SPECIAL INTERVIEW デジ田交付金を活用し豊かな未来へ
デジタル田園都市国家構想交付金制度が始まり、令和4年度は1,800億円を予算化。自治体では、地域の課題解決にデジタルを活用する動きが加速している。活用が特に進む“デジタル実装タイプ”について、現在の状況やアドバイスなどを聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.28(2023年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
内閣官房 デジタル田園都市国家構想
実現会議事務局 参事官補佐
小野 康佑(おの こうすけ)さん
新卒でNTT東日本に入社後、新規事業開発室や戦略子会社NTTe-Sportsの立ち上げに関わる。神奈川県横須賀市への在籍出向を経て、2022年7月より現職にてデジタル田園都市国家構想交付金、およびデジタル人材派遣制度を所管。
デジ田のおさらい!
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Q:交付金の利用状況も踏まえつつ、構想実現の進捗はいかがですか。
デジ田交付金については、これまで繰り返し周知活動を行い、不明点がある場合は事務局で相談を承る方法で進めてきました。昨年の相談件数は、TYPE1(優良モデル導入支援型)だけでも2,000~3,000件。どんなに小さな相談でも、電話やメールなどを通じて丁寧に疑問を解きほぐし、書類に改善点があればコメントを付けて返信するなど、可能な限り寄り添ったサポートを行うようにしています。その結果、デジタルの実装に取り組む自治体は、令和5年3月時点で1,161団体を突破。当初“令和6年度末までに1,000団体”としていた目標を、前倒しで達成できました(次頁図参照)。もちろん、まだ道半ばではありますが、地域の課題解決にデジタルを活用する動きが本格化し、私たちも地域活性化の一助となっている手応えを少しずつ感じています。
事業内容でいうと、コロナ禍では対面を避けるために窓口や申請手続きのデジタル化が多かった印象ですが、令和5年度は防災や教育分野の事業も増加。今後は、子育てや観光などの分野もさらなる広がりを見せるのではないでしょうか。次の目標は“令和9年度末までに1,500団体”。これまで同様に全力でサポートを続け、自治体の皆さんと取り組みを進めたいと考えています。
Q:自治体からよくある相談内容や交付金申請時のポイントとは。
「このサービスはデジ田交付金の対象ですか?」という相談を受けることは多いですね。TYPE1の申請で押さえるべきポイントは、2つあります。まず、地域住民にメリットがあるサービスであること。“庁内業務のデジタル化”と間違われやすいのですが、この交付金の対象となるのは“地域の活性化に寄与する”取り組みです。例としては、“書かない窓口”の設置やAIドリルの導入、防災情報のスマホアプリでの発信など。もちろん、DXによる庁内の業務改善はとても有益かつ重要ですので、今後も積極的に進めていただきたいと思っています。
次に、すでに確立されている優良なモデル・サービスの横展開(導入)であること。円滑でスピーディなデジタル実装を目的の一つとしているため、ゼロから開発するような新規サービスの実装や実証実験などは対象外となります。
一方、デジタル化にハードルを感じる自治体からは、「そもそも、どう計画すればいいか分からない」という声が届くこともあります。そのような場合は、地域課題の整理やサービス内容の検討といった計画策定段階からの支援も行っています。また、デジタル専門人材を派遣する制度もあります。国は、“誰一人取り残さない”という方針でデジタル化を進めていますので、事務局としても、できる限りサポートをしていきたいと考えています。
Q:次回の交付金申請に向けて可能な範囲でぜひアドバイスを。
これまで多くの自治体に交付金を活用していただきましたが、ニーズは依然として高いので、次回もできる限り予算を確保できるよう準備中です。
交付金をまだ1度も活用していない自治体に対しては、“要件さえ満たせば必ず1件の事業を採択する”という優遇措置を行っているのをご存じでしょうか?個人的には、この取り組みを次回も続けたいと考えていますので、採択されなかったと諦めず、チャレンジしつづけてほしいと思います。
これから取り組む自治体は、まずTYPE1からの活用が進めやすいと思います。すでにデジタルサービスの事業がいくつか進んでいる自治体も、交付金を活用し、TYPE2、3へと取り組みを発展させてほしいですね。
Q:DXへ踏み出したい自治体にメッセージをお願いします。
デジタル化は、目的ではなく手段であり、決して万能ではありません。しかし、どんな小さな取り組みでも、一定の効果は出ると考えています。まずは、すでに成果が出ているモデルを見つけて参考にすることが、一番の近道。近隣に同じような規模の自治体で、デジタル化を進めているところはありませんか?規模が近ければ、課題感や予算感も似ていて、検討や相談がしやすいはず。他自治体の成功例をいくつか知ることで、ぐっと取り組みのハードルが下がると思います。
取り組みたい施策を“タネ”だとすると、それを育てるために必要な“水(=予算)”や“肥料(=デジタル人材)”は、国が支援可能です。そして、自治体の皆さんには、どのタネの芽をどのように伸ばしたいのかを考えていただく。それが、デジタル化へ踏み出す一歩になるはずです。事務局としても、申請のプロセスをガイドラインにまとめるなど、今後も進めやすい工夫を重ねていきます。
この交付金制度は、地域やそこに住む人々を豊かにするためにあります。国と地域が一丸となってデジタル化を進めるこのタイミングで、ぜひ様々な可能性を検討してみてください。
※デジタル田園都市国家構想実現会議事務局
「令和5年3月デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)の交付対象事業の決定について」より
事業計画・申請書作成のポイント
事業計画の流れ
①解決したい地域の課題を特定する
・住民などへヒアリング
・庁内で推進体制を構築
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②サービスの選定・実装の検討を行う
・手段と目的を整理
・複数候補を挙げて検討
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③事業組成・計画申請書を作成する
・成果やKPIの具体化
・持続可能な運営計画
申請書で指摘されがちなのはココ!
お問い合わせ
内閣府地方創生推進室
内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)担当
TEL:03-6257-3889
E-mail:digitaldenen-kofukin.f7k@cao.go.jp