お答えいただく方
神奈川県川崎市(かわさきし)経済労働局 観光・地域活力推進部
上仲 俊輔(かみなか しゅんすけ)さん
▼プロフィール
2007年に川崎市へ入庁。農商工連携をはじめ、様々な分野にて官民連携事業に従事。プライベートでは都市経営プロフェッショナルスクールに通い、連携の方法を基礎から学ぶ。
Q.:官民連携担当者として、どんな勉強をしてきた?
A.:学ぶ必要性を感じて、自主的にスクールへ通学。
商店街支援や商業者の支援、農商工連携、ベンチャー企業の支援など、さまざまな官民連携を経験し、現在は観光部門でインバウンド事業などを担当しています。
勉強を始めた大きなきっかけは、商店街や農家の方と接していた経験にあります。商売や仕事に一生懸命取り組んだ上で、さらにまちを良くしようと考えている方と出会ったときに、公務員である自分はどうだろうと考えました。地域にとって何が課題で、どうすれば本当に解決できるかという議論の場で、既存の施策メニューを紹介することぐらいしかできずにショックを受けたこともありました。「もっと勉強して、本気の人たちと対等に会話できるプロにならないと良い施策は考えられない」と一念発起して、都市経営プロフェッショナルスクールに通いました。
スクールでは、まちを経営する感覚を養うことを最初に教わりました。自治体を会社と見立てて、どう経営をして行けば良いかという考えることで、より広い視野で地域の課題を見極めるノウハウを学ぶのです。通学中は課題のレポートやスクールでの学びをnoteにまとめていましたが、勉強になるのはもちろん、読んでくれた方との新しいつながりもできました。自ら情報発信する重要性も学びましたね。
Q.:勉強することで得た知見は、どう役立っている?
A.:経営的な感覚を養うことで、視野が広がった。
より広い視野で、物事を考えられるようになったと思います。
連携では、単にニーズのある者同士を引き合わせることがゴールではないと思うんです。例えば、地元の農産物で加工食品をつくりたいという事業者がいる場合、農産物の品質が変わらなければ、規格外で安く仕入れた方がコストを抑えられます。一方、農家としては大切に育てた農産物なので、規格外よりも正規品を適正な価格で販売することが望ましい。そのためマッチングの際には、こうした業種間のギャップを調整する必要があります。さらに「地域のどんな課題にアプローチできるか」という視点も意識してもらうことで、ビジネス上の利益だけでなく、さまざまな地域課題の解決にもつながる、異業種のコラボレーションになり得るんです。
例として、「Made in Local(地元産)」をコンセプトとする川崎市のベーカリー「Len」と地元農家とが連携した商品開発を、約3年前にお手伝いしたのですが、現在はさらに取組が進化しています。「FARM TO GIFT(農園からの贈り物)」という地元農産物を主役にした商品(パンやスイーツ)が誕生し、そこには農家さんの想いが製法やパッケージに込められています。

その洗練されたデザインが農家のブランディングにつながっていて、農家さん自身も近所や知り合いに紹介するなど、商業と農業がお互いに価値を高めあう効果が生まれています。こうした取組が継続すると、地元のお店や農家を応援してくれる方が増え、地域経済が循環していくので、結果として産業が強くなり、まちの魅力も高まるのだと思います。