ジチタイワークス

大阪府四條畷市

各所管の情報を一元管理して、施設再編への活用につなげる。

限られた人員で膨大な数の施設を扱う、公共FMの業務。人口減少が見込まれる今後に向けて、効率良く適切に管理するには、今ある施設の情報整理が必要だ。四條畷市は、DXの発想で施設の情報をクラウドに集め、職員の働き方と住民サービスの改善を図っている。

※下記はジチタイワークスVol.25(2023年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

将来を見据えた施設再編のために情報のクラウド一元管理を開始。

人口減少が進めば市の税収が減り、その結果、公共施設の運営が難しくなる。そうした未来を見据え、施設の再編を進めている同市。維持管理費や老朽化度合いなど、客観的なエビデンスをまとめるため、情報をクラウドで一元管理する「なわてFMシステム」の運用を始めた。「情報を集約すれば、限られた人員でも施設の管理が可能です。公共施設管理をデジタル化するという発想で、将来的には“場所を選ばない行政サービス”をかなえるための再編を目指しています」と話すのは、同システム運用を中心で担う桃井さん。

令和3年8月、桃井さんが担当になった当時は、各施設の情報が、取り扱う部署ごとに管理されていたという。財産としての公共施設情報は施設再編課、町名別地図情報は市民課、固定資産としての情報は会計課が所有。管理方法はExcel、紙、システム、市のホームページで公開するなどバラバラだった。施設再編課の古市さんも「ある公共施設の情報を共有したときに、施設の管理課と当課でもっていたデータの相違が発覚することも。複数の部署にまたがる情報も、三位一体で取り出せることが理想でした」と話す。

全庁で使うシステムを構築するための合意形成には約4カ月かかったそうだが、具体的な業務の事例をイラストや写真で説明しながら、利便性を伝えたという。こうして令和4年度から5カ年計画として同システムの運用が始まった。

将来は庁外にも公開するため様々な機能やシステムと連携。

システムでは、公共施設の財産台帳情報、固定資産情報、ライフサイクルコストなどを集約して管理。各施設の情報はGoogleマップと連携させて、地図上で場所とともに把握できる。全庁の職員にURLを共有し、IDとパスワードがあれば閲覧・編集が可能。クラウドサービスを活用して開発費用を抑え、短期間で実装できたという。インターネット環境で運用しており、将来的には庁外にも公開する予定だ。「調べものをする際に、担当者がいないと分からないということは解消されました。情報が蓄積するにつれて、手間や認識の違いなどはなくなるでしょう」と古市さん。

5カ年計画の2年目にあたる本年度以降は、道路や橋などインフラの情報も含めた一元管理を行う。また、本年度中にスマートロックの機能も導入予定。職員が施設に常駐せずに遠隔での開け閉めができるだけでなく、システムとの連携で、会議室などの稼働状況を集計して効率的な利用を進めるそうだ。「住民サービスの改善とともに、施設の適切な運用の第一歩になりそうです」と桃井さん。

インターネットで運用する上でのセキュリティ対策のため、格納する情報を制限。住民個人を識別できる情報は扱わず、庁外に公開できる範囲の内容だけを集約する。さらに情報漏えいを防ぐため、第三者への編集・閲覧権限の無断付与や、システムデータの複製・転用を禁止。利用規定を整備して本格稼働への基盤を固めている段階だ。

点検や修繕にAIを活用し効率的に管理する未来へ。

5カ年計画でシステムの形が整えば、ほぼリアルタイムの情報更新で、より正確な現状把握ができるようになるという。「稼働が多い施設と少ない施設を定量的に分析し、コストのかかり方を数値化します。例えば1㎡当たりのコスト比較で、“利用が少なく、コストがかかりすぎている”ことが明確に分かれば、集約化などを検討するきっかけになります。このように地域の皆さんに納得してもらい、スムーズに合意が得られることを期待しています」と古市さん。

さらにその先の展望は、蓄積した情報を軸に業務の自動化を進めること。点検や修繕作業にAIを活用するなどの業務改革を構想している。「施設管理業務のDXを起点に、職員の業務効率化と住民の利便性向上の両立につなげることを目指しています」と桃井さん。人口が減少する将来を見据え、持続可能な運用に向けて動き出している同市の取り組みに、今後も注目したい。

四條畷市
左:総務部 施設再編課 課長代理 古市 靖之(ふるいち やすゆき)さん
中央:総務部 兼 財務部 主幹 桃井 誠(ももい まこと)さん
右:総務部 施設再編課 課長 北田 真一(きただ しんいち)さん

課題解決のヒントとアイデア

1.数年後から未来まで段階的に目標設定

まずはどのような自治体運営をしたいかというゴールを設定。目標を逆算し、“直近5年のうちにここまで完成”など、近い将来の計画を立てて具体的な改善を進める。目標や内容が明確なほど全庁を巻き込みやすくなる。

2.円滑な合意形成のために日頃から情報整理

庁内の合意形成で、現場に出ない上長陣を説得するための資料作成を前提に、説明に必要な情報を日頃からまとめておく。身近な業務事例のイラストや写真を使い、課題解決がイメージできれば、スムーズに伝わりやすい。

3.使う人には“システムでできること”を共有

新しいシステムの活用を全庁に促す際は“どのような情報が可視化できるのか・どんな課題が改善できるのか”ということを共有する。共通認識をもてると、“難しい”と敬遠されることなく、活用が進む。

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