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【セミナーレポート】自治体の情報政策の今がわかる3日間!2026~ジチタイワークス・スペシャルセミナー~【DAY1】

情報政策
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【セミナーレポート】自治体の情報政策の今がわかる3日間!2026~ジチタイワークス・スペシャルセミナー~【DAY1】

生成AIの業務利活用や職員の「働き方改革」、2030年を見据えたネットワークのあり方や地方自治体法改正による新たなセキュリティ対策——。こうした課題に対応するため、省庁の方針と先進自治体の実践を一度に確認できる場として、スペシャルセミナーを3日にかけて開催しました。

デジタル庁・総務省による最新施策の解説に加え、先進自治体による具体的な取組事例や、有識者を交え率直に意見を交わすトークセッションを通じて、自治体情報政策の“今”を捉え、今後の方向性を考えるヒントをお届けします。

概要

■テーマ:自治体の情報政策の今がわかる3日間!2026~ジチタイワークス・スペシャルセミナー~
■実施日:令和8年7月15日(水)
■参加費:無料
■申込者数:197人

国・地方ネットワークの将来像とその実現に向けた取組

最初に話を伺ったのは、デジタル庁の泉 智徳さんです。国・地方のネットワーク基盤の共用化や地方でのゼロトラストアーキテクチャの考え方の導入に関する検証事業を2025年に実施したデジタル庁。それらを通じて見えてきたことや今後の取組の方向性について紹介してもらいました。

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【講師】
泉 智徳 さん
デジタル庁
デジタル社会共通機能グループ企画官

なぜ、今のネットワークを見直すのか

国と地方の行政ネットワークは、それぞれ独自に発展してきました。国では現在、ガバメントソリューションサービス(GSS)への移行が進んでいます。ネットワークだけでなく、業務用PCやグループウェアなども含めて共通化し、ゼロトラストの考え方も取り入れた業務環境です。


一方、自治体ではLGWANや「三層の対策」を中心に、安全性を確保してきました。これらは長く有効に機能してきた仕組みですが、クラウド利用やテレワークの広がり、サイバー攻撃の高度化など、取り巻く環境は変わっています。コロナ禍では、ネットワーク間のデータ移動にUSBを使う場面や、Web会議などのツールを柔軟に利用しにくいといった課題も見えてきました。

そこで、強固なセキュリティだけでなく、職員の利便性や安定運用、災害時の強靭性も含め、国・地方を通じたネットワークを全体最適の視点で考え直そうとしています。2030年頃の将来像として掲げている大きなテーマは、「ネットワーク基盤の共用化」と「ゼロトラストアーキテクチャの考え方の導入」の2つです。

従来の境界型防御は、ネットワークの内側を安全、外側を危険と捉えて守る考え方です。しかし、テレワークやクラウド利用が広がる中では、内外を分けるだけで守り切ることが難しくなっています。ゼロトラストでは、社内・社外を問わず、アクセスのたびに「誰が」「どの端末から」「どのような状態で」接続しているかを確認します。多要素認証や端末管理、アクセス後の挙動監視など、複数の対策を組み合わせて守っていく考え方です。

ただし、ゼロトラストへの移行は、今ある「三層の対策」を直ちに全てやめるという話ではありません。境界型防御にも強みがありますから、既存の仕組みとどう組み合わせ、自治体の実情に合った形で段階的に移行するかが重要だと考えています。

25自治体の検証で見えた「効果」と「課題」

令和7年度には25自治体・7プロジェクトで検証事業を行いました。1つは、国で利用しているGSSのネットワークやPC、コミュニケーションツールなどを自治体で試用する「GSS試用型検証」。もう1つは、自治体が提案する方法でゼロトラストの考え方を取り入れる「自治体提案型検証」です。

GSS試用型では、ツールの統一によって他自治体との情報共有や共同作業がしやすくなる、災害時に自治体間で応援しやすくなる、セキュリティ水準の平準化が期待できる、といった声がありました。一方で、既存アプリをどう適合させるか、障害時に国と自治体がどう役割分担するか、導入・運用コストをどうするかといった課題もあります。

自治体提案型でも、テレワークや庁舎外での業務がしやすくなり、セキュリティ向上と利便性向上の両方が期待できました。その反面、IDやIT資産が部局ごとに管理されていること、専門人材が不足していること、庁内でセキュリティに対する意識差があることなども改めて見えてきました。

こうした検証を通じて、自治体がゼロトラストの考え方を取り入れる際には、まず「ID・認証管理(Identity)」「端末管理(Device)」「アクセス時の検証・有効性評価(Validation)」「ログ・事跡管理(Telemetry)」の4点が重要だと考えています。

令和8年度も、GSSのネットワーク基盤だけを共用する形を含め、複数のパターンを検証しています。現在は今すぐ大きく構成を変えなければならない段階ではありません。自治体ごとに体制や環境は異なるため、現場の声を聞きながら、負担やコストにも配慮し、分散的・段階的に進めていきたいと考えています。

【参加者とのQ&A(※一部抜粋)】

Q:現在αモデルを利用しています。今はどんなことを考えながら運用していけばいいでしょうか。

A:いきなりゼロトラストへ抜本的に変えようとすると、相当な労力がかかります。まずはエンドポイントから入ってくる脅威への対策を強化するなど、ゼロトラスト的な発想を部分的に取り入れる方法がありますので、段階的にできるところから進めていくのも1つの考え方です。

【対談】自治体ゼロトラストの現在地と2030年への展望

第2部は、福岡県北九州市の髙尾芳彦さんとフォーティネットジャパン合同会社の伊藤吉也さんが登壇。北九州市での実証事業を踏まえながら、自治体に必要な次世代ネットワークのあり方を対談形式で解説していただきました。

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【講師】
髙尾 芳彦 さん
福岡県 北九州市 戸畑区役所 総務企画課
庶務係長
総務省地域情報化アドバイザー

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伊藤 吉也 さん
フォーティネットジャパン合同会社
パブリックソリューション ビジネス本部 第三ビジネス部 部長

三層分離は自治体の情報を守る大きな役割を果たしてきた

伊藤:フォーティネットジャパンは全国の自治体や教育委員会などのネットワークセキュリティに関わっている会社です。今回は製品の話というより、自治体の皆さんが今どんな課題を抱えているのか、北九州市の髙尾さんと一緒に考えていきます。

髙尾:私は現在、北九州市戸畑区役所で人事労務などを担当しています。その前は情報政策分野に携わり、令和7年度にはデジタル庁の検証事業にも参加しました。現在は総務省地域情報化アドバイザーとしても活動していますので、情報政策と一般行政、両方の現場を経験した立場からお話しします。

伊藤:自治体のセキュリティを考える上で、出発点になるのが「三層の対策」です。2015年の日本年金機構の情報漏えい事案を受け、自治体ではネットワークを分離する仕組みが短期間で整備されました。多くの自治体が採用しているαモデルも、ここから始まっています。

髙尾:ネットワークを分離したことで、マルウェアや不正アクセスから住民情報などを守りやすくなったことは、大きなメリットです。ネットワークを担当する職員の方の負担軽減にもなっているのではないかと思います。

一方で、ファイルの受け渡しやWeb閲覧がしにくい、SaaSなどのクラウドサービスを使いづらいといった課題も出てきました。さらにα、β、β'、α'と複数のモデルが生まれ、自治体の予算や体制によってセキュリティ環境に差が生じている面もあります。

「安全な城の中」から外へ

伊藤:「三層分離」のほうが安全なのではないかと考える人もいるかと思うのですが、なぜ今あえてゼロトラストに移行する必要があるのか。その点に対して、髙尾さんはどう思われますか。

髙尾:αモデルは、例えるなら「城」のようなものです。職員一人ひとりが高度なITリテラシーを持っていなくても、城壁の内側にいれば一定程度守られます。ただ、クラウドを活用するとなると城の外へ出なければなりません。そこで、端末側のEDRなども含め、1人ひとりを守る仕組みが必要になります。それができる自治体ではβ・β'などに移行しているのではないかと、私は考えています。

伊藤:DXや生成AIの活用を進める上でも、クラウドとの接続は避けて通れません。ただし、EDRを導入すれば終わりではなく、検知したアラートを誰が確認し、どう対応するかまで考える必要があります。

ゼロトラスト一辺倒ではなく「ハイブリッド」も選択肢に

髙尾:私自身、以前はクラウドネイティブでゼロトラストへ移行することを考えていました。しかし生成AIの利用が広がり、考え方も少し変わってきています。
自治体には、個人情報や要配慮情報など、外部のクラウドAIに簡単には渡せないデータがあります。そのため、全てをクラウドAIで利用するのではなく、重要なデータやローカルAIは自治体側内部に置き、外部の便利なサービスも活用する。一足飛びにオールクラウドというわけではなく、境界型防御とゼロトラストを組み合わせたハイブリッドな構成も現実的ではないでしょうか。フォーティネットジャパンが提供している「フォーティゲート」を使いながら次世代のAIでアウトプットを守っていくということも必要です。

伊藤:実際には、セキュリティ対策に関しては「better」から「must」にギアが上がっていると思います。自治体の方の立場に立つとやることがたくさんあり大変な状況ではあると思うのですが、それでもDXは進めていく必要があるでしょうね。


自治体単独ではなく、地域でセキュリティを支える

伊藤:2030年の自治体ネットワーク像の考案は動き出しているところですが、実際は「2層」が現実的ではないかと思っています。髙尾さんはそのあたりをどうお考えでしょうか。

髙尾:そこで私が提案しているのが「ローカルガバメントクラウド」です。可搬性の高い業務端末を用意し、ゼロトラストの機能を取り入れる一方、重要なデータやローカルAIなどは地域の共通基盤で保有します。さらに、監視やログ解析はマネージドセキュリティサービスを活用して共同運用するイメージです。

都道府県などが中心になって複数の自治体が参加すれば、1つの自治体だけでは導入しにくい高度な仕組みも共同で利用できます。情報システム担当者が知見を持ち寄り、人材育成や地域での雇用創出にもつなげながら、運用を継続できる体制をつくる。自治体のゼロトラストを考えるときには、技術だけでなく「誰が守り続けるのか」までセットで考えることが大切だと思います。

【参加者とのQ&A(※一部抜粋)】

Q:北九州市では、生成AIを使う際にどのようなルールを設けていますか。

A:北九州市でもLGWANのプロキシサービスを使いながらクラウドの生成AIを利用していますが、個人情報や要配慮情報を入力しないことや、生成物が他者の著作権を侵害していないか確認することなどをルールとしています。ただ、自治体業務では住民情報を扱う場面が多く、それらを使えなければ生成AIの力を十分に引き出せないケースもあります。だからこそ、外部のクラウドAIだけでなく、ローカルAIをどう活用するかも今後の検討課題になると考えています。

α'モデル活用による働き方の変革と今後の展望

第3部に登壇したのは、香川県三豊市の北岡千宙さん。三豊市は、働き方改革をさらに発展させるため、α'モデルへの移行を決定しています。その背景や運用状況、今後のネットワーク変化を見据えた展望について紹介していただきました。

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【講師】
北岡 千宙 さん
香川県 三豊市
総務部 総務課 デジタル推進室 主任

業務用スマホを「電話機」から「情報端末」へ

三豊市がα'モデルへの移行を考えることになった大きなきっかけは、2021年度に全職員に業務用スマートフォンを配備したことです。固定電話をスマホに置き換えるだけで終わらせず、現場や出先からスケジュールやメールを確認できる「情報端末」として活用したいと考えました。

ちょうど2024年度には既存グループウェアと業務用スマホの更新、2025年度には行政事務用PCの更新が控えていました。そこで2023年度からα'モデルを検討し、情報セキュリティ対策基準も改定。システム更新のタイミングを逃さず、クラウド活用へつながる環境を段階的に整備しました。

私たちがつくりたかったのは、単なる新しいネットワークではありません。「シン・ワークスタイルプラットフォーム」と名付け、Garoonやkintone、Microsoft 365などを活用し、執務室にいなくても業務用スマホから必要な情報へアクセスできる環境を目指しました。

なぜβ'ではなくα'を選んだのか

では、なぜ三豊市がα'を選んだのか。あくまでも私の意見ですが、基礎自治体では、多くの職員が窓口で申請や届け出を受け付けていて、インターネット上の業務を中心に働く職員は、まだ一部です。移行・運用コストも考えると、当時の三豊市にはβ'モデルはまだ早いと考えました。

そして、何より優先したかったのは、市民の個人情報を守ることです。三層分離の分かりやすい安全性は残しながら、クラウドの利点は享受する。そのバランスを考えると、現時点ではα'モデルが合っていると判断しました。

α'構築の流れについてですが、LGWAN接続系からクラウドUTMを経由して特定のクラウドサービスへ接続できることや、Microsoft 365のテナント制御などをPoCで確認しました。そして、2024年5月には、職員へ特段の周知をすることなくα'モデルへ切り替えています。職員からは特に問い合わせもなかったのでα'に変わったこと自体を知らない人も多いかもしれません。ネットワークはあくまでインフラなので、利用者に負担を感じさせずに移行できたことは、むしろ理想的だったと感じています。

どのくらいの規模感で使用しているかという点に関しては、LGWAN接続系端末として870台程度のパソコンを配備しています。共用パソコンもあり、さらにグループウェアを利用するユーザー数は約1050人です。そのうち650人はMicrosoft 365の認証や通信を使っているというような状況です。

ただ、運用後に1度だけ、Microsoft 365対応PCを職員に配布した初日に通信が集中し、クラウドUTMのCPUが100%になってグループウェアへ接続できなくなったことがありました。設定を見直して復旧しましたが、Microsoft 365は想定以上に通信量が多い場合があります。これから導入する自治体には、ぜひ注意していただきたいポイントです。

業務用スマホは「moconavi」というセキュアブラウザーの機能で特定クラウド系に接続できる仕組みです。中継アプライアンスというオプション機能を活用すると、業務用スマホからメールサーバーを見ることも可能です。

今年度はさらに拡充し、スマホからオンプレのファイルサーバーや内部情報システムを閲覧できるよう取組を進めている段階です。ただ、どこでも仕事ができる環境は「いつでも働けてしまう環境」にもなります。セキュリティ上の接点も増えるため、労働組合との協議や職員教育など、運用面も併せて考えていく必要があります。実際、スマホからのグループウェア利用も定着し、役職を問わず活用が進んでいます。

2030年を見据えて

国では2030年頃を見据え、ゼロトラストへの移行が議論されています。三豊市も国の動向を見ながら検討を進めていく必要があります。ただ、今回整備した環境は、見方を変えれば次の形へ移るための土台にもなります。

もちろん三豊市のやり方がそのまま正解になるわけではありません。大切なのは、ネットワークを目的にせず、自分たちが実現したい働き方を描き、そのために必要な基盤を計画的に整えていくことだと考えています。

個人番号利用事務系との間や、α´モデルにおけるファイル授受の課題と対策をご紹介

第4部は、株式会社CYLLENGEの田中翔一郎さんが登壇。個人番号利用事務系を含む複数セグメント間のファイル授受を、安全かつ効率的に実現する手法を解説していただきました。また、α'モデルにおけるローカルブレイクアウト導入時の課題などについても伺っています。

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【講師】
田中 翔一郎 さん
株式会社CYLLENGE
営業本部 コンサルティングセールス部 カスタマーサクセス課 主任

安全なファイル授受をどう実現するか

個人番号利用事務系とLGWAN接続系の間では、これまでUSBメモリなどの記録媒体を使ってファイルを移動するケースが多くありました。しかしUSBには、紛失だけでなく、マルウェア感染などのリスクもあります。そのため今後は、USBに代わる安全なファイル持ち出し方法を検討する必要があります。

弊社の「Smooth File ネットワーク分離モデル」では、インターネット接続系、LGWAN接続系、個人番号利用事務系の3つのセグメント間におけるファイル交換を、1台のシステムで行えます。ファイル移動時の無害化や、インターネット接続系と個人番号利用事務系の間ではファイルを移動できないようにするなど、接続先に応じたルール設定も可能です。

また、個人番号利用事務系からファイルを持ち出す際には、ファイル内にマイナンバーや住所、メールアドレスなどの個人情報が含まれていないかを検知する方法もあります。個人情報が検知されたファイルだけを上長確認の対象とすれば、全てのファイルを人の目で確認するよりも、承認作業の負担を抑えることが可能です。

α'モデルにおける3つの基本ケース

もう1つ押さえておきたいのが、α'モデルです。α'モデルには、クラウドサービスの利用方法に応じて3つの基本ケースがあります。

ケース①
LGWAN接続系からクラウドへアクセスする用途を、ライセンス認証やウイルス定義ファイルの取得などに限定するもの。

ケース②
それに加えてWeb会議やメールなどのクラウドサービスを利用します。ただし、クラウドからLGWAN接続系端末へのファイルダウンロードは制限します。

ケース③
Web会議やメールなどに加え、外部組織とのファイル共有も行い、クラウドからLGWAN接続系へのファイル取り込みを認めます。

つまり、ケース①・②とケース③の大きな違いは「クラウドからファイルを取り込むかどうか」です。

現在、数多くの自治体様が弊社のサービスを導入してくださっていますが、α'モデルでは、クラウドサービスをどこまで利用するかによって必要な対策が異なります。認証やWeb会議、メールなどを利用するケースでは、外部とのファイル授受やメール送受信を安全に行う仕組みが中心になります。例えば外部に添付ファイル付きメールを送る際は、「Mail Defender」とオンラインストレージ「Smooth File」を連携。職員は通常通りファイルを添付して送信するだけで、添付ファイルが自動的にSmooth Fileへ格納され、メール本文にはダウンロードURLが挿入されます。職員の操作を大きく変えずにPPAP対策を進められる仕組みです。

ケース③のように、特定のクラウドサービスからLGWAN接続系へファイルを直接ダウンロードする場合は、取り込むファイルそのものの安全性を確保する必要があります。そこで、セキュアゲートウェイとファイル無害化エンジン「Fast Sanitizer」を連携し、クラウドから取得したファイルを無害化した上でLGWAN接続系へ取り込みます。

ネットワークを変えるときは、セキュリティだけを高めればよいわけではありません。現場の職員がこれまでと同じように使えるか、運用負荷が増えないかという視点も重要です。
α'モデルは、どのケースを選択する場合でも、それまで以上のセキュリティ対策が求められます。だからこそ、「どのモデルを採用するか」だけで終わらせず、そこでどのようにファイルやメールを扱うのかまで含めて設計しておくことが大切です。

【参加者とのQ&A(※一部抜粋)】

Q:無害化処理システムのサイジングでは、職員数、同時接続数、1日当たりの処理件数のうち、どの指標を重視しますか。

A:弊社のFast Sanitizerはユーザー数に制限がないため、主に1日当たりに処理するファイル数を目安にしています。扱うファイル量から必要なCPUのコア数などを算出し、それに応じた構成をご提案しています。

【対談】小規模自治体が考えるゼロトラストへの期待

1日目の最後は、合同会社KUコンサルティングの髙橋邦夫さんと岐阜県坂祝町の蒲友貴さんによる対談です。小規模自治体が現場で直面する課題や検証事業への参加経緯を踏まえ、課題解決に向けて期待されるゼロトラストアーキテクチャの可能性について解説していただきました。

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【講師】
蒲 友貴 さん
岐阜県 坂祝町
総務課

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髙橋 邦夫 さん
合同会社KUコンサルティング
代表社員

「ひとり情シス」が取り組むDX

私は岐阜県坂祝町でDXを担当しています。坂祝町は人口約8,000人の小規模自治体で、情報システム部門はいわゆる「ひとり情シス」です。町では、かつて地域を支えていたパジェロ製造工場が2021年に閉鎖し、法人税収が大きく減少しました。さらに、自治体システム標準化に伴ってシステムやガバメントクラウドの運用費も増えています。歳入が減る一方で歳出は増えており、業務効率化も含めて、デジタル技術でどう課題を解決するかは重要なテーマです。

そんな中、「1人1台のPCで効率的に業務ができ、テレワーク等の柔軟な働き方が可能になることの実現に向けて」と目的を掲げていた点に惹かれ、令和7年度の国・地方ネットワーク検証事業に代表団体として参加することになりました。三層分離では、マイナンバー利用事務系、LGWAN接続系、インターネット接続系とPCを使い分けることがあります。それが1台になれば、コストも下がるのではないかと考えたのです。

検証では、ゼロトラストアーキテクチャの考え方を取り入れたネットワークを構築し、セキュアな環境を実現できることを確認できました。

一方で、実際に現場で運用するとなると課題もあります。例えば異常を検知したとき、夜間や休日も含めて誰が対応するのか。24時間365日の監視体制を小規模自治体が単独で構築するのは難しく、共同運用が重要になると感じました。アクセス制御や権限付与についても検討が必要ですし、1つの技術だけに頼らず複数のセキュリティ対策を組み合わせ、最新の状態に保つことも欠かせません。職員の情報リテラシー向上も必要です。そのため、検証自体はうまくいったものの「では坂祝町で導入しますか」と問われると、簡単に「はい」とは言えませんでした。制度が整い、必要な運用体制が構築され、さらに国などから導入・運用費の支援などがなければ、導入は難しいだろうというのが最終的な結論です。

小規模自治体こそ「共同で守る」仕組みを

髙橋:今回、デジタル庁のゼロトラスト実証で坂祝町が代表団体になりました。当初は「PCを1人1台にできる」というところに魅力を感じたとのことでしたが、代表を担うことになった理由は何だったのでしょうか。

蒲:最初の動機は、確かに比較的単純なものでした。ただ、実証を進めるうちに、小規模自治体でゼロトラストを実装できるかを確かめること自体に意味があると感じるようになりました。坂祝町のように、1人で情報システムを担当している自治体は全国にあります。マンパワーが足りず、相談相手もいない。その環境でも導入できる仕組みが確立できれば、中規模・大規模自治体にも応用できるはずです。そういう意味で、坂祝町は小規模自治体の1つのモデルとして分かりやすかったのだと思います。

髙橋:実際に検証してみて、率直な感想はいかがですか。

蒲:先ほど申し上げた通り、小規模自治体が単独でゼロトラスト環境を運用するのは、かなり難しいと感じました。その意味では、国の共通基盤を使うGSS試用型の検証には現実性を感じています。

髙橋:蒲さんは、国による支援の必要性にも触れています。具体的には、どのような支援を想定していますか。

蒲:小規模自治体の場合、ネットワークを更改しようと思えば、まず既存の保守業者へ相談するケースが多いと思います。ただ、1つの事業者だけに相談していると、提示された構成や金額が妥当なのか判断できないことがあります。そこで国などに、「この構成で大丈夫なのか」「この見積もりは妥当なのか」と中立的に相談できる窓口があると、とてもありがたいです。また、ゼロトラストへ移行するときに「まず何を確認し、どんな順番で進めればいいのか」といったポイントを、担当者レベルで分かる形で示してもらえると助かります。いわば自治体情シス向けのサポートセンターのような存在ですね。

明るい未来に向かって

髙橋:ゼロトラストへの移行は、2030年の方向性が固まるまで待つべきだと思いますか。それとも小規模自治体も今から動くべきでしょうか。

蒲:坂祝町では2028年にパソコンの更新がありますので、そのタイミングでゼロトラストへの移行ができれば、という考えはあります。ただ、自治体情報セキュリティクラウドなど県との関係もありますので、1つの自治体だけで動くのは現実的ではないと思っています。ですから現時点では「現状維持せざるを得ない」という部分もあります。ただ、これは「何もしない」という意味ではなく、次の更新年度を見据えながら少しずつ準備しておくというイメージです。

髙橋:最後に、自治体の情報システム担当者へメッセージをお願いします。

蒲:検証事業に参加した際、名古屋市の情報システムの担当者と話したことが印象に残っています。坂祝町で管理しているパソコンは160台ほどですが、名古屋市では、なんと約3万台あるそうです。これは、坂祝町の人口より多いんですよ。それだけの環境では毎日のように何かしらの障害が起こります。ひとり情シスだから大変、大規模自治体なら人が多いから楽、という単純な話ではなくて、情シス担当者が抱える心理的な負担は自治体の規模にかかわらずあるのだと思いました。

一方で、技術は確実に良くなっています。昔は停電後に機器を立ち上げたら何かが壊れている、ということもよくありましたが、最近はそうしたことも減りました。ゼロトラストのような新しい技術も含めて、これからさらに技術革新が進めば、情シス担当者の作業負担も少しずつ減っていくのではないかと思っています。楽観的かもしれませんが、私は「これからもっと良くなる」と信じて仕事をしています。ひとり情シスの方もいらっしゃると思いますが、未来は明るいと信じて、一緒に頑張っていきましょう。


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