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262施設一括の迅速なLED化で、市を挙げて脱炭素に取り組む。

施設照明のLED化をはじめとした脱炭素ソリューション
“ゼロカーボンシティ”を表明し、262施設の照明LED化に着手した安城市。リースを活用して一括で取り組むことで、予算の平準化とスピーディな工事が進められている。3カ年で全ての工事が完了する見込みだという。
※下記はジチタイワークスVol.41(2025年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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安城市
環境部 環境都市推進課
係長 柴田 晃輔(しばた こうすけ)さん

安城市
環境部 環境都市推進課
主事 狭間 世丈(はざま せじょう)さん

安城市
環境部 環境都市推進課
主事補 小林 万里奈(こばやし まりな)さん
市のゼロカーボンシティ表明を機にLED化を加速させるため手段を検討。
同市では平成29年頃から、市の公共施設の改修計画にもとづき、老朽化対策と併せて照明のLED化を行っていた。従来の蛍光灯器具の製造停止が進められ、政府目標では2030年までのLED化が示されていることから、公共施設のLED化は避けられない取り組みだったという。そんな中、国は地球温暖化対策に力を入れるべく、令和2年に、2050年までのカーボンニュートラルの実現を掲げた。電気使用量の削減が期待できる照明のLED化について、より効率的な手段がないか、同市でも検討を始めた。
LED化を進めるにあたり、施設の所管課がそれぞれ公共工事の手法で発注していた。工事のための設計は、建築の専門部署である施設保全課が担当。「施設の所管課が個別に設計を依頼し、技師の職員が一つひとつ対応していたため、時間もコストもかかっていました。一方で、政府目標まで時間の猶予がない中、全ての公共施設のLED化を完了させるためには、短期間に工事を集中させる計画にするしかありませんでした」と狭間さん。しかし、工事発注の事務作業や財政負担も集中する。このままでは目標までに間に合わないと危惧し、事業者との窓口を一本化して効率化を図っている他自治体の事例を参考に、庁内で方法を議論しはじめた。
こうした検討が進む中、同市は令和4年5月に、ゼロカーボンシティを表明。市を挙げて脱炭素に取り組むことになり、その翌年、環境都市推進課の中にカーボンニュートラル推進室が発足した。「様々な施策のうちの一つが、公共施設の照明LED化です。当室が窓口となり、市内の全対象施設を一括して進めることになりました。事業を検討しはじめた直後に、直管蛍光灯の製造が2027年末までに禁止となる発表を受け、“とにかく早く進めなければならない”というのが庁内の共通理解でした」と柴田さんは話す。

実績と効果試算が決め手となり長期リースの活用で着工へ。
同市は公募型プロポーザルで事業者を募集。脱炭素ソリューションを幅広く提案する「アイネック」をはじめとするグループが優先交渉権者となった。「同社が計画から調査・設計を主に担当し、施工を担う地元事業者、そしてリース会社の3社からなるグループを採用しました。決め手の一つは、施工に地元の電気事業者が多く参加することでした」。
今回の事業では、10年間の長期リースを活用することで予算を平準化。令和6年からの3カ年で262施設を一括でLED化する。対象は、小・中学校や福祉施設、公民館、スポーツ施設など。全ての現地調査を経て同社が設計を行い、リース契約を結び、順次着工となる。
リースを活用する提案を受けたものの、同市では前例のない手法だけに、庁内の承認を得るまでには時間がかかったという。「中には慎重な意見もあり、庁内審議が長引きました。しかし同社には、近隣の自治体で多くの実績があり、こうした新しい手法が今後の主流になるのかもしれないと説明しました。同社が試算した電気代、蛍光灯の交換費用の削減額、CO2削減量なども示し、一刻も早く進める必要があると理解を得たのです」と小林さん。
複数の連携窓口を分担して少ない負担でスピーディに。
同社はまず、市民の利用頻度や電気使用量をもとに、262の対象施設を10グループに分類して進めることにした。現地調査には、同社社員と同室職員が出向き、施設の担当者とともに、照明の種類と数を確認していったという。「“この部分には、もっと明るい照明が欲しい”など、現場のニーズも細やかに聞いていきました。その後、同社の知見と当市の要望をもとに、ピックアップした商品をリスト化。施設の担当者の意向も確認しながら調査を進めたことで、適切な器具を選定できました」。こうした商品の選定をはじめ、庁内で調整が必要な事案は、同室が窓口として各担当部署と連絡を取り合っている。施工業者やリース会社など、庁外との調整は同社が行うことで、円滑な連携が図られ、迅速なLED化につながっている。
計画の2年目となる令和7年9月時点で、6グループの契約を締結。「リースの活用と、現地調査・設計の早さから、これまでの方法では考えられないスピードで、順調に工事が進んでいます」。また、リース期間中の10年間は、無償でメンテナンスが受けられる。同社が手配したコールセンターが24時間365日受け付けるため、トラブルへの対応もスムーズだ。「従来であれば、その都度自分たちで見積もりや修繕発注を行う必要がありました。電話一本でサポートしてもらえる体制になったことはありがたいです」と狭間さん。

来年度には照明LED化が完了し次なる脱炭素施策を進める。
LED化を終えた施設では、すでに電気使用量の削減効果が見られているという。まだ1年の効果検証は完了していないものの、前年度と比べて毎月1~2割、電気代が下がっているのだとか。「年々気温が上がり、市からも熱中症対策を呼びかけているところです。空調の設定温度を適切に保ちながら、固定費が抑えられるのは助かります。また、LEDは蛍光灯より寿命が長いため、今後は修繕や消耗品購入の費用と手間が減ることにも期待しています」。
工事は当初の計画通りに進んでおり、来年度には全グループのリースが開始される見込みだ。この事業が始まる前に着工していた施設や、建て替え・解体を控えている施設を除き、全てでLED化が完了する。カーボンニュートラル推進室は庁内の関係者との調整役を担うため、業務負担が少ないわけではないが、やりがいは大きいという。発足以来、照明LED化を担当してきた狭間さんは、「最初は当市にとって最適な手法が分からず、難しさも感じました。しかし、関係部署と協力しながら成果を出すことができ、達成感があります」と、手応えを話す。
同市では今後も、カーボンニュートラルへの取り組みを充実させる予定だという。「高効率な空調や太陽光発電などの設備を更新・導入し、省エネと再エネをさらに強化したいです」と柴田さん。また、ハード面の整備と同時にソフト面にも市を挙げて取り組むといい、「並行して、こまめな消灯や空調の適切な温度管理など、節電意識の啓発にも力を入れたいですね。市が率先して取り組むことで、市民や事業者にも呼びかけやすくなります」と小林さんも続ける。同市が展開する様々な脱炭素の取り組みに期待したい。



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