公開日:
【連載】地方創生の新たな展開-岸田内閣審議官に聞く[中]第2世代交付金と新たな支援制度とは。
![【連載】地方創生の新たな展開-岸田内閣審議官に聞く[中]第2世代交付金と新たな支援制度とは。](/_next/image?url=https%3A%2F%2Fstatic.jichitai.works%2Fuploads%2Farticles%2F2025-11-17-15-44-17_2510-shingikan-02-737x387.webp&w=3840&q=85)
令和7年6月、地方創生に関し今後10年を見据えた「基本構想」が閣議決定されました。過去10年間の地方創生の検証から、当面の人口減少を受け止めた上で、地域経済の再生や関係人口の拡大を目指す新たな戦略です。ジチタイワークスでは内閣官房地域未来戦略本部事務局の岸田 里佳子内閣審議官にインタビュー。「基本構想」の理念や制度設計についてうかがいました。3回連載の第2回では、第2世代交付金の考え方と新たな支援制度について詳しくお伝えします。
※インタビュー内容は、取材当時のものです。
Interviewee:
内閣官房地域未来戦略本部事務局
岸田 里佳子(きしだ りかこ)内閣審議官

平成5年建設省(現国土交通省)入省。民間活力を活用した都市の再生、歴史的な街並みの保全・再生、PPP等公民連携プロジェクトの創出による地域活性化、防災まちづくりや復興まちづくり等の政策推進に取り組む。京都市都市づくり担当課長、東京都中央区都市整備部長、国土交通省住宅局市街地住宅整備室長、同都市局都市安全課長等を経て、令和6年7月内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局内閣審議官。同10月内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局内閣審議官。2025年11月より現職。
ソフトとハード。ストーリーある一体申請を。

― いわゆる「第2世代交付金(※)」は従来と何が違うのでしょうか。
令和6年度の補正予算から「第2世代交付金」となりました。これまでの交付金にはソフト施策と拠点(ハード)整備、インフラ関連という3つのタイプがあり、それぞれ個別に応募しなくてはなりませんでしたが、全てをまとめて応募できるという点で便利になりました。
限度額が非常に大きくなったという点も重要です。プロジェクト1件当たりの限度額も、申請できるプロジェクトの数も拡充しました。自治体にとっての使い勝手という観点で見ると、金額が大きくプロジェクトの件数も増やせるので、自治体には積極的にご活用いただきたいと考えています。
― 自治体が申請する際に留意すべき点はありますか。
個別の申請よりもソフトからハードまでが一体となった申請の方が望ましいと思います。単発の施策をいくつも打つのではなく、地方創生のシステムがまわるようにプロジェクトを構築していただきたいと思います。そうすると、おのずといくつかの施策が組み合わさることとなりますし、より効果的に進めていただけるのではないでしょうか。かつてのように、まず箱物をつくって中に入れるものは後から考える、という時代ではないので、セットで考えようということです。いわば「ストーリー」が求められると思います。
― 一体的な申請の具体的な事例をご紹介ください。
子育て支援でいえば、移住拠点を整備するとともにDXを推進する、といった形でハード整備とソフト施策を組み合わせた例があります。観光分野では、足湯広場の整備とエリアマーケティングを担う人材育成をセットにする、といった事例。また、棚田や田んぼアートを軸にツーリズム発信とブランド米の販買促進を組み合わせた例もあります。
※第2世代交付金 正式名称は「新しい地方経済・生活環境創生交付金」。地方自治体の自主性や創意工夫に基づき、地域の多様な主体の参画による地方創生の取り組みを計画から実施・検証まで一体的に支援する。
地域で目標をつくり、地域で検証する。

― 「基本構想」にはPDCAサイクルの見直しも盛り込まれました。
以前から外部有識者による効果検証がありましたが、地域独自の取り組みについて「東京目線で評価されても……」といった戸惑いの声もありました。そこでPDCAをまわすにあたっては、地域で目標をつくり、地域でチェックしていただく、という形にしました。
― PDCAを強化する部分を具体的にご説明ください。
これまでプロジェクトの結果公表は努力義務で、実際には公表されないケースも多かったのですが、今回は改善策の公表を義務付けました。交付金の使い勝手を改善し、限度額も高く、検証も地域に合った評価指標で考えていただけますが、最後はきちんと結果をお知らせくださいという仕組みです。改善が必要な場合は改善策も公表していただきます。プロジェクトが完了した時点で、計画ごとに検証していただく形です。使いやすくする代わりに検証はしっかりやっていただくということで、この点は従来と大きく違います。

― 「基本構想」にはPDCAサイクルの見直しも盛り込まれました。
以前から外部有識者による効果検証がありましたが、地域独自の取り組みについて「東京目線で評価されても……」といった戸惑いの声もありました。そこでPDCAをまわすにあたっては、地域で目標をつくり、地域でチェックしていただく、という形にしました。
― PDCAを強化する部分を具体的にご説明ください。
これまでプロジェクトの結果公表は努力義務で、実際には公表されないケースも多かったのですが、今回は改善策の公表を義務付けました。交付金の使い勝手を改善し、限度額も高く、検証も地域に合った評価指標で考えていただけますが、最後はきちんと結果をお知らせくださいという仕組みです。改善が必要な場合は改善策も公表していただきます。プロジェクトが完了した時点で、計画ごとに検証していただく形です。使いやすくする代わりに検証はしっかりやっていただくということで、この点は従来と大きく違います。
自治体の悩みを伴走して支える。

― 「地方創生伴走支援制度」についてご説明ください。
令和7年4月に始動しました。ご要望をいただいた市町村と国の職員とのマッチングを行い、週に何度かオンラインで会議などをしながら、時には実際に現地に行き、地域の課題解決や自治体のお悩みを政策面でサポートしていく取り組みです。霞が関の本省職員3人で1チームつくり、令和7年度は60チーム、計180人で支援にあたっています。
この支援は交付金と直接には結びついていません。そもそも課題が何なのかというお悩み、何をしていいのか分からない、といったケースも対象としています。本当の入口の段階で支援する位置づけです。もちろん、そこから結果的に第2世代交付金や、あるいは各省の事業につながることも出てきます。
― この制度を新設した狙いをお聞かせください。
第2世代交付金の狙いでもある「自治体格差の打破」の一環です。交付金をまだ一度も申請したことがないという自治体が一定数存在しており、「申請のハードルが高い」、あるいは「そもそも何をやったらいいのかわからない」という声も少なからず聞いてきました。
ただ、交付金自体が必要ないという自治体はそんなに多くないはずです。そこで、霞が関から職員が出向いてお手伝いしますという制度です。規模の小さい自治体や災害関係の被災自治体など、積極的に対応させていただいています。
オンライン支援で職員の能力向上も。

― 「伴走支援」を検討する自治体へのアドバイスをお聞かせください。
非常に使いやすい制度だと思いますので、ちょっとこんなことをやってみたいというときには、メールでも電話でも構わないので、ぜひ直接ご連絡をいただければ。自治体の皆さんが思っておられることをご相談いただくと、具体的な事業に非常につながりやすいです。もしハードルが高いと感じているのであれば、その部分もご相談いただければ丁寧にサポートします。制度を理解していただくためにも、できるだけ早めにご相談をいただければと思います。
― 職員の能力向上支援のプログラムもありますね。
「地創塾(地方創生塾)」と呼んでいます。自治体の職員を対象に週1回、オンラインで地方創生の事例を発表していただき、それについてゼミ形式で話し合う、時には合宿に行く、という取り組みを令和7年4月から始めました。令和7年度の塾生募集は終了していますが、やる気のある職員の皆さまにはぜひ参加していただきたいです。
交付金の仕組みも様々な支援制度も従来よりハードルを下げているので、もっと気軽に、より積極的に提案や相談をしていただきたいと考えています。
(聞き手:ジチタイワークス・西田 浩雅)
◆
連載第3回では、具体的な「政策の5本柱」について、詳しくお伝えします。













