自治体が取り組むべき社会課題は山積している。その課題解決に向けては、民間のノウハウやリソースを活用して取り組むことがポイントだ。豊田市は、介護予防分野で、SIBを活用した新たな官民連携事業に挑戦している。
※下記はジチタイワークスVol.22(2022年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]株式会社ドリームインキュベータ
SIBはコロナ禍で停滞した介護予防を再始動させる選択。
社会とのつながりが、健康寿命の延伸に役立つことは広く知られている。しかし、コロナ禍の影響で、高齢者の社会参加の機会が減少しているという。豊田市でも、定期開催していた介護予防教室の中止を余儀なくされた。こうしたことから、国や自治体の介護費用が膨らむ見通しが高まっている。丹羽さんは「保健師や事務職員がコロナ対応に追われ、介護予防にリソースを割けなくなりました。一方、外出自粛などにより要介護リスクは高まっていきました」と話す。
新たな介護予防事業に取り組むにも、職員のみでは十分なリソースを確保できず、斬新なアイデアも生まれにくい。そこで、官民連携による社会課題解決を進めていた「ドリームインキュベータ(以下、DI)」とソーシャル・インパクト・ボンド(以下、SIB)を活用した取り組みに挑戦することになった。SIBとは、民間資金・ノウハウを活用して行う成果連動型事業であり、社会課題の解決と行政コストの低減を両立させる新たな官民連携の仕組み。「当市にとって初の試みでしたが、介護予防は先送りできない問題です。とにかくやってみようということになりました」。
大手企業から市内事業者までが参画して事業がスタート。
令和2年度から企画政策部が中心となって関係部署を巻き込み、実施に向けて動き出した。また、社会参加プログラムを提供する事業者や金融機関などの協力も必要なため、その取りまとめはDIが実施。その後の事業運営はDIが設立した子会社「Next Riseソーシャルインパクト推進機構(以下、NRS)」が進めた(下図参照)。
NRSの声かけにより、全国規模の民間事業者などが続々と参画。しかし、“集客規模は100人以上”という参画条件があり、参加できない事業者もいたという。「市内には有意義な活動を行う事業者が多数存在します。そこで、市内事業者の一部取りまとめ役としてNPO法人に協力を仰ぎ、より多くの事業者が参加できる仕組みを整えました」と小林さん。
また、「事業予算として5億円が必要でしたが、すぐに用意できる額ではありませんでした。そんな中、この取り組みに賛同する企業があらわれ、企業版ふるさと納税という形で、どうにか事業資金を確保することができました」。こうして事業の基盤を整え、令和3年7月に介護予防事業「ずっと元気!プロジェクト」がスタートした。
様々な分野への適用が見込めるSIBが官民連携の切り札に。
同プロジェクトでは、多くの高齢者に興味をもってもらえるよう、ドローン教室や健康ヨガ、ピクニッククラブなど多彩なプログラムを用意。各事業者や同市と連携したNRSのマーケティング活動が功を奏し、参加者数は順調に増加。年間参加者5,000人を目標に、今後も様々な取り組みを加速させていくという。「従来は介護予防教室のみでしたが、今では高齢者に多くの選択肢を提供できるようになり、皆さんとても満足されています」と丹羽さんは目を細める。
また、事業者からの評判も良く、副次的な効果もあらわれているという。「令和4年8月時点で43の事業者が参画していますが、事業者同士で横のつながりや連携が生まれています。また、県外から仕事の依頼が入ったという話もあり、活動がさらに広がっているのを感じます」。
今回の取り組みを振り返って、「DIをはじめ、多くの方の協力があって初めてできた事業だと思います。これからの社会変化に向けて、自治体には“挑戦”が求められており、SIBは必要な選択肢だと感じました。他自治体の皆さんにもぜひチャレンジしてほしいです」。
豊田市 企画政策部 未来都市推進課
左:副主幹 丹羽 広和(にわ ひろかず)さん
右:担当長 小林 秀平(こばやし しゅうへい)さん
幅広い企業参画によるサービス提供で高齢者の社会参加・元気づくりを支援。
ニーズに合わせて選べる多彩なプログラム
プロジェクトには、消費財メーカーや電力会社、薬局など大手企業や、音楽教室、フードデリバリーなど市内の中小企業が多数参画。社会参加の機会を生み出す多種多様なサービスを、介護予防につながるプログラムとして提供している。
参加したNPO法人の声
地域の事業者が活躍できる場を得るために
特定非営利活動法人 働く人の笑顔創り研究所 所長
安本 拡人(やすもと たつひろ)さん
当法人が行ったのは、小規模でも良質なサービスを提供している事業者をまとめ、共同体として参画させることです。集まった18事業者はそれぞれ規模も特性も異なりますが、そうした方々が表に出ることが大切ですし、住民の選択肢も増えます。将来の理想像は、事業者が連携しながら地域に根付いた取り組みとして自律的に続いていく形です。もちろん介護予防が第一ですが、関わる人たち全てに変化をもたらす事業になればうれしいですね。
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