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【セミナーレポート】 自治体の情報政策の今がわかる!3日間 2025 ~ジチタイワークス・スペシャルセミナー~[Day2]
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“情報政策”をテーマにした注目の3Daysセミナー。2日目のレポートは、テクノロジー分野における官民連携にスポットを当て、各自治体の取り組みを紹介します。
ユニークなツールでシステムの利便性を上げた磐田市、訪問業務でリモート使用できる端末を導入した一関市、独自の生成AI活用を進めた都城市と、アプローチは三者三様。ぜひ参考にしてください。
■タイトル:自治体の情報政策の今がわかる!3日間
2025[Day2]~ジチタイワークス・スペシャルセミナー
■実施日:2025年6月26日(木)
■参加対象:自治体職員
■開催形式:オンライン(Zoom)
■申込者数:255人
■プログラム:
第1部:【磐田市登壇】LGWAN環境下でも実現!会計課主体で進めた庁内DXの実践プロセス(テックタッチ株式会社)
第2部:生活保護訪問業務に生成AIを投入!~原課と進めるDX~(岩手県 一関市)
第3部:【対談】原課が生成AI活用で取り組む業務改善(宮崎県 都城市・KUコンサルティング)
【磐田市登壇】LGWAN環境下でも実現!会計課主体で進めた庁内DXの実践プロセス
新システムの導入時、スムーズな展開と職員の利便性向上を実現したいと考えた磐田市。そこで白羽の矢を立てたのが“デジタルガイド”だ。このツールでどのような変化が起きたのか、取り組みに携わった職員が分かりやすく解説する。
[講師]
小熊坂 真徳 氏
テックタッチ株式会社 公共団体担当
プロフィール
株式会社Works Human Intelligenceにて、自治体・省庁等の大規模団体向け営業マネージャーとして各種提案・導入に従事。2023年にテックタッチ入社、公共団体への提案・導入など、事業全般を担当。
[講師]
伊藤 志帆 氏
磐田市 会計課 審査グループ
プロフィール
2017年に磐田市役所に入庁。児童手当の給付や滞納整理業務を担当。2024年から会計課にて財務会計システムの構築に携わりテックタッチを導入。
庁内での情報提供で出会った解決策。
小熊坂:このパートでは、磐田市にどういう課題があり、どういう状況で当社サービスを活用いただくことになったのか、同市の伊藤さんから紹介いただきます。
その前に、テックタッチについて簡単に説明します。今、皆さんは様々なWEBシステムを使用していると思いますが、そのプログラムを都度改修することなく、画面上にフキダシのような“デジタルガイド”を内製で後乗せできるシステムです。
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現時点で300を超える企業が導入済で、公共団体では4省庁、10自治体ほどで使っていただいています。磐田市は財務会計システム向けに当サービスを上手く活用しているので、ここからは伊藤さんに事例を紹介していただきます。
伊藤:磐田市の伊藤です。テックタッチ導入の背景としては、令和7年3月に新財務会計システムの運用開始を前提としたシステム構築を進めていたことがあります。以前の財務会計システムは約10年使用して使い慣れていた反面、運用上様々な課題がありました。そこで、旧システム同様の操作性を活かした新システムにしようとしましたが、構築が進めば進むほど、その難しさを痛感しました。
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さらに、新システム運用開始直後は出納整理期間です。伝票審査と問い合わせ対応に追われる中で、新システムの問い合わせ対応までは手がまわらないという危機感がありました。操作に不慣れな職員による起票ミスや返戻伝票の増加なども想像できたので、どうすれば解決できるかと考えていました。
そうした中、DX推進課の職員から、「問題を解決できそうなシステムがある」とテックタッチを教えてもらったのです。同社から話を聞いて、まさに今抱えている問題にフィットすると感じ、なんとか新システム稼働前に導入したいと考えました。
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検討内容は上記の通りです。1について、新システムは当課を含めた4課で構築を行っていたので、他の課に声をかけたところ、さほど必要性を感じていないという反応でした。従って会計課が単独で導入することとなりました。
ちなみに、導入後には実際に画面を見た他課の職員から「使いたい」と希望があり、今では複数課で利用しています。
契約については、特命随契とすることができました。類似のサービスは他にもありますが、LGWANで使えてJ-LISのリストに載っているのが同社だけだったため、随契の要件を満たせたということです。結果として、短期間で契約締結をすることができました。
職員に変わってデジタルガイドが案内し、操作をスムーズに。
小熊坂:導入時には、「会計課でデジタルガイドを作れるのか」といった懸念もあったそうですね。
伊藤:はい。でも心配は不要でした。IT経験のない職員でも簡単に作成できます。私もプログラミングなどは分からないのですが、フキダシ作成なら1~2分でできます。実際に作成した一例が下記です。
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一例として、決裁取り消しガイドについて説明します。
決裁取り消しは起票者が決裁者にお願いをして、決裁取り消し方法が分からない決裁者は、起票者に取り消し方法を聞く、起票者も分からないため、会計課へ連絡、という流れが多いと思います。意外と煩雑です。
この問題を解消するため、決裁者専用の決裁取り消しガイドを作成し、システムのトップページに設置することで、各所属での自己解決が可能となり、問い合わせの際も「ガイドを使用してください」のひとことで済むようになりました。
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また、運用開始後の5月に職員アンケートをとったところ、約74%が「デジタルガイドが役に立っている」と回答しています。
小熊坂:こうした言葉をいただけると嬉しいですね。ネガティブなコメントはありませんでしたか?
伊藤:「入力後もカーソルが近くに出てきて邪魔」、というものがありました。ここは会計課としては絶対に見てもらいたいので、あえて置いたのですが、操作時に邪魔だと感じられていたようです。この声を受けて表示位置、条件などを見直しました。
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小熊坂:作り手の意図と使い手の利便性が相反するケースもあるため、様子を見ながらカスタマイズするのがオススメです。では、今後の展望についてお聞かせください。
伊藤:今回は、新システムの運用開始に合わせて2週間で実装を行ったので、まだ最低限のデジタルガイドをつけた状態に留まっています。これからは利用頻度の少ないメニューについても、デジタルガイドの設置を進めて行く予定です。
今では、システムのUI向上もある程度はテックタッチで補えることが分かり、気持ちの面でもかなり楽になっています。
小熊坂:ありがとうございます。システム自体をカスタマイズせずに、職員のアイデアや、原課の声などを画面に実装できた事例でした。後から小さく改善できる、小さくBPRしていくといった点がポイントですので、当サービスが皆さんの業務にお役に立てると嬉しいです。
生活保護訪問業務に生成AIを投入!~原課と進めるDX~
生活保護業務で、地形的な問題とリソース不足に直面した同市。その突破口として取り組んだのがAIの積極活用だった。中でも目覚ましい効果を上げたのが、タブレットを利用した業務支援システム。その具体的な内容について、DX担当者と原課の職員が解説してくれた。
[講師]

地域課題にAIで向き合い、東北1位の座を獲得。
菅原:当市からは、生活保護訪問業務に生成AIを投入した事例を紹介します。まず政策企画課の私・菅原から説明し、続いて福祉課の職員2名がリレー形式でお伝えします。
一関市は、全国で12番目の面積を持つ自治体です。市街地だけでなく山間部にも住家が点在し、住民を訪問する業務ではとても時間をかけている状況です。
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こうしたことを背景に、令和3年度からAIの導入を進め、オンプレからクラウドのサブスクリプションへ移行しています。初期費用をかけず、ニーズがなくなったらすぐにやめられる点がクラウドサブスクリプションのメリットです。その中から、オートコールについて説明します。
オートコールは、電話番号をもとに大量の人へ連絡できる仕組みで、令和4年から活用中です。主な用途は税や料金を払っていない住民への連絡で、職員の負担を軽減すると共に、送付コストの抑制にも貢献しています。注意点として、詐欺と間違えられないよう、「払ってください」ではなく「支払を忘れていませんか」と伝えています。
このようなAIサービスを次々に入れて、年々便利になっている状況です。現在、当市で利用を認めている生成AIは、下記の通りです。
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このような取り組みの結果、2024年の時事通信社「全国自治体フロントヤード改革度ランキング」で全国5位、東北では1位の評価をいただきました。要因としては、トップや上司がDXに積極的だったこと、そして現場の職員もポジティブに進めていることが大きかったと考えています。
今回の生活保護業務では、現場担当者が理想の仕組みを描き、DX部門はサポートに徹しています。ここからは福祉課の職員が説明します。
タブレット&AIが職員の良き“相棒”をつとめる。
藤江:私からは、原課で進めているDX、AI業務支援システムについてお話しします。
このシステムは、生活保護業務で、主に訪問先において生成AIを活用して記録作成支援や職員へのアドバイスを行うもので、「NTTデータ関西」と実証実験を重ねたものです。音声テキスト化機能、ヒアリング項目サジェスト機能、報告書の作成支援などの機能があります。
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導入の経緯として、私たちの現場では残業時間が多く、業務改善の必要性を感じていました。事務処理に追われ、支援が必要な方と十分に向き合えていないため、令和5年に業務改善を本格化。その一環としてタブレット端末を利用した業務支援システムの構想を開始しています。
当市が求めた条件は、AIを使った音声のテキスト化だけでなく、文脈を判断してメモや要約が作成できること。ベテラン職員のようなアドバイスを受けられること。訪問に持ち出すのでタブレットで完結できる、といった点です。
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その後、「NTTデータ関西」というパートナーと出会うことができ、令和6年11月に実証実験をスタートしました。ここまで行きつけたのは、理想を描いてチャレンジしてみたことがポイントだったと思いますし、多くのベンダーの方や、市のCIO補佐官やICT推進アドバイザーなど色々な方と理想についてはなせたこと、DX推進係のサポートがあったことが前に進めた理由だと思います。「無理だ」という声もあったのですが、諦めずにチャレンジし続けたことが結果につながりました。
それでは、システムの具体について、当課の鈴木から説明します。
鈴木:令和6年度の実証実験や、導入したシステムの紹介をします。
下図は、採用したシステムの接続環境です。職員が持ち出すタブレットから、モバイル回線を通じてインターネット上のセキュリティが確保されたサーバーに音声データを送ります。そこで文字起こしや、職員へのアドバイスの生成、記録の作成などの処理をした後、庁内のLGWAN系ネットワークにデータをダウンロードするという形です。使い勝手とセキュリティの両立を考え、α´モデルでシステムの導入を進めました。実証実験においては、下記の項目を検証しています。

以下、実証実験の結果について紹介します。市民アンケートをとった結果、市民サービスの向上については、「担当ケースワーカーと話しやすい」という回答が82%、システム導入については「導入した方がいい」という意見が54%あり、肯定的な反応が多数。紙でメモしている時よりも相手を見て話を聞く時間が増えたことが、好意的に受け止められたのではないかと推測しています。
また、サジェスト機能や記録作成支援については、作業時間が約50%改善されたという結果。AIによるサポートが時短につながったようです。タブレットでの利用も好評でした。これらを踏まえた今後の課題として、以下のようにまとめています。
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菅原:最後にDX部門から。システムは入れて終わりではないので、今後も現場の声を反映したバージョンアップを続けることが大事だと考えています。サブスクのメリットや効果も検証しつつ、利便性を横展開することが重要です。
今回のようなプチDXの成功体験が充実感や満足感となり、働きやすさにつながっていくのが理想です。我々も、こうした働きやすい環境をつくるサポートを続けていきます。
【対談】原課が生成AI活用で取り組む業務改善
第3部は都城市が登壇。先進的なAI活用を進めている同市の事例をピックアップして紹介しつつ、地域情報化アドバイザーでもあるKUコンサルティングの高橋さんとの対談形式で、施策の舞台裏や、職員たちの生の声を共有してくれた。
[講師]
佐藤 泰格 氏
都城市デジタル統括課
プロフィール
令和3年度から現在までに200弱のデジタル関連新規事業を手がけ、日本DX大賞で2年連続大賞を受賞。総務省やデジタル庁のアドバイザーとして、生成AI、窓口DX、人材育成、BPR等、様々な分野で全国の自治体を支援。
[講師]
高橋 邦夫 氏
合同会社KUコンサルティング 代表社員
プロフィール
総務省「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドラインの改定等に係る検討会」構成委員、同地域情報化アドバイザー、文部科学省「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン改定検討会」座長、同・学校DX戦略アドバイザー、元豊島区CISO。
独自開発のAIツールで庁内・庁外に変革を広げる。
高橋:このセクションでは、都城市の佐藤さんから生成AIに関する活動内容を伝えていただき、その後で対談形式で話を掘り下げていきます。まずは佐藤さんから発表をお願いします。
佐藤:都城市はこの5年間で200程のデジタル関連事業をやってきました。その中から、今回は生成AIに絞ってお伝えします。
現在、職員不足が叫ばれる自治体で、働き方を変えていくことは非常に重要です。そこでカギになるのが生成AI。当市は日本DX大賞で2連覇中ですが、2つ目の賞をいただいたのが「zevo(ゼヴォ)」というAIツールです。
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ゼヴォは、LGWAN-ASPに登録された正式な生成AIツールとしては全国初で、完全に自治体目線で作られています。機能も随時向上しており、最近は画像生成にも対応。もちろん文字起こしでも活躍中で、庁内での活用状況は直近で5,000万文字ペースです。
当市で1番使われているのはファイルアップロード機能。マニュアルなどのファイルを読み取らせた上で、生成AIを活用できます。画像のアップロードも可能で、例えば作ったポスターの評価などで利用されています。
次にRAG機能。AIを議会答弁などで使おうとしてもうまくいかない、といった話を聞きますが、我々は会計・財務事務でマニュアルや質疑応答を読み込ませた独自AIを運用しており、データを随時追加しながら精度向上を図っています。
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庁内では、会計課に質問する前に生成AIに尋ねる、ということを原則としており、回答が不十分であればRAGで追加・訂正。その結果、会計課の業務改善につながり、職員も電話で聞かずに済むという双方のメリットが生まれています。
また、マクロやAccessのコードなど、過去に作られて属人化しているものをゼヴォで改良するといった利用も増えています。生成AIを介してこれらのソフトウェアが活用され、業務が効率化するという好循環が生まれているのです。
他にも、「保育園だより」でRAGを使い、過去のものを読み込ませた上であいさつ文が生成できるようになっています。単に生成AIを活用するだけでなく、保育園だよりの様式を全園で統一し、効率化を進めています。
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その他、報告書や想定質問の作成など、様々なシーンで活用していますが、特に音声入力×生成AIは非常に相性が良く、様々な分野で活用できると考え、庁内でも利用を広げ始めているところです。
仲間を増やし“みんなで取り組むDX”を目指そう。
高橋:ありがとうございました。ここからは対談コーナーとして、いくつか質問させていただきます。
お話の中でRAGが出てきました。その活用方法に感心させられました。発想はどこから出てきたのでしょうか。
佐藤:利用者目線で考えて、例規や過去答弁を見る頻度と、財務会計のマニュアルを見る頻度を比べたら、圧倒的に後者が多い。ならばここを攻めようという感覚です。ただ、分かりやすいマニュアルを作っているつもりでも、生成AIが理解できない場合は、いいマニュアルとはいえません。そんな時にはマニュアルを修正する、Q&Aで補足するといったことを繰り返しています。
高橋:保育園だよりの話もありましたが、全園共通化するというのは、まさに業務改革だと思います。これは保育士さんたちも付いてきてくれていますか。
佐藤:保育士は今すごく大変で、人材不足に直面しています。なので、現場が楽になるものにはポジティブに取り組む姿勢がある。そういう意味では、面白いなという視点で受け止めてもらえていると思います。
高橋:マクロやAccessの件もありました。これは指示文を作るのが大変なのでは。
佐藤:いいえ、生成AIはすごく理解が早いので、やりたいことを伝えてコマンドを書いてもらうように指示すればある程度出てきます。あとは実際にそれを使ってみて、うまくいかないところを伝える、といった修正をするレベルです。マクロを使ったことがない50代の職員が、「こんなに便利なのか」と驚いたりしていますし、色々な世代に刺さっていると思います。
高橋:佐藤さんは様々なアドバイザーもしていますが、一方で自治体間競争のようなものもある。都城市はふるさと納税でもトップを走っていますが、この辺のバランスはどう考えていますか。
佐藤:自治体はチャレンジ精神を持って、住民に幸せを届けるのが使命ですが、一方でリソースがないとか、体制が組めていないといった現実もあり、自助努力だけではうまくいかないケースもあります。そういう意味では、私のアドバイザーとしての活動も、きっかけづくりやサポートという面で少しでも役に立てればと思っていますし、自分が気づかされることもあります。そういった知見を都城に持って帰ることもできるので競争と共創のバランスをとりつつ進みたいと思っています。
高橋:スーパー公務員ならではの言葉ですね。最後に、情報システム課で頑張っている職員に向けてアドバイスをお願いします。
佐藤:課題から始めるデジタルとか、問題点を解決するためのデジタルという基軸もいいと思いますし、生成AIでマインドを変えるというのも1つの手だと思います。アドバイザー制度なども使いながら、上手に仲間を増やして、みんなで取り組むDXというものをぜひ体感していただきたいですね。
高橋:ありがとうございます。他自治体の皆さんも、まずはチャレンジするところから始めていただきたいと思います。
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TEL:092-716-1480
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