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地域子育て支援拠点とは?事業案内や事例を詳しく解説

地域子育て支援拠点事業とは、厚生労働省が推進する子育て支援の取り組みだ。乳幼児のいる家庭を対象に、地域で子育てをする親子の交流促進、育児相談などを市町村が行う。実施主体となる自治体が事業の内容を正しく理解し、既存の事例から学ぶことで、子育て支援のさらなる充実が期待される。そこで本記事では地域子育て支援拠点とは何か、事業案内、事例について紹介する。

地域子育て支援拠点事業とは?

地域子育て支援拠点事業とは、公共施設や保育所、児童館など地域にある身近な場所で、子育て中の親子が気軽に集い、相互交流や育児相談ができる場を提供する事業のことだ。行政やNPO法人などが担い手となって運営を行う。多様な主体の参画による地域での支え合いや、子育て中の当事者同士での支え合いを促し、地域の子育て力を向上させるねらいがある。子どもの保護者が抱く孤立感、負担感を解消し、地域全体で育児家庭を支えていくことが事業の目的だ。
 

地域子育て支援拠点の設立背景

この事業が推進されてきた背景には、少子化が急速に進む現代で子育てをする家庭を取り巻く、多くの社会問題が存在する。児童数が減少していることのほかにも、3歳児未満の子どもの約8割が家庭で養育されている実態、核家族化が進み地域のつながりが希薄になっている社会情勢、男性の育児参加の機会が少ない育児の実情などが挙げられる。

子育て中の親子の孤立は、いわゆる「ワンオペ育児」と呼ばれる社会問題にもなっている。子どもを育てる親は、育児への不安感や負担感を一人で抱え込みがちな状況だ。一方で養育されている子ども側も、多様な大人やほかの子どもと関わる機会そのものが減少している。

地域子育て支援拠点は親子の相互交流や、子育ての悩みや不安を相談できる場となり、それらの課題を軽減する役割を担う。
 

「子ども・子育て支援法」と「子ども・子育て支援新制度」

2012年8月に「子ども・子育て支援法」が成立した。この法令を根拠に2015年4月よりスタートしたのが「子ども・子育て支援新制度」だ。消費税引き上げによる増収分を財源に、子育て支援の「質」と「量」の両面を引き上げ、社会全体で子どもの育ち、子育てを支えることが新制度のポイントとなる。新制度では子育て家庭に最も身近な市町村が中心となり、5年間を計画期間とする「市町村子ども・子育て支援事業計画」が作成された。都道府県や国は、市町村の取り組みを制度面、財政面から支援する仕組みだ。
 

実施形態の多様化による機能別の再編、機能強化

地域子育て支援拠点事業は、2010年度から2014年度の5年間で数値目標を掲げた「子ども・子育てビジョン」においても、重点的に推進されてきた取り組みだ。全国で1万カ所(中学校区に1カ所)設置する数値目標により、量的な拡充が図られた結果、実施形態の多様化が進んだ。

さらに、子ども・子育て支援法では「利用者支援」も法定化された。利用者支援とは、子育て家庭が適切な支援事業や給付を選択できるよう、情報を集約し利用者に向けて提供する事業のことだ。地域子育て支援拠点事業とは別事業として位置づけられているが、子育て支援の場を提供する側の事業者は、利用者支援事業との密な連携や一体的な運営も含めて、機能を充実させ質を高めていくことが求められている。

こうした状況を踏まえ、質の高い取り組みを実施する施設への支援をより手厚く、効率的に届けようと、2013年度より地域子育て支援拠点は機能別に再編が行われた。2017年度時点で全国に7,259カ所か所の拠点があり、これらは現在2つの類型に整理されている。従来からあった「ひろば型」、「センター型」の地域子育て支援拠点は「一般型」へ再編された。「児童館型」の拠点は実施対象施設が見直され、「連携型」へと移行している。

事業案内

地域子育て支援拠点には、一般形と連携型の2つの実施形態がある。ここからは、一般形と連携型の事業内容を具体的に案内しよう。
一般型と連携型、それぞれ共通しているのは、実施主体と基本事業の内容だ。地域子育て支援拠点の実施主体は特別区を含む市町村。市町村から社会福祉法人、NPO法人、民間企業への委託等も可能だ。基本事業として以下の4つが定められている。

① 子育て親子の交流の場の提供と交流の促進
② 子育て等に関する相談・援助の実施
③ 地域の子育て関連情報の提供
④ 子育ておよび及び子育て支援に関する講習等の実施

これらの基本事業のほかに、以下の取り組みを実施する拠点には運営費用が加算される仕組みも、一般型と連携型の共通事項だ。

① 配慮が必要な子育て家庭等への支援
② 研修代替職員配置
③ 育児参加促進講習の休日実施
 

一般形

一般形の拠点とは、おおむね3歳未満の子どもと、その保護者を対象とした常設の施設のことだ。親子が気軽に訪れ、お互いに打ち解けた雰囲気での交流を図る場で基本事業を行う。

実施場所は公共施設の空きスペース、保育所、幼稚園、認定こども園など、子育て中の人が日常的に訪れる場所のほか、商店街の空き店舗、民家、マンション・アパートの一室といった生活の場を活用するケースも認められている。開設日数の目安は週3日以上、1日5時間以上。子育て支援に関して意欲があり、子育てに関する知識・経験を有する従事者が2名以上配置されている。一時預かり事業、放課後児童クラブなどを同じ施設で併せて行う場合は、本体事業に対して加算される仕組みが設けられている。

・出張ひろばの実施
拠点の常設が困難な地域へ出向き、出張ひろばを開設することも加算の対象となる。出張ひろばは週1~2回、1日5時間以上の開設が条件だ。

・地域支援の取り組みの実施
一般型の拠点では、地域に暮らすさまざまな世代間での交流が重視されていることも特長だ。以下の取り組みを行う拠点も加算の対象となり、予算が認められている。

①地域の多様な世代との連携を継続的に実施する取り組み
②地域の団体と協働して伝統文化や習慣・行事を実施し、親子の育ちを継続的に支援する取り組み
③地域ボランティアの育成、町内会、子育てサークルとの協働による地域団体の活性化等地域の子育て資源の発掘・育成を継続的に行う取り組み
④家庭に対して訪問支援等を行うことで地域とのつながりを継続的に持たせる取り組み

これらの制度を組み合わせ、地域の実情に合う事業運営ができることは、一般型のメリットと言えるだろう。
 

連携型

連携型は児童館や保育所などの児童福祉施設で開設されている拠点のことだ。開設日数の目安は週3日以上、1日3時間以上となっており、1名以上の従事者が児童福祉施設の職員のバックアップを受けながら、子育て支援のための施設の中で基本事業を実施する。拠点のスタッフが児童福祉施設からの協力を得ることで、効率的かつ効果的な事業運営ができる連携体制が特長だ。
さらに、若い世代の育成に貢献することも連携型の拠点が持つ役割だ。地域の子育て力を高める取り組みの実施が加算の対象となっており、拠点施設に中・高校生や大学生など、学生ボランティアを日常的に受け入れる活動も推進されている。設備面と人的支援の両面で運営を後押しする環境が整っていることが、連携型拠点が持つ強みだ。

 

事例紹介

ここからは、2つの事例を参考に、現在運営されている地域子育て支援拠点のイメージを見ていこう。

1.地域子育て支援拠点一般型の事例

ジチタイ市で運営されている一般型の地域子育て支援拠点「ソライロ」。市からの委託により、保育園や認定こども園などを経営する社会福祉法人が運営を行う。周辺には児童館や保育園などの児童施設や公園もあり、親子連れが立ち寄りやすい立地だ。使われていない民家をリノベーションし、小さな子どもが自由に使える遊具やミニ図書館、談話ができるフリースペースを備えた屋内施設を開設した。

この地域にある児童館や公園の利用者は、主に4歳以上の幼児を連れた親子が中心だ。0才から3才までの乳幼児を連れて気軽に集まれる場所がなく、雨や猛暑など天候が厳しい日は、特に閉じこもりがちになる親子もいる。子育てを始めたばかりの保護者や、園児以外の子どもがいつでも立ち寄れる場所のニーズがあった。

「ソライロ」の開設日は月曜から土曜の週6日、朝9時から午後3時まで。事前の申し込みや登録などは不要で、時間内であれば誰でも自由に利用することができる。主な利用者は子育てを始めたばかりの保護者と、3歳未満の子どもたちが中心だ。拠点にいる2名の職員が見守りながら、親同士で談笑する姿も見られる。子育て中の悩みや、初めての育児に関する戸惑いなどが話題の中心だというが、保育園に子どもを預けていない保護者も気軽に悩みを共有できる、良い息抜きになる、と笑顔で帰っていく人も多い。

施設に常駐するスタッフは2名で、曜日によるシフト制で運営している。気になる親子がいるときは、拠点を運営する社会福祉法人のスタッフ間でケースを検討する。必要があれば、地域の保健所や児童相談所とも連携ができる体制だ。家庭保育で自治体や児童施設などのフォローがまだ届いていない親子にも、支援の手を差し伸べることができる。

施設内のフリースペースでは、親子で参加できるイベントも開催される。講師を招いたハンドメイドのワークショップのほか、男性向けの「新米パパ応援講座」も開始した。地域行事の場としても活用され、地元の町内会と協力して行う年1回の「ソライロ祭り」では、くじ引きの出店やキッチンカーも集まり、子どもから大人まで多くの人が訪れる。
 

2.地域子育て支援拠点連携型の事例

ワークス区の児童館の2階フロアで運営される、連携型の地域子育て支援拠点「ヒヨコひろば」。子育て支援の充実のため、区が中心になって運営されてきた。児童館を訪れる利用者は0才から小学生までの親子連れと年齢層は様々だが、きょうだいを連れて利用する人も多い。この拠点は「児童館型」から、新制度で連携型へと移行したケースだ。

「ヒヨコひろば」の開設時間は児童館と同じ午前9時から午後17時まで。児童館の職員が常駐し、フロアごとに担当者を決めて運営する。児童館と同じく、区民であれば事前申し込みなしで親子が利用することができ、3歳未満の子どもが対象のフロアは、積み木などのおもちゃでゆっくり遊べるコーナーだ。

児童館の中には情報提供コーナー、事務室、養護室、会議室などの設備もあり、保育士や社会福祉士など専門資格を持った職員が常勤している。職員同士の連携がその場で無理なくできる環境を活かし、育児相談の利用から的確な子育て支援サービスの利用へと、ワンストップでつなげられる組織体制だ。毎週月曜日と年末年始以外の日はいつでも開館している。

館内の会議室では連日イベントが開催されており、親子で参加できる料理教室や工作など体験型の催しも長年人気の取り組みだ。近年は男性の育児参加を行政サービスでも後押ししようと、パパ向けの育児教室やエクササイズのプログラムも開始した。

地域子育て支援拠点は親子がいつでも、気軽に立ち寄れる交流の場

親子が気軽に立ち寄れて、子育てのための情報交換ができる地域子育て支援拠点。孤立しがちな子育て家庭を、地域全体で支えていける社会へ変わる令和の時代において、社会的意義のある取り組みだ。地域子育て支援拠点への理解を深め、地域のニーズに合った運用を目指したい。
 

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