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【地方創生ベンチャーサミット2026 #2】都市と地域の“共創エンジン”を起動せよ

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【地方創生ベンチャーサミット2026 #2】都市と地域の“共創エンジン”を起動せよ

地方創生は人口減少への対策といった“守る”フェーズから、自らの強みを活かして“稼ぐ”、そして多様なプレイヤーとともに新しい価値を“共創する”次なるフェーズへと突入している。

都市と地方、あるいは官と民の間に存在する“見えない壁”をいかにして打ち破るのか。テクノロジーやブランド化によって“食と農”をどうやって稼ぐ産業へと転換するのか。そして、地方のポテンシャルを世界へ発信するための“本気のパートナーシップ”はどうすれば生まれるのか。

新しい地方創生のあり方をリードする人々が集まり、地域への熱意と本音が交錯するイベントが行われた。本記事では、セッションの様子を3回に分けてダイジェストでお届けする。

第2回は「食と農が地域を強くする。ローカルフードが生む新しい産業と関係人口」を取り上げる。

※記事の掲載情報は公開日時点のものです。

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食と農が地域を強くする。ローカルフードが生む新しい産業と関係人口【セッション5】

担い手不足や農地の維持、食料供給力の確保など、地域の“食と農”をめぐる課題は深刻さを増している。これまでのように農業を“守る”だけではなく、地域資源として価値を高め、“稼げる農業”へと転換していく視点が求められている。

そのカギとなるのが、農業DXやフードテック、6次産業化、そして地域の食材に込められたストーリーを消費者へ届けるブランド化だ。国、自治体、スタートアップがそれぞれの立場で現場にどう伴走し、地域の農業を持続可能な産業へ育てていくのか。

このセッションでは、農林水産大臣の鈴木 憲和さん、宮城県富谷市長の若生 裕俊さんらが登壇。国による支援の方向性、自治体による地域農産物のブランド化、テクノロジーと食文化をつなぐ“翻訳者”の役割について議論した。

“守る農業”から“稼ぐ農業”へ。地域の農地をどう維持するか

石山さん:昨今の情勢の変化により、私たちにとって“食”を根本から見直す時代に入っていると感じます。まず、食と農の現在地についてお伺いします。鈴木大臣、国としてはどのようなミッションを掲げているのでしょうか。

鈴木さん:シンプルに言えば「なぜ1次産業に後継者がいないのか」という問いへの答えですが、それは思っている以上に稼げないからです。これまでは“弱いから守ろう”という発想でしたが、これからは“稼げるところはしっかり稼げるようにする”方針へ転換します。一方で、条件が不利な山間部の農地などは徹底的に守る。このメリハリが重要です。人口減少が進む中、海外の労働力に過度に頼らず、国内の食料供給力をどう確保するかが喫緊の課題です。

石山さん:小規模農家も多い地域では、現在地をどう捉えていますか。

若生さん:富谷市でも農業者の主力は60代から70代で、このままでは担い手がいなくなって、農地の維持が難しくなるおそれがあります。農地が荒れると、元に戻すことは非常に大変ですし、災害にもつながります。今後、地方自治体は農地をどうやって守っていくかが重要になります。そこで本市では農地を守るための解決策として、「スイーツのまちづくり」を掲げました。スイーツであれば果物から野菜まであらゆる農産物を加工・商品化でき、付加価値を高めやすいと考えています。それが結果的に、交流人口の拡大や1次産業の活性化につながっていくと考えています。

フードテックと農業DXの実装における「翻訳者」の重要性

石山さん:長内さんはスタートアップの立場で、新しい食の形をつくられていますね。

長内さん:はい。私たちは納豆菌を使った代替たんぱく質の素材をつくっています。来たるべき世界的なたんぱく質危機に対し、効率の良い食料生産を目指しています。ただ、“フードテック”は従来のおいしい食文化と相反するものと誤解されがちです。新しい食材が日常の食文化として定着するには通常100年かかります。それを早めるためには、大学や行政など多様なセクターと連携し、生産者と消費者、そして新しいテクノロジーをつなぐ“翻訳者”としての役割が重要だと感じています。

石山さん:テクノロジーやDXの可能性と実装の課題についてはどうでしょうか。

鈴木さん:自治体の農林課の職員は、補助金のための現地確認などで非常に疲弊しています。ですから、まずはドローンや衛星写真、AIによる解析などを活用し、行政側の負担を減らす“対行政のDX”から進めるべきです。現場の農家の方々に一律に導入を求めると、状況によっては負担感や戸惑いが生じる可能性があるため、行政側から負担なく支援できる体制をつくりたいと考えています。

若生さん:現場の実態として、国が推進するDXの補助金や支援策は、“認定農業者”や“農業法人”など一定規模の生産者を対象とする基準が設けられています。本市のように小規模な農家が多い地域では要件を満たせず対象外となってしまうため、こうした小さな農家へのDX推進を自治体としてどう支援していくかが大きな課題となっています。

長内さん:だからこそ“翻訳者”の存在が重要になります。多様な人が関わる地域で食と農を盛り上げる際、生産者、研究者、行政、スタートアップ、消費者など、それぞれが使う“言語”が異なります。例えば効率化のDXや新しい製法に対して、「従来の製法ではないから、おいしくないのでは」というギャップが生まれがちです。新しいテクノロジーの恩恵と地域の食文化の間に立ち、誰もが理解し共感できるストーリーへと翻訳してつなぐ役割が求められていると思います。

6次産業化とブランド化のカギは「多様性」と「ストーリー」

石山さん:地域の食をブランド化し、6次産業として広げていくための秘訣は何でしょうか。

鈴木さん:日本の大きな武器である“多様性”を稼ぐ力に変えることです。地域の食に価値を付け、インバウンドも含めて高く売る。そのためにも、まずは農家の人も自治体も、自分たちの地域や食の本当の強みを知ることがスタートです。また、抹茶や養殖ブリ、リンゴのように、海外の大きなマーケットをターゲットにしていくことも重要になります。

若生さん:1次産業を6次産業に切り替えていくことは不可欠ですが、加工して商品化しても、価値が認められなければ意味がありません。いかにブランドを確立するかが重要です。本市でも一つひとつのブランド価値を高めるため、行政と生産者が連携して発信する“伴走支援”に力を入れています。その成功事例が、市役所の屋上で市民ボランティアが養蜂を行う「蜂蜜プロジェクト」です。地元の農協と交渉し、市が差額を負担することでネオニコチノイド系農薬の使用を見直してもらいました。するとミツバチの生育状況が改善し、収穫量も100kgから650kgへと増加しました。コンテストでも最優秀賞をいただき、ブランド価値が高まっています。

石山さん:大臣のお話を伺っていると、目の前の生産者と向き合う自治体の担当者が、市長のようなトップダウンの構想をしっかり掲げないと、こうした実現は難しいのではないでしょうか。

鈴木さん:その通りです。行政の中でこうしたプロジェクトを推進できる人材は限られています。そうした人材を人事異動で変えずにその部署に配置し続け、「この人にはこれをやってもらう」と一気通貫で任せることが成功のカギです。長年の血と汗と涙の結晶が成果につながるわけですから、首長は「やるぞ」と言うだけでなく、人事まで責任を持って行うことが非常に大切です。

長内さん:今の蜂蜜のストーリーを聞くと、皆さんも食べてみたいと思いますよね。おいしさは味覚だけでなく、誰がどうやってつくったのかという歴史や安心安全のストーリーを頭で理解して味わうものです。自治体や民間企業が、地域の食材に込められた思いを翻訳”して消費者に伝えることが、ブランド化には欠かせないと考えています。


⼀般社団法⼈ 熱意ある地⽅創⽣ベンチャー連合とは

一般社団法人 熱意ある地方創生ベンチャー連合は、ベンチャー企業やスタートアップがもつイノベーティブなサービスや知見を活かし、地域課題の解決や地域事業の生産性向上、持続的な地域経済の発展に貢献することを目的とした官民連携コミュニティです。平成27年の活動開始以来、勉強会や本サミットなどを通じて、自治体・民間事業者・会員企業などの交流と情報発信を推進。これまで培ってきた官民連携のネットワークを基盤に、多様な主体の共創を促し、ベンチャー企業の挑戦を地域の力へとつなげながら、地方創生の新たな実践の場づくりに取り組んでいます。