福岡県八女市

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光熱費削減と有事の活用を両立する脱炭素事業を展開

環境・エネルギー
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光熱費削減と有事の活用を両立する脱炭素事業を展開

再エネ導入・利活用の支援サービス

職員の専門知識の不足から、公共施設への再生可能エネルギー導入に踏み出せずにいた八女市。しかし必要性の高まりを背景に、事業者の伴走支援を受けながら導入を推進。有事の対応や地域循環につながる取り組みへと発展させている。

※下記はジチタイワークスVol.45(2026年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

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八女市
未来創造戦略部 企画政策課
係長 山口 昌司(やまぐち まさもり)さん

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八女市
市民部 環境課
係長 深野 晃弘(ふかの あきひろ)さん

再エネ導入の必要性を感じつつも知識不足で事業化に不安があった。

同市では「八女市地域エネルギービジョン」を策定し、国が掲げる脱炭素社会の実現を目指して取り組みを進めていた。その中心は、啓発イベントの実施や、住宅用太陽光発電システム・蓄電池の購入補助など、市民向けの施策だったそうだ。「職員の専門的な知識が不足しており、公共施設への再エネ導入に関する事業に踏み出せずにいたのです」と山口さん。しかし、エネルギー価格の高騰による影響も大きく、早急な対応が必要だった。

専門知識をもつ事業者や市民団体と意見交換を行う中で、太陽光パネルを支える架台の設計・製作を担う「日創プロニティ」を知った。同社はメーカーの知見を活かして、再エネの利活用に関する伴走支援も行っている。同市の課題に対する情報提供や提案のために、同社の担当者は何度も庁舎に足を運んでくれたそうだ。こうして信頼関係を構築し、令和4年11月に包括連携協定を締結。公共施設への再エネ導入を進めることになった。

再エネ導入には様々な手法があるが、同市では公共施設に太陽光発電設備と蓄電池を設置し、“つくった電気をその場で使う”ことを選んだ。「光熱費削減も大事ですが、それだけではありません。災害時など有事の避難所になる公共施設で、いざというときに電気が使えることも重要なのです」と力を込める。同市は平成24年7月の九州北部豪雨の経験を踏まえ、災害に備えて素早い回復を目指す“地域レジリエンス”の重要性も感じていたという。

稼働率の高い施設を選定し庁内で連携して事業を推進。

公共施設に太陽光発電設備を導入する場合、屋根や屋上に設置するケースが多い。用地確保の手間やコストがかからず、屋根の断熱・遮熱効果などのメリットがあるが、施設の選定には様々な制約が存在する。例えば、老朽化による屋根や屋上の耐荷重の問題だ。さらに、統廃合が予定されている施設では長期的な効果が見込めず、電力需要が少ない施設ではメリットが限られる。これらを踏まえ、同社からアドバイスを受けながら、補助金の活用も含めて検討を重ねた。

こうして最初の導入先として選んだのが、八女市立花総合保健福祉センターだった。「同施設には温浴施設が併設されており、日常的に利用している市民が多いのです。そのため年間稼働率が高く、再エネの利用によってCO2排出量や光熱費の削減が期待できると感じました。また、有事における福祉避難所でもあり、ボランティアセンターとしての活用も見込まれています」。

前例のない事業だったため、庁内の調整には苦労したそうだ。しかし検討時期に、事業を担当する脱炭素社会推進係が環境課から企画政策課に移ったことで、市の中心施策として進められるように。施設を管理する介護長寿課や財政課との連携を、よりスムーズに行うことができたという。同社は、適正な設備や費用対効果を具体的に提示したほか、補助金申請や資金調達といった財政面の業務も担ってくれたそうだ。

施設に合わせた設備導入で再エネがさらに身近になる。

令和5年4月の導入時には、省エネ効率を高めるために空調設備も一新。太陽光発電設備と蓄電池のほか、太陽光エネルギーを熱に変換して湯を沸かせる、太陽熱集熱器も採用した。「太陽光発電設備に比べ、太陽熱集熱器はエネルギー変換効率が高いため、温浴施設向きです。自社製品だけではなく他社製品との組み合わせで、施設の状況に合った提案をしてくれました」。

加えて、敷地内の駐車場にソーラーカーポートを設置した。これには、発電量の確保以外のメリットを感じたそうだ。「雨の日に利用者や車がぬれないこと、夏場の車内温度の上昇を抑えられることなどで、便利になりました。通常、太陽光発電設備は施設の屋根の上にあるため見ることができません。しかし、ソーラーカーポートであれば、市民の目に触れる機会が生まれます」。導入では、初期費用を抑えながら単年度のコストを平準化できるリース契約を選択。15年のリース期間終了後、設備は市へ無償譲渡されるという。

成果が次の展開を生み出し地域の循環につながっていく。

同施設は使用電力の約3割を太陽光発電設備で賄えるように。令和7年度の試算によると年間約281.2tのCO2排出量を削減できる見込みだという。深野さんは「ボイラーや空調用の重油の使用量が減ったことで、エネルギー価格の高騰による影響を抑えられました。導入前に比べ温浴施設の利用者は増えたにもかかわらず、光熱費を年間約400万円削減できていることから、再エネの効果を感じています」と笑顔を見せる。この成果を市で広げるため、令和5年7月には、ほかの公共施設への太陽光発電設備の導入優先度調査を実施した。

また、本事業をきっかけに、同社と地元の事業者が連携し「一般社団法人地域笑舎やめ」を設立。太陽光発電設備の維持管理の担い手を地域で育て、技術と資金が循環する仕組みを整えた。令和7年7月には市内の立花支所と黒木支所、令和8年4月には八女市黒木地域交流センターに太陽光発電設備を導入。同社のノウハウを受け継いだ同団体が、資金調達や補助金申請を含め、これらの事業を請け負った。脱炭素に関する取り組みにおいて、同市にとって心強いパートナーになっているようだ。

今後の展望については「温暖化の影響で脱炭素への関心は確実に高まっています。市民への普及啓発を進めるには、私たち職員自身がさらに学んでいく必要があります」と山口さん。そのために、信頼できる事業者とのつながりを大切にしていきたいと締めくくった。


地域エネルギー循環を支える製品と伴走支援

金属加工メーカーの技術力を基盤に自治体の再エネ利活用を支援する同社。架台の設計・製作をはじめ、蓄電池などの関連機器の提案・資金調達・補助金申請・契約に至るまで、導入に関わるプロセスを一気通貫でサポート。地域の課題に寄り添った伴走支援を行う。

遊休地を活用した発電所をつくり地域レジリエンスを高める。

メーカーとしての強みを活かし、自治体と連携した地域共生型事業を展開する同社では、関係会社とともに東北エリアで再エネ発電所の開発事業を開始。エネルギーの地産地消や地域レジリエンス強化につながる取り組みについて担当者に話を聞いた。

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日創プロニティ
事業コーディネーター
戸松 広介(とまつ こうすけ)さん

自治体の課題に応える発電事業。

当社は太陽光パネルの架台を提供するメーカーとして、全国各地のメガソーラー発電所で設計・製作を行ってきました。こうした実績をもとに、自治体や地元の事業者とともに歩み、地域へ利益を還元していく“地域共生型事業”に取り組んでいます。令和7年12月からスタートした再エネ発電所開発では、公共施設や地域の遊休地に太陽光発電施設を設置し、発電した電力を地域内で活用していく考えです。発電所開発に関わる、開発適地の探索・許認可などの各種申請、地権者との交渉、施工、維持管理までを関係会社とともに担います。

その第一歩が「東北プロジェクト」です。青森・岩手・宮城・福島の4県内の自治体で、35カ所を開発候補地として進めています。当社は平成26年に福島県石川町(いしかわまち)に工場を開設し、東日本大震災後の地域経済復興に貢献してきました。一般的に、東北での太陽光発電は、日照時間や豪雪などの影響で不利な面があるといわれています。しかし、当社の架台を製作する技術や、これまでの知見によって、地域にとって最適な企画・提案ができると考えています。

住民の不安にも丁寧に向き合う。

このような再エネの導入は、自治体にとって様々なメリットがあると考えています。例えば、公共施設への電力供給による電源の確保で、有事の備えができることです。再エネの発電施設があることで、エネルギー価格高騰の影響を抑え、光熱費の削減にも寄与します。設置工事や維持管理を地元の事業者が担うことも考えられるでしょう。さらに、税収の増加や地域経済への波及が期待できる、データセンターの誘致も検討中です。IT社会のインフラとして欠かせないデータセンターの需要は高まっており、使用する電力を再エネで賄えれば、脱炭素社会の実現にも近づきます。これらを、自治体が管理に悩む遊休地を活用して進めていきます。

太陽光発電施設について地域住民から不安の声が上がるケースも少なくありません。そこで、事前説明会を通じて丁寧な対話を重ね、慎重に事業を進めています。地域ごとの状況を踏まえ、適切に対応することが重要です。そのために、当社で資金調達を行い、地元の事業者や電力会社と連携します。太陽光発電施設の運営が、地域課題を解決する一助になれば幸いです。


活用できる遊休地の一例

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サービス提供元日創プロニティ株式会社

福岡県福岡市南区向野2-10-25

TEL:070-8694-5396
Email:tomatsu.k@kakou-nisso.co.jp

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