ジチタイワークス

兵庫県神戸市

【官民連携こぼれ話】課題発見は役所の外で!身に付いたスキルは「取材力&妄想力」

様々な行政課題の解決を目指し、民間の技術やノウハウを活用する官民連携の取り組みが各地で行われている。実際に官民連携を進める行政職員は民間事業者とどのようにつながって連携してきたのか……。ジチタイワークスVol.30では、「官民連携推進特集」として様々な連携事業に取り組み、実践経験を積んだ“つなぐ”達人3人にインタビュー。

そのうちの一人、兵庫県神戸市の長井 伸晃さんには、連携の意義や地域・庁内外とのつながり方など、官民連携に取り組む上での基本となる心構えを伺ったが、本記事では、ジチタイワークス本誌に掲載できなかった貴重なこぼれ話をお届けする。

ジチタイワークスVol.30「官民連携推進特集」本編はコチラ
【長井 伸晃さん】“つなぐ”達人たちに聞く!官民連携に踏み出すヒント。

お答えいただく方
神戸市企画調整局 調整課 課長(SDGs推進担当)
長井 伸晃(ながい のぶあき)さん



▼プロフィール
2007年神戸市入庁。17社との連携事業を実現し、「自治体×民間のコラボで解決!公務員のはじめての官民連携」(学陽書房)をあらわす。全国の公務員がつながるコミュニティ“オンライン市役所”の運営にも携わる。

 

Q.:官民連携で税金を使うことにプレッシャーは?

A.:官民連携だからこそ、お金を使わずできることも。

自分の人件費に対するコスト意識は必要ですが、実は官民連携だからこそお金を使わずに進められる場合も多いものです。例えば、企業が新しい技術やサービスを開発して、モデルケースとして試してみたい場合。

平成30年、神戸市はFacebook JapanとSNSによる地域活性化を目指す連携を行い「神戸市Facebookブルーウィーク」としてセミナーやキャンペーンなどを実施しました。神戸市にはSNSを通した発信力強化や地域活性化などのメリットが、Facebookには従来アプローチできなかった層にリーチできる等のメリットがあり、企業側が費用の大半を負担していました。先方にとっては国内初の自治体との連携で、今後、ほかの自治体に同様の仕組みを展開することを見据えての判断だったと思います。その後、実際に東北や関西の自治体を中心に広がっていきました。

 

 

令和3年、クラウドファンディングサービスである「マクアケ」との連携では、セミナーや広報面で支援を行い、その中で中小企業からプロジェクトページを制作する際にかかる費用を補助してもらえると助かるという声を受け、補助金を創設しました。このケースも中小企業支援がメインであり、マクアケにはお金を支払っていません。基本的なスタンスとして、連携先の企業に対し、お金ではなく行政の強みを活かしたメリットを提供するには、どのようなことができるだろうかと考えるようにしています。
 

Q.:連携のコアになる課題やニーズはどこで?

A.:公私問わず役所の外で見つけています。

机に座っているだけではなかなか良いアイデアは見つかりません。公私問わず、少しでもヒントやきっかけが見つかりそうなイベントや飲み会があれば、積極的に参加しています。IT系から商店街の若い経営者まで面白そうな人が集まる所に顔を出していると、公務員だというだけで珍しがられて覚えてもらいやすいし、まちで起こっている様々な出来事や課題をリアルタイムに知ることができます。最初は給料が支払われないプライベートな時間を使うことに抵抗があるかもしれませんが、「この分野ならあの人だ」と気軽に質問や相談ができる人間関係をつくると、仕事にも活きてくると思います。

庁内の職員にも、数は多くなくとも実は同じことを考えている人がいると思います。そんな職員とは役所ではなく、外のイベントで知り合うんですよね。神戸市が主催する面白そうなイベントに行って主催者である職員と仲良くなると、いざという時にそのつながりが活きるときがあります。業務を通して知り合う庁内の人は限られていると思いますが、庁外で得た人間関係から自分の“庁内地図”ができると、とても仕事がしやすくなります。
 

Q.:官民連携を担当して、身に付いたスキルは?

A.:取材力&妄想力。あるべき姿を思い描く力。

必要なのは、課題や強みを把握する取材力と、どう企画化するかを考える妄想力です。長く行政に携わっていると「これは多分無理」と判断できることも増えますが、妄想をする段階では実現できるかどうかは、いったん置いておきます。そして本来はこうあるべきだという最高の状態を考えて、どうやったら実現できるか逆算する方法を採っています。さらに良いことを思いつけば、あとからでも付け加えることもあります。最初の段階で自己規制して、小さなスケールで完結させるのはもったいないですからね。

アイデアを練る際は、ほかの人から妄想力を借りることも大切です。庁内の情報が集まる広報課や企画課に雑談レベルでヒントをもらったり、担当の課にヒアリングをしてより効果的で受け取りやすいアプローチを考えたりと、再び取材力を発揮する場面です。ただ、どんな良いアイデアであっても原課にとっては新しく加わる業務ですので、押し付けにならないように原課の課題の延長線上に置くことを意識しています。

企画を立て、実際に関係者の調整を始める段階で、取り組みの背景から具体的な内容と得られる効果までのストーリーを分かりやすく整理して、記者発表用の資料もつくりはじめます。その資料を使うと、原課の理解・共感を得られることが多いですし、そのフィードバックも資料に盛り込むようにしています。

 

官民連携に踏み出すヒントは?
2人目の達人に続く


【上仲 俊輔さん】“つなぐ”達人たちに聞く!官民連携に踏み出すヒント。
 

 

このシリーズの記事

 1人目の達人:兵庫県神戸市 長井 伸晃さん/官民連携の意義について聞きました!

 2人目の達人:神奈川県川崎市 上仲 俊輔さん/地域とのつながり方について聞きました!

 上仲さんSideStory/「本気の人と対等に会話したい」官民連携で痛感した学びの必要性。

 3人目の達人:神奈川県小田原市 白井 直士さん/庁内外のつなげ方について聞きました!

 白井さんSideStory/公民連携の足掛かりづくりのため、苦手な都会へ飛び込んだ。

 

■あわせて読みたい

【まち・むらの逆転思考#03】全国若手町村長会が発足!若手首長が連携し、持続可能な地域づくりに挑む!

【相談室】どうすれば組織横断的な取り組みや官民連携事業を上手に進められますか?

【相談室】年上の部下や、やる気のない部下に対してどう接していいか分かりません。

 

【官民連携推進特集】実践経験を積んだ“つなぐ”達人3人にインタビュー 記事一覧

このページをシェアする
  1. TOP
  2. 【官民連携こぼれ話】課題発見は役所の外で!身に付いたスキルは「取材力&妄想力」