ほとんどの自治体では、住民から寄せられることの多い問い合わせの回答を、ホームページ上に取りまとめて掲載しています。ところが、サイト上に掲載しているにも関わらず、同一内容の問い合わせが電話などで寄せられ、業務能率低下の一因となっているケースも少なくはないようです。これを防ぐためには、単に情報を掲載するだけではなく、「住民が欲しい情報に簡単にたどり着けるサイト」を作成する工夫が重要なようです。
そこで今回は、FAQやQ&Aを効果的に活用して住民の利便性を向上した事例を紹介しながら、有効な情報発信のあり方について解説します。
概要
■タイトル:事例と共に解説!住民からの問い合わせを減らすFAQの効果的活用方法とは
■実施日:2023年3月10日(金)
■参加対象:自治体職員
■申込者数:127人
■プログラム
Program1
自治体様のウェブサイトを使ってご紹介~よくある質問を減らすには?
Program2
特徴?仮徴収?伝わる広報とQ&A・電話窓口対応で苦情を回避
自治体様のウェブサイトを使ってご紹介~よくある質問を減らすには?
<講師>
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
ビジネスエンジニアリング事業部 サービス開発部
赤石 輝生 氏
プロフィール
法人営業歴13年。ネット広告やSaaSなどの無形商材の提案営業を行う。
SaaSやネット広告提案の営業実績が評価され、前職ではSaaS総合代理店の取締役を務めた経験もある。
住民への対応業務や庁舎内における情報やナレッジの共有について、課題を感じている自治体は少なくない。そこでパーソルプロセス&テクノロジーの赤石氏が、同社の疑問解決エンジン「Helpfeel」を活用して職員の人的リソースを有効活用できる仕組みづくりについて、小平市での導入事例をもとに解説する。
「Helpfeel」の役割と有用性について
なぜユーザーは、FAQやホームページを見るのでしょうか。それは、ユーザーが良質な情報を「なるべく迷わずに簡単」に、そして「ストレスを感じず」に閲覧したいからです。以下の図の通り、7割近いユーザーは、コールセンターに電話をする前にホームページを見ていると回答しています。
それでも解決できなかった場合に電話をするのですが、そのユーザーが、再度ホームページに訪れる確率は10%以下と言われています。したがって、「ユーザー導線」が非常に大事なのです。
一方で、電話オペレーターの採用・育成コストは年々高まっており、コールセンターに勤務する新人オペレーターの離職率も高いのが実情です。同じ問い合わせを何度も受けることで、非常に大きなストレスを抱えているからです。その二重苦を解決するために開発したのが、弊社の「Helpfeel」であり、「ヘルプページは役に立たない」という常識を変えるサービスと言えるでしょう。
AIチャットボットなどを利用している自治体も多いと思います。当社は FAQに関しては、ウェブディレクター、テクニカルライター、カスタマーサクセスという3人の担当者がいます。チャットボットを入れている自治体の場合、シナリオ作成は職員が担当するケースが多いと思います。Helpfeelにはその作業が一切無く、全て当社側で作成します。
これが1番のポイントです。契約期間中は、先述した3人の担当者が毎回バックアップを行います。
カスタマーサクセス領域(CS領域)については、調査、戦略、設計、構築、運用・効果測定の各フェーズをしっかり行い、カスタマージャーニーマップの作成、ユーザーとのタッチポイントの把握、興味付けさせる動線設計などもサポートしています。
全体像としては、
<STEP1> 導入目的の明確化
<STEP2> 利用ユーザー導線把握
<STEP3> FAQ作成
<STEP4> シナリオ作成(チャットボットのみ)
<STEP5> リリース
の5ステップで構成され、“作って終わり”ではなくPDCAをしっかり回せるチーム体制を作って、効果検証を向上させています。
類似製品との違いと「Helpfeel」が選ばれる理由
類似の製品を他社も提供していますが、それらとの違いを下記図にまとめました。特に違う部分は、FAQの構成、チューニング、KPI改善施策の提案、FAQ改善など。これらを全て当社がサポートするので、安心して導入いただける点が、選ばれる理由だと考えています。
その他、Helpfeelが選ばれる理由は、以下の通りです。
●導入後も月1度の打ち合わせがあるので契約後も安心
●直観的で、回答に瞬時にたどり着けるので、ユーザーが使いやすい
●従来の検索HIT率向上サービスとは異なり、確実に問い合わせ削減ができる
●Webディレクション、 FAQ作成も専門部隊が行うため、お客さまやPJTの負担ゼロ
●Web改修の必要がなく、簡単に導入できる
成果事例と導入までの流れ
Helpfeelの成果事例について、前述した5ステップの流れでご紹介します。以下のような事例がたくさんありますので、興味がありましたらぜひ、当社にお声がけください。
<使用ユーザーの認知強化/小平市の場合>
小平市は、コロナワクチン接種に伴う導入で市民への認知度強化につながり、Helpfeelのアクセス数が約3倍に増加しました。
<利用ユーザー導線把握/A市の場合>
A市では、以前導入していたチャットボットと比較して、Helpfeelへのセッション数が約75%増加しました。名古屋市では、電話による問い合わせを約20%削減することができました。
<検索性の強化/B市の場合>
B市では、記事の追加や検索結果の表示を改善。利用数はリリース時に比べ、2.3倍を実現しました。コロナワクチン接種に関する疑問について、2回目接種までのナレッジを活かし、3回目接種時期の回答ページへの到達率が約20%向上しました。
<アンサーページへの強化/C市の場合>
C市では、FAQページを見て解決可能な項目が増えたことにより、電話による問い合わせ割合が約15%減少しました。
<オペレーター・FAQ管理者育成/D市、E市の場合>
D市では、Helpfeelが育成ツールとしても効果を発揮し、新規着任者の離職率を90%削減できました。また、E市ではFAQ分析から更新までの管理体制を、5名から2名に削減することができました。
最後に、Helpfeel導入までの流れを紹介します。FAQ件数で料金が変わるのですが、って最短1カ月で導入可能です。以下の図をご覧ください。
お客さまに用意いただくものは、既存のFAQコンテンツの提出だけです。これを基に、当社が作成したFAQの解答の確認を行っていただきますが、基本的にこの2点以外には、やることはありません。契約後の運用も、安心して当社に任せていただけるので、皆さまのFAQ、AI、UI、UXの観点のお役に立てればと思っております。
特徴?仮徴収?伝わる広報とQ&A・電話窓口対応で苦情を回避
<講師>
元埼玉県三芳町職員
PRDESIGN JAPAN株式会社代表取締役
佐久間 智之 氏
プロフィール
埼玉県三芳町で税務、介護保険担当を経て2011年に広報担当となり、広報コンクールで内閣総理大臣賞を受賞。2020年に退職し、独立。総務省の地域力創造アドバイザーやPR TIMESエバンジェリスト、自治体広報アドバイザーなどとして活動しながら、年間約200件の公務員向け研修講師を務める。
佐久間氏が三芳町の介護保険担当だった頃、特別徴収の仮徴収と本徴収、平準化などによって所得段階が下がり、保険料が前年より下がったにも関わらず、徴収方法によって上がったかのような誤解を招く事例を経験したという。その事態を、Q&Aと広報力、デザイン力とで改善した事例や、窓口や電話によるクレーム対応時の、効果的な回避方法などを解説する。
窓口・電話応対のテクニック
市民からの連絡に対しては、まず聞き手に徹することが大事です。ちょっと落ち着いたところで、こちらの意見を言う感じです。ただ、相づちだけは打っておかないと、「聞いているのか!」という流れになってしまいます。「しかし」、「でも」という言葉を使うのもNGです。クレームや意見は、むしろ知識の1つとしてストックできます。チャットボットやQ&Aに流用するための “貯金”になります。そして、そのクレームがどうやったら来なくなるか、課内全員で原因を究明しましょう。
「相手の立場で考える」「先を想定して話す」ということも重要です。例えば、「住民票が欲しい」という問い合わせの場合、相手が知りたいのは、いくらなのか、申請はどうやれば良いのか、何を持参すれば良いか、受付は何時までなのか…といった事柄ですから、尋ねられるまで待つのではなく、先に回答を出すということです。
「伝わる」メールと文書のポイント
メールの書き方で誤解を招きやすいのが、「件名」です。「お疲れ様です」「至急お願いします」などの件名だと怪しいメールと勘違いされやすいので、「【○○様】△△町へのご意見メールの回答」など、自分と相手にしか分からないような情報を入れるべきです。外部向けメールで大事なことは、自己紹介の後に「ありがとうございました」という言葉を入れる習慣をつけた方が良いです。以下の一覧をご覧ください。
また、「かもしれない文章」の習慣をつけることも大切です。「事前に連絡しているから分かっているはず」ではなく、リマインドでもう1回連絡すればターンが無くなります。これについては以下の例をご覧ください。
「伝わらない文章」は苦情の原因になるので、自分目線ではなく相手目線で考える、読み手になって文章を考えることが大事です。また、誤解を招かないように、「お役所言葉」や一般の人が使わない言葉は使わないようにしてください。つまり、中学生でも分かるような言葉・表現を心がけてください。
苦情を防ぐ3つのデザイン術
苦情を防ぐためのデザインのポイントは、きちんと相手に情報が伝わるかどうかを考えるということです。
以下の図の、左側の文章は、私の前任者が介護保険担当だった頃の通知文章です。介護保険料は、所得が決まらないと年額が決まらない。しかし、介護保険は年6回年金天引きされるので、仮徴収しておいて年額が確定したら本徴収分で調整する仕組みです。それを市民に通知する文章ですが、一般の方が見て分かるでしょうか?
その内容を伝わる文章にすると、右図のような形になります。左側文章の頃は、1日平均100件くらいの問い合わせが来ていましたが、右に変えてから、問い合わせがほぼ無くなりました。制作に1時間かかったとしても、問い合わせが100時間無くなる工夫をした方が良いですよね。
デザインのポイントの一つ目は、質問形式です。よくある質問や苦情はQ&Aにする。例えば、下記図は家屋調査に関する内容ですが、文章だけでは見ても分からないです。Q&AのQを見出し化し、オビなどで強調するわけです。
家屋調査では、「どのくらい時間がかかるのか」という質問が多かったので、それを見出し化して、回答には「おおむね1時間程度です。」と結論を書きます。
2つ目のポイントは、「フローチャート」です。以下の図は、メタボ予防の特定健診の申請を促すデザインです。75歳以上の人に「あなたは社保なのか国保なのか」と、文章で書いても分からない方が多いので、イエスかノーかに絞っています。
年齢が75歳以上かどうか、40~74歳で国保を利用しているかどうかを、イエスかノーかで判断するわけです。特に高齢者は、必要最小限の情報にしないと分からないので、チャットボットを使うとかのレベルではありません。
3つ目のポイントは、「図解にする」ことです。保険料や所得段階などは、一般の方には分かりにくいので、図にして可視化する、読ませるのではなく見せるというイメージを強くするということです。
「伝える」と「伝わる」の違いを知っていただきたいと思います。行政が、「こんなことをやっています」と伝えているのに、住民がそれを見ないのは、自分が対象かどうか、よく分からないからです。「自治体が伝えたい」ことではなく、「相手が知りたい」ことを、分かりやすく要点をまとめて届けるようにすることで、「伝わる広報」が実現します。その意識を持って、皆さんもぜひ業務に励んでいただきたいと思います。
[参加者とのQ&A] ※一部抜粋
Q:広報誌に、できるだけ短く分かりやすい内容の記事を載せたいと思いますが、担当部署から「問い合わせを減らすために細かい内容を掲載したい」と希望され、長文になります。短い文章で、問い合わせの少ない表現にするコツを教えてください。
A:先ほど、「中学生でも分かるやさしい言葉にする」という説明をしましたが、そのための全庁的なガイドラインやルールができてないと思います。広報課が文字を削ったことに対し、なぜ文字を削るんだ…という文句が出るのは、ルールが決まっていないからです。
表現のコツを覚えるより、ルールを決めて全員が理解できるようマスタープラン(基本計画)にすることが重要だと思います。
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