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【セミナーレポート】どう進める?部活動地域展開の最新動向を解説!

教育・文化・スポーツ
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【セミナーレポート】どう進める?部活動地域展開の最新動向を解説!

令和8年度から、部活動改革は「改革実行期間」に入った。国の方向性は明確になった一方で、「何から手をつければいいのか」「指導者や移動手段、活動費の徴収をどうするのか」と悩む自治体も多いのではないだろうか。そこで本セミナーでは、平日・休日ともに部活動を終了し、地域クラブへ全面展開した飛騨市と掛川市の担当者に、これまでの試行錯誤と現在地を語っていただいた。あわせて、地域クラブの運営システムや事務局運営、集金、オンライン指導を手がける4社から、実務に役立つヒントを紹介いただいた。

概要

■テーマ:どう進める?部活動地域展開の最新動向を解説!
■実施日:2026年8月18日(火)13:30〜16:00(オンライン)
■参加対象:自治体職員
■申込者数:149人

試行錯誤の現場から!飛騨市で挑む「部活動地域展開」のリアル

最初に登壇いただいたのは飛騨市の佐野さん。部活動加入者数が8年間で59%減るという見込みを前に、令和8年度から平日・休日ともに地域クラブへ全面展開した同市。専任職員の配置や専用乗車券による移動支援、市独自の人材バンクなど、改革推進期間の3年間で重ねてきた試行錯誤についてお話しいただきました。

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佐野 颯斗さん
飛騨市 教育委員会事務局
学校教育課 地域クラブ活動推進室
主任

令和3年4月 国際武道大学 武道・スポーツセンター専門嘱託職員(アスレティックトレーナー)
令和5年4月 東京都大田区 部活動指導員(剣道)
令和5年4月 神奈川県私立中・高 非常勤講師(保健体育)※部活動指導員と併行
令和6年4月 現職(任期付職員)

飛騨市教育委員会の佐野です。本日は、国が定めた令和5年度から7年度までの「改革推進期間」に、飛騨市でどのような取り組みを進めてきたのかをお話しします。内容は、飛騨市の現在地と前提、部活動地域展開のこれまでの歩み、課題へのトライ&エラー、今後大切にしていくポイントの4つです。

平日・休日とも地域クラブへ全面展開

飛騨市は岐阜県の最北端に位置するまちです。市域は山々に囲まれています。面積は792.53㎢で、この中に小学校が6校、中学校が3校点在しており、生徒数は512人です(令和8年7月時点)。

本市では、令和7年度末をもって市内すべての中学校の部活動を終了し、令和8年4月からは平日・休日ともに地域クラブ活動へ全面展開しています。古川中学校には16、神岡中学校には7、山之村中学校には2の部活動がありましたが、そのすべてをそのまま地域クラブに置き換えたわけではありません。生徒への聞き取りなどを踏まえて団体を整理し、生まれたのが現在の「飛騨市認定地域クラブ」です。令和8年7月1日時点で18団体あり、生徒310人、指導者76人が活動しています。

各団体は複数校の生徒で構成されており、高山市の中学校から参加している生徒もいます。学校区を超えたコミュニティが生まれることは、部活動改革の大きな魅力の1つだと思います。一方で、後ほどお話しする送り迎えの問題も、こうした構成から生じています。

ここで、地域クラブ活動の全体像についての私たちの捉え方をお伝えします。これまで中学生のスポーツ・文化活動は、学校内の部活動と、スポーツ少年団や総合型地域スポーツクラブ、民間・個人クラブなどの学校外の活動というように、学校の「内・外」で区別されてきました。部活動改革が進むと、学校も含めて地域で行われる活動全体が地域クラブ活動となり、その中で要件を満たす団体を認定地域クラブとする、つまり認定の「有・無」で区別する考え方が一般的になっていくと想定しています。

そのため、活動の適正化や調整を行うには、認定クラブだけでなく地域クラブ活動全体の中身を把握しておく必要があります。本市ではこの7月に、習い事なども含めたアンケートを実施しました。その結果、スポーツ少年団で活動している生徒は32人(10.7%)、習い事をしている生徒は89人(29.7%)でした。

もう1つ見ていただきたいのが、生徒数と部活動(認定地域クラブ)加入者数の推移です。令和9年度以降は推計値ですが、生徒数は令和5年度の528人から令和13年度には413人に減少する見込みです。これに対して加入者数は510人から209人へと、8年間で59%減少すると見込んでいます。少子化に加入率の低下が重なる影響は、非常に大きいと考えています。

飛騨市学園構想と改革推進期間の歩み

こうした地理的な状況や人口動態を前提に、これまでの取り組みをお話しします。背景にあるのは、令和2年度から始まった「飛騨市学園構想」です。保育園から高等学校、特別支援学校、家庭、地域が総がかりで、子どもたちに「幸せな人生と持続可能な社会の創り手となる力」を育もうという地域教育魅力化プロジェクトで、「みんなで育て みんなが育つ 魅力あるまち」を創りたい地域像に掲げています。その中で、地域が目指す姿の1つとして「やりたいことに出会えるスポーツ・文化芸術活動」が位置づけられており、部活動の地域展開はまちづくりの一環でもあるのです。

改革推進期間の3年間は、令和5年度の計画・着想段階から始まりました。合同部活動のための学校間移動バスの運行や地域説明会、地域クラブ実証団体の募集などを通じて運営基盤を構築しました。令和6年度の試行・挑戦段階では、専門部署・専任職員の配置やアンケートの実施、ガイドラインの策定などを進め、実態把握と課題整理に取り組みました。令和7年度の実装前段階では、認定地域クラブの発足や移動支援の切り替え、市独自の人材バンクの開設などを行い、取り組みを見直してきました。

運営体制・送迎・指導者確保の3課題

地域展開の実現に向けては数多くの課題に直面しましたが、今回はその中から「運営体制問題」「送り迎え問題」「指導者確保・育成問題」の3つを取り上げます。いずれも地方だけでなく、都市部でも課題になりやすいものだと思います。

運営体制問題では、学校教育課の課長補佐が本来業務と兼任しながら検討を進めていたことと、地域団体との連携不足が課題でした。「学校教育」から「社会教育」へシフトするには、庁内外の横断的な連携が欠かせません。そこで、教育委員会事務局内に専門部署として「地域クラブ活動推進室」を設けました。学校教育課長を推進室長に、スポーツ振興課長、生涯学習課長、文化振興課長の4課長と、専任職員(コーディネーター)1人で構成しており、この専任職員が私です。

現在は、実施主体である認定地域クラブと、運営団体である市教育委員会を中心に、中学校や市スポーツ協会、市文化協会などと情報共有しながら、財政支援を含めた総合的なサポートを行っています。会議体としては、地域スポーツ・文化連携促進会議と、認定地域クラブが集まる地域クラブ活動総会を設けました。こうした連携により、スポーツ少年団と連携した合同体験会の開催や、美術館に隣接する工房を使った美術活動などが実現しています。ただ、地域住民や地元企業が参画しやすい環境づくりは、今後も継続して取り組むべき課題です。

送り迎え問題は、特に山間地で大きな問題です。本市では中学校間の移動に車で30〜40分かかるうえ、冬は雪も積もります。令和6年度に小学5年生〜中学3年生の保護者336人に行ったアンケートでは、約6割にあたる192人が何らかの負担を感じており、最も多かったのが練習や試合への送迎(157人)でした。負担を感じている人の約8割にあたります。さらに、送迎を負担に感じている人のうち「活動継続を悩む」が13人、「活動は断念する」が1人いました。私たちはこれを「活動離脱予備軍」と捉え、移動支援の重要性を確信しました。

本市では令和5年度から令和7年度まで、借上バスで学校間を運行していました。しかし地域展開が進むほど、団体ごとに活動時間や場所が異なり、移動ニーズが個別化していきます。バス運行委託にかかる財政負担の大きさも課題でした。そこで専用乗車券を新たに作り、普段運行している路線バスを利用する方法に切り替えました。自宅の最寄りの停留所から、これまで行けなかった活動場所まで移動できるようになっています。

この仕組みは教育委員会だけでは完結できず、公共交通担当課やスクールバス担当課、地元の公共交通事業者、スクールバス運行事業者との連携が必要でした。また、行きの時間帯に合う便がないこともあるため、平日は行きがスクールバス・帰りが路線バス、休日は行き帰りとも路線バスという運用にしています。その結果、移動に関わる時間・場所の選択肢が広がり、経費も昨年度と比べて約70%削減できました。より持続可能な体制になったと考えています。

指導者確保・育成問題については、令和6年度のアンケートで「専門的で丁寧な指導を受けられる」ことに期待する児童生徒が94.0%、保護者が81.6%に上り、指導への期待の大きさがわかりました。課題は量と質の両面にあります。

量の面では、専門的な人材が不足しており、地域に潜在する指導者候補を把握しきれていませんでした。そこで、県の人材バンクとは別に、市独自の「地域クラブ活動人材バンク」を開設しました。実績はまだ多くありませんが、指導サポーター1人、運営サポーター1人のマッチングが実現しています。潜在的なサポーターを掘り起こしていくことが、確保の鍵になると考えています。

質の面では、令和6年度から指導者研修会を開催してきました。ただ、「認定地域クラブ」「指導者」という名称だと、参加者が認定クラブの指導者に限られてしまいます。地域全体で支える体制をつくるため、今年度5月からは「スキルアップセミナー」に名称を変え、指導者以外の方も参加しやすい形にしました。累計228人に参加いただき、満足度も高い結果となっています。とはいえ、1回の受講で指導の質が上がるとは考えていません。このセミナーで大事にしているのは、次回も受けてみよう、競技団体の研修にも参加してみようという意欲を引き出すマインドセットと、種目や団体を超えて支え合うコミュニティの形成です。

「安心・安全」と地域クラブ活動文化

本市では、こうした事例を含め、地域展開の課題をスキマ時間、送迎、施設予約、指導者確保・育成、クラブ運営、活動場所、補助制度、周知、移行支援の9つに分類し、それぞれ対応策を考えてきました。今後はより子ども目線を大切にし、個々の課題を点で捉えるのではなく、子どもがクラブを選んでから参加し活動するまでを線で捉えて環境づくりを進めていきます。取り組みを知ってもらうため、お便りやSNSなどでの情報発信にも力を入れています。

改革実行期間で大事にしたいキーワードは「安心・安全」で、その主語は「すべての人」です。子どもが安心してクラブに参加し安全に活動できるか、保護者が安全な環境だと認識して安心して送り出せるか、指導者が安心して指導に注力できる準備が整っているか。そのうえで、子どものウェルビーイング、持続可能な仕組みづくり、地域コミュニティの再編という3つの視点で新たな事業を計画しています。子どもにとって、家庭、学校、クラブの時間は分断されたものではなく、一直線上に地続きでつながっています。そのことを意識しながら、関係者と連携して進めていきたいと考えています。

最後に「文化」についてお話しします。大学の講義で「部活動と聞いて、どんな言葉が思い浮かびますか?」と大学生に尋ねたところ、「青春」「チーム」といった言葉が多く挙がりました。部活動にはこうした共通のイメージ、つまり文化があります。一方、地域クラブ活動はまだイメージが定まっていない"ブラックボックス"で、それが児童生徒や保護者の不安や戸惑いにつながっていると感じています。令和8年度から13年度までの改革実行期間の6年間は、中学校の3学年が2巡する時間です。前期・後期を通じて「地域クラブってこういう活動だよね」と共感できる「地域クラブ活動文化」をつくっていくことが安心・安全にもつながり、子どもたちが幸せにスポーツや文化活動に取り組める環境になると考えています。

地域展開の最前線と運営モデル

続いて登壇いただいたのは、株式会社hacomonoの北島さん。長岡市や名古屋市などでの導入事例をもとに、多様な関係者間の連絡や慣れない集金業務、出欠管理といった地域クラブの運営課題を、デジタルの力でどう解決するかを解説いただきました。

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北島 紳也さん
株式会社hacomono 社長室 ウェルネスプラットフォーム戦略本部
公共事業部 公共推進グループリーダー

大手SIerで公共ICT戦略提案を10年経験後、2023年にhacomono参画。公共DXを牽引し、渋谷区・長岡市等の部活動地域移行や60地域以上の公共運動施設への導入・自治体課題に合わせたサービスの機能開発まで従事。

株式会社hacomonoの北島です。本日は、弊社の概要と事例をお伝えしたうえで、部活動の地域展開における実際の運営モデルのイメージをご紹介します。

弊社は「ウェルネスが広がる社会をつくる」をビジョンに掲げ、フィットネスクラブや公共運動施設、スクールなど、官民の運動機会を支える店舗・スクールのDXに取り組んできました。連絡・入会・予約・決済・施設管理までをオンラインで行えるサービスを提供しており、民間のフィットネスクラブや運動スクールでは11,000店舗以上の導入実績があります。現在はその経験を活かし、部活動の地域展開にも注力しています。

また弊社は「ブカツ・サポート・コンソーシアム」に参画しています。人材・物資・財源の確保、運営・管理ノウハウの提供、DX化など、参画各社が異なる専門性とリソースを持ち寄り、協力体制によって自治体への支援メニューを拡充しようという取り組みです。この中で弊社は、入部や月会費決済、出欠管理、施設の鍵管理を一元化するなど、部活動管理のデジタル化支援を担っています。

地域展開では参加者や指導者の管理だけでなく、学校開放や安全管理などの課題もあるため、パートナー企業とも連携しています。施設予約・学校開放では公共施設予約管理システム「Spacepad」、AIカメラによる安全管理では「Safie」との共同提案が可能です。また、京都府の福知山ユナイテッドとは、部活動地域展開モデルの推進に向けた戦略的パートナーシップを締結しています。

長岡市・名古屋市・沖縄県の導入事例

弊社のサービスは、運営団体や実施主体などさまざまなステークホルダーに導入いただいています。スポーツ庁の資料では、運営団体と実施主体の役割分担として、1つの団体が運営・管理から活動実施まですべてを担う「直営型」、運営団体が運営・管理を、地域クラブが活動実施を担う「分担型」、運営団体が活動準備まで担い、地域クラブは活動実施のみを担う「準備まで担う型」が示されています。体制によって役割分担の在り方は多様で、柔軟な連携・協力が重要です。ここからは、いくつかの導入事例をご紹介します。

1つ目は、新潟県長岡市の地域クラブ「ながおかCome(コメ)100クラブ」です。長岡市が管理主体として構想・制度設計などを担い、(公財)長岡市スポーツ協会が運営主体として申込受付や保険加入、参加料集金、指導者報酬の支払いなどを担っています。活動は各地域クラブが行う形です。弊社は、運営支援を担うスポーツデータバンク株式会社と連携し、参加者管理や指導者管理のデジタル化を支援しています。地域クラブでは、指導者が当日の出欠を取ったり保護者に連絡したりする際に、hacomonoを使っていただいています。


2つ目は、名古屋市のNPO法人A&Cスポーツです。名古屋市部活動サポート事業の中で、土日に月2回、サッカーの活動を行っています。会場は市内の中学校のグラウンドなどで、定員は1コマ25人です。年会費2,200円に加え、1回あたり1,320円(税込)の回数券を購入して参加するチケット制の運営モデルを採用しています。

3つ目は、沖縄県内での施設管理に関する実証事業です。体育館に時限式の暗証番号を設定できるキーボックスを設置し、地域クラブ別・時間帯別に番号を発行することで、鍵の授受や複製を不要にし、教頭先生の負担を軽減しています。あわせてAIカメラを設置し、安全確保を目的に映像の録画や音声の録音、AIによる解析を行っています。特に音声の記録は、後々トラブルになった際に指導者が適切に指導していたことを確認できるため、指導者の心理的安全性を守る観点でも効果を検証しています。

連絡と集金のオンライン化

ここからは、運営で起きやすい課題と解決策を4点お伝えします。

1点目は、多様な関係者間での連絡・情報流通です。地域クラブの運営には、行政、運営団体、指導者、保護者、生徒など多くの関係者が関わります。よくある課題は、連絡手段が乱立して連絡が取りにくいこと、個人のアカウントで個人情報を扱ってしまうこと、トラブル時の経緯確認がしにくいことです。セキュリティが堅牢な統一ツールで連絡し、ツール外で個人がつながらない運用にすることが、トラブル防止につながります。

弊社のサービスでは、運営関係者同士の連絡ツールとして伝言板(グループチャット)を用意しています。スレッド形式で連絡やファイル共有ができ、責任者はすべてのやり取りを参照できます。既読のユーザーも確認できるため、情報がきちんと伝わっているかまで把握できます。保護者への連絡についても、全体周知は一斉連絡、個別の内容は個別チャット、情報公開は掲示板というように、内容や範囲に応じた経路を整えています。LINE連携も可能で、LINEからの通知によって伝達率の向上も図れます。

2点目は、生徒の管理と慣れないお金の徴収業務です。地域クラブでは会費や遠征費、物販などの費用徴収が制度化されていきます。紙の申込用紙や現金・振込での売上管理は煩雑で、加入者の最新名簿を指導者に伝える手間や、未収金の管理も負担になります。そこで、オンラインでの加入受付・決済への統一を推奨しています。常に最新の加入者情報を確認でき、決済エラー時の督促も自動で行えるため、未収金について保護者へ連絡するストレスを減らし、人でしかできない業務にリソースを充てられます。

具体的には、ホームページやSNS、チラシのQRコードから入会手続きに進み、保護者はスマホからクレジットカードや口座振替で支払いができます。入会時には任意のアンケートを差し込めるため、所属中学校や既往歴などを収集できます。地域展開では、これまで学校が持っていた情報を指導者や事務局は持っていない、という環境の変化が起きます。既往歴などに配慮して練習メニューを組むためにも、こうした情報を丁寧に集められる状態を整えることが必要だと考えています。

出欠管理とクラブを横断した可視化

3点目は、練習スケジュールの共有と出欠管理です。練習日や場所の確認がしにくい、当日誰が来るのかわからない、出欠を紙に記録してExcelで集計する手間がある、といった課題がよく聞かれます。弊社のサービスでは最新のスケジュールをリアルタイムに公開でき、活動場所の変更などの連絡事項もあわせて共有できます。保護者から事前に出欠連絡を受けることも可能です。当日は、指導者がチェックインボタンを押すと保護者に安心メールが自動送信されます。出席予定の生徒が来ていない場合は、すぐに保護者へ電話し、登下校中の事故やトラブルの有無を早期に確認できます。

4点目は、地域クラブごとに運営がバラバラで全体像を把握できないという課題です。保護者や生徒にとってはクラブの情報や申込方法が探しにくく、運営側にとっては情報の集約に手間と時間がかかります。そこで、市のホームページなどから入り口を統一し、各クラブの入会やスケジュール確認を同じ仕組みで行えるようにすることで、クラブを横断した可視化と管理が可能になります。指導者や種目別のコーディネーターも、担当するクラブの状況を把握しながら運営できます。

データを政策・予算化へつなぐ将来構想

最後に将来構想です。統一した運営を行う地域が増える中で、参加者の情報や行動履歴がデータとして蓄積されてきています。
これを匿名・統計化し、種目別・学校別の加入状況や参加率、継続率などを「インパクトレポート」として出すことで、持続可能な政策・予算化の立案に活用いただけるよう企画を進めています。
さらに、個人情報であるためどこまで展開するかの調整は必要ですが、地域クラブでの活動状況を生活指導などの教育にも還元できる仕組みを構築していきたいと考えています。

また、データ活用を進めるうえで、システムの運用だけでなく、システム外での調整が必要となる制度づくりの段階から、地域とともに検討・実証を進めていくことも重要だと考えています。今後は、こうした取り組みを一緒に進められる地域との情報交換も行っていきたいと考えています。

とりかかろう!ゼロから始める部活動地域展開

3番目に登壇いただいたのは、株式会社オークスベストフィットネスの藤﨑さん。17自治体で事務局を運営してきた経験から、「クラブより先に事務局をどうつくるか」という視点で、事業開始時の進め方や運営パターン、事務局運営を支えるシステムを紹介いただきました。

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藤﨑 大隆さん
株式会社オークスベストフィットネス
(共同出展:PEOPLE HORIZON株式会社)
部活動地域展開推進本部
取締役会長/本部長

大手人材会社にて大型BPO案件等を担当。その後、株式会社オークスベストフィットネスにて令和4年度から部活動地域展開に参入、全国に先駆け千葉県柏市一般社団法人 柏スポーツ文化推進協会を主体とする部活動地域展開の事務局運営を受託。現在は全国市区町村の部活動地域展開の推進をサポートすべく全国行脚中。

最初にお伝えしたいのは、部活動の地域展開は、最初から完璧な仕組みをつくれるものではないということです。実際に地域クラブを運営してきた中でも、やってみて初めてわかることが数多く起きています。指導員をどう集めるか、保護者からの問い合わせにどう対応するか、日々の出欠確認や会費の徴収をどうするか、事故が起きたときに誰がどう連携して対応するか。地域展開で一番難しいのは、学校で当たり前に行われてきた部活動を地域クラブとして運営し、それを毎週きちんと回していくことだと思います。本日は、ゼロから始める部活動地域展開をどの順番で進めればよいのか、私たちの経験をもとにお話しします。

弊社は千葉県を拠点に、令和2年から部活動地域展開の運営業務に取り組んできました。令和8年7月末現在、事務局を運営する自治体は17、地域クラブの生徒数は12,000人、指導員数は1,500人にのぼります。

カギを握る事務局づくり

地域展開がなかなか進まない理由は、誰がどうやって運営するのか、誰が指導するのか、誰が事務局として取りまとめるのか、という3つのポイントにあると考えています。私たちは、単なるアプリの会社やフィットネスクラブとしてではなく、事務局の現場運営の実績を積んできました。その経験から、地域展開を始めるうえで重要な3大要素をお伝えします。

1つ目は、事務局運営のノウハウです。これまでの事務局構築や各市区町村のモデルを検証し、規模や生徒数に合わせて、教育委員会とともにそれぞれにカスタマイズした事務局を構築していくことが大切です。2つ目は、地域クラブ運営上のアプリ・システムです。市区町村専用のポータルサイト、生徒管理・コミュニケーションアプリ、指導員管理アプリ、問い合わせセンターなどを一元化したものが必要になります。3つ目は、事務局運営のための人員・組織です。市区町村との協議や構築相談に随時対応でき、地域クラブ運営の人員体制を確保していること、そして指導員の確保や育成のノウハウを持っていることが求められます。地域展開の本当の課題は、クラブをつくることよりも、事務局をどうつくるかにあるのではないでしょうか。

プロポーザルから運用開始までの流れ

次に、事業開始時の進め方です。現在、多くの市区町村が業務委託としてプロポーザルを実施していると思います。弊社はまず各市区町村に伺い、方向性やスケジュール、目指す姿を確認したうえでプランニングを提案します。次に、仕様と予算を固めるための参考見積などの情報を提供し、作成された募集要項・仕様書が実施可能な内容かどうかの最終チェックもお手伝いします。プロポーザルの段階では、これまでの経験をもとに、加点となる項目を網羅した提案書を作成・提案します。そのうえで運用開始となります。運用開始後は協議会や定期的なミーティングを行いながら、同時に次年度の構築も始め、市区町村と一緒に地域へのPR活動も行っていきます。規模感や予算の組み方、受益者負担をどの程度にするかといった点についても、これまでのノウハウを提供しています。

地域の実情に合わせた運営パターン

地域クラブの運営パターンは大きく3つあります。

パターン1は、地域にある既存クラブを募集してエリア・学校単位で運営を委託し、外部クラブが足りないエリアでは直営でクラブを立ち上げる形です。パターン2は、部活動をすべて直営クラブに切り替えて新たに立ち上げ、既存クラブには指導員の派遣などの協力を要請する形です。パターン3は、既存クラブを募集してエリア・学校単位で運営を委託し、すべてが埋まるまで募集を続ける形です。大きな都市ではない場合、パターン2で事務局をつくり、人数が足りないところは一部統合しながら独自のクラブを立ち上げていくケースが多いと感じています。いずれのパターンでも、事務局が各クラブを管理し、参加する子どもたちをすべて把握できる状態をつくったうえで市区町村と連携していくことが、生産性の高い事務局運営につながります。

地域クラブの事務局は、教育委員会や学校が担ってきた業務を一括で請け負い、教育委員会や学校には報告を入れる形になります。運営図案では、事務局を中心に、生徒管理・指導員管理システム、専用コールセンター、巡回スタッフ、指導員が連携し、教育委員会や各中学校、部活動顧問とも情報を共有します。保護者からの問い合わせは専用コールセンターが受け、指導員は生徒への指導に集中できる体制です。

ポータル・アプリ・コールセンターによる一元管理

事務局運営を円滑に進めるため、弊社ではシステムを投入しています。地域クラブの規模が100人であれば、ExcelやLINEでも何とかなるかもしれません。しかし1,000人、2,000人となり、安全性やコンプライアンスまで考えると、ツールは不可欠です。人力で行うか、システムを使いこなすかで、生産性は大きく変わります。

1つ目は、地域クラブ専用のポータルサイト「地域クラブジャパン」です。自治体専用のエリアページを持つことができ、自治体の情報発信や指導員の募集・登録、生徒のクラブ登録、全国の他自治体の情報、国が発信する情報、指導員の人材バンクなどをオールインワンで扱えます。

2つ目は、地域クラブに特化した生徒管理・コミュニケーションアプリ「みんクラ」です。保護者・指導員・事務局・顧問(学校)が"つたえる""つなげる""つながる"ためのアプリで、お知らせやカレンダー、チャット、欠席・遅刻・早退の連絡、保険利用申請などの機能を備えています。兄弟がいる場合も1つの画面で切り替えられます。活動開始・終了時には保護者に通知が届くため、安心につながります。会費はクレジットカード、キャリア決済、PayPay、コンビニ支払いから選んで支払えます。

3つ目は、指導員管理・人材バンクアプリ「クラジョブ」です。指導員の募集ページや応募フォームの作成、応募管理から、情報・契約管理、勤怠管理、活動報告、報酬計算、明細や支払調書の発行まで一元的に行えます。勤怠は現地到着時と活動終了時に入力し、活動終了後に日報を入力する3ステップで、入力内容は即座に事務局が把握できます。

さらに、専用コールセンター「よろずやコールセンター」を市区町村ごとに設置しています。各市区町村の状況を把握した専任スタッフが対応し、音声認識で振り分けられる仕組みです。営業時間外はAIによるQ&AとSNSで対応し、対応できないイレギュラーな内容は各市区町村の事務局や担当者に転送されるため、24時間365日の対応が可能です。

最後に一番お伝えしたかったのは、地域クラブの展開に正解はないということです。自治体の規模に合わせて運営していくことが大切であり、私たちはゼロから考えるためのお手伝いをしていきたいと考えています。

掛川市における部活動地域展開の概要と進捗状況

4番目は掛川市の天野さん。学校単位の部活動の限界や地域間格差、子どもたちのニーズの多様化を背景に、令和8年夏に部活動を終了した同市。運営団体、競技団体とともに実施体制を築き、部活動の97を上回る102の「かけがわ地域クラブ」を生み出すまでの道のりを語っていただきました。

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天野 誠さん
掛川市 教育委員会 教育政策課
指導主事

令和7年度より、掛川市教育委員会教育政策課指導主事として部活動地域展開推進事業を担当。令和3年度より部活動の地域展開を推進してきた掛川市において、今年度の部活動地域展開完全実施に向けた取り組みを推進していく。

静岡県掛川市教育委員会教育政策課の天野です。掛川市では、令和8年夏に部活動を終了し、「かけがわ地域クラブ」という新たな形のスポーツ・文化芸術活動を始めました。平日・休日ともに完全実施しており、私も今、各クラブの様子を巡回しているところです。本日は、なぜ部活動の終了を決断したのか、どのような形で地域展開を進めてきたのかをお話しします。

掛川市は、平成17年に旧掛川市と大東町、大須賀町が合併して誕生しました。人口は113,894人、面積は265.7㎢で、小学校が21校(児童数5,960人)、中学校が9校(生徒数3,223人)あります(令和8年掛川市統計書、3月末現在)。人口規模によって地域展開の進め方は大きく変わると思いますので、参考にしていただければと思います。

部活動終了を決断した背景

まず、部活動の終了を決断した背景です。市内9校には、全部で97の部活動があります。そのうちピンク色で示しているのが、単独チームでの活動が難しい部活動です。そして、その状況は地域によって大きく異なっていました。

例えば東中学校区では、中学校で取り組める種目が女子で11、男子で10あるのに対し、栄川中学校区では女子で5、男子で4しかありません。令和3年に中学校区の小学3〜6年生に「中学校で取り組みたい種目は何か」を尋ねたアンケートでは、47%が「部活動にない」と答えました。学校単位で部活動を設置することの限界が見えてきたのです。

この差は、少子化によってさらに広がります。約10年後の生徒数を推計すると、市全体では3,205人から2,499人へと約22%減少します。学校別では栄川中学校が約45%減る一方で、東中学校は約10%減、西中学校は減少なしという見込みです。生徒数が少ない学校ほど少子化の影響が大きく、地域間格差は大きく広がっていくことが明らかになりました。

子どもたちのニーズも多様化しています。令和6年9月に市内の小学4〜6年生の保護者に行ったアンケート(回答率84%、2,752人/3,267人)では、希望する活動種目の中に、これまでの部活動にはなかったバドミントンや料理が入ってきました。活動希望日数は週1日が13%、週2日が30%、週3日が35%、週4日以上が22%で、求める活動内容はエンジョイ志向が25%、中程度が49%、競技志向が26%と分かれています。2つ以上の活動に取り組みたいという回答も31%あり、令和5年度の24%から増えています。

教員の働き方の面でも、令和6年度に市内中学校の主顧問・副顧問を対象にアンケートを行いました。中学校教職員の78%が部活動を負担に感じており、主な理由は放課後の授業準備時間やプライベートの時間の確保、大会役員や審判、指導力不足でした。「競技経験も指導経験もない競技等をもつことが大変」という声も寄せられています。こうした理由から、部活動を存続することは難しいと判断し、令和8年夏に部活動を終了して地域展開することを打ち出しました。

運営団体、競技団体とともに築いた受け皿と公認制度

次に、かけがわ地域クラブ創設にいたるまでの流れです。令和4年度には部活動地域展開推進計画を策定し、2つの理念を掲げました。1つは「多様な価値観、考え方に応えることのできる環境にしたい」、もう1つは「誰もが無理なく、持続できるスポーツ・文化芸術活動にしたい」というものです。この理念は今も大切にしています。現在の部活動という枠組みでは実現が難しいため、既存の形にとらわれず新たな形をつくる。「部活動観」の大転換を図ろうと、メッセージを送り続けてきました。

令和5年度には、「かけがわ地域クラブ設立連絡協議会」を設置しました。ただ、地域クラブは種目ごとに実態がかなり異なるため、協議会だけでは実行が難しい面があります。そこで、新たな地域クラブ設置に向けた「種目検討部会」を設けました。前任者によると、初期段階でこの場をつくったことが非常に大きかったそうです。これは中学校の部活動だけの問題ではなく、種目・競技の存続の問題でもあります。先延ばしにするほど困難になるため、行政、協会・連盟、運営団体、教員を含む地域指導者が一体となって進めていくことにしました。部活動種目の受け皿をつくるにあたっては、何チームが適正か、場所や時間をどうするかといったことを種目ごとに話し合い、実施体制をつくっていきました。

その1つの事例が、サッカー部がなかった南部地域で先行創設したクラブです。中学生にサッカーができる環境をつくりたいサッカー協会、団体種目の運営を経験して自らの役割を明確にしたいスポーツ協会、取り組みたい種目で令和5年度に第1位だったサッカーのニーズに応えたい教育委員会、それぞれの思いが1つになって生まれたのがFC掛川Southです。令和6年6月には地元企業と県外のユニフォーム会社から試合着と練習着の提供を受け、同月と令和7年6月に県のクラブ支部予選に出場しています。

一方、部活動種目の受け皿だけでは、多種多様なニーズに応えるには限界があります。そこで市では、令和4年度から独自の「公認地域クラブ制度」を始めました。中学生が参加できる、市内での活動が原則、営利目的を主としない、指導者等が複数体制であること、規約(会則)がある、指導者研修を受講している、ガイドラインに沿った適正な活動内容である、という7つの公認条件を満たしたクラブを公認するものです。あわせて学校施設の優先予約制度や、公認指導者資格制度も始めました。

令和6年度には「地域クラブサポートセンター」を設置し、クラブ創設に挑戦する方を支える仕組みを整えました。支援は3つの柱で構成しています。1つ目はクラブ創設相談で、活動会場の調整やクラブ会則作成の支援、他クラブとの連携・調整、指導希望者の紹介、運営支援システムの事例紹介を行います。2つ目は広報活動支援で、子どもや保護者への広報、広報パンフレットへの掲載、市ホームページへの募集案内掲載などを行います。3つ目は研修機会の提供で、資質向上研修、救命講習を含む安全管理研修、子ども理解研修などを実施しており、令和7年度の受講実績は64人です。こうした取り組みを経て、令和7年度にはかけがわ地域クラブガイドラインの策定や各種目の実施体制の完成、体験会の実施を行い、令和8年度のスタートを迎えました。

102クラブ・39種目に広がった選択肢

では、かけがわ地域クラブの全体像をご説明します。かけがわ地域クラブは部活動の受け皿等となるクラブと市民団体のクラブの2つの柱で構成されています。その中で、部活動の受け皿となる種目を中心とするクラブは掛川市スポーツ協会と掛川市文化財団が運営し、市民団体のクラブは各団体が多種多様なクラブを運営しています。総合型スポーツクラブや地域団体のクラブ、スポーツ少年団、民間企業のクラブ、塾や教室などは、これまでどおり並行して存在しています。

令和8年7月3日現在、かけがわ地域クラブは102クラブあり、部活動の97を上回る数を確保できました。内訳は、部活動の受け皿等となるクラブが39クラブで、そのうち16クラブは公認地域クラブとして先行実施で創設済みです。多種多様なクラブは63クラブ(令和8年4月時点)です。種目数は、部活動ではスポーツ系10種目、文化系4種目の計14種目でしたが、かけがわ地域クラブではスポーツ系19種目、文化系20種目の計39種目まで広がりました。特に学校部活動では少なかった文化系が増え、アロマセラピーや農業、バスケットボールをしながら英会話を学ぶ「英会話バスケ」など、子どもたちの多様なニーズに応えるクラブが生まれています。

加入状況については、中学1〜2年生の部活動加入者数の割合が令和8年5月時点で約53%でした。かけがわ地域クラブへの加入希望者は、令和7年7月の調査時点では45%でしたが、令和8年6月現在の加入者数割合は約52%です。前向きに迷っている生徒も一定数いるため、加入者数は今後も増える見通しです。なお、昨年度の調査では、かけがわ地域クラブに加入していない生徒の半数、約25%は、すでに民間などのクラブに加入しています。

地域に根ざす循環型のクラブへ

最後に、かけがわ地域クラブの未来についてお話しします。市民団体が運営するクラブの1つに、「報徳いもこじ農楽塾やさいクラブ」があります。子どもたちは放課後に畑へ寄り、水やりをしたり、友だちや地域の方と対話したりしています。地域クラブである以上、地域に根ざすことが大切だと考えています。地域に愛着を持ち、一度は地域を離れても、やがて戻ってきて次の世代の子どもたちを指導する。掛川に根づく報徳の教えは生涯学習を基盤としており、学んだものが次へと循環していく、そんな地域循環型のかけがわ地域クラブを目指していきたいと思います。

巡回で子どもたちと話すと、「専門の指導者に教えてもらえてうれしい」「部活動にはなかった種目に参加できてうれしい」といった声が聞かれます。用具や場所など、具体的な課題はこれから出てくると思います。皆さんの声を聞きながら1つずつ解決していくとともに、全国の自治体の皆さんと情報を共有しながら、ともに乗り越えていければと考えています。

【参加者とのQ&A】(※一部抜粋)

Q:平日の活動は夜何時からですか?

A:おおむね18時30分〜20時30分、または19時〜21時ごろです。保護者からは、遅くしてほしいという声があり開始時間を遅らせたクラブもあります。放課後すぐに始めると、拠点校まで送迎できないためです。保護者の送迎可能な時間帯も考え、多くのクラブでは夜に活動時間を設定しています。

活動費の徴収で苦労しないためのICTの選び方

続いて、GMOエンペイ株式会社の大原さんがご登壇。どの運営の型を選んでも避けて通れない活動費の徴収について、「集金責任の所在」を分岐点に整理しながら、ICTツールの選択肢と選ぶ際のポイントを共有いただきました。

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大原 瞳さん
GMOエンペイ株式会社 営業戦略部

2023年よりGMOエンペイにてマーケティング活動に従事。ウェビナーやダウンロード資料の企画制作など、教育に携わる方のお役に立つコンテンツを提供すべく活動している。

GMOエンペイの大原です。本日は、活動費の徴収で苦労しないためのICTの選び方についてお話しします。弊社は2018年11月に設立し、2020年11月にサービスを開始しました。「やさしいフィンテックを。」をミッションに、保育・教育業界のDX・キャッシュレス化を推進しており、創業以来、お金を集める「集金」に向き合い続けてきた会社です。

本日は、部活動の運営形態、「活動費の徴収」という課題、そして活動費の徴収におけるICTの選択肢と選び方の3つの流れでお話しします。

地域展開における運営の型

まず、部活動の運営形態です。大きな流れとしては、従来型の学校部活動から、合同部活動型や指導員活用型といった「地域連携」を経て、地域クラブ活動としての「地域展開(地域移行)」へと進んでいきます。地域連携は、地域移行がまだ難しい自治体向けの段階的な措置という位置づけです。実際には、種目ごとに複数の型を組み合わせている自治体も多くあります。

地域展開の運営形態については、私が調べた範囲で分類すると次のようになります。福岡県宗像市のような「市区町村運営型」、長崎県長与町の長与スポーツクラブのように既存の団体が受け皿となる「地域団体等運営型」、千葉県柏市の柏スポーツ文化推進協会のような「任意団体設立型」、柏市の一般社団法人 柏スポーツ文化推進協会をオークスベストフィットネスが受託している「民間事業者運営型」、長野市が近畿日本ツーリストに事務局を委託している「運営委託(BPO等)」、そして彦根市稲枝地区の学校支援協議会のような「その他の類型」です。これはあくまで私なりの分類で、組み合わせもありますし、正解の型があるわけではありません。本日は、どの型を選ぶべきかではなく、どの型を選んでも必ず出てくる課題として、活動費の徴収についてお話しします。

従来の部費徴収に潜む負担とリスク

そもそも従来の部活動でも、部費の徴収はありました。部費は「私費」であるため、自治体などによって異なりますが、保護者会の会計役員が予算策定や決算、口座管理を担うことが多く、生徒会が行う場合もあります。顧問教員が案内文の配布や現金の受け取りなど集金窓口を担うケースもありましたが、近年は教員の非関与化が進んでいます。集金の手段は、生徒が集金袋に現金を入れて持参するスタイルが主流で、現金の校内持ち込み事故を防ぐため、保護者会名義の口座への振込を併用するケースもあります。毎月の固定部費に加えて、遠征交通費や大会参加費、ユニフォーム代などをその都度集め、保護者役員が手作業で帳簿付けや領収書の発行、年度末の会計監査を行っています。

こうした運用には課題やリスクがあります。現金の集計や未納者への催促は、保護者役員や教員にとって大きな精神的・時間的負担です。現金の盗難・紛失リスクもありますし、金融機関の規定が厳しくなり、任意団体の口座をつくること自体が難しくなっています。お金の管理は、従来の部活動でもすでに難しい課題だったのです。

分岐点は「集金責任の所在」

では、地域展開によって何が変わるのか。まず、集金の主体が変わる可能性があります。ここで重要なのは、集金の負担が残るかどうかは運営の型ではなく、「集金責任の所在」に関わるという点です。会員管理や会費を集める基盤をすでに持つ民間事業者や総合型地域スポーツクラブなどに集金責任が渡れば、そこで完結し、新しい負担は生まれません。一方、新設の任意団体や行政直轄の場合、あるいは運営は委託しても集金だけは自治体に残るケースでは、新しい仕組みが初めて必要になります。運営の型そのものではなく、「委任先の集金責任と基盤の有無」が分岐点になるのです。

運営の型ごとに想定される集金主体を整理すると、従来型の学校部活動では学校が集金主体となり、新たな仕組みは必要ありません。地域連携の合同部活動型では各参加校、指導員活用型では従来の枠のまま学校が集金主体となりますが、いずれも新たな構築が必要になります。地域展開では、市区町村運営型は自治体(教育委員会等)が集金主体となり、新規構築の必要性は高くなります。既存団体による地域団体等運営型は、総合型スポーツクラブなど当該団体が主体となり、必要性は低〜中程度です。任意団体設立型は新設団体が主体となるため高く、民間事業者運営型は当該事業者が主体となるため低いと考えています。運営委託(BPO等)は、委託先と自治体のどちらが担うかが契約次第で、その他の類型では保護者会や同窓会などが主体となり、必要性は高くなります。多くのケースで、活動費の徴収を新たに運用として構築する必要が出てくると想定しています。

地域展開によって、集める費目も変わります。従来の部費や用具・ユニフォーム代、遠征費・大会参加費、保護者会費に加えて、会場費(施設利用料)や指導者謝金、保険料、事務局運営費などが加わってきます。費目は増えますが、その多くは従来の費用とも重なります。

では、どのような課題が生じるのか。国の「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」では、地域クラブ活動の認定要件として、公正かつ適切な会計処理と、関係者への適切な情報開示による透明性の確保が明記されています。ただ集めるだけでなく、何にどう使ったかをきちんと示す必要があるのです。また、指導者などの外部への支払い業務自体は、2017年度からの部活動指導員制度ですでに発生していますが、地域移行によってその規模や頻度が増えていきます。回数や金額が増えれば手間も増えるため、その負担を誰が担うのかを考えておく必要があります。その解決の選択肢の1つが、ICTの活用です。

オールインワン型と決済特化型の選び方

ここで整理しておきたいのは、「誰が運営するか」という選択と、「集金にどのICTツールを使うか」という選択は、実は別の軸の意思決定だということです。運営を外部の事業者や団体に委託すると判断した場合でも、集金まで委託先が引き受けるのか、自治体側に残るのかは契約の設計次第で変わります。そのため、運営を委託する場合は、契約時点で3つのポイントを確認していただきたいと思います。1つ目は、集金まで委託先が引き受けるかどうかです。自治体側に残る設計も少なくありません。2つ目は、委託先が既存の集金基盤を持っているかどうかです。持っていなければ、そこが新しい負担になります。3つ目は、持っていない場合の選択肢をあらかじめ用意しておくことです。委託先に決済特化型のツールを導入してもらう道もあります。

集金のICT化には、大きく2つの選択肢があります。1つは、会員管理やスケジュール、決済を一体で導入する「オールインワン型」です。本日ご登壇のhacomonoさんやオークスベストフィットネスさんのサービスのように、すべてを管理できるのは大きな利点です。ある程度まとまった予算や体制がある自治体・運営団体に向いていますが、機能が多い分、単価は高くなりやすい傾向があります。もう1つは、既存の会員管理や運営体制は維持したまま、集金だけをキャッシュレス化する「決済特化型」で、弊社のサービスはこちらに該当します。決済機能に絞っている分、単価を抑えて導入でき、既存の仕組みを大きく変えたくない、まず一歩から始めたいという自治体・運営団体に向いています。どちらが良い・悪いではなく、運営の在り方や予算に合わせて、何がフィットするかを検討いただければと思います。

最後に、ICTを選ぶ際に確認していただきたいポイントを5つお伝えします。

1つ目は、集金責任の所在を契約時点で確認すること。2つ目は、委託先・受け皿が既存の集金基盤を持っているかを確認すること。3つ目は、会員管理まで変える必要があるのか、集金だけで十分なのかを見極めること。4つ目は、減免対応など会費体系の複雑さに対応できるかを確認すること。5つ目は、機能過多に注意し、単価と機能のバランスを見極めることです。

弊社の決済特化型サービス「enpay by GMO」は、請求、支払い、集計・管理の3ステップをLINEを通じて行うことで、簡単に集金業務を完了できます。LINEを使うため、新たなアプリのダウンロードやメールは不要で、コミュニケーションロスを減らせます。支払い方法は、PayPayやau PAY、d払い、クレジットカード、コンビニ払いに対応しており、クレジットカードによる自動決済も設定できます。活動費の徴収をキャッシュレス化したいとお考えの際に、後悔のない選択をしていただくための参考になれば幸いです。

スポーツの力で子どもの未来をつくる『Athlete Academy アスアカ』の紹介

最後に登壇したのは、トヨタ・コニック・プロ株式会社の小川さん。指導者不足や指導格差が顕在化する中、トヨタアスリートによるオンライン指導サービス「アスアカ」を通じて、すべての部活生にスポーツを通じた成長機会を届ける取り組みを提案いただいた。

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小川 俊一さん
トヨタ・コニック・プロ株式会社
リテール事業本部 リテールマーケティング部
このまちリレーションズユニット

2022年より「スポーツの力で子どもの未来をつくる」をテーマに事業開発に取り組む。子どもの運動能力の特徴や自分に向いているスポーツが分かる「SPORTS SPOT スポスポ」(スポーツ能力測定会)などを推進している。

トヨタ・コニック・プロの小川です。本日は、部活動を支援するスポーツ・オンライン指導サービス「Athlete Academy(アスアカ)」についてご紹介します。

当社は、トヨタグループのマーケティングやブランディング、事業開発力を向上させ、社会との接点から生まれる新たな価値の創出に挑戦する会社です。ブランディング、マーケティング、リテールマーケティング、新規事業開発の4つの事業を展開しています。

スポーツを通じた成長機会の格差解消

まず、アスアカが生まれた背景と想いをお話しします。ご存じのとおり、ここ数年、中学校部活動の指導者不足や指導格差などの問題が、地域移行に伴って顕在化しています。私自身も子どもを持つ親として、スポーツを通じた自己成長や学びの機会が減り、格差が広がっていることをリアルに感じていました。これは将来の子どもの成長に影響するだけでなく、格差による人材流出を生み、まちづくりにもつながる問題だと考えています。

そこで、すべての子どもたちにスポーツを通じた成長の機会を提供したい。この想いを実現するために着目したのが、トヨタのアスリートやチームの知見・経験です。スポーツは、向上心やチームワークの大切さなどさまざまなことを学べ、子どもたちの将来につながる人生の可能性を広げてくれます。地域や経済格差による成長機会の格差を解消し、未来の地域を担う子どもたちの成長に貢献したいという想いでスタートしたのが、アスアカです。

トヨタアスリートによるオンライン指導

アスアカは、令和8年4月に正式ローンチした部活動支援のスポーツ・オンライン指導サービスです。競技の技術力向上とあわせて、スポーツを通じた人としての成長を実現することを目指しています。

指導を行うのは、現役やOB・OGのトヨタアスリートです。特徴は、豊富な競技経験と社会人経験の両方を持っていることです。試行錯誤の中でたどり着いたアドバイスや練習方法を提供するとともに、競技の技術向上の過程で得られる課題解決能力などの思考力を、将来社会で活躍するための力として学ぶことができます。

指導形式は2つあります。1つ目は、競技別に用意した指導プログラムです。今年度は野球からスタートし、順次競技を拡大する予定です。1つのプログラムは60分×4回を3カ月かけて行うグループ形式で、受講者は10〜15人を想定しています。指導者は部活生と双方向のコミュニケーションを取りながら指導し、オンラインならではの資料や画像、映像を活用するため、内容を理解しやすいのが特長です。2つ目は、課題動画の提出です。受講者は指導者から与えられたテーマに合わせて動画を提出し、指導者が1人ひとりの動画を確認するため、自分に合ったアドバイスを受けたり、質問に答えてもらったりできます。

指導プログラムは、今の自分を認めるところから始め、正しいフォームや改善方法を知り、理想とする活躍する自分へと近づいていけるよう、部活生が成長を実感できる構成にしています。

基本的な進行スケジュールは次のとおりです。まず受講の約2週間前に、部活動顧問と指導者で事前ミーティングを行い、現状や指導内容を確認します。部活生には受講前に動画を提出してもらい、現状を把握します。講座①では自己紹介と座学、その1週間後の講座②では練習メニューを学びます。十分な練習期間を置いた講座③ではフォームを確認し、追加の練習メニューを紹介します。そして講座④で再びフォームを確認し、人としての成長につなげていきます。講座③と④の前にも動画を提出してもらい、成長を確認していきます。

今年度の野球部向けには、トヨタアスリートのコーチや選手による、バッティング、スローイング、守備などのテーマのプログラムを展開しています。

オンライン指導の形式をとっている理由は3つあります。1つ目は、トヨタアスリートの指導内容をどこへでも届けられることです。地方の山間部や沿岸部の部活生にも指導機会を提供できます。2つ目は、単発ではなく複数回の指導を提供できるため、部活生が自分の成長を実感できることです。3つ目は、合同部活動など部活動運営の変化に合わせた指導ができることです。移動負担をなくし、短い活動時間にも対応できます。

指導格差や顧問負担への解決策

これまでに、トヨタ自動車硬式野球部の辰巳コーチによる「バッティング〜インサイドアウトと力の伝え方〜」をテーマにトライアルを実施しました。こうした取り組みから、アスアカは部活動の地域展開の主な課題を解決できると考えています。

1つ目は、指導力の格差です。指導者不足や指導経験の少ない指導者という課題に対して、トヨタアスリートの知見・経験を活かした競技力向上の指導を提供します。部活生はビギナーからトップレベルまでさまざまな指導を経験でき、成長の可能性が広がります。部活動顧問や地域指導員は、トップレベルの指導方法を学ぶことで、指導力のボトムアップにつなげられます。

2つ目は、教育的観点での指導の推進です。スポーツを通じて得られる思考力、いわば未来型スキルを学ぶなど、人としての成長を視野に入れた指導を提供します。部活生には、スポーツを通じた心身の健康と幸福というウェルビーイングにつながる価値を、地域指導員には指導方法のマインドセットの機会を提供できます。

3つ目は、合同部活動チームの運営です。山間部や沿岸部、平日の少人数、土日の部活動指導といった課題に対し、DXを活用した遠隔指導を提供します。少人数でも参加できるため競技の選択肢が広がるほか、平日に複数の学校で同じ指導を受けることで他校との交流が生まれ、合同部活動のチーム力の向上にもつながります。

4つ目は、部活動顧問の負担軽減です。指導プログラムの提供や顧問との連携によって、指導内容の検討・調整にかかる工数を減らせます。関わるところと任せるところの役割分担を明確にすることで精神的な負担を軽減し、部活動への新たな関わり方を構築できます。地域指導員にとっても、指導者同士の連携が生まれることで負担が減り、持続的な指導の推進につながります。

自治体の皆さまにご紹介する中で、よくいただく質問が3つあります。1つ目は「継続的な指導はできるのか」です。複数のプログラムを組み合わせることで、年間を通じた部活動支援が可能です。2つ目は「リアルの指導や、より多くの部活生が受講できる機会もつくれないか」です。基本のオンライン双方向型に加えて、オンラインとリアル1〜2回を組み合わせたハイブリッド型や、同じ自治体内の他の中学校に向けた同時配信・二次利用など、ご要望に合わせて受講形態をアレンジできます。3つ目は「顧問や外部指導員など、教える側にも指導ができないか」です。各プログラムのテーマについて指導者向けのプログラムも用意しており、指導者のスキルアップ支援としてご活用いただけます。

実施にあたっては、指導する中学校の調整・選定、Wi-FiやZoomの環境準備、可能であれば1人1台のPCかタブレットの用意、そして部活生の状況や通信環境を把握するための部活動顧問との事前ミーティングが必要になります。

2年半の部活動に成長のきっかけを

最後に、トライアルでいただいた声をご紹介します。自治体からは「山間部の合同部活動チームは、大会を勝ち進むのは難しいのですが、合同部活動チームとして市大会を勝ち抜き、県大会へ出場できました。地域の人々も地元の学校の活躍を喜び、大変盛り上がった。普段の部活動顧問の指導は勿論だが、アスアカの受講がキッカケとなり、子どもたちに影響を与えたと思う」という声をいただきました。部活動顧問からは「色々な人の野球観を子どもたちに学ばせたい。自分の指導で伸び悩む、結果が出ない子がいた場合、他の指導により変化が出るかもしれないので、子どもの成長の機会を増やすという意味で色々な人の指導を受けることは重要」という言葉をいただきました。そして部活生からは、「もともと運動することが好きではなく、どの競技も長続きしなかった。ただ、今回の受講を通じて、『やってみたい、できるようになりたい』と思うことが増え、部活が楽しみになった、野球が好きになった。指導を継続してほしいし、バッティング以外にも守備や走塁を教えてほしい」という声が届きました。

部活生は、1つの成長機会、つまりきっかけや出会いによって大きく変わることができます。しかし、部活動の活動期間はわずか2年半です。部活動の環境によって成長の機会に恵まれず、何となく終わってしまうことをなくしたい。自治体や地域の皆さまと一緒に、すべての部活生が成長できる機会を提供していきたいと考えています。