業務のデジタル化を推進するには、新たなシステムを導入して一気にデジタル化する前にまず、職員のマインドチェンジが必要だ。では、一人ひとり異なる意識にどう働きかけていけばいいのか。東京都では、独自のモデル事業に取り組んで職員への啓発に努めているという。その効果を東京都デジタルサービス局戦略部戦略課 担当者※1に聞いた。
※1 令和4年3月時点の同課担当者
※下記はジチタイワークスVol.20(2022年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]KDDI株式会社
区市町村の住民サービスを底上げするモデル事業。
東京都は規模の大きさゆえに多様な行政の役割を担う。中でも住民と直接関わる区市町村のデジタル化の推進は重要なミッションの1つだ。
都が抱える62の区市町村では、デジタル化の進み具合にばらつきがあり、「都内の自治体を底上げしてサービスの質を高く保つ必要があります」と担当者は語る。紙ベースでの手続きや、複雑な申請フロー、事務処理による非効率さも見られ、改善の余地が多くあったという。
しかし、デジタル化といっても単にツールやシステムを入れて解決するものではない。職員は現状の業務を的確に見直し、効果的な施策を打つ必要がある。
都ではそうしたスキルをもつ人材を育成しようと様々な取り組みを実施してきたが、主に情報システムやDXの担当職員向けで、効果も限定されていた。そこでたどりついたのが、管理職や事務担当らがBPR※2を学ぶ研修だ。選考の上でKDDIに白羽の矢が立ち、現場主導のBPR体験を形に残す「区市町村行政手続きデジタル化モデル事業」が行われることになった。
※2 BPR=Business Process Re-engineering(現状の業務内容やフローを根本的に見直し、再設定する取り組み)
各自治体の課題を洗い出しBPRの基本を身につける。
このモデル事業は、同社が事業の統括を行い、ほかに3社が業務フローの調査や評価、各モデルの伴走支援などを担った。令和3年10月からスタートし、5つの区市が半年間の研修に取り組んだ。各自治体の参加者は、現状から理想までの間の実現可能な目標を設定。業務フローの詳細や所要時間の洗い出しから取りかかり、どの業務をどのツールで効率化できるかを検討。実証実験を通して、作業時間の削減具合や参加者の満足度などを計った。
“紙とシステムを併用していて非効率的だが、従来の体制を変えるのは不安”“そもそも何が課題なのか見えていない”など、スタート時はデジタル化に縁遠かった参加者も、メンバー間のコミュニケーションで実際にクラウドツールを使うことで、メリットを体感できたそう。できることから取り組んだ結果、研修のゴールとしていたデジタルに対するマインドチェンジに至ったという。
研修を直接受講したのは5つの区市だが、それ以外の区市町村に対しては参加職員の感想や、研修シーン、業務改善例などを編集した動画を公開。「構成を工夫し、退屈させないような内容としました。短い動画が複数あるので通勤時間などを使って簡単に学んでもらえると思います」。
研修動画をWEBで公開しBPRの啓発を都内へ横展開。
令和4年3月に、この取り組みはいったん区切りがついた。参加した職員からは“ゴールに向けて進むイメージができた”“デジタル化によって職員も住民も楽になる点が多いと認識した”といった感想が寄せられており、実際に現場で行ったBPR実証実験では作業時間を35%削減した事例もあったという。
担当者も「何より、マインドの変化につながった実感があります」と評価する。また、こうした職員の声は研修の内容や結果をまとめた動画のダイジェストに収録されている。
それぞれ動画は、これから順次公開する予定で、「WEB上で公開すればいつでも何度でも視聴でき、都内の全自治体にも届けられます。講師から一方的に発信するより、視聴者と同じ目線のメッセージが響くはず。課題を抱える自治体が身近に感じ、イメージしやすくなる映像コンテンツの可能性は大きい」と次の展開へ向けて意欲を見せる。
職員の改善意識を向上し、それを広めていこうとするこのモデル事業。研修で身につけたスキルは、受講者がこれから現場にもち帰り、各職場で取り組みを始めることで改革が芽吹いていくことだろう。
KDDIの研修の強み
▶現場に合わせた改善計
実際に業務に取り組む担当職員と一緒に課題を考え、できることから始める。
▶様々な企業と連携できる
課題に応じた研修や実証実験で、強みをかせる他企業と連携する。
▶期間はカスタマイズ可能
期間は6カ月~1年間など相談できる。数年計画で単年度契約というケースも。
まずはご相談ください
現場の課題解決に向けた研修を柔軟設計。教育で完結せず、デジタルの導入支援、実装まで伴走します。