ジチタイワークス

大阪府寝屋川市

行政が第三者の立場で介入しいじめを終結させる手法とは。

いじめを人権問題として捉え、市長管轄の専門課を設置

寝屋川市は、いじめ問題について自治体が積極的に関与することで、令和4年度までに認知した全てのいじめを1カ月以内に停止させている。子どもを守る、その徹底的な取り組みについて話を聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.28(2023年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

教職員の業務負担を減らし、いじめ行為の即時停止を図る。

同市では令和元年10月に、いじめ対応を専門とする監察課を発足させた。前身の組織として、福祉部局の中にいじめに関する窓口があったものの、そこでは相談を聞くにとどまっていたという。「だからといって、これまで大きな事案があったわけではありません。しかし、いじめは市民への重大な人権侵害であるという市長の考えから、当課が設置されることになりました」と國村さん。

一般的に、いじめが発生した場合は、学校で対応するというケースがほとんどだろう。「学校の教育的指導では、子どもの人間関係を修復させる目的があります。ただ、関係の再構築を重視することで問題が長期化・複雑化するケースもあるのです。当事者にとっては苦痛ですし、対応する教職員の負担も大きくなります」。そこで行政が、児童・生徒を被害者・加害者と定義して、第三者として積極的に介入することで、いじめ行為を早急に停止させ、現場にいる教職員の負担も軽減。子どもや保護者にとっても、学校以外に相談ルートが増えることで、望む解決方法の選択ができるようになった。

チラシを使った情報収集で第三者の立場からアプローチ。

具体的な取り組みとしては、月に1回、小・中学校(36校)の全児童・生徒に「いじめ通報促進チラシ」を配布。そこに相談内容を記入し、郵送すると直接監察課へ届く仕組みとなっている。「主に小学生からの相談が多く、中学生になると周囲からの情報提供が主になります。保護者にも取り組みを発信しており、認知度も年々上がっているように感じます」。

まず相談・通報があれば翌日までに学校へ出向くなど、被害者や周囲の児童・生徒に事実確認を行い、その内容にもとづいた調査を行う。「加害者に対しては、事実を確認した後、その行動や発言によって嫌な思いをしている相手がいるということを認識してもらいます。被害者の気持ちに共感できるよう助言し、謝罪を見届けます」。事実確認から1カ月以内にいじめ行為を停止させ、再発がないかその後も定期的に調査を続ける。「いじめ行為の停止を確認した後は、学校での予防・見守りを強化するアプローチに移行し、3カ月間継続的に被害者の安全確認を行います。そして再発がなければ、いじめの終結としています」。

もし停止しない場合は、学校に対して、加害者の出席停止やクラス替えを勧告できるほか、民事訴訟や転校の費用を一部支援する制度も用意しているという。「これまでに学校がいじめ対応の委員会を設置しておらず、対応するよう勧告したことはありますが、今では勧告通り設置されています」。

 

もしもいじめが停止しなかったら

学校への勧告
加害者の出席停止やクラス替えなどを勧告・助言

法的措置の支援
民事訴訟の手続き支援や弁護士費用などを補助

児童・生徒の信頼を獲得し、さらなるいじめ行為の終結へ。

いじめの対応件数は、令和2年度の169件から、令和4年度には337件に。その全てが1カ月以内に停止している。「保護者の方からは、すぐに動いてくれて助かったという声や、被害・加害という事実を明らかにし、しっかりと向き合ってもらえてよかったという声をいただいています」。このように教育現場と行政で役割分担し、いじめ問題の解決を図ってきたことが認知され、相談・通報件数も増えてきているという。

「いじめ自体が増えているわけではなく現場の捉え方が変わり、小さなトラブルや兆候を見逃さず、積極的な認知が進んできているのだと思います」。現場の教職員たちも、目が届かない場所での情報を共有してもらえることで、普段の学校生活でも気を付けて見ることができるようになったそうだ。

起こった出来事を見逃さないための情報収集にも力を入れている。「その一つが攻めのチラシです。『求めます!あなたの情報!』と強めの文言で、第三者の情報提供を呼びかけています」と奥村さん。周囲からの情報提供がいじめ行為の停止につながっており、効果を実感しているという。

さらに今後は、児童・生徒の信頼を得るため、顔が見える環境を築いていきたいと話す。「職員がいじめ防止の授業に出向くことで、対話しながら当課の取り組みを知ってもらえたら。普段は顔が見えなくても、チラシの先にはちゃんと人がいて助けを求められる、自分たちを守るために動いているという安心感につなげていきたいです」。

寝屋川市
危機管理部 監察課
課長 國村 幸司(くにむら こうじ)さん
係長 奥村 祐(おくむら ゆう)さん
 

 

 

 

 

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