ジチタイワークス

高知県高知市

市が県全体をリードして観光を推進!各自治体の連係プレーで活性化を

高知県の人口は、平成22(2010)年の約76万4000人から令和22(2040)年には約53万6000人に減少すると推計さ
れている(国立社会保障・人口問題研究所調べ)。歯止めをかけるべく動いたのが高知市だ。平成30(2018)年3月28日には県内34市町村が一丸となって「れんけいこうち広域都市圏」を形成するための連携協約を県と締結。多くの都市機能や資源が集積している高知市が周辺市町村と連携をすることで、県全体の発展を目指している。

※下記はジチタイワークス内閣官房推進 EBPM特集号(2019年6月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。

数字にすることで見えた意外な事実の数々

「観光は、高知市の一強では意味がない」と強く語るのは観光振興課・課長の村田憲司さんだ。確かに高知市は県の中ではあるが、市で消費されている産業関連の多くは周辺市町村で生産されたもの。つまり、高知市だけが観光に力を入れたところで生産地が衰えてしまっては意味がないのだ。人口減少を止めるには、周辺市町村が手を取り合い、県全体の足腰を強くする必要がある。では、どうすれば現状を打破できるのか。

そこで欠かせなかったのが、データによる動態調査だ。まずは県内の人の流れに着目した。「高知市を訪れる人の6割強は宿泊をしていることがわかりました。しかし、残り約3割は県外に流出していたのです。これは非常にもったいない。せっかく高知に来てもらったのだから、域内で宿泊してもらえるよう周遊ルートを作成する必要があると感じました」(村田さん)。さらに、観光客の多くは四国が全体の半分を占めているものの、大型連休になると近畿からの客が増えることも判明した。「時期をわけてみるとこんなにも客層が違うのかと驚きました。これまで『四国からきている人が多いだろう』と担当者の肌感覚で考えられていたものに、エビデンスが加わったんです。これはデータを分析しないとわからないことでした」(村田さん)。

また、年代別で来訪者を紐解くとほとんどが40代以下の中、安芸エリアだけが突出して50代以上で構成されていた。おそらく、歴史関係の観光地が多いからではないかと村田課長は推測する。「県では今年から『自然&体験キャンペーン』として、アクティビティを推したプロモーションを出していますが、それぞれの地域を訪れる観光客の客層を意識した展開が必要になるのではと感じました。ただ県内を周遊するルートを考えるだけではなく、地域の特性別にメニューを作る必要があると実感しましたね」(村田さん)。


高知城や坂本龍馬をはじめとする「歴史」以外にも、四万十川や桂浜の「自然」など、観光スポットが充実する高知県。県全体で観光に取り組むことで集客は確実に変化があるはずだ。

デジタル×アナログのハイブリッドな分析方法

一方で、従来のアナログな分析手法がまったく意味をなしていなかったとは感じていない。「たとえばデジタルでは人がどこからどこへ動いたかということがわかりますが、現地でどれだけの消費をしたか、その人がどう感じたかといったことはデータでは読み解けません。これを調べるには、我々が実施しているアンケート調査が効果的なんです。また、周遊ルートを作る際にはまちのことを熟知している職員の知見が生きてきます。すべてをデジタルに移行するのではなく、アナログとかけあわせた手法で分析をしていくことで、より効果的な観光推進ができるはずだと考えています」(村田さん)。


性年代別に来訪者を構成した図

 確かなデータがあるから自信をもって前に進める

分析結果をもとに、現在では高知市を起点に周辺市町村を巡る仕掛けを各自治体が手を結び考案中だ。ワークショップを開くなどして都度データを共有することに努めている。「抱える課題や分野はそれぞれ異なりますから、34の自治体をまとめるのは決して簡単ではありません。ときには反対の声があがることもあります。しかし、地方が生き延びていくためには何より横のつながりが大切なんです。そのためにも、まずは成功例をつくり『れんけいこうち広域都市圏』の取り組みを広めたいですね。説得材料のひとつにエビデンスに基づくデータがあるのは非常に強みになりますから、今後も積極的に活用していきます」(村田さん)。


観光振興課・課長の村田憲司さん

How To

01 デジタルとアナログ双方の良さを合わせる

分析結果をもとに周遊ルートを作成する際、立ち寄りスポットには現地職員の意見を積極的に採用。「デジタルで調べた動向結果に、アナログの意見を組み合わせる。どちらの良さも活かせる最適な方法だと思います」と、村田さん。データには出てこない地元民ならではの街ネタも、重要な資源なのだ。


全国で唯一実在の人名がついた郵便局

02 ワークショップでデータを共有

調査をして終了ではなく、データを今後につなげるために職員を集めたワークショップを実施。データの読み方や生かし方などを全員で学び、それらをもとに周遊ルートを作成した。「データがあれば、担当者が異動になったとしてもノウハウをきちんと引き継げる。それも強みだと思います」(村田さん)。

03 横のつながりを強化して県の魅力を広める

「れんけいこうち広域都市圏」を推し進めていくため、現在は分析結果をもとに周辺市町村と状況を共有する機会を設けている最中。村田さんは「前例のないことにチャレンジしているので、一足飛びにうまくいかないことは実感しています」と話す。しかし、エビデンスに基づいた確かなデータは、今後の観光推進のためには重要な説得・判断材料になるという。目下の目標は、成功例をつくり周囲の関心を集めること。高知県の未来を支えるものは「横のつながり」なのだ。

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