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行革甲子園2026!大会レポート【後編】

全国の自治体が行政改革のアイデアやノウハウを持ち寄り、プレゼンテーションで発表し合う「行革甲子園」。後編では、後半に登壇した“福岡県北九州市”“宮城県利府町”“熊本県山鹿市”のプレゼンテーション、官民共創をテーマにした特別講演、そして審査結果の模様をレポートする。
※記事の掲載情報は公開日時点のものです。
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福岡県北九州市|若者を「支援対象」から「共創パートナー」へ~全国初「Z世代課」が挑む、行政のアップデート~

発表者:福岡県北九州市
Z世代課 内海(うちうみ)さん
山下(やました)さん
「Z世代課は、単なる若者施策をする課ではありません」。内海さんは冒頭でそう言い切った。若者を“支援対象”から“共創パートナー”へと位置づけ、若者に学びながら行政自身が変わる。Z世代課の挑戦は、いわば“行政のアップデート”だという。従来の若者施策は“意見を聞く”にとどまりがちで、学校教育を終えた若者との接点は薄かった。
そこで同市は、若者と共に企画し実装するモデルへと転換した。変えたのは行政と若者の関係性そのものである。その考え方をあらわすのが、温故知新の“故”を“Z”に置き換えた「温Z知新」。Z世代の価値観や行動傾向を学び、行政の固定観念を脱ぎ捨てて学び直す“アンラーニング”によって、激変する社会に対応するという意味だ。サンプル数500を超える独自の価値観アンケートや多くの若者との対話が取り組みの出発点となった。
プロジェクトの柱は3つ。1つ目は「Z世代はみ出せコンテスト」。全国から自由なアイデアを募集し、最大300万円の補助と専門家などによる支援のもと、実現まで伴走する取り組みだ。初めから完璧な事業計画は求めず、“やってみたい”という熱意を大切にしている。“ド派手”なことで有名な成人式のVR再現や飲食店の大将のトレーディングカード化、市内初のコーヒー農園への挑戦など、行政だけでは生まれにくいアイデアが実現した。
2つ目は「Z世代課パートナーズ制度」。若者が市の会議体や民間プロジェクトに参加、リアルな視点を届ける仕組みだ。
3つ目が「民間共創プロジェクト」。“まちの中心で踊りたい”という声から駅ビルにダンスの広場である「KOKURA DANCE STATION(小倉ダンスステーション)」をつくるなど、行政の強みである“つなぐ力”を活かして企業・地域・メディアを巻き込んでいる。
成果は数字にもあらわれている。コンテストの応募総数は3年間で156件と年々増加し、9件が実装に至っている。パートナーズ制度は56人が登録し、派遣実績は53事業・延べ72人。メディア掲載は400件を超え、応援預金は約1.2億円(※)が集まった。そして何より変わったのは若者と行政の距離だ。“行政が近くなった”“自分たちの声が届く実感が生まれた”という反応が得られているという。「若者と共に企画し、実装、政策化までを行う仕組みは、他自治体にも応用可能なモデルです」と内海さん。
※「北九州市Z世代課」と名付けたCheer Boxへ預金残高に応じた支援金が企業から北九州市へ提供されるもの。預金者の直接的な負担はない。

質疑応答では、「どういうチャンネルで若者に接近しているのか」という質問に対し、「自治体の公式SNSアカウントを統廃合して強いアカウントを育てている。そして年齢にあわせたSNSを選択しつつ、地域のインフルエンサーとも連携し“行政目線ではなく発信者目線”で情報を届けている」と回答した。その後も複数の質問が続き、全国的に興味を引く取り組みであることが示された。
宮城県利府町|全国初!水の官民連携レベル3.5による上下水道事業包括的民間委託

発表者:宮城県利府町
上下水道課 荻野(おぎの)さん
深村(ふかむら)さん
利府町の上下水道事業は三重苦を抱えていた。料金収入は年々減少していく見込みである一方、施設や設備の老朽化で修繕や更新にかかる費用は増えていく。さらに、技術を持つ職員が高齢化や異動・退職によって現場を離れ、技術継承が難しくなっていた。お金は減る、施設は古くなる、技術継承もできない。このままで将来の上下水道を守れるのかと考えた同町。民間の力を借りて仕事の仕組みそのものを変える結論に至り、「水の官民連携(レベル3.5・更新支援型)」による包括的民間委託を全国で初めて開始した。
「民間委託というと、仕事を民間に“丸投げ”したと思われるかもしれませんが、そうではありません。行政と民間が一緒に上下水道を長く守っていく仕組みです」と荻野さんは強調する。従来の料金窓口業務に加え、施設の維持管理・修繕、将来の更新計画づくりまでを上下水道一体で包括的に一括委託した。これにより、町全体の水インフラを一元管理できるようにした。民間委託後も、同町が料金の設定を担い、施設などの資産を保有、運営は民間と一緒に行う仕組みだ。
では、何が“行政改革”だったのか。一番大きく変わったのは仕事の持ち方だ。導入前は、漏水はA社、設備の不具合はB社、計画づくりはC社、日常点検は町職員とバラバラで、業務全体を横断して考えることが難しかった。そこで仕事を1つにまとめ、町と民間が日頃から話し合い、問題があれば一緒に考える関係に変えた。「仕事を渡したのではなく、一緒に仕事をする仕組みに変えた。これが一番大事なポイントです」。
効果は3つある。1つ目はDX導入。民間との対話から、球体型カメラを下水道管に流して破損箇所を事前調査する「Sスマートボール」や、タブレット端末による設備管理システムが実現。経験と紙の台帳が頼りだった維持管理はデータで蓄積・共有できるようになり、“壊れてから直す”事後保全から“壊れる前に手を打つ”予防保全へと考え方が変わった。
2つ目はコスト。発注を1つにまとめたことで業務発注件数は導入前に比べ年間75%減少、人件費は約1,000万円削減されたという。人員は町職員を3人減らした一方で受託者側は11人増、体制全体では8人増員となった。「町職員は経営・監督・危機管理、民間は専門技術・維持管理と、得意なことに集中する形にした。人を減らしたのではなく、人材の活かし方を変えたのです」。人件費の削減や閑散期の業務発注、複数の業務を一括発注するなどの民間ノウハウ活用で生まれた財源は、施設の維持管理・修繕に再投資している。
3つ目は技術者不足への対応。導入後は浄水場に民間の専門職が常駐し、何かあればすぐ動ける体制が整った。懸念される行政側の技術力低下に対しては、民間主催の勉強会や研修に町職員も参加、官民で一緒に技術を育てる場をつくっている。背景には“お金があっても動ける人がいない”という東日本大震災のつらい経験があり、災害時にも民間の技術力と人的資源をすぐ活用できる体制を構築したという。

質疑応答では、企業側の参画インセンティブについて、上下水道一体化によるスケールメリットに加え、受託者に設立を義務付けたSPC(※)が町の求める水準を満たせば他業務も行えるようにしたと回答。県内市町長からも共通の課題への共感の声が寄せられた。
※SPC=Special Purpose Company(特別目的会社)
熊本県山鹿市|事務処理特例制度でルールを変えよう!!~失敗もひとつの成果、まずはやってみよう~

発表者:熊本県山鹿市
総務課 川上(かわかみ)さん
福田(ふくだ)さん
「皆さんの自治体では、業務改善にどれぐらい時間がかかっていますか?」川上さんはそう問いかけた。慎重に検討するうちに半年、1年が過ぎ、「ああ、何もしないほうが得だ」と漂う諦め……。同市の取り組みはこの“改革までの壁”を乗り越えるためのものだ。
職員は法令や規則を守って仕事をしており、時代に合わない規則であっても無視はできない。必要だったのは、既存の規則の制限を受けずに“まずやってみる”ことができる合法的な仕組みだ。唯一イメージに近かったのが、電動キックボードの社会実験で有名な国の「規制のサンドボックス制度」だった。
これを内部改革に応用したのが、自治体版・規制のサンドボックスである山鹿市の「事務処理特例制度」だ。特徴は、既存の規則そのものは改正せず、特例制度で一定期間(最大2年間)規則を上書きできる点。その間の状況を検証し、問題がなければ正式導入、うまくいかなければ砂場(サンドボックス)のように簡単にリセットする。検証でデータが得られるため、失敗もまた一つの成果。この考え方が、職員の安心した挑戦を支えているという。
圧倒的なスピード感も特徴だ。他自治体の動向や効果の根拠、実績資料の準備は一切不要。原則、部長決裁で即座に試行できる。契約事務の簡素化では、思いつきから実践までの期間を約1年からわずか1カ月へと12分の1に圧縮。提案時につくる資料は1枚。職員アンケートでは9割が効果を実感していると答えた。
最大の効果は、職員の意識の変化だ。“何もしないほうが得だ”という空気が“まずやってみよう”へと変わり、かつて“石橋を叩いて叩いて、最後に渡る”自治体だった山鹿市は、フレックスタイム制の導入などを県内自治体に先駆けて着手。チャレンジする自治体へと生まれ変わったという。
なぜスピードにこだわるのか。例に挙げたのは、地方税のコンビニ納付が可能になった平成15年から、全歳入のコンビニ収納が実現する令和6年度まで、約20年を要したことだ。「行政の判断が遅れると、住民の利便性は何十年も置き去りになる」と川上さん。
特例制度は自治体の規則の範囲内でしか使えず、法令の壁は超えられない。だからこそ、同様の仕組みが国でも整備される未来に期待を寄せる。「特例制度に特別な予算も大掛かりな仕組みも必要ありません。必要なのは“まずやってみよう”という一歩だけ。面白そうと思ったら、遠慮なくマネしてください」。

質疑応答によると、制度が始まったのは、川上さんが規則を扱う法制担当に異動した令和6年度。“部署がやりたい”の壁になっている現状を見て思いついたという。アイデアの集め方は、庁内を散歩し、各部署で困りごとの声を拾っている。実施した特例の半分ほどは庁内の声がベースだ。“何でもあり”への懸念には、現場で勝手に始めるのではなく、総務課への届出制で対応している。
特別講演「官民共創は新たなステージへ ~ファーストモデルが未来を拓く~」

講演者:一般社団法人 官民共創未来コンソーシアム 代表理事
小田 理恵子(おだ りえこ)さん
大手SI企業で業務プロセス改革などに従事後、川崎市議会議員を2期8年務め、現在は官民共創の伴走支援を手がけている。
小田さんの講演は「毎日見ているはずのものでも、意外と覚えていない」とのつかみから始まった。小田さんによると、自治体の社会課題解決は容易ではなく、企業の新規事業開発も成功率が極めて低い。それにもかかわらず、双方が“官民連携すればうまくいく”と相手に過剰な期待をしてしまう構図があったという。背景には、業務委託のような役割の見えている取り組みと、社会課題を事業にする“そもそも何をやるべきか”から答えを探す取り組みが、「官民連携」という言葉に混在していたことがある。後者には、官も民も役割を固定せず、資源や知見を持ち寄って課題設定から一緒に試行錯誤することが必要だ。それを区別する言葉が「官民共創」である。
官民共創のフェーズは変わりつつあるという。当初は、民間企業から自治体にどうアプローチしたらよいかという相談が主だったが、最近では自治体からプラットフォームをつくったのに企業が集まらないという相談が主になってきたそうだ。取り組む自治体が増え、相対的に民間が少なくなっているのではないかと小田さん。今後は“民間が自治体を選ぶ時代”になる。自治体は提案を受ける側であると同時に、共創相手として評価される側にもなるのではないかと考えているという。
では、選ばれる自治体には何が必要か。小田さんが挙げたのは“継続力”と“スピード”だ。継続力とは、庁内で意思決定できるか、担当者が異動しても関係が続くか、といった基本動作のこと。その上で差別化の条件となるのがスピードだ。例に挙げた茨城県境町では、町長が自動運転バスの記事を見て自ら企業にアポイントを取り、1カ月後に企業トップと面会、その2週間後には議会で予算の承認を得た。記事から44日というスピードである。
さらにスピードには“最初に実施する”というもう一つの意味がある。それがファーストモデル、すなわち、まだ答えのない課題に官民が最初の実装で挑戦し、他の地域にも展開可能なモデルまでつくることだ。企業の担当者が新規事業を社内に提案すると、必ず“実績は”“再現性は”“市場は”と問われるが、社会課題を事業にした新規事業では“まだない”としか答えられない。「だからこそ、最初にやってくれる自治体は、企業の担当者にとって稟議を通してくれる、本当にありがたい存在。皆さんは発注者であると同時に、企業の担当者の味方になれるんです」。
「企業が最初の自治体を選ぶときに見るのは『なぜこの自治体なのか』。でも、それは無理につくるものではありません。全国より先に困っている、試せる条件がある、最初に手を挙げる人がいる。どれかがあれば十分です」。そのために勧めるのが“観察”だ。先駆けた課題も試せる条件も、“毎日見ている風景や庁内に混ざっている”。「課題の多いまちが、1番面白いまちになるかもしれない。まず皆さんのまちを観察してみてください」と呼びかけ、講演を終えた。
表彰式、行革甲子園2026のグランプリは熊本県山鹿市に!

【グランプリ】熊本県山鹿市
≪講評≫
1次審査から得票が最も多く、今回の審査でも全ての審査員が点を入れた。行政は失敗してはいけないということが昔から原則になっており、それが様々なチャレンジを妨げてきた。積み重なってきた規制やルールを一旦見直してみる仕組みを構築したことが素晴らしい。行政に欠けるスピード感を克服した取り組み。
【審査員長特別賞】福井県福井市 愛媛県宇和島市
≪講評≫
福井市:住民の心理に寄り添う取り組みを若手職員が主導し、組織として応援し、具体的な成果も上げている。
宇和島市:オンラインの最多得票であり、現場視聴者の評価も高い。オンライン診療は離島にとって切実なテーマで、先進性が評価された。様々な申請の受付に広がる普遍性もある。
なお、そのほかの団体にも個別の賞として、塩尻市に「現場改革大賞」、北九州市に「次世代共創大賞」、利府町に「上下水道革新大賞」が贈られた。
閉会にあたり椎川審査員長は「応募事例にはもはや行革という言葉では言い表せない、前向きでチャレンジングな“行政の改革”になってきている。残された課題の解決には外部の人材と知恵、つまり官民共創が一つの形になる」と大会を総括。
中村知事も「現状維持ではダメだという強い思い、市民や地域への還元に結びつける使命感が伝わってきた」と参加自治体をたたえ、大会を締めくくった。
今回も行政改革の素晴らしい取組事例が多く集まった。共通していたのは、現場の課題に向き合い、これまでの仕事の進め方を問い直す姿勢だった。自分たちの自治体なら、どこから変えられるだろうか。行革甲子園で共有されたアイデアや工夫が、その一歩を考えるヒントになりそうだ。
【問い合わせ先】
愛媛県 総務部 行財政推進局 市町振興課
担当:連携推進係 森本、長谷部
TEL:089-912-2216(直通)
FAX:089-912-2209
Email:g-koushien@pref.ehime.lg.jp
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