公開日:

【セミナーレポート】災害対応から見えたこと~被害を最小化する受援体制と避難所運営~【DAY1】

防災・危機管理
読了まで:17分
【セミナーレポート】災害対応から見えたこと~被害を最小化する受援体制と避難所運営~【DAY1】

災害時は確実に動けるよう、限られた体制でも実践できる防災の知恵が求められています。しかし、実際にその場に直面したときに、想定通りに動けるかと問われると自信がない人もいるのではないでしょうか。

そこで、本セミナーでは、被災経験をもとにした「受援体制」「避難者生活」の実践例を通し、起こりうる未来の災害を想定し、被害を最小化するための備えを考えます。

概要

■テーマ:災害対応から見えたこと~被害を最小化する受援体制と避難所運営~
■実施日:令和8年2月12日(木)
■参加費用:無料
■申込者数:175人

災害関連死の防止~スフィア基準と福祉避難所を中心に~

最初に話を伺ったのは、防災や危機管理の情報発信に取り組む鍵屋一氏。スフィア基準にもとづく支援の考え方や福祉避難所の充実、ならびに災害救助法改正のポイントについて語っていただきました。

プロフィール画像

【講師】鍵屋 一 氏
跡見学園女子大学 観光コミュニティ学部 教授
(元・板橋区福祉部長、危機管理担当部長)

跡見学園女子大学観光コミュニティ学部まちづくり学科教授。京都大学博士(情報学)。板橋区福祉部長、危機管理担当部長を経て現職。内閣府「被災者支援のあり方検討会」座長、(一社)福祉防災コミュニティ協会代表理事、日本災害福祉研究会共同代表など。著書に『図解よくわかる自治体の地域防災・危機管理の仕組み』『だれでも防災』(監修)など。

避難所で何が起きているのか

能登半島地震では、地震や津波による直接死に加え、700人を超える方が亡くなり、その多くが高齢者の災害関連死でした。せっかく助かった命が、避難生活の中で失われていく。この現実を前に、少なくとも何をやるべきかを、自治体職員のみなさまと一緒に「避難生活支援」に焦点を当てて考えていきます。

避難所には、厳しい現実が待っています。食事はカップ麺や菓子パン中心で、小麦アレルギーや糖尿病の方は食べるものがありません。現在の備蓄は「若くて元気な人が3日生き延びる」想定にとどまり、高齢者や要配慮者が十分に配慮されていないのです。これが原因で、体力を落としてしまう方も多くいます。

また、避難所のトイレは大問題。実際に、能登半島地震の際には道の寸断で仮設トイレの設置が遅れ、流せないトイレに排せつ物が放置されるといった事態が起きました。

こうなると、できるだけトイレに行かなくて済むように食事や水分を控える人も出てきます。すると、体力・免疫の低下につながり、誤嚥性肺炎やエコノミークラス症候群、感染症の流行を引き起こします。こうした現状にイライラしてしまい、もめ事や犯罪も多くなります。また、悲しいことに80代女性がトイレを求めて畑に向かい、転倒して起き上がれず低体温症で亡くなられた事例もありました。これが、今の日本で現実に起きていることです。

自助・共助・公助は唱えるだけでは効かない

75歳以上の人口は、30年で約3倍に増えました。75歳以上の約3割が要介護・要支援で、階段の昇降ができない、排せつの失敗があるという方も少なくありません。


にもかかわらず、「徒歩で小・中学校へ避難」という運用が十分に見直されていないのが実情です。さらに、近所づきあいは減り、自治体職員も25年で16.5%減少しました。避難所外の要配慮者を3日以内に見守る体制を立ち上げられる自治体はわずか0.4%です。

自助・共助・公助は大切ですが、唱えれば機能するものではありません。社会の脆弱化を前提に、防災を福祉の理念でアップデートする必要があります。

在宅被災者への支援が鍵

また、熊本地震では関連死の6割以上が自宅など発災前と同じ居場所で亡くなっています。能登半島地震でも、80代・90代が多く、発災後長期間にわたり亡くなっています。体調悪化の主な場所は介護施設、避難所、自宅。つまり、これは支援があるはずの場所で亡くなっていることを示しています。


だからこそ、在宅の高齢者や障害者への早急な見守り、医療・福祉・生活支援が不可欠です。自治会の見守り、福祉BCP、社協の生活支援、地域支え合いセンター、保健医療福祉調整本部などの連携を、平時から具体化しておく必要があります。

スフィア基準に学ぶ「尊厳」の視点

そこで意識したいのが「スフィア基準」です。ルワンダ虐殺後の支援活動の反省から生まれたスフィア基準は、「被災者は尊厳をもって生きる権利がある」「苦痛を和らげるためにあらゆる手段を尽くす」という信念を根幹に置いています。トイレについても、単に数を満たすだけでなく、「子ども、高齢者、障害者が安全に使えること」を基本指標とし、住居近くにあり、昼夜を問わずいつでもすぐに安心かつ安全な使用ができ、十分な数の設備を有しているというのが最低基準とされています。

大切なのは、全ての基準に完全に合致することに固執しないことです。すぐに基準を満たせない場合は、そのギャップを説明し、理由を共有し、悪影響を評価し、緩和措置を取ること、つまり「対話」を何より重要視しています。

福祉避難所をどう位置づけるか

福祉避難所については、直接避難が原則とされています。個別避難計画で事前マッチングを行い、受け入れ対象を明確にする。例えば、上越市では自宅から直接福祉避難所へ避難する仕組みを整えています。

一方で、多くの自治体では福祉避難所は二次避難所とされるため、開設が遅れる、受け入れ調整に時間がかかるなどの課題もあります。私は、できる限り多くの福祉施設を福祉避難所に指定すべきだと考えています。厚労省も「社会福祉施設の公共性を鑑みれば、可能な限り福祉避難所の指定を受けることが望ましいが、仮に指定を受けない場合でも被災時に外部から要援護者や近隣住民などの受け入れの要望に添うことができるように」と言っているのです。実際、2025年12月18日に出た「社会保障審議会福祉部会報告書」では、災害救助法の救助の種類に「福祉サービスの提供」が追加されたことを契機に地域福祉計画に災害福祉を明記し、防災と福祉の連携を制度として位置づけるよう求めています。ただし、福祉避難所の運営が福祉事業所の負担とならないよう、財源の確保などの運営スキームの整備は必要です。

「価値向上型防災」へ

これからの防災の目的は、災害時の損失を減らすだけでなく、日常から人間関係を育み、誰一人取り残さない地域共生社会をつくることです。防災・福祉・コミュニティが連携し、強みを生かし弱みを補完する。それが結果として、災害にも強い地域をつくります。災害時「も」尊厳が守られる社会を目指す。そのために、個別避難計画、災害ケースマネジメント、福祉避難所の拡充、財源確保、人材育成に、本気で取り組んでいただきたいと思います。そして、みなさまが本当に大事だと思うことは、ぜひ真っすぐに進めてください。災害関連死ゼロを目指す挑戦は、決してムダにはなりません。

避難所に求められる“これからの空調と換気”

第2部に登壇したのは、新晃工業株式会社の黒川誠氏。災害時の避難所における空調・換気の重要性や自社製品「そよ風アリーナ」の特徴について伺いました。

プロフィール画像

【講師】
黒川 誠 氏
新晃工業株式会社
営業統括本部 ヒートポンプエンジニアリング事業部 サブチーフ

2024年、新晃工業株式会社に発足した専門チームとして、ヒートポンプ式空調機を主軸に、各施設の空調条件や運用に即した最適なエンジニアリング提案を提供している。

災害時の避難所で何が起きているのか

能登半島地震では、ピーク時に約4万人を超える方が避難生活を送りました。過去の震災を振り返っても、避難所では急性呼吸器感染症や感染性胃腸炎などが一定規模で発生しています。東日本大震災では、約3,000人規模の避難所で週500人前後の急性呼吸器感染症が確認された報告もあります。

数千~数十万人規模が集まる避難所での生活が長期化すると、体調不良や呼吸器症状が必ず発生するといわれ、災害関連死の多くは避難生活中の健康悪化と関係性が深いと考えられます。なぜなら、避難所では「せきや発熱などの呼吸器症状」「インフルエンザやCOVID-19などの飛沫・空気感染症」「CO₂濃度上昇による倦怠感や集中力低下」「高齢者や基礎疾患を持つ方の体調悪化」といったリスクが高まるからです。つまり、避難所における空調は、健康被害や医療負荷を減らすための「予防インフラ」なのです。

避難所に求められる空調機能

石川県の検証報告では、能登半島地震の避難所において「パーソナルスペースの確保が困難」「上下水道途絶による衛生環境の悪化」「感染者の隔離や動線分離が難しい」といった課題があげられています。体育館や公民館に多数の避難者が長時間滞在する状況では、密集・密閉・長時間滞在という条件が重なりますから、感染症対策を前提とした環境整備は不可欠です。

これらを踏まえ、私たちは、避難所に必要な空調機能として次の3点が重要だと考えています。

避難所では、長時間滞在しても不快になりにくい環境づくりが、生活の質(QOL)を左右します。静かで、やさしく、換気ができる空調は“ぜいたく”ではなく“必要条件”です。

ところが、実際に避難所として使われる施設の約7割は体育館であるのに対し、体育館の空調設備導入は約22%にとどまっています。文部科学省と総務省は2035年までに体育館空調の導入率95%を目標としていますが、現時点では大きなギャップがあります。

感染症対策の観点からも、国立感染症研究所や関連学会は避難所での「常時機械換気」を推奨していますから、体育館空調の整備は、避難所機能の強化そのものであることは間違いありません。

体育館向け空調システム「そよ風アリーナ」

これらを踏まえて私たちが開発したのが、体育館向け空調システム「そよ風アリーナ」です。

特徴は以下の通りです。

・常時機械換気を行いながら空調を実現
・ワンタッチで「避難所モード」に切り替え可能
・専用の布製吹出口(そよ風ディフューザ)を採用、軽量で地震時の落下リスクを抑制
・ディフューザは布製でボールがあたっても故障の心配が少ない
・ディフューザ全体からにじみ出るような気流で競技性に優れつつ体への負担が少ない
・機器本体は屋外設置型で体育館内の設置スペース不要

通常は省エネ運転をし、避難所利用時には外気量を増やす「避難所モード」へワンタッチで切替可能です。また、従来の天吊り型やスポット型は換気が難しく、強い気流や騒音が課題になる場合がありますが、本システムは気流を抑えつつ、換気を行いながら大空間を空調できるのもポイントです。


導入事例

神奈川県秦野市立末広小学校では、ガスヒートポンプ空調機2台と専用吹出口を導入していただきました。外気温33℃環境下での実証では、体育館内の暑さ指数WBGTは22℃まで改善し、児童の活動にも配慮した空調を実現しています。

体育館空調は、単なる設備投資ではありません。災害関連死や健康被害を減らすための「事前防災」です。導入にあたっては、文部科学省の「空調設備整備臨時特例交付金」や総務省の「緊急防災・減災事業債(緊防債)」が活用できますし、弊社ではリース契約にも対応しています。ぜひ、気になる方はお問い合わせください。

災害対応における『受援力』という視点

第3部に登壇したのは、JVOADの栗田暢之氏。過去の災害時における課題やこれまでの取り組みを踏まえ、受援の具体的な内容を事例とともに紹介していただきました。

プロフィール画像

【講師】
栗田 暢之 氏
認定特定非営利活動法人
全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)
代表理事

1995年の阪神・淡路大震災を機に、認定NPO法人レスキューストックヤードを設立。以後、全国各地の災害支援に携わる。2016年に設立されたJVOADの代表理事に就任し、官民連携による支援体制づくりを推進。政府や自治体の各種委員を歴任するほか、岐阜大学、至学館大学、愛知医科大学で非常勤講師も務める。

災害中間支援組織とは何か

災害対応の最終目標は被災者の生活を守ることですが、そのためには行政・社協・NPO・企業・ボランティアの力をつなぐ“中間支援”の仕組みが不可欠です。災害中間支援組織は、現場で活動する多様な団体を支え、縦(国・県・市町村)と横(社協・NPO・企業・住民)をつなぎ、情報共有と調整を行うハブです。近年は都道府県単位での設置が進み、2025年時点で47都道府県中28で整備されています。

「情報共有会議」の意義

熊本地震を契機に定着したのが「情報共有会議」です。これは単なる報告会ではありません。共有そのものが目的ではなく「支援の漏れがないか」「残された課題は何か」「支援の重複や偏りが起きていないか」を確認し合う場です。

例えば熊本では、NPOと行政が協働し「避難所アセスメント」を実施。結果を政府現地対策本部や県に報告し、避難所環境の改善につなげました。

当時の行政職員からは、「最初は“ヨコ文字の団体”に戸惑いもあったが、連携実績を知り安心した。社協に加え災害ボランティア団体と連携できたことは非常に有意義だった」という声も寄せられています。この経験を踏まえ、熊本ではKVOAD(県域の災害中間支援組織)が設立され、会議体は現在も継続しています。

連携が機能した具体例:房総半島台風

千葉県房総半島台風が起きた際には「三者連携による情報共有会議」が開催されました。屋根被害へのブルーシート張り対応では、県・内閣府・国交省、自衛隊、消防、技術系NPOが連携。専門NPOが自衛隊員に講習を実施し、支援の質を担保しながら対応しました。これは、技術系のNPO等による支援と行政支援がかみ合った好例です。

連携が機能した具体例:令和元年東日本台風

続いて紹介するのは令和元年東日本台風。長野県では「ONE NAGANO」のもと、県・市、内閣府、環境省、自衛隊、警察、災害VC、NPO地元住民が連携し、短期間で大量の災害廃棄物を搬出しました。

この連携が可能だったのは、長野県地域防災計画に災害中間支援組織との連携や連絡会議設置が明記されていたからです。さらに、防災基本計画も改正され、都道府県による災害中間支援組織の育成・強化が明確に位置付けられました。

能登半島地震

一方、石川県には県域の災害中間支援組織が整備されていない中で、能登半島地震が発災しました。JVOADは1月2日から県庁に入り、「車両調整」「情報共有会議・コア会議の運営」「支援団体調整」を実施しました。

例えば「どの避難所に何食届くのか」を可視化する窓口では、行政と連携し、オンライン管理を行うことで、過不足の防止や重複支援の回避、ニーズ優先度に応じた配分を実現しました。

また、応急仮設住宅での不具合(浸水・建具不良など)が確認された際は、コア会議を通じて関係団体と共有し、プレハブ協会へ一斉点検を依頼するなどの調整を実施しました。

さらに、厚労省の「被災高齢者等把握事業」を石川県→JVOAD→専門NPOで実施し、支援員約4,000人が約1万5,000人を訪問。洗濯や食物アレルギー、服薬など生活上の困り事をカルテ化して市町に共有しました。

また、能登では技術ニーズ3,425件が発生しましたが、そのうち防水シート張りやブロック塀解体、車両救出や床はがしなど、重機や専門知識が必要な案件は専門性のある技術系団体が対応。一方で、家財整理や清掃といった軽作業は、個人ボランティアが担いました。このように役割を整理し、適切にマッチングすることが安全性と効率性を高めます。

行政に求められる「受援力」

今回、何より強調したいのは「受援力」です。災害対応の柱は基礎自治体ですが、どれほど体制を整えていても、行政だけで全てをやり切ることは現実的ではありません。最悪なのは、抱え込んでしまうことです。大変なときには「助けて」と言っていいのです。NPOやボランティアも、その受援の対象です。

ただし、発災後に「初めまして」では迅速な連携はできません。重要なのは、地域防災計画への明記や平時からの会議体の設置、協働研修・訓練、顔の見える関係づくりです。ぜひ、皆さまの自治体でも災害中間支援体制の整備と平時からの連携構築を進めていただきたいと思います。

「災害時に建物が“安全かどうか”わかる社会を」~それが家コネクトの役割~

第4部に登壇したのは、株式会社タナカの冨栄悠氏。避難所開設における初動対応の迅速化を実現する「家コネクト」の詳細を、実例と合わせて紹介していただきました。

プロフィール画像

【講師】
冨栄 悠 氏
株式会社タナカ
総合研究部 新規事業課 係長

2005年同社入社。住宅資材部門営業部・仙台営業所配属、東北商圏における建築接合金物販売に従事。2019年4月~2025年7月同営業所所長。2025年8月~総合研究部新規事業課・家コネクトチームへ異動。全国自治体危機管理課へ、鋭意家コネクトの営業活動中。

地震大国・日本が抱える構造的課題

私は仙台出身で、東日本大震災を経験しました。当時、多くの方が「自分の家は安全なのか」と不安を抱えていたことを、今も忘れられません。その経験から開発したのが、IoTセンサー「家コネクト」です。

日本ではこの24年間、震度6弱以上の地震が年間2回以上、どこかで発生しています。未知の活断層は数千以上存在するとされる一方、国が重点調査しているのは全体の約5%に過ぎません。地震リスクの全容は把握しきれていないのが現実です。

  ※震度等級図解図(出展元 気象庁HP)https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/shindo/index.html

さらに、地震による死因の約6割は建物倒壊だといわれています。にもかかわらず、地震直後に「建物が安全かどうか」を即時に判断する仕組みは十分とはいえません。

そんな中、自治体の皆さまからよく聞くのは「構造は本当に大丈夫か」「目視だけで判断してよいのか」「余震が来たらどうするのか」といった、指定避難所開設時の不安です。さらに、罹災証明発行の前提となる応急危険度判定を担う建築士は減少傾向にあり、南海トラフ地震のような広域災害では、需要と供給のバランスが崩れることが懸念されています。加えて、復旧を担う施工業者の高齢化や人手不足も深刻です。「人が足りない」状況を前提に、防災・減災の仕組みを考える必要があります。

※応急危険度判定スキーム図解(出展元 読売新聞社)https://www.yomiuri.co.jp/national/20230524-OYT1T50116/
※住家判定スキーム図解(出展元 大田区HP)https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/sumaimachinami/kenchiku/kikendohantei/index.html

IoTセンサー「家コネクト」とは

そこで、大きく寄与するのが「家コネクト」です。これは、建物に設置しておくだけで、地震発生時の揺れと建物の耐震状況を即時に可視化するIoTセンサーです。主な特徴は

地震波形を数値化しクラウドへ自動送信
スマホ・PCの管理画面で即時確認
ビス2本で固定、コンセントに挿すだけの簡単設置
2個セットで約40万円の初期投資
地震ごとに精密診断級のデータを取得可能
といったもの。指定避難所などに設置しておくことで、地震直後に建物の状態を把握でき、避難所開設の迅速な意思決定につなげることができます。

実際に茨城県土浦市では、公民館などの指定避難所に導入され、地震直後の耐震性能把握に活用されています。


「揺れている最中」のデータを記録

「家コネクト」の大きなポイントは、「層間変形角(建物のひずみ)」を計測できる層間す。従来の応急危険度判定は、地震が収まった後の状態を目視で確認するというものでした。しかし、実際には揺れている最中に大きなダメージが生じる場合があります。「家コネクト」なら最大変位を記録するため、“その瞬間”の負荷をデータとして残せます。これにより、より客観的で再現性のある判断が可能になるのです。

実証例:震度差の可視化

実際、青森県で地震が発生した際、気象庁は震度5を観測しました。一方、同じ揺れを受けた建物に設置した「家コネクト」のデータでは震度3.99相当という結果が出ました。震度が1違えば、加速度は大きく異なります。この違いは、土地の成り立ちや建物の構造特性を反映しており、研究者からも、「建物ごとの揺れの違いを可視化できる点が重要」と評価を受けています。

「家コネクト」は単なるセンサーではありません。避難所開設判断の迅速化や罹災証明業務の効率化、技術者不足への補完や地域の耐震データ蓄積といった行政課題の解決に寄与するセンサーです。さらに、蓄積データを活用すれば、地域ごとの揺れやすさ、建物特性を分析し、より強いまちづくりへとつなげることが可能です。人手不足が進む時代だからこそ、テクノロジーで補える部分を増やしていく。地域社会の安心・安全の基盤づくりに、ぜひご活用いただければと思います。


災害支援の最前線!kintone地図活用実例

第5部に登壇したのは、あっとクリエーション株式会社の黒木紀男氏。数々の被災現場で実際に活用されているkintoneとカンタンマップについて解説していただきました。

プロフィール画像

【講師】
黒木 紀男 氏
あっとクリエーション株式会社
代表取締役

1993年、大学卒業後、建設コンサルタント会社に入社。主に土木設計に従事。1995年、阪神・淡路大震災を経験。現地での被害調査を担当する中で、現場でのIT活用の必要性を痛感する。2007年、あっとクリエーション株式会社創業。


kintoneと連携する地図サービス

私はもともと土木技術者で、建設コンサルタントとして橋梁設計に携わっていました。その後IT部門に異動し、GIS(地理情報システム)を担当。阪神・淡路大震災では国交省事務所で現地調査を手伝いましたが、当時はネットもGPSもなく、紙地図と赤ペン、フィルムカメラでのアナログ作業でした。その経験から強く思ったのが、「専門家だけのGISではなく、誰でも使える地図が必要だ」ということ。そこから生まれたのが「カンタンマップ」です。

kintoneは、ノーコード・ローコードで業務アプリを作れるクラウドサービスで、現在400以上の自治体で導入されています(現在はさらに増えている可能性があります)。

「カンタンマップ」は、kintoneと連携する地図サービスです。

kintoneの特徴

  • Excelの避難所リストを読み込むだけで地図化
  • 5〜10分程度でマップ公開が可能
  • リアルタイム更新
  • 専門知識不要

例えば、避難所の開設状況を即座に地図にプロットし、住民向けに公開できます。

災害ボランティアセンターでの活用

ここ数年の大規模災害では、災害ボランティアセンターの運営にkintone+カンタンマップがほぼ活用されています。主な用途は、ボランティア受付のデジタル化、被災者ニーズの一元管理、活動件数の可視化といったものです。例えば、「本日何人のボランティアが来たか」といった情報がリアルタイムで把握できます。

実際、秋田市社会福祉協議会の災害ボランティアセンターでは、被災者マップとハザードマップを大型モニター上で重ねて表示し、「明日はどの地域にどんな作業が必要か」を議論していました。データはリアルタイム更新されるため、状況を一目で把握できます。さらに、全国の社協では「災害時はkintone+カンタンマップを使う」という運用が浸透しており、他地域からの応援職員もすぐに操作できる点が強みです。

全国初・静岡DWATの事例

また、静岡県牧之原市で起きた牧之原竜巻被害の際には「行政」「DWAT(災害派遣福祉チーム)」「社協」が同一のkintone環境で情報を一元管理・共有した初の事例となりました。実は、初日は紙地図でアナログの運用をしていましたが、翌日からデジタル化。DWATはスマホで現地状況を音声入力し、その情報がリアルタイムで本部に共有される仕組みが構築されました。

ちなみに、能登半島地震でも弊社のサービスが活用され、被災地支援の情報整理・共有に貢献しました。

「平時から使える」ことの重要性

よく「平時から使っていないシステムは、災害時には使えない」といわれますが、このシステムは「道路管理」「空き家管理」「福祉情報管理」など、平時業務でも全国の自治体で活用されているのも特徴の1つです。日常業務で使っているからこそ、災害時にも自然に使えるのです。

kintone提供元のサイボウズ社では、「サイボウズ災害支援プログラム」により、導入検討のための半年間無償提供制度があります。また、すでにkintone導入済みの自治体さまは、当社の「カンタンマップ」を30日間無償でお試しいただくことも可能です。ぜひご検討いただければ幸いです。

【お問い合わせ】

ジチタイワークス セミナー運営事務局
TEL:092-716-1480
E-mail:seminar@jichitai.works