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深刻になる前に接点をつくり、いつでも頼れるつながりを

困難を抱える女性への包括的支援
生活困窮やDVなどの問題は複雑化しており、特に女性は深刻な状況に陥りやすく、窓口を設けるだけでは支援が届きにくいという。厚生労働省が女性支援事業を進める中、岡山市ではLINEでの相談受付や居場所づくりなどに取り組んでいる。
※下記はジチタイワークスINFO.(2026年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

岡山市
市民協働部
女性が輝くまちづくり推進課
主査 松浦 友美(まつうら ゆみ)さん
複数の問題を同時に抱えるため関係する部署が多く一本化が難しい。
同市では、令和4年度より国の地域女性活躍推進交付金を活用して、困難を抱える女性への支援事業を行ってきた。生活困窮やDV、心身の不調など、複数の問題を抱える女性は多いという。そうした中で、令和6年4月に「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(以下、女性支援新法)」が施行。支援を続ける中で見えてきたのが、主担当が定まりにくいという課題だった。「例えば、生活上の様々な問題を抱えた、小さな子どもがいる女性の場合、生活保護や就労支援、子育て支援などそれぞれの部署に支援の手段があります。ただ、複数の問題を抱えているため、誰がその人の一番近くで伴走し、主となって動くのかは決めきれないところです。問題を全て把握し、その人に適した支援を考える難しさを感じています」と松浦さんは語る。また、若年層へのアプローチも課題だったという。
こうした課題を踏まえ、同市では令和7年3月に支援計画を策定。関係部署や民間支援団体などと連携し、必要な支援を切れ目なく提供できる体制の構築を目指すこととした。


相談窓口としてLINEを増やしカフェ形式の居場所も設置。
体制の土台となっているのが、NPOとの協働だ。市がバックアップし、NPOが民間ならではのフットワークの軽さを発揮している。例えば、DVを受け妊娠の可能性がある人から相談を受けた際には、NPOが妊娠・出産をサポートする別団体を紹介。紹介先が妊娠検査薬を渡し、検査を勧めるなど迅速に支援したという。
また、NPOは相談窓口として電話やメールに加えてLINEを用意。電話での相談が多いものの、若年層ではLINEの利用が目立つという。「転職を繰り返していた人が、今では同じ仕事を続けていると聞いています。定期的に連絡を取ることで安心につながっているようです」。
そうした女性たちが気楽に過ごせる居場所として、商店街で「YORIBAカフェmeet」を月3回開催。飲み物や軽食を用意し、利用しやすい雰囲気づくりに努める。「友達から聞いて訪れた大学生や、1人で静かに過ごす人もいます。“何かあれば話して”と言われても、なかなか悩みは出てきません。でも、居場所で過ごすうちに、“実は、交際相手からの束縛が強くて”など、恋愛や仕事、友達・親との関係の悩みについて、ぽろっと話し出すこともあるようです」。若年層が立ち寄りやすいよう、今年度は開始時間を19時から15時30分に変更。「昨年度は年間約100人の利用でしたが、今年は7月単月で30人を超えました。時間を早めたことで輪が広がったと感じています」。

街頭パトロールで接点をつくり関係機関との連携も深める。
今年度から本格的に始動した街頭パトロールは、月1回、駅周辺や地下街などをまわっている。深刻な悩みを抱えていそうな人には、声をかけてもかえって拒まれやすいという。そのため、友達同士で気軽に過ごしている若い人たちに声をかけ、相談先を記したカードが入った生理用品などを手渡している。「いざ問題を抱えたときに“そういえば相談できる場所があった”と思い出してもらえることが大切だと考えています。実際に、時間がたってからカフェに来た人もいるそうです」。街頭パトロールの前には、周辺の警備員に根回しするなどして、円滑に活動できるよう調整しているという。
同市とNPOは月1回の定例会を開き、前月の相談事例や対応状況を共有している。「具体的な事例を聞くことで、どのような対応をするのかを知ることができます。また当市からも、“そういうケースなら、この部署が担当できるかもしれない”と伝えられるので、お互いに知らないことを補い合える場になっています」。
昨年度には、初めて関係部署や警察などが集まる支援調整会議を開催した。今後はケースごとに、関係者が支援方針を話し合う場も充実させていきたいという。「そうした機会を増やしていくことで、関係者同士のつながりが強くなっていくと期待しています」。

“顔の見える”関係を築き庁内外で連携して伴走支援を行う。

豊中市
市民協働部 人権政策課 女性支援係
左:主査 水谷 志麻(みずたに しま)さん
右:課長補佐 兼 係長
小林 奈央子(こばやし なおこ)さん
困難な問題を抱える女性への支援では、庁内外の連携がカギを握る。豊中市では、女性支援への理解を深めてもらうため、関係部署へ何度も出向いて対話を重ねるなど、顔の見える関係づくりを地道に続けている。
新たな窓口を開設する一方で庁内での理解が必要だった。
同市の女性支援係は、生活困窮やDVなど、女性が抱える様々な相談を受け、必要な支援につなげている。窓口まで来るのが難しい人には近くの公共施設まで職員が出向いて話を聞くほか、必要に応じて同行支援も行っている。
「女性支援係となる前は、男女共同参画推進センターで悩みがある人の相談を受け、必要な支援先につないでいました。しかし、“自身が相談すべき状況にあると気づいていない人”もいます。気づいてもらう機会をつくり、相談者に寄り添う伴走型支援をより充実させるためにも、別の窓口が必要だと考えました」と小林さん。そこでプロポーザルで委託事業者を選定し、令和6年5月に女性総合相談支援窓口を開設した。
一方、支援を進める上では、人手不足に加え、庁内で女性支援業務そのものが十分に知られていないことも課題だった。「例えば、福祉事務所では自立に向けた適正な指示・指導を行いますが、女性支援では指示・指導ではなく、本人の意向に寄り添う伴走型支援を大切にしています。この違いを知ってもらうことが、支援者同士の誤解をなくし、良好な関係づくりにつながると考えています」と水谷さんは話す。

直接会いに行くことを心がけ対話を重ねる中で関係を築く。
連携を円滑にするために取り組んだのが、顔の見える関係づくりだ。「相手を知らないとお願いもしにくいので、日頃から電話だけで済まさず関係部署に行き、直接話すことを大切にしています」。話す際には、自分たちの考え方を伝えるだけでなく、相手の業務についても理解に努め、互いの認識の違いを埋めているという。
さらに心がけたのが、他部署からの相談をできるだけ断らないことだ。水谷さんは、自分の業務ではなくても、“どこまでなら担えるか”を考え、可能な範囲で引き受けてきたという。「最近では顔見知りが増えて距離も縮まり、助け合いの輪ができてきました」と笑顔を見せる。
顔の見える関係づくりは庁内に限らず、地域の支援機関との間でも行っている。「窓口の開設時には、地域包括支援センターにあいさつに行き、社会福祉協議会にもチラシを渡しに行きました」と小林さん。また、民生委員・児童委員にDV研修も実施。市から支援や相談先について伝えるだけでなく、地域で感じている疑問や具体的なケースについて質問を受ける機会にもなったそうだ。
手続きに同行して見守り“自分でできた”を積み重ねる。
女性総合相談支援窓口の開設後、親子間の暴力やひきこもりなど、相談内容は多岐にわたるようになったという。基本的に民間が窓口を担い、その後の支援や一時保護などは市が担当。同行支援については双方が担い、相談者に寄り添うことを大切にしている。例えば、DV相談の証明書を受け取りに来る女性の中には、児童手当や国民健康保険などの手続きに不安を感じ、諦めている人もいる。褒められた経験も、自分で物事を決めた経験も少なく、自信を失って何もできないと思い込んでいる人が多いという。そのような場合は声をかけ、窓口まで同行するそうだ。
「一緒にいるだけで手続きができる人もいます。“私は横にいただけです。自分で全部できましたよね”と伝えることで本人の自信につながり、大きな一歩になることもあります」と水谷さん。こうした支援を重ねる中で信頼関係が生まれ、新たな悩みを打ち明けられたり、支援後に近況を知らせてもらったりすると、やりがいを感じるという。
「女性支援新法をきっかけに、これまでどこの網にも引っかからなかった人にも支援を届けたいです。小さな積み重ねが大きな力となり、自分の人生を自分で決めて歩める女性が増えてほしいです」と水谷さんは語ってくれた。


女性支援を進めていくために自治体が知っておきたいこと
厚生労働省の女性支援事業を自治体が進めるためには、関係機関との連携が欠かせない。ここでは支援の基本となる考え方などを紹介する。

CHECK!
女性支援の全国フォーラムが開催予定
「女性支援新法全国フォーラム」が、2027年1月22日に東京都で開催予定。会場とオンラインのハイブリッド形式で、いずれかを選んで参加できる。女性支援への理解を深め、日々の業務への活用を図る内容となっている。
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