社会の高齢化が進む中、住民の豊かな老後を支えるのは自治体の役割でもある。求められるのは健康に関する啓発活動と、万が一のときの対策だ。要介護のリスクがあるといわれる脊椎圧迫骨折と、その対処法について専門医に話を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.19(2022年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]メドトロニックソファモアダネック株式会社
尾道市立市民病院 副院長
日本整形外科学会専門医
脊椎脊髄外科専門医
廣岡 孝彦(ひろおか たかひこ)さん
知っていますか?身近なリスク「脊椎圧迫骨折」について。
―脊椎圧迫骨折について教えてください。
主に骨粗しょう症が原因で、もろくなった背骨が押しつぶされるように変形して起こるのが脊椎圧迫骨折です。多くは尻もちをついた、少し重いものを持ったなど、軽微な外力で発生。くしゃみなどでも起きる可能性があり、年間100万件近く発生しているというデータもあります※1。参考までに、高齢者で介護が必要になった原因の中で“骨折・転倒”は4位※2となっており、そうした面でも注意が必要です。
―どのような症状があらわれますか?
症状は千差万別ですが、3人に1人の割合で痛みを伴い、立ち座りが困難になることがあります。医師でも診断が難しいケースや、ただの腰痛だと勘違いして治療を受けずに悪化させてしまうこともある、やっかいな骨折です。放置しておくと背骨にかかる負荷のバランスが崩れ、ほかの骨折を誘発しやすくなるという特徴も。これらの結果、背中が丸まってしまうと逆流性食道炎などの消化管症状や、心肺系への負担が生じることもあります。また、痛みが続くと行動範囲が狭まり、健康に影響を及ぼすことで、最終的には寝たきりの状態に至ってしまうことがあるのも懸念点です。
※1 臨床雑誌 整形外科60巻10号1033~1038、総務省統計局 人口推計2021年(令和3年)1月報より推計
※2 厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査」より
脊椎圧迫骨折とは?
脊椎圧迫骨折を未然に防ぐには適切な予防と治療が重要。
―脊椎圧迫骨折に予防法はありますか?
まずは、運動習慣が重要です。特に“ウオーキング”は、骨に程よい負荷をかけ、筋肉を鍛えて体を支えるのに役立ちます。休憩を交えて適度に行いましょう。同時に、食生活の改善や、転ばないための生活動作への注意、環境改善も必要です。また、骨の状態を知ることも大切です。高齢の方は、医療機関の受診などの際に骨密度を測定するといいでしょう。20~44歳の若年成人平均値と比較して70%未満の人は骨粗しょう症と診断されます。骨粗しょう症の方は、継続した薬剤治療による骨折予防も有効です。ただし、予防をしても脊椎圧迫骨折は起こり得ます。その際の治療法には、3つの選択肢があります(詳細は下図参照)。薬剤やコルセットを使用する保存的療法、金属インプラントを使用する外科的療法、専用のバルーンと骨セメントを使用する身体的負担が比較的少ないBKP治療(Balloon Kyphoplasty、平成23年より保険適用)です。
なにより知ることが大切。住民にも認識を広めましょう!
―治療によって患者の生活はどのように変わりますか?
個人差はありますが、放置した場合よりも生活の質(QOL)が向上する可能性は大きいといえます。私たちの治療の最大の目標は、痛みを軽減し、動ける状態を保って患者のQOLを高めることです。独居を含む高齢者世帯が増加する“人生100年時代”において、こうした使命はさらに重要度を増していくと考えています。健康寿命の延伸は、住民だけでなく、自治体の皆さんと私たち医療従事者の共通課題でもあります。介護が必要になるということは、患者のQOLを下げるだけでなく、経済的負担にもなり、行政側では介護保険の負担にもつながります。こうした事態を避けるためにも必要なのが“住民への啓発”です。
医療の現場では、医師や看護師のほか、管理栄養士や社会福祉士など多職種が連携して骨粗しょう症治療を推進する「骨粗しょう症リエゾンサービス」という取り組みがあります。しかし、こうした活動にも限界があるのが現実です。行政の皆さんと医療従事者とが手を取り合っていけば、脊椎圧迫骨折の予防・治療に関する認知拡大ができると思います。高齢者がいつまでも元気に生活できる、誇りあるまちを一緒につくっていきたいですね。
必要なのは正しい知識と対策!骨折から介護への移行を防ぐには。
“気づかない間に骨折していた”という事例も多い脊椎圧迫骨折。まずはその対策を知り、予防・治療の啓発を行うことが高齢者の自立した生活を守る。
脊椎圧迫骨折の3つの治療法
保存的療法
重度の骨折が認められない場合、最初に検討される療法。コルセットやギプスで腰まわりをサポートし、痛み止めや骨粗しょう症の薬を併用処方するなどして、手術をせずに治療を進める。
外科的療法
骨折の程度が重い患者や、受傷から比較的長い期間が経過している患者を対象とする。背骨の移植や、金属の器具(ねじ・棒)を使用して背骨を固定する手術を行う。入院とリハビリを伴う。
BKP治療(Balloon Kyphoplasty)
保存的療法で症状が改善しない患者が対象。早期の痛みの軽減により、骨折前の生活に戻ることを目的とした治療。手術の身体的負担も比較的軽く、一般的な手術のリスクはあるが、通常だと傷口は5mm程度が2カ所、手術時間も30分程度が目安。
自治体で早期発見・治療を勧奨するメリット
1.住民の健康寿命延伸につながる
超高齢社会の中では“元気なまち”であることが地域の魅力の大切な要素となる。寝たきりになる原因の1つである脊椎圧迫骨折を知り、適切に対策することが、健康寿命の延伸や高齢者の自立した活動につながる。
2.自治体の介護費用負担の軽減につながる
骨粗しょう症や脊椎圧迫骨折の早期受診は、重症化を予防し、要介護となることを防ぐのにも有効。自治体にとっては健康づくりという住民サービスの充実化とともに、介護保険の給付費負担の軽減にもつながる。
まずは脊椎圧迫骨折を知ることから!
●住民公開講座の開催
●骨密度チェックの案内
●受診勧奨ハガキの送付
●リーフレットやチラシの配布 など
住民が、脊椎圧迫骨折の危険性について、正しく知る機会を提供しましょう。
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