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“3段階”に分けた認定制度で、継続的な取り組みを促す。

地域の支援機関と連携して脱炭素経営を支える仕組み
尼崎市は、脱炭素経営の取り組み状況に応じて、企業をブロンズ・シルバー・ゴールドの3段階で認定し、補助金など脱炭素化への支援を行う制度を用意。各種支援機関の後押しにより、多くの企業が参加しているそうだ。
※下記はジチタイワークスVol.41(2025年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

尼崎市
経済環境局 経済部 産業政策課
課長 西岡 努(にしおか つとむ)さん
補助金だけでは“その場限り”になり脱炭素化の取り組みが続きにくい。
戦後の急速な工業化によって、公害問題に悩まされていた同市。脱炭素社会の実現に向けて、様々な取り組みが進められている。「脱炭素化の取り組みを進めた結果、産業部門のCO₂排出量は平成25年度と比べて4割削減しています。ただし大企業が引っ張っている状態で、中小企業の取り組みは十分とは言えません」と西岡さんは話す。
これまで省エネ診断や設備導入の補助を行ってきたが、単発の補助金では取り組みが続きにくい。そこで、商工会議所や地域の金融機関など複数の支援機関と連携し、令和6年度から「尼崎市脱炭素経営宣言・認定制度」を開始した。同制度では、方針を表明するとブロンズ、目標を設定するとシルバー、実績報告を行うとゴールドという3段階で認定。ステップが上がるごとに、市の補助金に申請できるほか、融資や金利優遇など支援機関によるサポートが受けられる仕組みだ。
「脱炭素化において自社のCO₂排出量を“測る”ことは重要ですが、中小企業にはハードルが高いようです。まずは気軽にできることから始めて、段階的に取り組みを進めてもらうことを目指しました」。また、中小企業の社長は近隣の会社の動向を気にする傾向がある点にも着目。段階を設けることで、“うちも負けられない”という前向きな競争心が生まれるのではと期待しているそうだ。

地域の金融機関と連携することにより無理なく参加の輪を広げていける。
すでに約90社がブロンズに認定され、シルバーやゴールドに挑戦する企業もあらわれている。認定企業にはロゴマークを授与しており、主にホームページで対外的な信頼の証しとして活用されているそうだ。行政の認定は、若い人材やその親世代にとって就職先選びの安心材料になる。人材確保にもつながり、参加企業から喜ばれているという。
制度を広めていく上で、西岡さんが大切だと強調するのが、支援機関との連携体制だ。「自治体だけでは、できることに限界があります。日頃から企業と付き合いのある金融機関の社員が、伝道師のように制度を広めてくれることが大きな力になっています」。実際、参加企業の9割以上は金融機関からの紹介によるものだという。
今後はシルバー企業を増やすことに重点を置き、ニーズの把握を通じて制度改善やPRに力を入れる予定だ。「支援機関ごとに、脱炭素化を進める目的や方法が違うので、目線を合わせるのは大変です。でも、手間を惜しまず時間をかければ、その後は面的に広がっていきます。これからも協力してくれる関係者を増やしながら、地域ぐるみで裾野を広げていきたいです」。











