書」と、毎年の取り組み状況を記載した「地球温暖化対策実施状況届出書」の2つを合わせた通称だ。
企業等が計画書と届出書を作成して県に提出し、公表に同意すると、県のホームページで脱炭素に向けた取り組みを紹介してもらえるようになる。また、いわて脱炭素経営カルテは「いわて脱炭素化経営認定企業等認定制度(いわて地球環境にやさしい事業所認定制度)」の申請にも利用できる。同制度の認定を受けることで、脱炭素に向けた融資や補助を有利に活用できる利点もある。
同県では、いわて脱炭素経営カルテの公表によるPRで、取引先の拡大や人材獲得力の強化、知名度の向上が期待できるとしている。
関連記事|地域脱炭素とは?実現への課題と自治体の取り組み事例
参考:岩手県「いわて脱炭素経営カルテ(地球温暖化対策計画等)の作成について」
「デコ活」活用で脱炭素への第一歩を
気候変動リスクへの対策は世界的に取り組まなければならない喫緊の課題として認識しながらも、何から取り組めばよいのか分からない自治体も少なくないだろう。
本記事で紹介した事例のように、住民や企業などのデコ活を支援する仕組みをつくり、実施することで、脱炭素を意識した生活・事業活動を後押しできる。
まずは自分のまちにある課題を整理し、どのような活動であれば市民や企業などが取り組みやすいかを考えてみよう。