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【セミナーレポート】AI-OCRとRPAを一気に学ぶ!導入・運用をスムーズに進めるための基礎知識から国の支援制度まで。

様々な手法がある自治体DX。そんな中でも比較的着手しやすいと言われるAI-OCRとRPA導入ですが、効果を最大限発揮するには事前の知識が不可欠です。

今回は、総務省の担当者をゲストに招き、さらに自治体の業務効率化を支援している企業からも担当者が登壇。AI・RPAの活用を中心に、情報を共有していただきました。

概要

□タイトル:業務プロセスの可視化がカギを握る! 業務効率化につながった自治体DXの事例解説
□実施日:2022年7月14日(木)
□参加対象:自治体職員
□開催形式:オンライン(Zoom)
□申込者数:185名
□プログラム:
 第1部:業務効率化の第一歩は可視化から!
 第2部:AI-OCRで「紙」申請をデータ化
 第3部:RPA導入までに必要なプロセスとは
 第4部:自治体におけるAI・RPA活用促進


業務効率化の第一歩は可視化から!

業務効率化の取り組みでは、最初の段階における全体把握と問題点の抽出が重要だ。ここで活かせるのが“フローチャート”による可視化。第1部では、SCSKサービスウェア株式会社の岩佐氏が現場での経験をもとに、フローチャート活用のコツを語る。

<講師>

岩佐 真樹氏
SCSKサービスウェア株式会社
デジタルサービス推進部 コンサルティング課 課長

プロフィール

2004年、SCSKサービスウェア株式会社入社。入会申込書の処理業務で現場管理やペーパーレス化推進などを担当。業務プロセスコンサルティングサービス「B-RAP」に企画から携わり、業種・業界を問わず15社以上で実施した経験をもつ。

意外と簡単、そして効果大!フローチャートで実現できること。

まずSCSKサービスウェア株式会社について簡単に紹介します。

当社はコールセンターやバックオフィス業務などをクライアント企業からアウトソーシングで受け持つBPOの事業会社です。業務の現場を知る我々だからこそ、お伝えできること、お役に立てることがあると考えています。ところで、自治体職員の皆さんにも、こういうお悩みがあるのではないでしょうか。

□誰がどんな作業をやっているのか、どのくらい時間をかけているのか把握できない
□業務効率化・DX推進といっても、どこから手を付ければいいのか分からない
□システム導入してみたものの、期待した効果が出ていない

このような場合は、フローチャートによる業務の可視化をおすすめします。ここでいうフローチャートとは、業務の開始から終了までの一連の流れと、関連する人やモノを進行順に図示化したものです。“専用のツールが必要なのではないか”“キレイに作るのは面倒なのでは”と思われる方がいるかもしれませんが、エクセルでも作成できます。手順は下図のようなものです。

このように、フローチャート作成は簡単。ただし、お伝えしたいのはフローチャートの書き方ではなく、業務効率化のためにどう可視化していけばいいのか、という点です。まずはフローチャートの効果を端的にまとめます。

(1)業務内容と手順がわかる
(2)業務で利用するモノがわかる
(3)業務効率化のポイントがわかる

上記は総じていうと、関係者全員が共通で理解・評価できるということです。続いては、業務効率化に向けた可視化のコツ。ポイントは3つです。

(1)「担当者」と「承認者」でスイムレーンを分ける
(2)「紙帳票」と「電子データ」を区別する
(3)利用システムを明記する

(1)のイメージが上図です。ワークフローシステムの導入などを検討されている場合は、承認のタイミング、回数などもフローチャート上で分かるようになります。また(2)によって、どのタイミングで紙帳票がデータに代わるのか、データが印刷されているのかということも分かります。そうすると、この部分がAI-OCRやRPA導入の検討候補となるのでは…という仮説も立てられます。そして(3)の利用システムを明記することでPC内での作業が行われている部分が分かり、RPA導入が検討できる箇所も明確になります。

いいフローチャートはここが違う!業務可視化をするためのツボとは。

次に、失敗しないフローチャート作成のポイントです。3つありますが、総じて伝えたいことはフローチャートをいきなり書き始めるのはNGということです。

(1) フローチャートの作成目的を整理する

目的の他に、利用者が誰で、範囲はどこまでか、どの粒度まで情報を整理するのか、というところを最初に文書化しましょう。下図は具体例です。

(2) 記載要素を事前に洗い出す

業務名に加え、そのフローチャートで登場する人物、所属、役割は何か、また業務の開始条件(インプット)、終了条件(アウトプット)は何か、このあたりを整理しておかないと、複数名でフローチャートを作成した時に重複や書き表せない場所が出てきてしまいます。

(3) 業務一覧とセットで作成する

業務のリストに、定量情報もあわせて可視化しておくと、効率化の優先順位検討の大きな判断材料となります。例えば月間件数、月間工数、担当人数などです。

業務の可視化には、フローチャート以外にも表形式で定量情報とセットにした業務一覧をつくるといった手法もあります。これらを組み合わせることで、より効果的な業務効率化の活動に繋げられるので、ぜひ参考にしていただければと思います。

AI-OCRで「紙」申請をデータ化

自治体DXでも注目度の高いAI-OCR。市場には多くの製品が流通しているが、導入する際はどんなことに注意すればいいのか。数多くのAI-OCRを扱ってきたSCSKサービスウェア株式会社の水野氏が、客観的視点で知見を共有する。

<講師>

水野 達也氏
SCSKサービスウェア株式会社
第三事業本部 第二事業部 業務支援課 課長

プロフィール

1999年、SCSKサービスウェア株式会社入社。コールセンターやヘルプデスク業務を経て、バックオフィスサービスを中心に業務立上、運用管理を経験。現在は、バックオフィスサービスにおいてAI-OCR導入など業務の自動化・効率化に関する取り組みを担当。

様々なAI-OCRを徹底比較してたどり着いた答えとは?

現在は非常に多くのAI-OCR製品が各社から提供されています。当社ではそうした製品の情報収集を行い、機能や特徴を調査してきました。また、実際に操作しての機能検証も行っています。

上図は、取り扱う帳票の種別を非定型と定型に分け、識字率と処理能力を検証したものです。処理能力はオンプレミス版を前提に1カ月でどれくらい処理できるのかという値です。製品によって違いますが、定型帳票を扱う業務には適合性が高いという結果です。

次に、AI-OCRの強みと弱みについて。強みは何と言っても、24時間365日稼動できること。また大量処理が得意で、業務量が多いほどコストメリットが出せるという点です。この場合もオンプレミスが前提で、導入メリットは以下の通りです。

一方、弱みとしては、非定型帳票の識字率がまだ低いという点があります。また、AI-OCRで読み取るには、紙の帳票を電子化することが必要であるため、現状でこのプロセスが無い場合は工程が増えることになります。そのため、これもデメリットの1つといえます。

また、製品によって読み取り項目にイレギュラーな記載があると誤った識字をしてしまう点や、少量ではコストメリットが出しづらい、といった点もあります。取り扱う帳票が少量の場合は、クラウドやLGWAN-ASPサービスを活用することもできると思うので、このあたりは情シス部門と連携し検討することがおすすめです。

人とAI-OCRが補完しあうハイブリッド作業で業務効率化!

では、AI-OCRを導入していく上で、何を課題として対策を行っていくのかということについてお伝えします。

1つめの課題は、品質の担保です。AI-OCRは従来のOCRに比べれば飛躍的に精度は上がっていますが、それでも人が入力する品質を超えるのは難しい状況です。そこで当社が考えているのは、AI-OCRと人とのハイブリッド作業です。詳細は後に紹介します。

2つめの課題は、帳票の混在です。実務では、入力対象外の書類が入っていたり、種類や並びがバラバラになっていたりすることがあるため、正しく読み取れるよう仕分けする作業が必要になります。製品の中には帳票の仕分け機能を持つものもありますが、実際にはうまくいかないこともあるので、別製品のAI画像識別機能を使うなどして機械的に仕分けるという対策も必要です。

3つめの課題は、AI-OCRを運用していく場合には業務プロセスやデータフローなどが複雑になりがちだという点。こうした課題を解決するためには、管理システムが必要になります。

それでは実際に、どのようにAI-OCRを導入して運用しているのか、業務フローで説明します。これは現在当社で運用している業務の一例です。

図の上段は、AI-OCRを使わない運用フローです。まず帳票を預かり、仕分けして入力作業へ移ります。1つの帳票に対し2人の作業者がそれぞれ入力を行い、その2つの入力結果を突合し、修正して納品です。

下段は、自治体向けに提供した事例です。帳票を受領した後にスキャニング作業を行います。書類の仕分けは自動です。データ入力は1つの帳票に対し1人の作業者が実施。この結果とAI-OCRが読み取った結果を突合し、修正して納品するというプロセスになっています。運用効果は、上段の場合と比較して作業工数が39%の削減、コストは8%削減となっています。

また、納品データの品質も100%に近いかたちで実現できています。

業務の自動化・効率化は当社にとっても重要なテーマですが、品質面も十分確保して取り組む必要があると捉えています。この自動化・効率化・品質維持の3つのテーマで今後もサービスを提供し、社会貢献できればと考えています。

RPA導入までに必要なプロセスとは

RPAは自治体のマンパワー不足を補う手法として定着しつつあるが、“万能ツール”ではない。有効に活用するにはその特性を把握することが大切だ。第3部では、SCSKの三好氏が、RPAの基礎知識と理想的な導入フローについて語ってくれた。

<講師>

三好 敦史氏
SCSKサービスウェア株式会社
第二事業本部 第一事業部 第三課 課長

プロフィール

2003年SCSKサービスウェア株式会社入社。約15年に渡り、BPO業務でオペレータからマネージャーまで経験。2018年よりRPA教育サービス事業を立ち上げ。サービス企画やコースリリースなどを行い、受講企業数175社、受講者数3,800名超の教育実績を作る。

RPAのポテンシャルを引き出すにはその得意分野を知ることから。

ここからはRPAの概要です。RPAには何ができるのか、どういった効果があるのかといった概論から説明します。まず、RPAが注目されている理由です。

□労働力の確保
□人件費コストの抑制
□働き方改革の実現

3つとも全て社会的な背景に基づいています。こうした様々な課題をRPAに置き換えることができるのです。このRPAの特徴としては、以下4点が挙げられます。

続いて、RPAに適した業務の特徴について。こちらは5つ挙げられます。

(1)ボリュームがある業務:毎月の業務量が多ければ多いほど、それをRPAに適用することで生産性の向上が見込めます。

(2)単純かつ繰り返しが多い業務:例えばエクセルに記載されている情報をシステムに登録していくといった業務も非常に単純で繰り返しが多いので、RPAを導入することで大きな効果が出せると考えています。

(3)ルール化されている業務:業務に対してマニュアル化されている、あるいはルール化されているかということです。人の思考やスキルによって業務プロセスが変わってしまうような場合は、RPAを開発する際に指示内容を書き込めないので、RPAを導入する業務ではルール化が必須です。

(4)複雑な条件分岐が少ない業務:業務におけるYES/NOの分岐が少なければ少ないほど、RPAを使う難易度も下がり、リリース前のテストパターンも多く組まずに済みます。また、実際にロボットをリリースした後、エラーが出るリスクも低減できます。

(5)インプット/アウトプットともにデジタル化されている業務:入ってくる情報と出ていく情報全てがデジタル化されているかどうかです。例えば手書きの情報を自動でデータ化することはRPAにはできないので、AI-OCRとセットでやる必要があります。そのあたりにも注意が必要です。

ポイントとなる“4つの軸”を押さえマンパワー不足の課題を解消!

続いて、実際にRPA導入を進める上での進め方について説明します。導入時に多くの方が悩むのが、どの業務をRPAで自動化すればいいのか、という点です。

上図に「標準化・単純化・機械化」という3つの円があります。まず標準化は、ルール化されている業務かという意味です。単純化は分岐が少ないかという要素です。そして機械化は、インプットとアウトプットの情報が全てデジタル化されているかどうか。

これらに加え、パフォーマンスという部分で定量的な業務ボリュームがあるかというところも見据えながら、この4つの評価軸で業務の洗い出しをして、RPAに向いているもの・向いていないものを精査し、向いているものについては優先順位をつけていく、という流れになります。

続いて、業務が決まったら、その業務のフローチャートを作ります。この部分は第1部で説明した内容なので割愛します。

フローチャートを作ったら、それを全体で精査し、人が行う部分と、ロボットが行う部分を決めていきます。これをしないと、人とロボットの業務が重複するリスクがあるからです。そしてロボットが行う業務範囲が決まったら、多角的に評価をして、RPAをリリースするにあたってどのようなリスクがあるのか洗い出しをします。

下図にRPAの適合性、導入効果、トライアル実施可否、それぞれに3つの内容で合計9項目ありますが、この9つの評価軸に沿って、導入リスクを検討します。

ここまでをクリアしたら、次は開発に向けた詳細情報のヒアリングに入り、最後は「要件定義書」の作成です。これは単なるドキュメントで、開発者に依頼する際に開発に必要なドキュメントをまとめるという内容です。

ここまでの説明で、「難しそうだ」「ハードルが高そうだ」と感じた方もいるかもしれません。そういった方への研修などを我々が担うことで、今後の自治体におけるRPA導入を円滑に進めることが可能になります。そうした機会が必要な場合は、ぜひお声かけください。

自治体におけるAI・RPA活用促進

セミナーのラスト・第4部には、総務省の山本氏が登壇。全国の自治体におけるAI・RPA導入の近況と、国からの各種支援措置について情報を共有してくれた。

<講師>

山本 裕己氏
総務省 情報流通行政局 地域通信振興課

プロフィール

2020年4月入省。同年7月より宮崎県庁に出向。2021年7月より現職。宮崎県在籍時は、地方自治法に基づく県から市町村への権限委譲に関する業務に携わり、条例改正等を経験。現在は地域情報化アドバイザー制度や地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査、AI・RPAの導入に係る特別交付税措置に関する業務等に携わる。

AI・RPAの導入状況等調査結果について

私からは、自治体におけるAI・RPA活用促進ということをテーマに話します。

まず、6月27日に公表された「令和3年度自治体におけるAI・RPAの導入状況等調査」に基づき、最新の自治体のAI・RPA導入状況について説明します。調査結果では、都道府県および指定都市については、全ての団体においてAIが導入済みでした。

一方、その他の市区町村については35%が導入済みと、都道府県や指定都市に比べると導入率が低い結果ですが、経年で見ると導入率は上昇傾向にあり、「実証中・導入予定・導入検討中」を含めると約66%の自治体がAIの導入に向けて取り組んでいます。

RPAの導入状況の概要はAIの傾向と似ており、都道府県、指定都市では導入が進んでいて、その他の市区町村では導入率が低い状況ですが、「実証中・導入予定・導入検討中」を含めると約62%がRPAの導入に向けて取り組んでいます。

下図は、全自治体のAI・RPAの導入状況をまとめた結果です。

その他、本調査結果については、総務省のホームページからも閲覧できるので、ぜひご参照ください。次に、総務省で実施しているAI・RPAの支援措置について説明します。

AI・RPAについては、ご承知の通り行政課題を解決する手段として期待されています。総務省でも導入推進に向けて各種支援を実施しています。今回説明するのは、「自治体におけるAI・RPA導入ガイドブック」「特別交付税措置」「地域情報化アドバイザー」の3つです。

自治体におけるAI・RPA導入ガイドブック

「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック」は、令和2年度に実施した実証事業の知見や先行団体の導入事例に関する調査などを踏まえて作成し、自治体職員や委託事業者が参考にできる内容を目指しました。

「導入手順書」では、AIの導入手順や留意点を記述し、先行事例も紹介しています。また、「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック」は、RPAを導入する際の検討の進め方や、導入対象業務の選定の方法などのほか、導入済みの自治体が様々な課題をどう解決したかなどの内容も盛り込んでいます。ともに総務省の「ICT地域活性化ポータル」サイトで公開されているのでぜひご覧ください。

AI・RPA導入推進のための特別交付税措置

令和4年3月15日に、「自治体行政のスマート化の実現のための取り組みに対する地方財政措置の一部変更について」と題した通知を発出しています。この通知に基づき、令和4年度のAI・RPA導入に関する経費については、情報システムの標準化・共通化を行う20分野を除き、都道府県、市町村が単独で導入を行う場合には、措置率0.3の財政措置を講じ、都道府県、市町村が協定の締結などをした上で共同調達を行う場合は措置率0.5の財政措置を講じます。

地域情報化アドバイザー制度

この制度は、地域課題を解決するためにICT利活用を検討する自治体などからの求めに応じて、ICTの知見などを有する「地域情報化アドバイザー」を派遣し、助言などを行う制度です。

現地派遣は年間3回まで、オンライン会議による支援であれば合計10時間までの支援が可能となっています。派遣の申請は地域情報化アドバイザーのホームページ、ポータルサイトより申請様式をダウンロードした上で、申請書の様式に必要事項を入力し、事務局にメールで提出、という流れです。派遣団体の数は年々増加傾向になっており、予算の上限に達し次第受付を終了するため、制度の活用を検討している団体はお早めに申請していただくことをおすすめします。

※派遣に係る予算の上限が接近していることに伴い、7月29日以降派遣申請の受付を一時停止しています。

 

お問い合わせ

ジチタイワークス セミナー運営事務局

TEL:092-716-1480
E-mail:seminar@jichitai.works

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