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【セミナーレポート】ちょっとした工夫で人は動く!無関心層への行動変容アプローチ【DAY2】

厚生労働省が主導し、各地の自治体も様々な取り組みを進めている「誰一人取り残さない健康づくり」。最大の課題は「無関心層」への働きかけです。しかし、実は「ちょっとした工夫」で行動変容を促し、健康増進につなげることができます。
そんな工夫の一例として、心理学やナッジ理論、デジタルツールを活用したアプローチの事例を2日にわたってご紹介しました。
概要
■テーマ:ちょっとした工夫で人は動く!無関心層への行動変容アプローチ
■実施日:令和7年10月7日(火)
■参加対象:無料
■申込者数:405人
心理学から学ぶ行動変容アプローチのポイント
第1部に登壇したのは、早稲田大学の大月友先生。相手の行動変容を引き出すためのコツを、心理学の立場から解説してもらった。いわゆる無関心期の人へのアプローチはどうすれば良いのか、参考にしたい。

【講師】大月 友氏
早稲田大学 人間科学学術院 人間科学部 教授
早稲田大学人間科学学術院助教、専任講師、准教授を経て2024年より教授。専門は臨床心理学。心理的支援や行動変容に関する研究を展開。公認心理師・臨床心理士として、医療、産業分野での実践も行う。
行動変容ステージ
「タバコをやめて」「塩分を控えて」「体重減らして」……良かれと思った指摘でも、相手によっては怒らせてしまったり不必要に落ち込ませてしまったりするケースがあります。それは、行動変容には以下のように段階があるからです。

●無関心期
この時期は、読んで字のごとく行動変容にあまり関心がありません。そんな人に「こうしないと危ないですよ」とどれだけ言っても、響かないのです。
●関心期
この時期は、変わろうかなという気持ちと現状維持の気持ちがバッティングしています。
●準備期
行動変容に向け行動を起こしたいと思っている時期です。
●実行期
行動は変容しているものの、持続には自信がない状態です。そして、最後に「維持期」に移行します。
自分が子どもだった頃、あるいは子育て中の方はわが子を思い出してください。宿題をやる気持ちに切り替わっていないときや「やらなきゃ」と思っているときに「早く宿題をしなさい」と言われて、ムスッとしていませんでしたか。このように「実行したいな」と思っている段階で「やりなさい」と言われると逆効果になる可能性があります。ですから、行動変容のためにはそれぞれのステージに合わせたアプローチが重要です。
どうすれば人は動かせるのか
そもそも、どうやって人の行動を変えるのでしょうか。一般的にはこのように言われています。

しかし、これで本当に行動が変わるのでしょうか。私が専門にしている「行動分析学」は、こうした「やる気」や「意識」といった考え方には限界があると考えています。
行動分析学は、行動の予測と制御を目的とする学問です。もっとひらたく言うと「こうすると、ああなる」というように、行動と結果の関係(関数関係)を、科学的に明らかにしていこうとする分野です。つまり「どうすれば人は行動を起こすのか」「どうすれば続けられるのか」「なぜやめてしまうのか」といったことの原因は「個体(人や動物)」そのものの中ではなく個体と環境とのやりとりの中で生まれると考えます。

行動の法則とは
行動分析学の中で見出された「行動の法則」は、以下です。

行動の結果としてその人にメリットがあるとその行動は続くし、メリットがないorデメリットがあると、その行動をやめてしまうという非常にシンプルなもの。これが、人の行動を理解するための基本原則です。
もう一つ重要なのは行動の「きっかけ」が明確であること。ここがはっきりしていると行動は起きやすく、曖昧だと起こりにくくなります。行動を生み出すには「メリット」と「きっかけ」が重要だということです。
しかし、メリットやデメリットといった視点には注意するポイントがあります。例えば、タバコを吸うと健康を損なうリスクがあると知っていてもやめられない人はいます。逆に、運動が体に良いとわかっていても続けられない人もいるでしょう。これは人間の心理の特徴によるものです。運動や禁煙のように「努力が必要な行動」は効果(メリット)がすぐに得られず、タバコや甘いものなど「我慢が必要な行動」は、すぐに快楽(メリット)が得られる。このように「すぐに得られるか、後から得られるか」という時間のずれが、行動を左右するのです。

つまり人間は「今この瞬間の快適さ」に強く反応してしまうということ。だからこそ、「やる気がない」「モチベーションがない」と個人の心に原因を求めずに「個体と環境の相互作用」に注目し、どんなときにどんなことをして、どんな結果が起きたのかに焦点を当てることが大切なのです。そして、こうした工夫への代表的な手法が「ナッジ」です。
また、行動を変えるときの基本的な考え方として「我慢が必要な行動を減らす」ことと「努力が必要な行動を増やす」ことがあります。

ただ、努力が必要な行動は「めんどくさい」「しんどい」といったマイナスの感情が出てしまい、なかなか続きません。運動してもすぐに健康状態がよくなるわけではないですし、腹筋をしても翌日シックスパックになることはないですよね。この「すぐに報われない」という点が行動変容を難しくしている本質です。
だからこそ、行動のすぐ後に小さなご褒美を設定することが大切なのです。

無関心期・関心期へのアプローチ
では、まだ行動変容に関心がない人たちにはどうアプローチすれば良いでしょうか。そこで考えるべきは「先行事象」と「結果事象」です。今すでに続けている行動をやめさせるのは非常にハードルが高いので、まだやっていない新しい行動を始めてもらうほうが実はおすすめです。

例えば健康づくりなら「健康診断を受ける」「面談を受ける」「セルフモニタリング」「運動」といった行動を、できるだけ「どんなきっかけを作れるか」「どんな小さな報酬を設定できるか」といった視点で考えてみましょう。
繰り返しますが、行動を計画する際にはその人の心に重点を置くのは逆効果です。また「正したい反射」と言われるような指摘や押し付けがましい情報提供にも気をつけましょう。そこで動機づけ面接では、指摘や説得ではなく「共同的なスタンス」を重視します。相手を否定せず、受け入れ、思いやりを持ち、相手自身の中にある「変わりたい気持ち」を引き出していく。そのための基本的な態度が次の4つです。

上記を意識して、行動変容へとつなげる工夫をしてみてください。
無関心層を動かした「多角的健康DX」の事例紹介
第2部に登壇したのは、中高齢者のヘルスケアに特化したITベンチャー「株式会社ベスプラ」の遠山陽介氏。「脳にいいアプリ」と健康ポイントサービスを組み合わせ、無関心層にも行動変容を促した取り組みを行う遠山氏に、実際の成果を含めたアプローチ手法を伺った。

【講師】遠山陽介氏
株式会社ベスプラ 代表取締役
誰でも簡単に使える「脳にいいアプリ」
私たちが取り組んでいるのは、超高齢社会における医療費・介護費の増大という大きな課題です。日本では、今後さらに高齢化が進み、医療や介護にかかる社会保障費が増えていくといわれています。この構造的な課題を、私たちは「ポピュレーションアプローチ」(地域全体の健康づくり)によって解決していきたいと考えています。

医療費の約3分の1は生活習慣病が占めている一方、介護費の最大の原因は認知症だといわれています。これらの予防のポイントは「運動」「食事」「バイタル管理」といった複合的な活動を継続することです。



そこで、私たちは医師や大学の先生と協力して「脳にいいアプリ」を開発しました。アプリは歩行や食事記録などの生活管理、脳トレや健康クイズ、さらにChatGPTとの連携によるAI相談機能といった仕組みを搭載し、体・頭・心の3つをトータルに支える構成になっています。現在のユーザー数は約15万人、継続率は80%以上です。
2017年には内閣府の「IMPACT」研究にも採択されました。

そして、実証の結果、次のような効果が確認されています。
①生活習慣病の予防効果
八王子市と実施した実証で、約5000人を6カ月追跡したところ、アプリ利用者は血圧やBMIが有意に改善しました。
②認知症の予防効果
浜松市での実証では、約500人の脳MRIを測定。アプリ利用前後で神経細胞量の減少がなだらかになることが確認されました。理論値では、発症を約9年遅らせる効果があるという結果です。この成果は京都大学の先生と共同で論文化され、日本初・世界的にも珍しい研究として学術誌の表紙にも掲載されました。
無関心層を動かすヒントと実践
先ほど大月先生からお話があったように、私たちも「無関心期」「関心期」「準備期」「実行期」「維持期」は大事な考え方だと思っています。しかし、これを実際に落とし込むのは本当に大変です。まず、無関心期の人を動かすには、気づいてもらう必要があります。ここでは、市報やチラシ、ポスター、イベントといったタッチポイントを、いかに多く設けるかが最初のポイントです。多機能・多面的なコンテンツを用意し、できるだけ多くの人の興味に引っかかるようにしましょう。そして「どれか一つは気になるものがある」と思ってもらうことが最初のステップになります。

自治体との取り組み事例:八王子市「てくポ」
私たちが自治体様とどのような取り組みを行っているのか、八王子市の「てくポ」プロジェクトをもとに紹介します。八王子市では「脳にいいアプリ」を活用し、歩く・食事を管理する・脳トレをする・ボランティアをするといった活動でポイントが貯まる仕組みを導入しています。参加者は現時点では1万5000人近くに達しています。

参加者アンケートでもメンタル面が向上したコメントが多く寄せられました。また、実際のデータとしても改善が確認されています。
これらの結果から見えてきた成功のポイントは「インセンティブ」です。私たちは全国で複数の自治体と連携していますが「健康ポイント制度がある自治体」と「ない自治体」では、参加率・活動量ともに4~5倍の差が出ています。

さらに、全員が確実にポイントをもらえる仕組みの方が、継続率が高いという結果も出ています。抽選方式の場合は3年後に継続率が8%まで落ち込むこともあり、「底のないバケツ」と言われることもあるほどです。一方、全員にポイントがつく方式では継続率が5倍以上に伸びます。実際に八王子市では、導入から3年以上経っても継続率は80%以上を維持しています。全員が成功体験を得られる設計が、「続けられる仕組み」につながっているのです。


自治体との取り組み事例:松山市
2つ目の事例は松山市です。松山市では、もともと紙のポイントカードを使って健康ポイント事業を行っていましたが、紙ベースの運用は負担が大きいということで私たちのシステムを導入。結果、業務が大幅に効率化され、限られた職員数でも対応できるようになりました。


自治体との取り組み事例:姫路市「ひめさんポ」
姫路市はICTを積極的に活用し、PayPayやdポイントなど複数のキャッシュレスサービスと連携しています。貯めたポイントは様々な場所・サービスで利用できるため、市民の満足度も非常に高いようです。イベントやボランティア活動にもICTを取り入れ、多様な場面で健康活動を促進しています。


多角的な健康DX
やはり「多角的な健康DX」こそが、地域の店舗や団体も巻き込む“まちぐるみ”の健康づくりの成功に欠かせないと感じます。八王子市でのデータを見ると、初年度は「歩く」参加者が多かったのですが、3年目には「普段あまり運動しない人たち」──つまり無関心層へと参加が広がっていました。周囲の盛り上がりが波及し、「自分もやってみよう」という意識が生まれた好例です。また、3年続けた結果、介護費が1人あたり約7000円削減されたというデータも出ています。私たちのサービスコストは1人あたり2000円程度なので、実質5000円の社会的効果がある計算になります。こうした仕組みを広げていくことで、健康増進だけでなく社会保障費の平準化にもつながっていくのです。

最後に、こうした取り組みを成功させるためのポイントを3つ挙げます。
1:自治体の課題に合ったポイント設計
歩きを中心にするのか、ボランティアを重視するのか、課題に合わせた設計が重要です。適切に設計すれば、市民も自然と反応し、活動が広がっていきます。

2:自治体側で管理運営
管理機能からは、利用者の活動内容が見えることはもちろん、イベントやお知らせの配信もできます。

3:データの可視化と分析
DX化によって、参加状況や行動変化を数値で把握できます。これを次の施策に生かすことで、より効果的な健康施策が展開できます。

4:丁寧な説明と官民連携
高齢者にも分かりやすく、冊子や説明会などで丁寧に説明することが大切です。

さらに、ポイントの原資確保のためには企業や地域団体との連携が欠かせません。官民が一体となることで、持続可能な仕組みが生まれると考えています。
届く工夫で変わる住民行動―SMSが促す“ひと声”の力
第3部に登壇したのは、ジチタイワークスの和田直樹。住民にしっかりと情報を提供するために活用できるSMSツールについて解説してもらった。実際の事例とあわせて紹介する。

【講師】和田 直樹 氏
株式会社ジチタイワークス ビジネス開発部 公共ビジネス課
ジチタイSMSとは
健康増進を考える上で大切なのは、住民の方々にいかに確実に情報を届けられるかです。そのためのツールの一つとして、今回は「ジチタイSMS」を紹介させていただきます。現在は累計で約200自治体以上、47都道府県のうち46自治体でご利用いただき、非常に高い効果をあげているサービスです。
SMSは住民の方々の携帯電話に直接メッセージを送る仕組みです。「ジチタイSMS」はクラウド型ですので、特別なシステム構築や事前準備は不要。導入も運用も、非常にスムーズに利用を開始できます。
「ジチタイSMS」のポイントは3つ。1つ目は、確実に届くということ。到達率はなんと99%以上です。2つ目は、手間がかからない・コストを抑えられるという点です。郵送や電話対応に比べ、作業時間も費用も大幅に削減できます。3つ目は、普段お使いのパソコンから簡単に操作できるということ。LGWANにも対応していますので、セキュリティ面も安心です。

情報発信の方法という意味ではLINEやアプリなどさまざまありますが、これらは基本的に個人を特定できないため、地域や年齢、性別といった属性でまとめて発信する形になります。一方、SMSは特定の個人に届けられるという点が大きな違いです。
そんな「ジチタイSMS」を多くの自治体様が導入してくださっているのは、やはりあらゆる課題を解消できるからでしょう。

「ジチタイSMS」を使うことで起きる変化
以下は、導入いただいた自治体様にヒアリングをした内容をもとに作成した参考例です。
「100件の通知を住民へ届ける」場合、これまでは全てが手作業で作業に約7時間かかっていました。ところが、SMS導入後、作業工程がぐっと減り、たったの1時間で完了するようになりました。

「実際にどんな業務で使えるのか」ということが気になるところだと思いますが、これまで郵送や電話で行っていた業務であれば、ほぼ全てSMSに置き換え可能です。業務の種類を問わず、さまざまな場面で使えるのが「ジチタイSMS」なのです。

もちろん「健康増進」にも導入できます。例えば「受診期間はあと3週間ですよ」といった形で、タイミングを逃さずリマインドができます。さらに、申請手続きのご案内や未申請の方へのフォロー連絡、アンケートの送付や状況確認など、さまざまなケースに活用できるのです。

「ジチタイSMS」の機能
このサービスにはいくつかの特徴があります。今回は自治体様でよく利用されている主な機能(特徴)をご紹介します。
個人単位でURLクリックの追跡が可能
SMSはもちろん文章だけでも送信可能ですが、そこにURLを貼り付けて送ることもできるようになっています。さらに、住民の方がメッセージを開封したか・URLをクリックしたかということも、システム上で確認できます。つまり「送って終わり」ではなく、「誰がいつ見たか」「どのくらい見てもらえているか」まで把握できるので、その後のフォローもしっかりできる、というのが大きな特徴です。
独自ドメインの短縮URLで信頼性UP
URLを貼ると自動で短縮URLになりますが、見慣れない文字列に不安になってしまう人もいるかと思います。「これ本当に自治体から?」と感じる方もいらっしゃるでしょう。そこで、自治体独自のドメインに変更して送ることができる仕組みも整備しています。
他人接続判定による誤送信防止
携帯電話は契約者や所有者が途中で変わることがあります。そのときに、前の持ち主に誤って個人情報を送ってしまうリスクはゼロではありません。それを防ぐために、SMSを送る前に「この番号は所有者が変わっていませんか?」と自動チェックできる機能があります。
これによって、送信前に誤送信を未然に防ぐことができます。
ファイル添付&アンケート送信も可能
ファイル添付については、JPEG・PDF・Word・Excelなど、ほとんどの形式が送信可能です。ですから、これまで郵送していたほとんどの書類はそのままSMSで送れるようになります。これにより、郵送費や印刷費の削減にも大きく貢献します。アンケート機能は、すでに「Logoフォーム」などの仕組みをお持ちであれば、そのURLを貼り付けて送ることもできます。もちろん、SMS側でアンケートを作成・送信可能です。
基本料金プランは、初期費用・月額システム利用料・送信費用・オプション費用という形になります。初期費用がかからないお得なプランもご用意しております。導入後はスタッフが伴走サポートしますので、操作に不安がある方も安心してお使いいただけます。
導入まで・導入後の流れも非常にシンプルですので、ぜひ気になる方はお気軽にお問い合わせください。
DX推進を中心とした歩く健康づくり・街づくり~楽しみながら自然と習慣化する行動変容アプローチとは~
第4部に登壇したのは、兵庫県三木市の寺井勝宣氏と三又和美氏。三木市が提供している公式アプリが毎日利用される理由や市のDXが進んでいる理由を、事例をもとに解説してもらった。

【講師】<左>寺井勝宣氏 兵庫県三木市デジタル推進課 課長
<右>三又和美氏 兵庫県三木市健康増進課 係長
「みっきぃ☆健康アプリ」導入に至る背景
令和4年度のデータによると、メタボリックシンドロームの該当者割合は三木市が県内ワースト1位という結果になっています。また、定期的に運動する習慣を持つ方が減少しているほか、必要な睡眠時間をしっかり確保できていないという現状もあります。さらに、がん検診の受診率も低迷。こうした中で、少子高齢化が急速に進んでおり、医療費の増加や要介護者の増加といった課題も見込まれています。

そこで、三木市ではこうした課題に対応するために「みっきぃ☆健康アプリ」を導入しました。

令和3年度から、従来の紙による健康ポイント事業をデジタル化し、マイナンバーカードの利活用を進める取り組みを始めました。また、コロナ禍以降、社会参画の機会が減ったことや、特定健診の受診率が低いという課題もありました。そこで、マイナンバーカードの個人認証機能を活用して、三木市民であることを確認できるアプリの導入を決定。これが、「みっきぃ☆健康アプリ」導入の背景です。
事業者としては、大阪府内で実績のあるNTTデータ関西の「アスリブ」を採用しています。アプリ導入後は、「行かなくてもe市役所」や「来庁者の減少」、「業務効率化」「予約ファースト」などの施策とも連携させながら、健康づくりとDXを一体的に進めています。
「みっきぃ☆健康アプリ」とは
アプリの主な機能は「歩数や体重など、毎日の健康状態を見える化する機能」「健康に役立つ情報を配信する機能」「マイナンバーカードによる認証機能」「ポイント制度」となっています。アプリのホーム画面では歩数が一目で確認できるようになっており、ご自身のレベルが上がると公式キャラクターが変身するしかけもあります。
令和7年9月末時点で、登録者は約8600人。男女比は男性4:女性6で、女性の割合がやや多くなっています。年代別では70代が最も多く、続いて50代・60代となっています。

現在も月に約100名ペースで登録者が増加しています。令和7年度の登録者目標は8500人を達成し、来年度(令和8年度)は1万人登録を目指す計画です。

三木市にはスマホの操作が苦手な方も多くいらっしゃいます。特に最初の導入の「入口」でつまずいてしまうと、せっかくの機会を逃してしまいます。そこで市では、あらゆる機会を捉えてスマホ弱者へのサポート体制を整えました。このサポートは、健康福祉部門とデジタル推進部門の共同体制で実施しています。例えば職員が現場へ出向き、イベントや講座、説明会などあらゆる場で操作サポートを行い、利用のハードルを下げることで、参加への背中を後押ししています。こうした地道な取り組みの積み重ねによって、アプリの広がりは行政主導ではなく、市民同士の口コミによるものが大きいと感じています。

続いて、高いアクティブ率を維持するためのしかけについてご説明します。
三木市では、アプリ内で「参加型」「努力型」「成果型」という3つのタイプのインセンティブを用意しています。
まず「参加型」です。これは、市民の皆さんに市のイベントへ参加してもらうことを目的に、イベント参加時にポイントを付与する仕組みです。主に健康づくり関連のイベントが中心で、楽しみながら健康意識を高めてもらうことをねらっています。
次に「努力型」。これは、日々の歩数に応じてポイントが付与される仕組みです。アプリには歩数ランキングもあり、「他の人に負けたくない」「昨日より順位を上げたい」といった心理的な要素が、行動を継続するモチベーションにつながっています。
3つ目が「成果型」。こちらは、毎年秋に実施している「みっきぃ健康チャレンジ」という取り組みです。参加者が自分で設定した目標体重に向けて、3カ月間アプリに体重を入力したり、運動に取り組んだりします。目標を達成した方には、ポイントを付与しています。
また、もう一つの重要なしかけがグループ機能です。アプリ内でグループを作り、メンバー同士で活動記録を共有できます。
さらに、年度途中に年間ポイントの上限を達成した後も、モチベーションを保てるしかけを設けています。例えば、ランキング上位者には翌年度に抽選で景品をプレゼント、「頑張ったで賞」として市長表彰を実施するといった企画です。これらの取り組みは、企業協賛によって実施しており、市の予算を使わずに運用できるよう工夫しています。
高いアクティブ率を誇る理由
伸び続ける利用者数と高いアクティブ率について、令和4年10月の事業開始から現在までの対応内容をご説明します。事業開始当初は、市の広報紙やチラシなど、従来の広報媒体を使って啓発を行っていました。三木市は比較的コンパクトな市ですので、5名以上の申し込みがあれば市内どこへでも出向いて説明する、という柔軟な対応を取っていました。こうした地道な取り組みの結果、初月で年度目標を達成することができました。

令和5年度からは、アプリの魅力をさらに発信するために、協力事業者と連携したイベントを積極的に開催しました。特にソフトバンクをはじめとする連携企業との協定をスムーズに進め、市内の商業施設を会場に、薬剤師会・生命保険会社・健康食品メーカーなどの協力を得て健康フェスタを実施しました。
令和6年度からの新たな取り組みをご紹介します。この年度には、市民の方々のアプリへの期待が高まっていることを感じ、企業との連携をさらに強化しました。例えば、携帯ショップでの操作サポートや、お買い物時に使えるクーポン配信などを行っています。また、デジタル田園都市国家構想交付金を活用し、アプリのポータル画面に新しいボタンを追加しました。そこから電子申請や健診予約システムへ直接アクセスできるようになり、市公式アプリと連携し、毎日利用されるアプリだから実現できた内容です。

一方で、DXを進める上で避けて通れないのがデジタルデバイド対策です。三木市でもこの課題にしっかり向き合いました。これまで公民館で行っていたスマホ講座に加え、新たに「スマサポ号(スマホなんでもサポート号)」をスタートしました。これはソフトバンクとの協定により実現した移動型のスマホ教室です。

地域の商業施設や公民館などで、専門スタッフがモニターやタブレットを使いながら、スマホの基本操作や便利な機能を約1時間でレクチャーします。買い物のついでに参加できるよう開催場所や曜日も工夫しており、事前予約率は平均80%、参加枠はほぼ満員という盛況ぶりです。アンケートでも「分かりやすかった」「これなら使えそう」といった声を多くいただいています。
市民の皆さんからもありがたい声をいただいています。

最後に、三木市が目指す未来についてお話しします。「みっきぃ☆健康アプリ」事業は、今年10月で3年目を迎えました。今後は大学と連携し、アプリ事業と健康データを照らし合わせた効果検証を行う予定です。その分析結果から見えてくる健康課題にもとづき、アプリを活用した新しい健康づくりの施策を展開していきます。そして、これからもデジタル推進と健康づくりを両輪として進め、「行かなくてもe市役所」の実現、市民の健康寿命の延伸に向けて、市民の皆さんとともに歩んでいきたいと考えています。











