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【セミナーレポート】自治体の情報政策の今がわかる3日間!2026~ジチタイワークス・スペシャルセミナー~【DAY2】

情報政策
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【セミナーレポート】自治体の情報政策の今がわかる3日間!2026~ジチタイワークス・スペシャルセミナー~【DAY2】

生成AIの業務利活用や職員の「働き方改革」、2030年を見据えたネットワークのあり方や地方自治体法改正による新たなセキュリティ対策——。こうした課題に対応するため、省庁の方針と先進自治体の実践を一度に確認できる場として、スペシャルセミナーを3日にかけて開催しました。

デジタル庁・総務省による最新施策の解説に加え、先進自治体による具体的な取組事例や、有識者を交え率直に意見を交わすトークセッションを通じて、自治体情報政策の“今”を捉え、今後の方向性を考えるヒントをお届けします。

概要

■テーマ:自治体の情報政策の今がわかる3日間!2026~ジチタイワークス・スペシャルセミナー~
■実施日:令和8年7月16日(木)
■参加費:無料
■申込者数:177人

現場視点が拓くデジタルの第一歩

最初に話を伺ったのは、宮崎県都城市の佐藤泰格さん。生成AIの活用や業務改革の取組事例をもとに、現場に定着させるためのポイントを紹介していただきました。デジタル活用を進めるための具体的なヒントを、ぜひ見つけてください。

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【講師】
佐藤 泰格 さん
宮崎県 都城市
デジタル統括課 副課長

「現場視点」だけではうまくいかない

デジタル事業でよくある失敗が、「導入したのに使われない」「便利になるはずが、かえって職員が大変になった」というものです。その多くは、現場の視点が欠けていることが原因だと考えられます。

一方で、現場の声を全て盛り込めばよいわけでもありません。「今やっている業務を全部システムに入れたい」「こんなケースにも対応したい」と機能を増やしすぎれば、結果として現場が大変になったり、使いにくくなったりするシステムになってしまう可能性が高いからです。そこで必要なのは、現場視点と企画視点の両立です。現場の困りごとを知りながら、「その業務は本当に必要なのか」「もっと簡単な方法はないか」と一歩引いて考える。この両方がなければ、よいDXにはなりません。

都城市では、令和8年度に全ての部でデジタル関連の新規事業を立案しています。これはデジタル統括課だけで進めているわけではなく、総合政策課、情報政策課、財政課、各部局の総括・デジタル化推進担当が関わっています。各部には人事で正副2名のDX推進リーダーを配置し、部内の業務を把握し、部長ともコミュニケーションを取れる職員に担ってもらっています。

中でも、デジタル統括課と財政課の連携は本市の大きな強みです。令和8年度は財政課の担当者自身にも「担当部でデジタル新規事業を立案する」という役割を持ってもらっています。現場と一緒に企画を練っても、最後の予算査定でダメになれば、担当課には疲労感だけが残ります。だからこそ、財政部門にも早い段階から入ってもらい、既存事業の見直しまで含めて考えることが重要だと思っています。

全庁的なテーマではワーキンググループもつくりますが、あえて大人数にはしません。コアメンバーで月2回程度集まり、対面で言いにくいことも含めて話し、Todoの進捗を確認します。改革は通常業務に追われると後回しになりやすいため、短いサイクルで動かすことを意識しています。

「めんどくさい」を年間100件以上集める

DXの起点は現場の課題です。そこで、都城市では年度当初に全庁へ調査を行い、年間100件以上の課題や問題点を拾っています。ただ、「課題を挙げてください」と大上段に構えるとなかなか出てきません。ポイントは「『めんどくさいこと』『違和感があること』『気になること』を教えてください」と聞くことです。回答期間も長めに設定し、定期的にリマインドします。課単位だけではなく個人にも聞きます。

さらに、集まった課題に対して、いきなり新しいツールを探すことはしません。まずは業務フローを見直したり、そもそも仕事をやめたりといった「アナログ面」で解決できないかを考えます。次に既存ツールを使えないかを検討し、それでも解決しなければ新たなデジタルを導入するという流れです。

その代表例が「書かないワンストップ窓口」です。都城市では、もともと、業務の属人化やマイナンバーカード対応による業務量の増加が課題として挙がっていました。住民からも「待ち時間が長い」「書くものが多い」という声がありました。

まず取り組んだのはアナログ改革です。職員自身が住民になりきって手続きをする「窓口利用体験調査」を行い、発券機の位置や案内、職員の説明内容などを見直しました。さらに、「手続きをデジタル化する」前に、その手続き自体をなくせないかも考えます。例えば医療受給者証の住所欄をなくし、条例を改正することで住所変更の届け出や返還義務をなくした事例があります。国の制度が障壁なら地方分権改革提案も行い、令和8年度には窓口関連だけで12件を提案しています。

デジタルを入れる前に「仕事そのもの」を変える

この考え方は窓口だけではありません。例えば、財務会計システムを刷新する際には、操作を画面上で案内する「テックタッチ」を導入しました。ただ、その前に会計事務担当者会で半年間かけて業務を見直し、分割払チェックリストの廃止や消耗品の一括発注・一括支払、請求書様式の見直しなど、例規改正を含め約30件の事務改善を行っています。

さらに、会計・予算・契約・旅費など複数のマニュアルなどをRAGで検索できるようにし、問い合わせる側・答える側双方の負担を減らしています。利用ログからよく聞かれる内容を把握し、Q&Aの作成やマニュアル改定にもつなげています。

社会課題への対応でも同じです。生理用品を無料提供するサービスでは、単にデジタルサービスを導入しようとしても、公共施設だけでは利用者数が少なく、事業者にとって広告価値が低いという壁がありました。そこで集客力のある商業施設、事業者、市の三者で連携し、継続的に無償提供できる仕組みを構築しました。公共・商業施設合わせて36台を設置し、従来の窓口配布と比べて1カ月の配布枚数は17倍以上になっています。

生成AIは「課題を見つける道具」にもなる

最近では、課題の見つけ方そのものも変わり始めています。これまでは職員への調査から課題を拾っていましたが、生成AIの利用ログを見ることで、「この部署ではこういう仕事に困っているのではないか」と課題を発見するアプローチも始めています。職種別の生成AI研修から、具体的な困りごとを見つけることもあります。

例えば保健師業務では、服薬指導に必要な薬効の調査、訪問記録の音声入力、外国人向け説明資料の作成、家族関係を整理するジェノグラムの作成などに生成AIを活用しています。


DXで大切なのは、新しい技術を導入することそのものではありません。「現場視点」と「企画視点」を行き来しながら、課題を1つずつ解決していくこと。そこが、自治体DXの第一歩だと考えています。

【参加者とのQ&A(※一部抜粋)】

Q:デジタル部門は、各課の課題にどこまで関わるべきでしょうか。

A:「これはデジタルではないから担当外です」と返してしまうと、次から課題を挙げてもらえなくなります。デジタルで区切るのではなく、まず課題を起点に考えることが大切です。自分たちだけでは解決できないことでも、関係部署と議論し、できるだけ調整する。なるべく幅広く「ボールを持つ」という姿勢を意識しています。

データは語る 旅費から見る内部事務可視化の世界

第2部に登壇したのは、出張・経費管理や請求書管理のクラウドサービスを提供している株式会社コンカーの長谷大吾さんです。内部事務における業務改革の効果をデータに基づいて可視化し、効率化を着実に実現するためのポイントを教えていただきました。

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【講師】
長谷 大吾 さん
株式会社コンカー
公共営業部 部長

旅費法改正を単なるシステム改修で終わらせない

現在、旅費法の改正を受け、多くの自治体で旅費規程の見直しが進んでいます。

調査では、約63.9%の自治体が旅費規程の改正に着手しており、旅費業務は大きな転換期を迎えています。私たちコンカーは、これまで10年以上にわたり、国内の民間企業を中心に経費精算の仕組みを提供してきました。2024年には国内データセンターを設置し、ISMAPへの登録も完了したことで、公共分野への提案環境も整ってきています。SaaSでサービスを提供しているため、制度や社会環境の変化に合わせ、機能を継続的にアップデートできることも特徴です。民間分野では電子帳簿保存法やインボイス制度の改正に対応してきましたが、公共分野でも旅費法改正や、今後広がっていくAI活用などに対応を進めています。

さて、自治体の旅費業務についてよく耳にするのが、申請や審査に多くの工数がかかり、職員の負担になっているという課題です。税金を扱うという特性上、厳格な審査が必要で、1件ずつ目視でチェックする作業も少なくありません。

しかし、今回の旅費法改正に合わせて規程だけを変更し、従来と同じ業務を続けた場合、さらに負担が増える可能性があります。例えば実費精算になれば、申請者は実際に支払った金額を証明するために領収書を添付し、審査側はそれを見ながら、地域ごとに定められた宿泊費の上限を超えていないか確認する必要があります。

そこで私たちは、せっかく旅費規程を見直すのであれば、業務レベルでBPRを行い、旅費業務そのものを変えていく機会にしていただきたいと考えています。事実、これまで14の自治体と実証実験を行ってきましたが、業務変革とシステム導入をセットで進めることで、平均45%以上の業務削減効果が確認できています。

具体的な方法の1つが、旅費に関わるさまざまなデータの連携です。交通系ICカード、法人カード、旅行代理店のオンライン予約サービス、QRコード決済、タクシー配車アプリなどを利用すれば、「どこで、いくら支払ったか」という情報をデジタルデータとして旅費システムへ連携できます。信頼できる利用データそのものを確証とすれば、職員が領収書を添付したり、金額を手入力したりする作業を減らせます。手入力によるミスもなくなり、審査側も全ての申請を同じように目視確認する必要がなくなります。

さらに、旅費規程に基づくチェックをシステム側で自動化することもできます。例えば宿泊費が規程上の上限を超えていれば、そのままでは申請できないようにする。一方、やむを得ない事情がある場合には、その理由をコメント欄に記載すれば申請できるようにすることも可能です。審査担当者は、理由付きで上限を超えているものなど、確認が必要な申請を重点的に見ることができます。こうして、申請から承認、審査までをできる限りデータで完結させることで、効率化とガバナンスの両立を目指します。

導入前に「どれだけ変わるか」を可視化する

ただ、システムを入れれば、自動的に業務が変わるわけではありません。弊社では、検討段階から「効果試算プロジェクト」を実施しています。まず現在どのような旅費業務を行い、どれだけの業務量があるのかを整理します。その上で、新しいシステムを使うことを前提に、将来どのような業務フローにできるかを考えます。

現状と将来像を比較すれば、その間にあるギャップが課題として見えてきます。そこをどう解消するか検討し、最終的には「何時間削減できるのか」「何%効率化できるのか」「コストに換算するとどの程度の効果になるのか」といったところまで定量的に示します。大切なのは、現行業務をそのままデジタル化するのではなく、デジタルデータが使えることを前提に業務そのものを組み直すことです。システム導入そのものに時間やコストをかけすぎるのではなく、できるだけ早く稼働させ、その後に蓄積されるデータを使って改善を続けていくことが重要だと考えています。

そして、私たちが最も重視しているのが、システム稼働後です。運用を始めて半年ほどすると、旅費に関するさまざまなデータが蓄積されます。例えば「キャッシュレス比率」「承認回数」「承認ステップ数」「差し戻し率」「差し戻し理由」などです。

内部事務では、「工数がかかっている」「残業が多い」と感じていても、具体的にどこがボトルネックなのかをデータで把握できていないケースがあります。そこで、まず業務を可視化します。例えばキャッシュレス決済の利用率が低かったとしても、全庁一律に「もっと使ってください」と呼びかけるだけでは十分ではありません。部局や個人ごとに利用状況を見れば、どこで利用が進んでいないのかがわかります。

短期的にはシステム設定や運用ルールを変更する、中期的には新しい手配方法を追加する、長期的にはAIなど新たな機能を取り入れるなど……。データによって課題が具体的になれば、打ち手も具体的にできるのです。

また、ガバナンスの水準や承認プロセスの簡素化、キャッシュレス化、ペーパーレス化、運用の高度化などを段階別に整理した「成熟度マップ」を使い、現在どの段階にいて、中期的にどこまで進みたいのかを明確にする支援も行っています。

差し戻しは「件数」だけでなく「理由」を見る

旅費システムは毎日使うものではなく、年に数回しか利用しない職員も多いため、「規程はどうなっていたか」「どこに何を入力するのか」が分からず、申請ミスが起きることがあります。そこで、単純に差し戻し率を見るだけでなく、どの部署で、どの費目に、どのような理由の差し戻しが多いのかまで分析します。

例えば入力ミスが多ければシステム設定を見直す、規程の理解不足が原因なら周知を行う、承認プロセスに課題があるならフローを見直すといった対応が考えられます。もちろん、対策を実施して終わりではありません。その後のデータをモニタリングし、差し戻し率が本当に下がったのかを検証。改善できていなければ、再び原因を分析して新しい打ち手を考えることも大切です。弊社では、データ収集から差し戻し理由の分析、対策の実施、その後のモニタリングまでを約6カ月の改善プロジェクトとして、自治体の皆さまと一緒に進めることもあります。

重要なのは、システムを導入して終わらないことです。今後も旅費制度が変わる可能性がありますし、AIをはじめとする新しい技術も登場します。そのとき、どこに新しい技術を使えば最も大きな効果が得られるのかを判断するためにも、まず業務をデータで把握できる状態にしておく必要があります。

私たちが掲げているビジョンは、「旅費精算のない世界、その先へ」です。旅費精算は、職員にとって本来の行政サービスから離れた内部事務の1つです。できる限りその負担をなくし、将来的にはAIなども活用しながら、より自動化された世界を目指したいと考えています。

担当課と進めるDX~春日部市におけるDXの取組~

第3部は埼玉県春日部市の石島和也さん、遠藤祐太郎さんが登壇し、生成AIのRAG機能を活用した庁内マニュアルの効率化の取組について解説していただきました。合意形成から運用開始までの進め方と実践のポイントについてもふれています。

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【講師】
石島 和也 さん
春日部市 行政デジタル改革課

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【講師】
遠藤 祐太郎 さん
春日部市 行政デジタル改革課

今あるものを生かす

私たち春日部市では、令和6年度からAI活用ワーキングを立ち上げ、生成AIを庁内業務にどう生かせるか検討してきました。背景にあるのは「人口減少に伴い、今後は職員数を維持することが難しくなる」という課題です。限られた人員でも行政サービスを持続できるよう、職員の業務習得や問い合わせ対応を効率化できないかと考えました。

そこで検討したのが、既存のマニュアルから必要な情報を簡単に探せる仕組みです。職員向けAIチャットボット、ファイル検索システム、動画マニュアル作成システムを比較し、導入費用や担当課の負担、回答の正確性などを踏まえ、最終的にはRAGを活用したツールを選びました。ポイントは、新たにQ&Aやマニュアルを大量につくるのではなく、すでに庁内にあるマニュアルをできるだけ活用することです。

ただ、ツールを決めればすぐに全庁展開できるわけではありません。まずは問い合わせの多い情報システム課、総務課、人事課、会計課のマニュアルを登録し、それぞれの担当課に回答内容を確認してもらいました。

すると、さまざまな課題が見えてきました。例えば、複数のマニュアルをまとめて登録すると、似た制度の情報を組み合わせて誤った回答を生成するケースがありました。システム上では申請できないものを「制度上も取得できない」と回答した事例もあります。そのため、マニュアルを分野ごとのフォルダに分けるなど、回答内容が混ざらないよう調整しました。

指示文の内容によって回答のニュアンスが変わるケースもありました。例えば「郵便の出し方」と聞くと一般的な郵便の送り方が回答されますが、「庁内の郵送における提出書類」などと具体的に聞けば、求めている回答に近づきます。

こうした検証を重ねる中で、私たちはAIの回答をそのまま信用するのではなく、必ず出典元のマニュアルを確認するという運用ルールを設けました。令和8年1月から一部職員へ試験導入した際も、操作方法だけでなく、誤った回答が出る可能性や出典確認の必要性を研修で伝えています。

担当課と一緒に探る

試験導入後のアンケートでは、利用した職員の満足度は77%で、92%が「半分以上解決できた」と回答しました。一方、「回答が抽象的」「誤っている、不確実な内容がある」「求めた回答が得られない」といった課題も挙がっています。

ここで重要なのは、情報部門だけで判断しないことです。例えば人事関係では、マニュアルを1つにまとめた方が質問する側には便利ですが、分野ごとに分けた方が回答精度は上がる場合があります。「便利だから一本化するのか」「多少手間があっても正確性を優先するのか」。こうした判断を担当課と一緒に行い、春日部市では正確性を重視してフォルダを分けることにしました。

令和8年3月からは全庁へ展開しましたが、7月1日時点のログイン率は31%です。ただ、利用者数自体は増加傾向にありますし、6月に数値が上がっていることがわかります。

また、生成AIに関する研修を行ったことで、生成AIへの関心が高まっていることも感じています。

生成AI利用のグループウェアの掲示板なども作成していますので、こうした取組によって数字が伸びているのではないかと考えています。

今後は、全庁共通のマニュアルだけでなく、部署内の引継書や業務マニュアルを読み込ませ、その部署だけで利用する方法も検討しています。異動先の業務を短期間で習得するという、当初の課題解決にもつなげていきたいと考えています。

【参加者とのQ&A(※一部抜粋)】

Q:マニュアルをRAGに取り込んだことで、マニュアル自体を見直すきっかけはありましたか。

A:ありました。例えば、表形式のマニュアルはうまく回答できず、取り込み自体を見送ったものがあります。テキスト化すれば対応できる可能性はありますが、そのための労力も考え、今回は別のマニュアルを活用しました。また、矢印や特殊文字を使った記載では回答できないケースもあり、AIに読み込ませてみることで、マニュアルそのもののつくり方を見直す必要性にも気づきました。

β'モデルを採用した小規模自治体の今とこれから

第4部は北海道八雲町で政策推進課情報政策を担当する中村達哉さんにご登壇いただき、八雲町で取り組んでいるDX戦略について、実践事例を語っていただきました。大規模な投資でなくともDXの第一歩を踏み出し、定着・活用へとつなげるためのヒントを探ります。

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【講師】
中村 達哉 さん
北海道 八雲町
政策推進課 情報政策担当 主幹

人口は減るのに、仕事は減らない

こちらは、八雲町の人口と職員数を並べたグラフです。青が人口、橙が職員数です。

人口はきれいに右肩下がりで、平成21年から令和6年で23%減っています。一方で職員数はほぼ横ばい。つまり、地域の人口は減っているのに、仕事は減っていない、ということが読み取れます。

さらに今後はどうなるか。内閣府の「高齢社会白書」を出典とする資料では、人口は平成22年をピークに減少し、就労人口が減り、高齢化率が上がっていく流れが示されています。今は持ちこたえている職員数も、今後は確実に減少していくことは間違いないでしょう。

DXの目的は「住民サービスを維持・向上すること」

人口減少で職員数は相対的に少なくなる。でも人口が減っても仕事は減らないし、むしろニーズの多様化や高度化で増えている感覚もある。では住民サービスを向上させる、もしくは今と同じ水準に保つにはどうするか。そのために、業務効率を上げ、職員一人ひとりの負担を減らし、人間にしかできない行政サービスに注力する必要があるのです。これこそが、DXの目的だと私は考えています。

なぜ八雲町はβ′モデルを採用したのか

そこで八雲町は、地方公共団体の情報セキュリティ対策における「新三層分離モデル」の1つ「β′モデル」を採用することにしました。振り返ると、第二期強靭化のリプレイスを検討していた2021年は、コロナ禍のど真ん中でした。LINE公式アカウントで感染状況を発信し、手続きのオンライン化を検討し、テレワークやWeb会議が注目され、ワクチン接種の予約も自治体業務になりました。こうした状況を踏まえて、これからの自治体ネットワークはどうあるべきかを考えていました。

  その頃、とある自治体の情報担当者が言った「住民はLGWANなんて使ってない」という言葉が、私の胸に深く刺さりました。確かにLGWANの先に住民はいません。住民はインターネットの先にいる。LGWANで業務をしているのは、事情はあるにしても行政の都合です。行政が行政の都合で、住民と違うステージにいるのはどうなんだろう――そんなことを考えるようになりました。

  そうこうしているうちに、インターネット主体で業務を行うモデルが正式に位置づけられ、従来の三層分離がαモデル、インターネットを主体とするモデルがβ(β′)モデルと定義されました。条件面のハードルはありましたが「向こう5年、10年先を考えたとき、今βに移行しないとDXの流れに乗り遅れるのではないか」「コロナ禍をきっかけに進んだ生活様式の変化は加速するだろう」といったことを考えると、決断は早かったと感じます。

八雲町の形:β′に移行しつつ、Web閲覧は仮想ブラウザで守る

  一般的なβ′モデルは「業務端末をインターネット接続系に置き、直接インターネット接続する」形です。

  一方、八雲町はβ′モデルに移行しつつ、ローカルブレイクアウトも併用する形にしました。これを私は「四層分離」と呼んでいますが、実態としては三層分離の考え方を保ちながら、インターネット接続系を「クラウド接続系」と「通常のインターネット閲覧」に分けています。職員端末は普段クラウド接続系に置き、情報部門がホワイトリストで許可したクラウドサービス(M365等)に直接通信を許可する。一方、リスクが高い通常のWeb閲覧は従来通り仮想ブラウザを使う、という仕組みです。

この形で運用し、間もなく4年が経過しますが、大きな事故は起きずに運用できている状況です。

公用スマホ貸与で業務効率向上を加速する

もう1つの取り組みは、公用スマホです。よく「スマホを入れたら本当に仕事が効率化するのか」と聞かれますが、私は、地方の小規模自治体がいまさらそこを車輪の再発明のように検証する必要があるのか、と思っています。民間企業では当たり前に使われ、効果がなければやめているはずです。だから答えはすでに出ているのではないかと思うのです。

八雲町では令和6年度に業務用PCを13.3インチのモバイルノートに更新し、M365(Microsoft365)の本格利用をスタートしました。

公用スマホ×IDaaS×パブリックSIM

公用スマホは三層分離対策が必要なデバイスではありません。デジタル庁が提唱する2030年頃の姿であるゼロトラストアーキテクチャの「部分導入」という捉え方もしています。閉域SIMではなくパブリックSIMを導入し、IDaaSによるシングルサインオンでクラウドサービスへ接続する形です。

  ここまでがうまくつながったのは、ネットワークをβ′モデルに移行していたことも大きいと思っています。全てが最初から計画されていたわけではなく、偶然つながった部分もあります。ただ、偶然を偶然のままにせず、後付けで意味づけをして進められたのは、最初に「目的と手段」を明確にしていたからではないか、と私は考えています。

※2025年12月25日(木)に開催したセミナーの録画配信。

【対談】『日本一チャレンジする町』横瀬町の井上副町長に訊くまちづくりとAIの活用

2日目の最後は、埼玉県横瀬町の井上雅国副町長と合同会社KUコンサルティングの髙橋邦夫さんによる対談を実施。人口減少が進む小さなまち・横瀬町が、今後AIとどのように付き合っていきたいと考えているのか、これからのチャレンジについて話していただきました。

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【講師】
井上 雅国 さん
埼玉県 横瀬町
副町長

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【講師】
髙橋 邦夫 さん
合同会社KUコンサルティング
代表社員

テクノロジーは、あくまで「道具」

横瀬町は人口約7,400人で、人口減少が続く小さな町です。町では「日本一チャレンジする町」を掲げ、官民連携プラットフォーム「よこらぼ」などを通じて、町外の人や企業と一緒にまちづくりを進めてきました。その中で大切にしているのが、「人に優しいテクノロジー」という考え方です。2022年には「人に優しいテクノロジーの活用計画」を策定し、αモデルからβ'モデルへ移行する意図も整理しました。

また、横瀬町ではDXを「役場職員」「対町民接点」「町民」の3つの場面に分けて考えています。職員については業務を効率化し、共有・連携しやすくする。町民との接点では、官民連携や行政サービスをよりよくする。そして町民には、多様なニーズに応じてテクノロジーを使える環境を整える。この3つをつなげていくことを目指しています。

小さな町だからこそ、顔の見える関係や対面でのコミュニケーションは、これからも大切です。だから、何でもデジタルに置き換えるつもりはありません。「今ある課題に対して、よりよくするために使える技術はないか」という発想で、必要なものを必要なだけ取り入れていく。それが「人に優しい」という言葉に込めた考えです。

外と一緒にまちをつくるため、β'モデルへ

髙橋:横瀬町が、小規模自治体としては珍しくβ'モデルを選んだ理由は何だったのでしょうか。

井上:私は民間企業から副町長として横瀬町に来ました。しかし、着任して役場の働き方を見たとき、職員が時間と場所に縛られすぎていると感じたのです。さらに、横瀬町は町外の企業や人たちと一緒にまちづくりを進めています。それなのに、役場の業務PCが外とつながりにくい。これは大きな課題だと思いました。そこでβ'モデルへ移行し、Google Workspaceを使った業務環境を整えようと考えました。外部とデータを共有し、1つのものを一緒につくる。そうした働き方を考えたとき、ブラウザを中心に情報や作業を共有できるGoogle Workspaceは、横瀬町のスタイルと相性がよいと感じました。

髙橋:私もβ'移行のサポートを他自治体で手掛けたことがあるのですが「情報が漏れたらどうするんですか」といった反発は少なからずあります。横瀬町ではいかがでしたか。

井上:もちろん、外とつながるほどセキュリティ対策は重要になります。ただ、セキュリティを守ることだけを目的にするのではなく、安全性を確保しながら、どうすれば人と一緒に仕事ができるかを考えることが大切だと思い、移行に踏み切りました。もちろん、万全を期すのは大前提です。

髙橋:「人に優しいテクノロジー」という言葉を打ち出しているのはなぜでしょうか。

井上:高齢者も多い町ですし、特に福祉などでは顔を合わせたコミュニケーションがとても大切です。「これからは何でもデジタル」ということではなく、今の課題をよりよくするために使える技術を探し、必要なものを必要なだけ取り入れる。その考え方を表すために「人に優しいテクノロジー」という言葉を使っています。

髙橋:一般的に、小規模自治体はαモデルが圧倒的に多く、β'モデルへの移行が進みにくい現状もあります。

井上:やはり、人や予算といったリソースの少なさは大きいと思います。横瀬町も情報担当者は1人ですが、情報政策だけを担当しているわけではありません。大きな変革に踏み出しにくい事情はよくわかります。

ただ、小さな自治体こそ、外とつながらなければ持続可能なまちづくりは難しいとも感じています。だから、最初から大きく変えなくてもいい。小さいところから試し、自分たちに合うやり方を考え、必要なら戻ってもいいと思います。大切なのは、流行している技術をそのまま導入することではありません。「何のために使うのか」を自分たちで考えながら、小さなチャレンジを積み重ねていくこと。それが、横瀬町の考えるDXです。


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