仕事と家庭を両立する、公務員パパ・ママの理想と現実に切り込む新連載がスタート。第1弾の今回は、神戸市全体で、育児や家事に積極的に関わる男性を増やすために活動する、「ファザーリングKOBE」のメンバー3人にインタビュー。【教えて先輩!仕事も家庭もうまくいく「育休取得のコツ」】をテーマに、育休をはじめ育児と仕事の両立、妻との関係性などについてリアルな体験談を聞きました。前・後編に分けて、まずは前編をお届けします。
【教えて先輩!仕事も家庭もうまくいく「育休取得のコツ」】
(1)【前編】育休期間はどれくらいが適切?現役公務員パパが明かす“取得時のコツ”。 ←今回はココ
(2)【後編】まわりの評価に縛られない!育休で得たそれぞれの気づきと幸せとは。
ファザーリングKOBEとは
同団体は、「神戸市全体で育児や家事に積極的に関わる男性を増やすために、まず市職員自身の意識や組織風土を変えていきたい」という考えのもと、活動を行う神戸市職員有志のグループ。現在のメンバーは30人ほどで、情報交換や交流会、勉強会などを随時開催しながら、庁内の理解促進も目指す。
-参加者-
神戸市 福祉局 国保年金医療課 5歳男の子、3歳女の子の育児中。育休を9カ月と10カ月取得。妻も神戸市職員 |
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神戸市 税務部 税制企画課 4歳男の子・2歳女の子の育児中。育休を2カ月と5カ月弱取得。妻も神戸市職員。 |
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神戸市灘区 総務部 市民課 0歳女の子の育児中。育休を1年ほど取得予定。妻は民間企業に勤務。 |
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―皆さんはお子さんが生まれてすぐ育休を取られたとのこと。当時の状況について教えてください。
永山さん:子どもが生後3カ月くらいまでは、2~3時間おきに起きるので、こちらも長く睡眠が取れず睡魔と戦うのが非常につらかったです。育休を取らずに、仕事と両立するのは、私には無理だったと思います。
1人目のときはよく分からないことも多く、子どもが泣くたびに、夫婦で起きてやっていました。2人目になると慣れもあり、夜中は全部私か妻1人で担当。翌朝に交代して寝るように工夫しました。うちでは、母乳ではなくミルク育児だったので可能だったのかもしれませんが……。
浅井さん:おっしゃる通り、うちも最初の3カ月はかなりしんどくて、特に2人目のときは大変さが2倍ではなく、2乗になったように感じました。1人でこなすのは相当ハードなので、最初の3カ月に、夫婦そろって育休を取ったことはすごく意義があったと感じています。
福田さん:私は今まさに育休中です。育児以上に夫婦でずっと一緒にいる生活が大変です。うまく付き合っていく必要があると痛感しています……。
永山さん:確かに、長く一緒にいるとぶつかってしまうのは、夫婦でも仕方がないですよね。うちの場合、お互い日中に自由にできる時間を意識してつくりました。妻に全部任せて私が出かけたり、逆の日もあったり。1人でリフレッシュできる時間をつくることが大事ですよ。
浅井さん:わが家も月に1回は夫婦ともに1人で自由な時間をもてるようにしています。どちらかが子ども2人を連れて実家に帰ったり、私1人で子どもと旅行に行ったりすることもあります。
―上司に育休を取りたいと伝えるタイミングはどのくらいがいいですか?また、育休期間はどうやって決めましたか?
浅井さん:上司には早いうちに相談することが重要です。自分が抜ける穴をどう埋めるか考えてもらう必要があるので。正直なところ、育休の取りやすさは上司次第なのが現状だと思います。あまり快く思わない上司に対しては、育児を経験することで自分がどう成長したいかを伝えるとよいのではないでしょうか。
福田さん:私の場合、実家が遠いこともあって、1年ぐらい取りたいと思っていました。実際には上司に早めに伝えておいて、1月に子どもが生まれて3カ月取得。さらに、4月に異動した部署で1カ月勤務した後、代替職員採用の関係で、1年超の取得を勧められ、最大1年取得する予定です。自分の経験から考えると、育休期間は最低2~3カ月は取った方がいいと思います。
永山さん:育休期間について部下から相談をされたことがありますが、期間は仕事の都合ではなく、夫婦で相談して決めてほしいですね。組織をどうまわすかは人事部門やマネジメント層が考えることで、自分たち夫婦がどうしたいかを大切にしてほしいと思います。ただ、最低2カ月は取ることをオススメします。
出産後の女性は、産後2週間でうつ病のリスクが急激に高まり、2カ月目にかけて徐々に下がっていくデータもあります。その期間はうつ病に陥りやすく、2年間で約100人が自殺しているそうです。子どもだけでなく母親の命を守るためにも育休は本当に大事なんです。
あとは育休手当や保育園入所のタイミング※など、家庭の事情に応じて期間を決めたらいいと思います。うちは、子どもが生まれてから保育園に入る4月まで取ると決めていて、0歳でスムーズに入所できました。
※育休手当(育児休業給付金)は、育休開始後、子どもが1歳になるまでの間に受け取ることができるもの。支給額は休業開始前の賃金の67%だが、6カ月経過後は50%になる。また、一般的に保育園に入園しやすいタイミングは4月といわれており、育休期間はそこも踏まえて検討しておく必要がある。
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―皆さん共働きとのことですが、家事と育児の分担について夫婦で話し合いましたか?
永山さん:最初の育休中に話し合っていましたが、子どもの成長やきょうだいの数によって状況がどんどん変わるので、役割分担はそのときどきで柔軟に変えています。
浅井さん:家事の分担は完全に決めず、基本的には全部2人ともできます。どちらかが体調を崩したり予定が入ったりした場合に対応できるようにしています。結果、自由な時間もつくりやすいです。
―仕事と育児の両立はいかがですか?
浅井さん:今の職場は3年目ですが、ワークライフバランスに配慮がされています。以前の職場では、仕事を優先することを求められて、両立に葛藤したことがあります。仕事が終わらず、子どもの迎えを妻に急にお願いすることもあったので、育児と両立できる職場に異動したいと希望を出しました。
福田さん:マミートラック※の問題が気になります。子育てをする人が配属される職場に偏りがあり、“ここは子育てする職場だ”という言い方を耳にします。そのような職場では、同じ境遇の人が多いので、子育てに理解があり、育児に関する話も聞けます。
ただ、仕事の負担は減るものの、モチベーションを大きく落とすことを考えると、両立できるとは言い難い気がしています。そもそも子育ては家庭だけでなく、社会全体で子育てをするという意識が必要ではないでしょうか。そんな考えが浸透すれば、上司をはじめ、まわりの理解が進み、仕事と育児の両立について、大きな葛藤も生まれないはずです。
※女性が産休・育休から復職した際、自分の意志とは関係なしに職務内容や勤務時間が変わることで、出世コースから外れたり、キャリアアップが難しくなってしまったりする状況。
永山さん:私はもともと仕事人間で、残業して職場に泊まり込むこともありました。でも、子どもが生まれて育休を取り、子育てを大事にしようと意識が変わりました。1人目の育休復帰後、最初は早く帰っていたけど、忙しい部署だったので仕事がどんどんたまって、後半は残業の日々。そうなると体がしんどいのはもちろん、育児を頑張ろうと思っていたのに妻に全部任せる状況に陥り、人生で一番つらかった時期でしたね……。
―理想通りにはいかないのですね。
永山さん:そうなんです。でも2人目の育休後は、基本的に定時で帰っています。今回も比較的残業の多い部署でしたが、残業を減らす方法を学んで係長という立場で実践したら、チームの残業が大きく減りました。これは個々のスキルアップではなく、“残業せずに帰る”という意識を定着させることが重要でした。
さらに、有給休暇もどんどん取ってと伝え、自分もほぼ使い切るぐらい取りました。上が休むとメンバーも休みやすくなりますからね。こうすることで、育児だけでなく介護をしている人や、病気で通院する人などにも働きやすい職場になってきたと感じています。私のラインでは残業がほとんどなく、楽しく働いてしっかり成果も出しています。上の人が率先して言葉や行動で伝えることで職場は変わると思います。
浅井さん:永山さんみたいな考えをもつ職員が増えることが大事で、私も実践しています。現実問題として、福田さんがおっしゃった社会で子育てをする意識を醸成して、子育てと両立できる職場とそうでない職場が分かれている状態をなくさないといけない。長期的には、どこの職場でも残業を減らして休暇が取りやすく働きやすい環境を目指して努力しなければいけませんよね。
福田さん:育児中でも、キャリアを意識して仕事を頑張りたいという女性の話を聞いたことがあります。家庭内で話し合い育児のサポート体制も整えているのに、人事異動では、子育て中ならこの職場と、マミートラック的な職場に配属されて苦しんでいる人が多くいるのではないかと思います。
育休を取って変わったことは?新しい気づきや発見は?
後編に続く