業務システム開発プラットフォーム
社会の超高齢化に伴い、介護関連の業務量も増加している。自治体はリソース不足という課題を抱える中で、どう対応していけばいいのか。ノーコードツールを活用し、業務の効率化とコスト削減を両立している鶴ヶ島市の事例を紹介する。
※下記はジチタイワークスVol.27(2023年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]サイボウズ株式会社
介護認定業務の負担軽減を目指し、10分の1のコストでシステムを調達。
介護認定にかかる業務負担は、多くの自治体の課題だろう。同市の介護認定審査会では大量の紙を使用しており、運営自体も職員の労力に頼る部分が多く、超過勤務が常態化していた。中嶋さんは「課内で介護認定業務を電子化して効率化したいという話が出てから、専用システムを探しました。しかし、パッケージソフトは選択肢が少なく、高価なものばかりだったのです。これで費用対効果が出るのか、疑問を抱えていました」と話す。
システム化前の課題
要介護認定の2次判定を行う介護認定審査会。増えつづける申請に、関係者の負担も大きくなっていた。
そんな中、庁内で“こんなツールがある”と紹介されたのが、「サイボウズ」が提供する「kintone(以下、キントーン)」だった。プログラミング知識がなくても業務システムの開発ができるという点に興味をもち、すぐにトライアルを申し込んだという。また、同社が運営する行政職員専用のオンラインコミュニティ「ガブキン」にも登録し、積極的に情報を収集。
「ITに詳しくない私でも、1週間ほどでデモシステムが完成したのです。数千万円規模のソフトに代わるものが自分につくれたのは驚きでした」。導入コストを試算してみると、5年間の合計で、市販ソフトの10分の1程度に抑えられるという結果が。これを活用しない手はないと、令和4年度に庁内でキントーン活用のメリットをプレゼンし、正式導入が決定した。
電子化の目的を正確に示すことで周囲を巻き込み、成果を出す。
システム化に合わせ、介護認定審査会はリモートで開催することに。「キントーン上で、開催日程やリモート会議用URLなどを審査会委員に公開し、資料も閲覧用ソフトとの連携で確認できるようにしました。会議前に資料を確認し、事前に審査できるアプリも開発。会議当日の進行もスムーズになります」。
こうした変化を受け入れてもらうため、医師会の会長など、関係者に向けた事前周知を徹底。各方面の合意を得つつ、研修会を実施し、令和5年4月にこの“介護認定審査会システム”を使った審査会がスタートした。「まだ運用を開始したばかりですが、使いやすいと好評です。職員の労力は大幅に削減され、年間4万枚以上印刷していた資料はゼロに。委員は来庁が不要になりました」。
スムーズに電子化できたコツを聞くと、“伝える順番”が大切だという。「電子化は単なる手段。今後の高齢者増加に業務が追い付かないリスクに備えるという“目的”から伝えることで、関係者全員のメリットを丁寧に説明しました」。そして、このシステムの次に手がけたのは、もう一つの課題である“認定進捗の問い合わせ対応”だった。
内製システムを相次いで開発し、“市民のための仕事”をする。
要介護認定の申請から結果通知までの間、介護事業者などから寄せられる“認定の進捗”に関する問い合わせに、電話で対応していた同市。多いときは月に250~300件ほどの電話があり、そのたびに職員の手が止まっていたという。「そこで、進捗状況をWEB上で閲覧できるシステムを構築。セキュリティポリシーや個人情報の取り扱いは各担当課に確認しながら、慎重に進めました」。このシステムも4月末にリリースし、職員の電話対応は激減。事業者は市役所の対応時間外でも情報を得られるようになった。
こうしてシステムの内製を次々と進める同市。中嶋さんは「業務効率化は、市民の方を向いて仕事をするため」だと強調しつつ、次のように締めくくった。「職員の負担軽減のために、認定進捗の回答自体を廃止するという選択肢もありました。しかし、審査中も介護事業者がケアプランを準備し、結果通知後に迅速にケアサービスを提供するためには必要なことです。業務のプロセスを見直すことで、市民サービスの維持・向上と、職員の働き方改革は両立できる。この視点で、今後も改善を続けていきます」。
鶴ヶ島市
健康部 介護保険課
主査 中嶋 英行(なかじまひでゆき)さん
「ガブキン」で情報収集
約220自治体が導入しているキントーン。業務で活用している職員が集まり、情報交換をしているのが、行政職員限定のオンラインコミュニティ「ガブキン」だ。
ガブキンでできることの詳細はこちら