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アドベンチャーツーリズムとは?定義・特徴と注目される理由、地域活用のポイントを解説

アドベンチャーツーリズムとは、自然環境での体験活動を通じて地域の文化や人々との交流を深める旅行スタイルである。「アクティビティ」「自然」「文化体験」を組み合わせる点に特徴があり、近年はインバウンド需要の回復や高付加価値旅行への関心の高まりを背景に注目が集まっている。本記事では、その定義や特徴、注目される理由と地域での活用ポイントを解説する。
※掲載情報は公開日時点のものです
アドベンチャーツーリズムとは

アドベンチャーツーリズムとは、世界的な組織である「Adventure Travel Trade Association(以下、ATTA)」によって、「アクティビティ」「自然」「文化体験」の3つの要素のうち、2つ以上で構成される旅行と定義されている。
これは、旅行者がただ観光地を巡るのではなく、その土地ならではの自然や文化を体験しながら、自己の成長や価値観の変化を感じることを目的とした旅行スタイルである。
特に欧米を中心に人気が高く、付加価値の高い旅行形態として広く認知されており、国土交通省(観光庁)においても推進が進められている分野である。
アドベンチャーツーリズムを構成する3つの要素
アドベンチャーツーリズムは、単なる観光コンテンツではなく、地域資源を活かしながら、これら3つの要素をどのように組み合わせて設計するかが重要である。
要素 | 具体例 |
アクティビティ(身体を動かす体験) | ハイキング、カヌー、サイクリングなど |
自然(地域の自然環境に触れる体験) | 国立公園の散策、野生動物の観察など |
文化体験(地域の歴史や暮らしに触れる体験) | 郷土料理、伝統文化、地域交流など |
アドベンチャーツーリズムの「5つの体験価値」とは
アドベンチャーツーリズムは、体験そのものの質が重視される観光であるため、ATTAが提唱する「5つの体験価値」を踏まえて整理することが、観光コンテンツを検討するうえで重要な視点となる。
■ATTAが提唱する5つの体験価値
- その地域ならではの体験になっているか(ユニーク)
- 適度に身体的・精神的な挑戦があり達成感を感じられるか(挑戦)
- 体験を通して、新たな気づきや学びが得られるか(自己変革)
- 心身の回復や健康につながるか(ウェルネス)
- 自然や文化への影響に配慮されているか(影響)
これらは、新たな観光資源の検討に限らず、既存資源の見直しにも応用できる。
エコツーリズムとの違い
アドベンチャーツーリズムは「エコツーリズム」と混同されることがあるが、両者には明確な違いがある。エコツーリズムは、主に「自然環境の保全」と「地域振興」に重点を置いており、学びの側面が強いのが特徴である。
一方、アドベンチャーツーリズムは、自然や文化の体験に「アクティビティ」が加わることで、レジャー性や楽しみの要素がより強調されている。
なぜ今アドベンチャーツーリズムが注目されているのか
訪日外国人旅行者は増加傾向にあり、滞在中の消費額も高水準で推移している。加えて、今後の訪日旅行では大都市以外の地方エリアを訪れたいと考える旅行者も多く、地域への関心の広がりが見られる。
こうした中、観光分野ではアドベンチャーツーリズム市場が国際的に拡大しており、持続可能な観光や地域の文化・自然に関心をもつ旅行者の増加を背景に、その重要性が高まっている。
近年では、令和5年にアジアで初めてとなる「Adventure Travel World Summit(ATWS)」が北海道で開催され、日本への関心が世界的に高まるきっかけとなった。こうした流れの中で、アドベンチャーツーリズムは地域にとって新たな観光の選択肢として期待されており、取り組みを進める自治体が増えている。
出典:環境省「国立公園におけるアドベンチャートラベルの手引書」
アドベンチャーツーリズムの3つのメリット
アドベンチャーツーリズムは、観光消費の拡大や地域資源の活用など、自治体にとって様々なメリットが期待される観光のあり方である。ここでは、主なポイントを整理する。
観光消費の拡大が期待できる
アドベンチャーツーリズムの旅行者は、一般的な旅行に比べて旅行者の滞在日数が長く、消費額も高い傾向にある。ガイド料や体験費用などの支出が発生するため、宿泊・飲食・交通を含め、地域全体への経済効果が見込まれる。
特に欧米やオーストラリアからの旅行者はその傾向が顕著であり、地域における観光消費の拡大を図るうえで重要なターゲットとなり得る。こうした成長分野を取り込むことで、地域における観光消費の拡大にもつながると考えられている。
地方への誘客と地域資源の活用につながる
アドベンチャーツーリズムの旅行者は、混雑した観光地よりも、独自の魅力をもつ地域や落ち着いた環境を好む傾向にある。自然や文化、暮らしといった地域ならではの体験を求める旅行者が多く、有名観光地に限らず地方への誘客が期待できる。
こうした特性から、 これまで十分に活用されていなかった地域資源を活かした観光の展開が可能であり、地方における新たな来訪につながると考えられている。
既存観光に依存しない観光の分散につながる
既存の観光は、有名観光地や特定の時期に人が集中しやすく、観光客の偏在やオーバーツーリズムといった課題がある。一方で、アドベンチャーツーリズムは、自然や文化、暮らしといった地域資源そのものを体験価値として活かす観光であり、特定の観光地や季節に依存しすぎない展開が可能である。
そのため、観光客の分散やオフシーズンの需要創出につながる可能性があり、従来の観光を補完する新たな観光のあり方として注目されている。
国内の取り組み事例|地域の歴史や復興の物語をツアーに(広島県)
広島県では、原爆ドームや宮島といった主要観光地に来訪者が集中し、周辺地域に人が流れない「通過型観光」が課題となっていた。そこで、市中心部から約1時間圏内にある湯来町や江田島市などの自然資源に着目し、「平和×アクティビティ」をテーマに、体験プログラムの開発やモニターツアーの実施を通じたアドベンチャーツーリズムの造成に取り組んだ。
「平和」や「歴史」といった地域のストーリーを体験に組み込み、広島という地域をより深く知ることができる内容となっている。体験を通じて、新たな気づきにつながる点も特徴だ。
こうした取り組みを通じて、湯来町や江田島市といった新たな観光資源の可能性が可視化され、既存の観光ルートにとどまらない広島の魅力発信につながっている。
自治体の主な取り組み
- 地域資源(自然・文化・暮らし)の洗い出し
- 事業者や団体と連携した検討の実施
- 「平和×アクティビティ」を軸とした体験プログラムの検討・造成
- ガイドやコーディネーターの育成
- モニターツアーによる検証・磨き上げ
導入効果
- 新たな観光資源(湯来町・江田島市など)の発掘と可能性の可視化
- 「平和×体験」という独自コンセプトの確立とコンテンツの磨き上げ
- 地域事業者や関係者とのネットワーク構築、人材育成の推進
出典:JTB「広島でしかできないアドベンチャーツーリズムで目指す!通過型観光地からの脱却!」
アドベンチャーツーリズムの推進におけるポイント

アドベンチャーツーリズムは、地域資源を活かした観光施策として活用できる点が特徴であり、以下のポイントを押さえることで効果的な展開が可能となる。
出典:環境省「国立公園におけるアドベンチャートラベル推進にむけた手引書」
地域資源の洗い出しと価値の再発見
地域には、まだ十分に活用されていない魅力的な資源が存在している。地元では当たり前とされている風景や暮らしも、旅行者にとっては新鮮で価値のある体験となり得る。こうした視点から、地域の自然環境や歴史、文化、伝統産業、人々の生活などを多角的に洗い出し、他地域にはない独自の価値を掘り起こすことが重要である。
コンセプトとターゲットの設計
整理した地域資源をもとに、提供する体験のコンセプトやキーメッセージを設定し、ターゲットとする旅行者像を具体化する必要がある。例えば、「地域の暮らしを体感する」といったテーマを設定することで、体験内容の軸が明確になり、全体に一貫性をもたせることができる。
アドベンチャーツーリズムでは、自然や文化への関心が高く、体験を重視する旅行者を想定した設計が求められる。
ストーリーとしての体験設計
個々の体験を単に組み合わせるのではなく、一貫したストーリーとして設計することが重要である。導入から展開、ハイライト、締めくくりといった流れを意識し、印象的な体験やアクティビティを組み込むことで、旅行者の没入感を高めることができる。
例えば、ツアーは以下のような流れで構成されることが多い。
- 序章(導入):地域の概要や背景を伝える
- 展開部:自然や文化など多様な側面に触れる
- ピーク部:印象的なアクティビティを体験する
- 終章(締めくくり):余韻をもって体験を終える
このような体験設計の視点を踏まえ、自治体としても事業者との連携や支援を通じて、観光体験の質の向上を図ることが求められる。
関係者との連携体制の構築
設計したコンテンツを実際の観光として展開していくためには、地域内の事業者やDMO(観光地域づくり法人)など関係者と連携し、受け入れ体制を整えることが求められる。自治体としては、関係者間の調整や情報共有の場の設置などを通じて、地域全体で旅行者を受け入れる仕組みを構築していくことが重要である。
また、アドベンチャーツーリズムで活用されるフィールドは、これまで観光利用が想定されていなかった場所であることも多い。そのため、土地所有者や関係機関との調整、安全管理やアクセス環境の整備など、受け入れに向けた体制づくりが求められる。
まとめ
アドベンチャーツーリズムは、地域の自然や文化といった資源を活かしながら、観光消費の拡大や観光の分散につながる可能性がある観光のあり方である。
特別な施設を新たに整備するのではなく、既存の地域資源を見直し、どのような体験として提供できるかを考えることが出発点となる。
なお、アドベンチャーツーリズムの推進にあたっては、ガイドの育成や安全管理などの課題もあるため、段階的に検討を進めることが求められる。具体的な取り組みの進め方については、環境省の「アドベンチャ―ツーリズムナレッジ集」などで整理されており、実務を検討する際の参考となる。

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