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今さら聞けない!?地方創生の意味と成功のためのポイントとは。

地方創生は日本の重要課題の一つで、これまでにその解決へ向けた施策が数多く立案されてきた。そしてこれからも当面の間、日本の人口減少局面は続くことが予想される。

国立社会保障・人口問題研究所が発表する「将来推計人口」では、2070年までに総人口は8,700万人まで減り、そのうちの4割近くを高齢者が占めるとされている。そのため、地方創生というキーワードは今後も重要性を増すだろう。この記事では「地方創生」の基本的な意味、成功のためのキーポイント、地方自治体における具体的な取り組み事例までを詳しく解説する 。

そもそも地方創生とは?

地方創生は「地域の持続的な発展を目指し、地域内の人々がその土地で安心して暮らし、働き、育てることができる社会を創り上げること」などと定義される。

政府は平成25年度から「第1期まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、その後、令和2年度からは「第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略」がはじまった。この5カ年計画の戦略では、従来の目標に加えて、「ヒューマン」「デジタル」「グリーン」の新たな観点も取り入れられた。

地方創生の4つの基本目標と2つの横断的な目標

4つの基本目標
• 稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする
• 地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流れをつくる
• 結婚・出産・子育ての希望をかなえる
• ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる

2つの横断的な目標
• 多様な人材の活躍を推進する
• 新しい時代の流れを力にする

※参照:まち・ひと・しごと創生 「長期ビジョン」「総合戦略」「基本方針」(内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 内閣府地方創生推進事務局)

 

地方創生の3つの視点にもとづく具体的な取り組み

• ヒューマン(地方へのひとの流れの創出、人材支援)
• デジタル(地方創生に資するDXの推進)
• グリーン(地方が牽引する脱炭素社会の実現)

 

ヒューマンは、コロナ禍を経て地方移住への関心が高まっているように、いかに人の流れを地方に向かわせるかという視点だ。デジタルは医療や交通、生活サービスなどの課題をデジタル技術で解決することを指す。

さらにグリーンは、SDGsの観点を地方でも取り入れ、脱炭素社会に向けた施策を地方発で行っていくという発想である。

つまり、人間中心の視点で地方の魅力を引き立て、デジタル化を進めながら地方の経済を強化し、同時に自然環境を保全して持続可能な社会を築くことが求められているのだ。これらの新たな価値観に取り組むことで、それぞれの地域の魅力がより一層高まり、人を引き付ける大きな誘引力となっていく。
 

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地方創生が重視されている理由。

地方創生がこれほどまでに重視されている理由のひとつは、今なお深刻さを増している「人口減少」である。過疎化が進む地方においては、若者の流出と高齢者の増加により、社会インフラの維持や地域経済の活性化が困難となっている。

2つ目の理由は、地方創生の取り組みがSDGsの原動力となりうるからである。政府は「地方創生SDGs」というスローガンを掲げ、自治体や企業、その他多彩な機関が連携できるよう「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」を設置している。これ以外にも「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」など、地方創生×SDGsの取り組みは多岐にわたる。

地域の活性化のためにSDGsの観点を取り入れる意義は大きく、持続可能なまちづくりは人を呼び寄せ、結果として地域活性化につながる可能性を秘めている。

地方創生における現状課題とは。

地方創生における現状の課題としては、主に次の3点が挙げられる。

・短期視点
・成果が見えにくい
・東京一極集中

地域を活性化する取り組みは当然、一朝一夕にはいかず、それゆえ長期的な視点で取り組まなくてはならない。しかし、政策の成果がすぐに現れないという性質上、どうしても短期的な成果を追い求めてしまうというジレンマに陥りがちだ。

さらに、長期視点で政策を推し進めたとしても、成果が可視化しづらいというのも地方創生の課題のひとつといえるだろう。具体的でわかりやすい結果が出づらいため、取り組みが途中で頓挫してしまうというケースも少なくない。

そして、マクロな視点でいえば「東京一極集中」も地方創生の実現を大きく阻んでいる。都市への人口集中は長年続いており、人や企業が都市部に集まることで地域間の格差が広がってしまっている。

地方創生を成功させるためのポイント。

地方創生を成功させるためには、その地方の特性に合わせた戦略と、新鮮な視点の取り入れが不可欠である。具体的には、「それぞれの地域にあった取り組みをすること」と「外部目線を取り入れること」が主要な成功要因となる。

その地域にあった取り組みをするという視点は地方創生の第一歩であり、その土地固有の具体的な課題に対してアプローチを行う。ある地域では高齢化や人口減少が課題となっているかもしれないし、ある地域では産業の振興や雇用創出が求められているかもしれない。地域の特性や資源はそれぞれに大きく異なるため、特有の環境や条件を考慮した取り組みが必要となる。

そして、「外部目線を取り入れる」ということも大切だ。具体的には、自治体職員だけで考えるのではなく産学官連携で進める、地域外の事例を活用したり有識者を招へいしたりする、などといった取り組みが該当する。内ではなく外に開かれた事業環境を構築することで、新たな発想や可能性が生まれやすくなる。

地方創生の成功事例とは。

●新潟県妙高市

新潟県の南部にある妙高市は温泉やスキー場など、自然豊かな観光資源を多く擁する風光明媚な街である。妙高市ではかねてから「生命地域の創造」をまちづくりの基本理念に掲げ、人々が安心して生命を育むことができる地域の実現に注力している。

同市が抱える課題としては、都市機能の集約化と効率的な公共交通ネットワークの欠如人手不足地元企業と都市部の人材のマッチングの問題高齢化とそれに伴う生活支援体制の構築などがある。そして、 これらの課題に対応するため、経済、社会、環境など多面的なプロジェクトを推進している。

経済面では、地元の観光資源を活用した新たな観光コンテンツの開発、ワーケーションを通じた都市部からの新規顧客獲得、地元企業への人材マッチング支援などを実施。社会面では、都市機能の集約化と公共交通の効率化を推進し、各種検診の促進をして市民の健康維持にも注力している。また環境面では、脱プラスチックやエコドライブなどの普及を図り、「もったいない!食べ残しゼロ運動」をはじめとしたゴミや食品ロス削減にも力を入れている。 

 

●長野県根羽村

根羽村は、長野県下伊那郡に属する人口約850人の村。 村域の92%を森林が占めており、矢作川の源流に位置している。村の基幹産業は林業で、村民全員が森林組合員となっているのも特徴である。

地域活性化の取り組みとしては、杉やヒノキのブランド化、木材をつかった商品開発などに注力。また、移住者誘致にも積極的で、移住コーディネーターを設けたり、移住お試し施設や移住検討者向けのシェアハウスなども整備されている。そのかいもあり、令和2年度には人口増を記録した。

また、環境保全も根羽村のキーワードの一つである。適切な森林管理による、水や空気の保全に取り組みながら、再生可能エネルギーの利活用やエネルギーの地産地消にも努める。そういった環境を整えることで、自然体験やSDGs教育を通じた人的交流の促進にもつながり、経済、社会、環境のシナジー効果が生まれているのだ。 

地方創生の取り組みは長期視点で進めることが大切。

地方創生は、これからの日本社会においてますます重要性を増していくであろう。地方に活力を生み出すためには、「人・地域・仕事」の3つの要素を結びつけながら、さらにDXやSDGsなどの観点を取り入れて地方の特性や資源を最大限に活用することが求められる。

ただ、地方創生の取り組みは、即座に結果が出るものではない。そのため、長期的な視野をもって取り組み続ける必要があり、どうしたら自分たちの地域の魅力を最大化できるかということを考え抜く必要がある。その際には、自治体職員だけで考えるのではなく、地域住民や企業、NPOなどさまざまな立場の人を巻き込んでいくことも大切。そうすることで、今までは気づかなかった新たな価値や課題解決策が見つかる可能性が高まるだろう。

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