各地の自治体が、業務DXに向けて何らかの取り組みを進めている。ただ、ITスキルをもつ職員が不足していることなどから、国が掲げる“デジタル社会の実現に向けた改革”が実施できている自治体は、少数なのが実情のようだ。そうした状況を受けて「チェンジ」は、業務DXを検討中の自治体に特化した、人材教育サービスの提供を本格開始。サービスの概要や期待できる効果などについて、同社の小湊さんに聞いた。
[提供]株式会社チェンジ
Interview
小湊 舞子(こみなと まいこ)さん
株式会社チェンジ
Next Learning Experience
自治体向け教育サービスグループ
人材を“人財”に変えるためのDX教育プログラム。
令和2年12月、「デジタル・ガバメント実行計画」が閣議決定され、「自治体DX推進計画」が策定・通達されたことで、全国の自治体にとって業務DXの推進は、努力目標から“ノルマ”へと変化した。ただ、総務省による「DX推進に係る課題」のアンケートに対し、1,400を越す市区町村が「デジタル人材を見つけられない」と回答。「デジタル人材採用にあたり、庁内の合意形成が取れない」とする回答も400件(重複回答あり)を越えていた。
DXを推進すべき背景があり、業務DXにつながる各種システムも豊富にラインナップされているが、それを使いこなし、住民向けサービスの向上や庁内業務の効率化につなげられるスキルをもつ人材が圧倒的に不足しているのが、多くの自治体の現状のようだ。
さらに、「庁内の合意形成が取れない」という400件超の回答が物語っているように、仕事のやり方を変えることに強い抵抗を感じる職員が少なくないことも、DX推進を阻んでいる。結局、自治体DXが進むかどうかは、“人”次第ということだろう。
そうした中で同社は、DX人財を育成することに焦点を絞った教育プログラム「自治体職員向けDX推進人財教育スターターパッケージ」を開発。令和4年7月から、全国の自治体に向けて提供を始めた。
「これは、eラーニングと選択式のワークショップを柱に、自治体DXを推進する上で必要な知識とスキル・マインドなどを習得してもらう教育プログラムです。ICTシステムを運用する担当者だけではなく、その周囲の職員や、システム導入によって仕事の仕組みが変わる部署などの協力も得られるよう、“どういう手順で何をやるべきか”を明確にする点が大きな特徴といえます」と、小湊さん。
「単に教育プログラムを提供するだけではなく、受講した職員が“自走”できるところまで支援する教育内容である点、常に鮮度の高い情報を提供できるように、プログラムには随時アップデートをかけていく点も、当社サービスの優位性だと考えています」。
学ぶだけではなく“経験する”ことで現実味が湧いてくる。
同社は、主に民間向けの人材育成事業やDX推進のためのコンサルティング事業などを手がけてきた企業。人材育成プログラムの提供実績は、「NTTデータ」や「KDDI」「野村総合研究所」などの大手企業を中心に約150社、受講者数は年間約2万人にのぼるという。
グループ会社に、国内最大級のふるさと納税総合サイトを運営する「トラストバンク」、地方自治体のBPRによるDX支援を行う「ガバメイツ」など複数社を擁するため、多くの自治体とも太いつながりをもっていた。数年前より、グループ会社や接点のある自治体などからDX推進のための人材教育をリクエストされる機会が増えてきたことで、本サービスの開発と自治体向けの提供に踏み切ったものだ。
「これまでは、リクエストのあった自治体ごとに個別の教育プログラムを組んで提供していたのですが、いずれの自治体も、悩みの“種”は似通っています。そこで、似通っているエッセンスを抽出した上で、実際に受講した職員から人気があったコンテンツをメニューとしてそろえました。実際に、自治体のDX支援を行っている社内メンバーや、グループ会社から上がってきた、“あれができない、これが足りない、ここでつまずいた”という報告を当社で分析し、“では、どうするべきか”という内容をコンテンツ化しています」。
プログラムは、全受講者対象の「eラーニングパッケージ」と「選択式ワークショップ」とで構成され、eラーニングでは3つのテーマを用意。業務改革に向けた意識づくりとDXに関する基礎学習、業務改革の計画や将来像を策定するための現状整理および分析など、DXを進めるための手順や行動すべき事柄について学び、アニメーションやスライドなども用いた“飽きさせない”内容になっている。
一方、選択式ワークショップは、BPR基礎研修やBPRワークショップ、業務フローの書き方、デザインシンキングなど、受講者の立場や職場の現状などに合わせて5テーマの中から内容を選べる構成だ。「主食があって、お好みに合わせてサラダやデザートといった副菜がつけられる、カフェのランチメニューをイメージしてもらうと、導入の際に検討しやすいのではないでしょうか」。
選択式ワークショップの中で、例えば「DX推進担当者向けの企画立案ワークショップ」の場合、2日間のコース以外に、発表会と各チーム1時間程度のオンライン相談を付加した3日間のコースも用意。また、BPRワークショップでも、SaaSツールの操作を体験しながら自身の業務でどのように活用できるか、その結果、業務がどう変わるかを想起・共有する時間を設けている。このように、学ぶと同時に“経験する・やってみる”ことにも重点を置いている点が、一般的な教育プログラムとの大きな違いといえそうだ。
システム導入前の“考え方”から教育をスタートする。
「DX推進研修」の多くは、業務に合わせたICTシステムの選定やシステム活用のためのノウハウなど、システム周りの内容が中心になりがちだ。一方、同社が提供する本サービスは、システム導入の“一歩前”からカリキュラムが組まれている。
「システム導入予算の承認を上司に得る際も、今の仕事のやり方を変えたくないという職員を説得する際も、DX推進という前提にもとづくプレゼンテーションのスキルやコミュニケーションスキルが必要です。この段階でつまずくケースが非常に多いので、“なぜ今のままではダメなのか”という正しい疑問をもち、“DXによって何がどう変わるのか”を、上司や周囲の職員に理解させられるようにカリキュラムを構築しています」。そうした意識づくりから始める構成だからこそ、受講者も組織や自身の業務の将来像を描きやすくなり、業務改革に向けた施策を立案・実行しやすくなるといえそうだ。
何らかの研修を導入・実施する際、内容についていけない職員が出ることを懸念する自治体も多いようだが、その点にも配慮しているという。「これも、他社の教育プログラムとの大きな違いなのですが、当サービスはとにかく演習が多いのです。6時間の研修中、5時間くらいは手を動かしてもらうイメージでカリキュラムを組んでいます」と小湊さん。eラーニングも見るだけではなく、各講座に演習をつけていて、希望に応じて演習内容の添削も行う。そのため、どの受講者がどの段階でつまずいているかが分析しやすく、つまずきが生じた段階で、講師が助言するよう徹底しているのだという。本庁舎外の支所等に勤務する職員にも受講させたい場合、オフライン+オンライン形式でのサービス提供も可能なので、関連する部局で一括して“人財”を育成することもできそうだ。
現在、6コースのeラーニングが無償で受けられる導入前トライアルを実施中で、すでにトライアル中の自治体が複数あるという。「自治体DXは、やはり職員自身が成し遂げないと良い結果は出ません。当社は、そのためのお手伝いを通じて、自治体の業務改革と住民向けサービス向上に寄与したいと考えています」。
なお、本サービスはDXに限定したカリキュラム構成だが、同社は今後、各自治体が抱える様々な課題を解決するためのeラーニングや研修、複数自治体が垣根を越えて利用できるようなグループワークの構築にも取り組む構えだという。
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