「公務員は人事も評価もブラックボックスだ」と思う人は少なくないのでは。人事異動が頻繁にあり、自分が思い描くキャリア形成が難しいと感じることも。その結果として、人事異動や転職の際の自己PRがうまくできずに尻込みしてしまうという悩みも多いだろう。
そこで今回、実際に公務員から民間企業へとキャリアチェンジを経験した元県庁職員の高橋さん(仮名)に、公務員時代に磨いたスキルや、民間へ転職した今、公務員の人事評価について思うことなどを語ってもらった。前・後編に分けて、今回は後編をお届け。
【前編】公務員から民間へ転職、家族のピンチを救うための決意。
【後編】公務員経験で培った“つながり”がスキルになる。 ←今回はココ
■お話を伺った人
高橋さん(仮名) 30代
関東地方の某県庁職員から民間企業へ転職。家族は妻と子ども4人。
公務員でもキャリアを活かした転職ができる
ーー 公務員から民間企業への転職は苦労するという話をよく聞きますが、実際どうでしたか?
高橋さん(以下、敬称略)公務員時代から転職を意識して仕事をしていたわけではなく、家族を優先するという選択肢を選んだから転職するという形だったので、最初は何をしたらいいか分かりませんでした。
ただ、条件として絶対に譲れないのが“石垣島でリモートワークできること”だったので、転職エージェントのキャリアアドバイザーさんからも「厳しいですね」と言われることもありました。
今働いている企業を知ったのは公務員時代の仲間からの情報がきっかけです。公務員を辞めてからも、当時の仲間からこうした情報をもらえたのは本当にありがたいですし、公務員時代に精いっぱい仕事をして実績をつくってきたことが生きているのだと思います。いわれた仕事をただやるだけでなく、課題を解決するために一生懸命仕事をして培った人脈とか信頼、いわば“信頼貯金”が、自分がピンチになったときに手を差し伸べてくれるのだと思います。
ーー 転職の際、公務員時代の実績をどのようにアピールしましたか?
高橋 面接のとき、“あなたが持っているスキルの中で最も活用できるとしたら何ですか”という質問があったのですが、先ほどの“信頼貯金”を説明しました。
もちろん、課題解決力やSDGs関連のスキルもあったのですが、自分にしかないものは、埼玉県庁やこれまでの活動での、人との「つながり」だと思っています。
まずは、目の前の仕事を一生懸命に取り組むことが一番大事。さらに公務員時代に身につけたスキルを転職先で発揮しようと思ったら、絶対に周囲との信頼構築力が必要になってくるんです。今公務員として頑張っている方も、現在の仕事にしっかりと向き合って取り組むことが、有利な転職につながると思いますよ。
ーー 信頼貯金があるからこそいざという時でも困らない
高橋 実際、公務員時代のつながりは転職した今でも続いています。先ほどお話ししたNPOでも、つい最近、職員向けセミナーの講師をしましたし、県庁時代の方と会って、一緒にお酒を飲んだりもしています。
公務員と民間の一番の違いは目標の捉え方
ーー 民間企業に転職してから公務員との違いを実感した場面はありますか?
高橋 やはり目標への意識の高さが違うと思います。金額だったり利益だったりといった目標に対して、社員みんなで一致団結して目指していくというような雰囲気は、公務員時代には経験なかったです。
もちろん、目標以外にも会社のビジョンであったりミッションであったり、といった概念に対しても、皆同じ方向を向いて仕事をしている。だからみんな会社や組織についての議論もちゃんとできるし、問題意識への対応も早い。自治体で業務改善をやってきた自分から見ると、この価値観はすごくいいなと思いました。
ーー 最後に、今の若い公務員の方に対しメッセージをお願いします
高橋 会社にもビジョンがあるのと同じで、人生にもビジョンが必要です。仕事を通して何をしたいのか、どうなりたいのかを考え、実現したいビジョンを設定しましょう。
そうすると、そのビジョンを実現するためにはどう働けばよいかが見えてきます。転職を薦めるわけではないですが、“絶対この組織にいなきゃいけない”って思うと苦しくなります。
自分の人生だから自分で選んで進むことができます。私のように家族の幸せをビジョンとしている人間でも、ちゃんとキャリア自律して働くことができています。そう思えば気持ちもラクになるし、みなさん自身も思い描いた将来を実現できるのではないでしょうか?
※【前編】公務員から民間へ転職、家族のピンチを救うための決意。
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