景観や衛生、防災面で、地域に深刻な影響を及ぼす空き家。しかし、熱海市での対策は、通知文書で所有者に管理を促すにとどまっていた。そこで「東電用地」に所有者への訪問面談を委託。空き家解消の新たな一歩を踏み出したという。
※下記はジチタイワークスVol.26(2023年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]東電用地株式会社
管理促進通知文書の送付だけでは空き家対策に限界が見えていた。
“管理不全空き家”の増加に頭を悩ませる自治体も多いのではないだろうか。平成27年に「空家等対策特別措置法」が施行されて以来、空き家対策に取り組む自治体は少なくない。しかし、「自治体だけで対処するには限界があります」と話すのは、同市の山村さんだ。“家が壊れそうで心配” “木の枝が塀を越えてきた”など、市には空き家に関する様々な苦情が寄せられているという。さらに、別荘地として人気が高い同市には、あまり使われていない別荘と空き家の区別が難しいという問題もある。
「市民からの情報提供をもとに、市が独自で調査を行っています。空き家と判断した家の所有者には“管理促進通知文書”を送っていますが、所有者から返答がない場合はそこで終わっているのが実情です。その上、別荘の所有者は県外に住んでいることが多いため、職員が出向くのは難しいのです。そこで、所有者への訪問面談を民間事業者に委託することにしました」。委託にあたって同市は、空き家対策業務の受注実績があること、対人折衝業務の経験が5年以上あることなどを条件として提示。
入札を経て委託を決めたが、関東圏に支社があること、相続関連の専門知識があることなども業務を進める上では有益だったという。
所有者に会って悩みを聞き出しアドバイスができるように。
同市では、平成27年から令和4年までに約200件の管理促進通知文書を送付。そのうち返答のない60件について、訪問面談を行い、所有者の意向を確認するよう依頼した。「これまで一度も返答がない上に、所有者が県外在住の案件を選びました」。同社が現地調査を行ったところ、すでに所有者が変更されていた物件などもあったが、最終的にはそれらを除く52件の訪問面談を実現したという。
「今回の委託で、顔を合わせることの大切さを実感しました。同社のスタッフが、当市の考えや訪問面談の趣旨を丁寧に説明してくれたおかげで、所有者も理解してくれたのでしょう。“相続したが、どうしたらいいのか分からない”“解体費用を負担できない”など、様々な悩みを打ち明けてくれたようです」。連絡や相談さえあれば、空き家解体の補助金制度を紹介したり、市が提携している空き家問題解決のための総合サービス事業者を紹介したりすることができる。これまで明かされなかった所有者の意向を聞くことで、対策を検討する手がかりができたそうだ。
また、所有者の多くが関東圏に居住していたため、訪問面談にはいくつもの支社が連携して対応してくれたという。「所有者が住んでいる近隣の支社から出向くので、機動力が高いと感じました。各支社が動いてくれましたが、報告などの窓口は沼津支社に一本化されるなど、業務の遂行はスムーズでした」。
管理を助言・指導するより所有者と一緒に考えることが大切。
「家屋や相続に関する相談窓口がなく、専門知識をもつ人材も庁内にいなかったため、空き家所有者に対する適切なアドバイスが難しかった」と山村さん。それらに精通した同社スタッフが訪問したことで、所有者の相談に乗りながら、しっかりと悩みを聞くことができたと考えている。
「管理促進通知文書を送付するという従来の空き家対策は、適正な管理を助言・指導するものでした。しかし、今回の取り組みでは所有者の困り事を聞いて、何が求められているか考える材料を得ることができました。これまでと違い“前向き”な空き家対策ができたと思います」。所有者の意向だけでなく事情までを確認できたことで、今後はそれぞれに応じた実効性のある対策を検討していきたいと話してくれた。
少子高齢化が進む中、今は住人がいる家でも、何らかの事情で空き家になる可能性は否定できない。同市は今後、空き家予防の観点からも取り組みを継続させたい考えだ。
熱海市
まちづくり課 住宅室
山村 僚(やまむらりょう)さん
担当者の声
空き家の所有者を訪問して、意向だけでなく事情までを確認してもらいました。おかげで空き家対策の糸口をつかむことができました。
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委託の成果
従来は管理促進通知文書で所有者に適切な管理を促していたが、“指摘事項”が掲載された通知文書は注意・指導という側面が強かった。しかし、訪問面談では所有者の実際の声を聞くことができる。悩みや事情を知ることで、解決に向けた提案を行えるようになった。
自治体の空き家対策支援で東電用地ができること
これまでの対人折衝経験により、豊富なノウハウをもつ同社。デリケートな空き家問題にも、細やかに配慮しながら対応する。
1.通報対応
自治体には、空き家に関する苦情などがたくさん寄せられる。それらの通報を受けて、同社が実態調査に出向くことも。住民からの情報を活かすとともに、職員はコア業務に専念できる。
2.不明所有者調査
公用請求による不明所有者の調査・特定からサポートする。それでも特定できない場合、同社なら周辺住民などに聞き込みを行うことも。独自調査ができるという強みがある。
3.訪問面談・報告
空き家の所有者を訪問し、それぞれが抱える悩みや事情を聞き出す。それらを自治体に詳しく報告することで、職員は補助金の活用を提案するなど、所有者に応じたアドバイスができるようになる。
4.空き家バンク登録支援
電力事業で培ったノウハウにより、所有者に空き家バンク登録のメリットをしっかり説明できる。登録を促すことで空き家の有効活用に貢献。地域の活性化や移住・定住化につながる支援を行う。
デリケートな問題のため細かな部分にまで配慮
所有権や相続、金銭問題に絡むため、空き家対策には細かな配慮が求められる。同社は“空き家”“管理不全”といったマイナスのイメージをもつ言葉を使わず、所有者の気持ちに寄り添って対応する。
詳細はこちら
地権者探索や対人折衝の経験が豊富な同社のサイトはこちらから。
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