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電気の地産地消で生み出された利益の一部がまちづくり原資に。

再生可能エネルギーで地域を支援するプラットフォーム
多様な再生可能エネルギーの発電施設を有する神栖市。かつては地元で生まれた電気を地元で活用できないもどかしさを抱えていたが、民間事業者との連携により解消。利益の一部をまちづくりに役立てているという。
※下記はジチタイワークスVol.41(2025年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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神栖市
企画部 政策企画課
課長補佐 古徳 純也(ことく じゅんや)さん
再エネが生み出されていても地域内で活用する方法がなかった。
起伏が少ない地形を活かして整備された太陽光発電施設、太平洋からの強い風を利用する風力発電施設、動植物由来の資源を燃料とするバイオマス発電施設。同市では、これらの再生可能エネルギー発電施設が民間事業者によって運営されている。古徳さんは、「当市には、鹿島臨海工業地帯のための送電網が整備されており、電気をつくって運ぶ環境が整っていました」と話す。
かつて、電気の地産地消を模索した時期もあったが、実現には至らなかった。「地域新電力の事業化も検討していましたが、燃料価格の高騰など将来的な不安を払拭できず断念しました。当時は電気を買った方が安く、高いイメージのあった再エネを導入するメリットが見出せなかったのです」。そんな中、平成30年に環境省経由で「まち未来製作所」を紹介されたという。
同社が提供する「e.CYCLE(いいサイクル)」は、自治体・発電事業者・小売電気事業者をつなぐ、再エネに特化したプラットフォームだ。発電事業者は同社へ電気を預け、小売電気事業者が競り下げ方式で調達する。こうして、電力消費者は適正な価格で再エネを利用できる仕組みだ。同社は売電利益の一部を積み立て、市はそれを地域活性化の原資として活用している。
リスクは少なくコストも抑えられる、前例のない取り組みに戸惑いも。
令和2年に同社から提案があったときは、少なからず戸惑いを感じたという。「当市にデメリットはなく、それどころか利益の一部が還元されるなんて、こんなにうまい話があるのかと思いました。しかし、リスクもなく大きなコストもかからないのであればと、前向きに考えるようになりました」。また、同社が目指す“再エネの関係者全てが参加し、持続的に循環するエコシステムの構築”に共感したことも理由だ。当時は職員も再エネに関する知識が十分ではなかったそうだが、サポートを受けながら学んだという。こうして当初掲げていた再エネの活用が見込めるとして、令和3年に連携協定を締結し「いいサイクル神栖」を発足させた。
協定の締結後は、同事業に参画する発電事業者や、売却先となる電力消費者に働きかけを行った。発電事業者は同社による市への還元を通じて地域貢献ができ、主に都市部の電力消費者は再エネの利用によって脱炭素化を進められる。「事業に必要なコストは、担当者の人件費と、発電事業者の本社を訪ねるための出張費のみ。参画が増えるほど、地域に還元される仕組みです」。令和5年度、240万円を創出した地域活性化原資は、令和6年度に数千万円の規模まで成長したという。

市が率先して活用することで再エネの地域内循環を目指す。
年に1度は市長と同社で意見交換の場を設け、地域課題をもとに原資の使い方を話し合うという。「当市はスポーツ合宿の受け入れが活発です。もし災害が起こってしまったら、市民以外にも多くの人が避難所に身を寄せることになります。そんなときのために、EVを蓄電池として活用できる設備を導入しました」。このほかにもEVや充電器など、目に見える形での還元が進んだことにより、庁内の注目度も高まっている。また、地域活性化原資は市の財源ではないため、必要なものを必要なタイミングで調達できるスピードの早さはうれしい驚きだったようだ。
同事業は、脱炭素社会に向けた具体的なアクションに悩む自治体にも受け入れられている。同市が連携する東京都千代田区(ちよだく)や神奈川県横浜市(よこはまし)では、再エネ利用をカーボンニュートラルの活動に役立てているそうだ。
今後の展望を尋ねると「市民に環境のための行動を促すには、自治体が率先して行動することが重要です。その一歩として公共施設の再エネ利用を広げていきたいです」と話してくれた。

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