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公開日:2023-03-14

「楽しくない訓練になんか、参加したくない」。市民目線を意識した防災訓練。

防災・危機管理
読了まで:4分
「楽しくない訓練になんか、参加したくない」。市民目線を意識した防災訓練。

読者投稿ページは、自治体職員が日々の業務や活動している内容を発表・共有できる場です。読者自ら執筆した原稿の中から、編集室が選出した記事を、ジチタイワークスWEBで公開させていただきます。

ぜひ、皆さんの自治体職員としての経験や取り組みを、編集室にお届けください。

→「読者投稿」の詳細はこちら

● 投稿者(自治体職員)プロフィール

テーマジャンル : 防災
ペンネーム : 餅つきマン(30代)
所属部門 :くらし安全課

 

異動後に初めて参加し、衝撃を受けた“防災訓練” 。

どの自治体でも防災訓練を実施していると思います。でもプライベートで参加したことがある人は少ないのではないでしょうか?私もそんな一人で、防災担当に異動して初めての防災訓練に参加し、次のような状況に遭遇しました。

● 炎天下で、開会式が長時間にわたり行われていた。
● 市職員(部長)が市長に対し敬礼し、被害状況を伝える“訓練”が行われていた。
●  防災訓練参加者が、閉会式後に配布されることになっているお菓子の前に長蛇の列をつくり、「早く配れ」と声を上げていた。

特にショックだったのは、訓練を体験しに来ているはずの市民の方が、ほとんど訓練に参加せず、参加賞のお菓子をもらったらすぐに帰ってしまうことでした。

当市は水害に強いこともあり、主な災害想定は“地震”です。地震で最も重要なことは、備蓄や家具の固定です。防災訓練では、そういったことを市民に理解していただく場のはずなのに、とてもそういった目的は達成できているとは思えませんでした。

 

そこで取り組んだ「楽しみながら学ぶ防災訓練」とは。

まず、自分が市民として“参加したくなる防災訓練”にしたい。そのうえで、備蓄や家具を固定したくなるような仕掛けでないといけないと考えました。

そこで、参加したくなる訓練にするために3つの取り組みを始めました。

【1:メインターゲットを小学生と保護者に設定】

今までの訓練参加者の多くは、自治会の役員で仕方なく参加している中高年が中心。子育て世代はほとんどいませんでした。

そこで、小学生と保護者をメインターゲットに設定し、新規に「捜索救助犬とのかくれんぼ対決」や「防災脱出ゲーム」を用意。また、カージャッキでタンスから人形を救助する「救出救護訓練」は、無骨な人形をクマのプーさんに替え、「タンスレスキュー」という名前に変更したことで、少しでも魅力的に見えるようにしました。
 

【2:スタンプラリー形式での訓練会場をまわる形式に】

来場者に一つでも多くの訓練を体験してもらうために、スタンプラリー形式を採用。スタンプが集まると炊出しのカレーがもらえる仕組みに変更。
 

【3:防災訓練会場での物販】

訓練に参加して「防災グッズが必要!」と分かっても、家に帰ると、その重要性をほとんどの方は忘れてしまいます。そのため、必要だと分かったら、その場で防災グッズを購入できるように、物販ブースを用意。

 

10倍近くまで増えた!訓練参加者と防災グッズの売上げ。

こうした取り組みを進めるにつれ、その成果が目に見えるようになりました。まず、当初660人であった訓練への参加者数が、翌年には1.5倍の約1,000人に。コロナ禍で開催できない時期もありましたが、県と共催で実施した今年度の防災訓練には約6,700人が参加しました。

参加者数だけでなく、防災グッズの売れ行きも非常に好調です。市広報紙で掲載した特集記事の効果もあり、市内店舗では例年の比にならないほど防災グッズに反響が出ています。こうした取り組みの結果、当初達成できていなかった「市民が備蓄や家具の固定に取り組む」という目的を達成することができました。 

 

市民の防災意識向上につながる“もっと楽しい”防災訓練へ。

今では、多くの市民の方が防災グッズを購入してくれるようになりましたが、当初は全くと言っていいほど売れませんでした。防災グッズは、「市からもらうもの」という意識が定着していたためです。ほとんど売れないまま防災訓練が終わった際には、わざわざ時間を割いて出店してくださった事業者さんに申し訳ない思いでいっぱいでした。

そこで「ナッジ理論」を意識するなど、少しでも市民や事業者のためになるよう工夫を重ねた結果、大きな成果を生むことができました。

当市の事例はどんな自治体でも取り組むことができる簡単なものの積み重ねです。皆さんの地区の防災訓練が昨年度よりも面白く、より良いものとなるよう期待し、シェアさせていただきます。

 ▲防災訓練会場の様子(投稿者提供)

 

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