政府は地球温暖化対策として、2030年には家庭やオフィスなど全ての照明をSSL※1化するという方針を掲げている。従来の照明器具は生産が終了するなど、各施設での交換は急務だろう。多くの施設を抱える自治体が、効率良くSSL化を進める方法とは。
※1 SSL=Solid State Lighting(LEDなどの半導体照明)
※下記はジチタイワークスVol.25(2023年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社
従来照明の生産終了が迫りLED化は喫緊の課題に。
国内の照明関連事業者でつくる日本照明工業会は、2030年までに市場の照明を100%SSL化することを目標にしている。そのため、今後は従来の照明器具の入手が難しくなる可能性が高いという。「令和3年の水銀灯の製造や輸出入の禁止に続いて、大きな波となっています」と話すのは、同工業会に所属する「パナソニック エレクトリックワークス社」の小西さん。
従来の照明には蛍光灯やHID※2が挙げられる。HIDにはメタルハライドランプや高圧ナトリウムランプなどがあり、蛍光灯では照度が足りない広い場所で使われることが多い。道路や公園、スポーツ競技場や倉庫の照明設備など、自治体は相当数を保有しているため、LED化には早期の対策が必要だろう。特に連日のように使用される学校施設などは、作業にあたり、改修工事の日程調整も課題だ。
どんな施設も工事費用の削減はもちろんのこと、短期間で終わらせる工程管理も重要になる。「当社ではHID製品の生産を今年9月末で受注終了、来年3月末で生産終了予定です。交換品が調達できない場合は、迅速な修理や設備の更新が困難になるでしょう」。
そんな中、同社がリニューアルとして開発したのは、施工性の向上を図ったグラウンド用の投光器「グラウンドビームER」と、体育館用の高天井照明器具「DNシリーズ」。今年の5月以降から導入が可能だ。
※2 HID=High Intensity Discharge(高輝度放電ランプ)
リニューアル促進のため施工しやすさを追求した。
スポーツ照明事業に参入し、競技に適した照明や、周辺への光害に配慮した設計を手がける同社。新商品では“施工のしやすさ”にこだわり、中でもグラウンドビームERは軽さがポイントだという。HID照明とほぼ同じ重量に設計したことに加え、灯具と電源の間の配線を既設から流用できるようにしたことで、交換作業の負担軽減をねらっている。
また、レンズの配光設計を追求して照明率を向上させ、同じ明るさでも約13~25%の台数削減が可能に。導入の費用を抑え、消費電力の軽減にもつながる。
DNシリーズでは、先にアームを天井に取り付けられるように、本体とアームを分離した。アームのみなら軽量で、電動工具も使える。最後に本体をはめ込むため、少ない負担で安全に施工できるという。また、形状を正方形にしたことで、方向や場所に制限されずに施工できるようになっている。これらの利点は台数が多くなるほど活かされ、作業効率の向上につながるという。
「LED照明で省エネができるのは周知のことですが、従来のHID照明と比較してもグラウンド用投光器で最大約75%、高天井照明で約73%節電できます。点灯と消灯の切り替えが瞬時にでき、こまめな調整で省エネへの期待も。長寿命なので、メンテナンスの手間や経費も少なくなり、管理担当者の業務負担の軽減が期待できるでしょう」。
大規模になればなるほど迅速な交換がメリット。
LED化は“電球だけを交換すればいいのでは”と言われることもあるそうだが、同社は照明器具ごとの交換を推奨している。適正寿命は約10年で、寿命を過ぎたものは外観だけでは判断できない劣化が進むという。器具内の安定器が絶縁劣化によって発煙する事故や、コイルの異常発熱による断線など、様々な不具合が発生するリスクを抱えているそうだ。
「交換規模が大きくなればなるほど、早めの交換がLED化のコストメリットをもたらします。施工のしやすさに着目すると、学校体育館のような稼働率の高い施設も短期間で工事が見込めて、工数が削減できると費用削減にもつながります。短期的にも長期的にも、まちの財源確保に貢献できればと思います」。
スポーツ施設や街路灯など幅広い施設・設備をLED化するノウハウを蓄積している同社。照明のリニューアルにとどまらず周辺地域へのより良い提案など、まちづくりを総合的に提案するパートナーとして、自治体を支えてくれるだろう。
パナソニック エレクトリックワークス社
小西 俊樹(こにし としき)さん
施工現場の声を反映した設計で大規模交換でも工期を短縮。
「グラウンドビームER」の強み
1.HID投光器と同等の重量で施工性向上
HIDと同等にまで軽量化し、既設架台への負担を軽減。電源ユニットと灯具の間の配線を3心にすることで、既設の配線を流用できる。
2.配光性能が向上し、器具台数の削減が可能
レンズの設計時に角度を調整し、少ない台数でも同等の明るさを担保する。器具の台数を従来品の約13%~25%削減できるようになった。
高天井用「DNシリーズ」の強み
1.アームと本体の分離構造で、施工がラクに
先に軽量のアームだけを取り付けることで、従来はできなかった電動工具での取り付けが可能。最後に本体を引っかけ、工具で締めるとスムーズに完成する。
2.スクエア形状で、方向を問わず付けられる
従来は長方形で、設置場所によっては向きが揃わず、追加で金具が必要になることなどがあった。スクエア形状なら、方向に制限されず、すっきりした見た目に。
ジチタイワークスWEBでは街路灯のLED化についての記事を紹介しています。
事前シミュレーションも可能です
設置に先立ち、VR技術を使った事前シミュレーションや現地調査などを実施し、競技者や周辺環境に配慮した照明設計を行います。気軽にご相談ください。