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熊本県益城町

公開日:2020-06-29

「アクションカード」が発災直後の初動を強化する!

防災・危機管理
読了まで:4分
「アクションカード」が発災直後の初動を強化する!

どう動くべきか、見ればすぐに分かる

平成28年の熊本地震で、震度7の揺れに2度も襲われた益城町。想定を超える非常事態を経験して以来4年、様々な復興プロジェクトとともに進められてきたのが「アクションカード」の開発である。このカードは、発災直後、庁舎に駆け付けた職員が具体的に何を行えばよいかを示した災害対応初動マニュアルだ。平成30年度に完成し、令和元年度、さらに分かりやすく改訂。アクションカードを使った実践訓練も積極的に行われている。

※下記はジチタイワークスVol.10(2020年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

発災時、庁舎に駆け付けた職員がひと目で“何をすればいいか”が分かる。

アクションカードの開発に携わったのは、平成30年から、防災スペシャリストとして益城町に派遣中の今石さんだ。兵庫県芦屋市消防本部在籍中の平成7年、阪神・淡路大震災において特命業務を担当。中越地震、中越沖地震、および東日本大震災でも現地に赴き、災害対策本部運営を支援した経験を持つ。今回のアクションカード開発経緯について、「どの災害においても、共通している課題は自治体職員の初動の弱さ、その課題を解決したかった」と話す。「益城町では庁舎自体が被災したため、災害対策本部の設置に手間取りました。また、庁舎に駆け付けても、指示なしでは職員がうまく動けなかった」と発災直後を分析する。

そこで、今石さんが以前にも共同研究を行ったことのある大手シンクタンクとともに着手したのが、アクションカードの開発だ。平常時の業務分担に関係なく、発災直後、庁舎内にいた職員、また時間外には自宅から駆け付けた職員が誰でも、見れば初動対応ができるマニュアルである。

益城町の「アクションカー ド」は、発災直後、行政職員がどう行動(アクション)すればいいかを示したマニュアルだ。庁舎の安全点検すべきポイントは、誰でも判断できるよう写真も掲載されている。

 

抜き打ちの実践訓練で職員に定期的な刺激を。

アクションカードは防水カバーが付いたA4サイズの冊子になっており、様々な“アクション”が簡潔に箇条書きにされている。冒頭のページにはまず、役職に関係なく最初に登庁した職員がリーダーを務めること、災害用ビブスの着用、庁舎内の点検場所、投光器の設置、係長級以上の職員到着後はリーダーを交替するといった、“駆け付けてすぐ”の行動が指示され、次のページ以降にも“段階を追ってやるべきこと”の一つひとつが具体的に示されている。令和元年度にはさらに、オリジナルのピクトグラムを活用し、誰もがパッと見て分かる内容に改訂された。

加えて、実践訓練も積極的に実施。「災害がいつ起こるか分からないという緊張感を、住民の皆さんが普段の生活の中で持ち続けることは難しいと思います。しかし、私たち行政職員は、防災担当者でなくても全員が訓練等を繰り返し、組織として非常事態に常に備えていく必要があります」と今石さん。

アクションカードは、初動時に必要なものが収納された「参集BOX」とともに庁舎入口の守衛室に置かれている。今後はスマートフォン等でも確認ができるアプリケーションにも発展させ、より使いやすくする計画も進行中だ。


抜き打ちの職員参集訓練の様子

児童を守り避難所になる、小学校向けカードも開発。

さらに令和元年度には、小学校向けのアクションカードも作成。「平日の日中に発災した場合、学校では児童の安全が最優先。かつ、避難所としての機能も必要です」。それらを並行して行うためには、町職員や教職員、そして何よりも住民の協力が不可欠であり、人々が効率的に動くためにアクションカードが重要な役割を果たす。モデル校として、まずは町内の津森小学校に設置し、今年2月には全児童参加で総合防災訓練が実施された。

誰が見ても、どう動けばいいのかすぐに分かるアクションカードは、近年ますます厳しさを増す自然災害に対し、常に緊張感を強いられる自治体職員や教育現場にとって頼もしいサポートツールとなるはずだ。

Solution 課題解決のヒントとアイデア

1.防災担当外でも初動に戸惑わない

最初にアクションカードを開いた人がリーダーとなり、さらに次の2人が安全確認をするなど、細かく指示されており、通常の役職や部署が非常時の初動の障壁とならず、効率的に体制を構築することができる。

  

アクションカードの掲載内容の一部。ピクトグラムにより、行動がイメージしやすくなっている。

 

2.職員参集訓練で実際に活用しながらイメージ

抜き打ちの職員参集訓練も実施。訓練のシナリオは町長にも伏せられ、アクションカードの通りに職員が動くことができるかを検証。本当に使う状況を職員が体験することで、実際の状況を具体的にイメージし、いざという時に備えることができる。

 

3.庁舎入口にチェックリストを掲示し日ごろから啓発

アクションカードについてのチェックリストを庁舎入口に掲示。職員がここを通るたびにアクションカードや防災用具の存在を留意できるため、防災や減災、発災時の行動に関する意識を醸成できる。

 

Interview

計画を立てても、その“成果”がなければ無意味だと思っています。だから、実践訓練も目標を立て、立てたら目標達成までやり切ることが大事です。令和元年度においても、計画や訓練の高い目標を定めましたが、職員の協力でほぼ達成できたと思っています。


熊本県益城町 危機管理監 今石 佳太さん

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