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【後編】人事担当者に聞く、「異動の実態」

何かと気忙しい年度末は、多くの公務員にとって気がかりな異動の時期でもある。新天地への異動に心躍らせる人がいる一方、想定外の異動にやりきれない気持ちを抱える人もいることだろう。

そもそも、公務員にはなぜ異動がつきものなのか。異動はどのようにして決まるのか…異動についてはブラックボックスになっていることも多い。そこで本特集では、異動を知り、異動を力にするための記事を公開していく。

本記事では、某市の人事部に匿名取材。なかなか語られることのなかった「異動の実態」について聞いてきた。

【公務員の「異動大全」】

(1)異動でモヤモヤ…ありますか?全国の公務員にアンケート!(2)人事担当者に聞く、「異動の実態」【前編】
(2)人事担当者に聞く、「異動の実態」【前編】
(3)人事担当者に聞く、「異動の実態」【後編】←今回はココ
(4)どんな部署でも自分は活かせる!異動に左右されない”強み”の見つけ方・活かし方【前編】
(5)どんな部署でも自分は活かせる!異動に左右されない”強み”の見つけ方・活かし方【後編】

※前編はコチラ 

お答えくださった方

■Aさん

・所属:某市役所(人口規模 数万人) 総務部人事課
・役職:課長

人事異動のポリシーはブラックボックス!?

ーー 職員の適正についてもう少し詳しく聞きたいのですが、適性を極めていくと組織の中でスペシャリスト的な職員が生まれることもあるのではないでしょうか。

Aさん これは自治体ごとに考え方が異なると思いますが、一定の経験や適性を踏まえた上で、異動の際に部門を限定することもあります。特にマネジメント層はその傾向が強くなりますね。
いわゆる人事畑・福祉畑など、特定の業務のスペシャリストとして組織をお任せするという形になります。

ーー 組織の中でたくさんのスペシャリストが誕生し組織が硬直化してしまうことはないですか。

Aさん そのことは常に議論の対象になります。というのも、自治体の規模によってやれることとやれないことがあり、スペシャリストとゼネラリストの比率も異なってくるのです。
例えば100人しかいないような小規模な自治体の職員は、一つ一つの量は少ないものの一人で担う業務範囲が広く、30人もスペシャリストがいたら硬直化して組織がまわらなくなってしまうでしょう。一方で大きな規模の自治体だと、例えば保健所や各種企業局など高い権限を持つ管轄業務が存在したり、そもそも多くの職員を抱えることができるので業務を細分化し担当させることが可能といったことから、一定数スペシャリストがいてもおかしくありません。
スペシャリストとゼネラリストの考え方は、自治体の規模や職員数によって変わってくるかと思います。

ーー なるほど。その自治体ごとの考え方はどこかで知ることはできるのでしょうか?

Aさん 基本的に人事方針はトップシークレットです。どこにも公表していませんし、内部でも協議メンバーだけが知っている内容になります。ほとんどの職員からすると、すべてはブラックボックスの中という感じでしょうか。
一般的に人事方針を考える際においては、職員数が多いほど柔軟な考え方が可能となって自由度が高くなり、職員数が少ないほど制限を受ける条件が多くなり、選択肢が少なくなるのではないかと思います

ブラックボックスにしているのには理由がある!

ーー 人事異動のポリシーについてはブラックボックスとのことですが、例えば学生が面接のときに質問しても回答できないことなのでしょうか

Aさん 異動のプロセスなどおおまかな内容についてはお答えできます。新卒の場合は、やってみたい仕事や将来の目標などを聞いた上で配属先を決めますが、もちろん最初から希望通りにいくとは限りません。その理由や異動サイクル、将来の異動の可能性などを伝えて納得してもらいます。
ただ、人事に関する詳細については、こちらからあえて説明はしませんし、学生側もそれがアンタッチャブルだと認識しているのではないかと思います。

ーー 民間企業ではあまり考えられないことですね

Aさん そうですね。人事の秘匿性に関しては一般の会社と大きく違うと思います。理由として、歴史的背景や公的機関であることの”縛り”があるのかなと。
例えば、議員などからの圧力や業者との癒着を誘引してしまうなど、人事に関する細部を公開することで様々マイナスに働く可能性を否定できません。それらを警戒しあえてブラックボックスにしているという面もあるかと思います。
実際、今でもこのような圧力というのは存在します。ただ、それを加味して人事異動を決めることは、うちに関して言えば100%ないですね。

職員間の待遇差について

ーー スペシャリストとゼネラリストのお話ですが、異動だけでなく待遇にも両者に差が生じることがありますか?

Aさん 自治体職員におけるスペシャリストとして一般的なのが、保健師や管理栄養士、土木や建築技師といった有資格職です。これらの職員は専門職になるので、専門部署間での異動に限定される場合が多いですね。
それ以外のいわゆる一般職について言うと、スペシャリスト対ゼネラリストの比率は1:9あるいは2:8くらいではないでしょうか。待遇や昇進に差はありません、当然ながらスペシャリスト手当などのようなものも存在しません。

職員の適性判断とは?

ーー 人事異動は本人の適性も考慮するということでしたが、適性を見る際、どのようなチェックポイントがあるのでしょうか?

Aさん これは非常に難しい質問です。異動のたびに適性検査を行っているわけではなく、業務との相性や親和性、コミュニケーションスキルなどの日常業務から読み取れる能力などを総合的に見て判断しているということになります。
ほかにも社交性や行動力、まじめさ、勤務態度、指示に対しての反応や業務スピードの速さ、クレバーさなど、さまざまな観点を考慮します。
何か数字で測れるようなものは特になく、先ほど(第1回の記事参照)ご説明した通り、上司による評価が大きなウエイトを占めるということですね。

ーー それだと、上司とウマが合う合わないで大きく左右されるような気がしますが?

Aさん その可能性もあります。そのような合う合わないで評価していないかを判断するのが人事の仕事です。職員個人の自己評価と上司による評価が大きく乖離するケースなどでは、上司の評価だけを鵜吞みにせず周囲へのヒアリングを重ねて判断するようにしています。
ちなみに、ウマが合う合わないといった人間関係的な情報も異動の参考としています。

不人気部署への異動は一苦労!?

ーー 自治体の中でも不人気部署があると聞いたことがあります。そこへの配属というのは何か特別な配慮があったりするのでしょうか?

Aさん 部署の人気不人気は確かにあります。ただ、特別な配慮というのはありません。異動に対する考え方は基本的にどの部署でも同じです。
全体組織の中でどのように最適化を図るかという観点で考えるので、個人個人の力量や希望を見極めながら決めていきます。組織を効果的に機能させて、すべての業務を円滑に運営するということが最大の目標としてあるので、不人気部署だからどうのこうの、というのは全くないですね。

ーー 民間企業の場合、優秀な人間は異動先の希望が通りやすいということがあったりします

Aさん 自治体の場合、優秀であっても希望通りの異動が叶うということはありません。もちろん、優秀だという評価は、昇任や昇格の判断材料となりますし、企画政策や財政など組織運営上重要となる部署や主要な事業を抱えている部署などへの配置を検討する材料とはしますが、異動について優秀な職員の希望を優先するといったことはありません。したがって、優秀な職員が不人気部署に配属されることもあります。
逆を言えば、異動先の希望が叶わなかったからと言って、優秀な評価を得ていないということではありません。異動については何よりも「組織の最適化」が最優先なのです。

※本記事の内容はAさんへの取材に基づき構成しています。人事制度の詳細は自治体ごとに異なります。


次回からは、異動に左右されない自分の「強み」を見つけ、磨く方法について紹介します!←3/10公開予定
 

 

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