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【セミナーレポート】災害対応から見えたこと~被害を最小化する受援体制と避難所運営~【DAY2】

防災・危機管理
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【セミナーレポート】災害対応から見えたこと~被害を最小化する受援体制と避難所運営~【DAY2】

災害時は確実に動けるよう、限られた体制でも実践できる防災の知恵が求められています。しかし、実際にその場に直面したときに、想定通りに動けるかと問われると自信がない人もいるのではないでしょうか。

そこで、本セミナーでは、被災経験をもとにした「受援体制」「避難者生活」の実践例を通し、起こりうる未来の災害を想定し、被害を最小化するための備えを考えます。

概要

■テーマ:災害対応から見えたこと~被害を最小化する受援体制と避難所運営~
■実施日:令和8年2月13日(金)
■参加費用:無料
■申込者数:185人

「想定外」に応える受援体制づくり―カギとなる情報

最初に話を伺ったのは、三重県いなべ市の大月浩靖氏。想定外を前提に災害時の円滑な受援体制の考え方を整理し、その中で重要となる「情報」の役割について詳しく解説していただきました。

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【講師】
大月 浩靖 氏
三重県 いなべ市
総務部 防災課 課長補佐

平成19年より防災の担当をし、これまで東日本大震災、熊本地震、九州北部豪雨、西日本豪雨、能登半島地震など様々な被災地支援に従事。平時から積極的に地域に入り地域防災に取り組み、市民の防災意識の向上に努める。プライベートでは内閣府のチーム防災ジャパンのお世話係としても関わり、災害の被害軽減をするために、国民運動の展開を行うとともに、国民の防災意識の向上を行っている。

全庁体制で動くという前提

災害が発生すると、まず避難所が開設されます。組織ごとで異なりますが、勤務時間外であれば、職員は庁舎へ参集しますが、そこで最初に割り振られるのは電話対応です。ある程度人員が揃えば避難所対応、そして物資対応へと配置されていきます。

ここで知っておいていただきたいのは、「避難所担当者が必ず避難所に行けるわけではない」ということです。所属に関係なく、参集順に配置されることもあります。実際、熊本地震や能登半島地震では、多くの職員が避難所に出向いていました。つまり、災害対応は防災担当だけの仕事ではありません。福祉や教育、産業など、どの部署にいても、いざというときは避難所に立つ可能性がある。その前提で、行動をイメージしておく必要があります。

マニュアルだけでは動けない現場

また、実際の避難所では、想定外のことが次々と起こります。例えばボランティア団体が突然炊き出しを始める。避難所のガラスを割って避難者が避難、帰宅困難者や路上生活者が避難してくる。報道機関が押しかける。段ボールハウスの中で火を使う人がいるなどという事例もあります。

私は能登半島地震の際、輪島市で災害対応にあたりました。各避難所にマニュアルを配布しましたが、それだけで十分だったかと問われれば、正直難しいと感じています。災害対応、特に避難所というのは時間軸を意識した対応をする必要があるというところで、普段から地域でのHUG(避難所運営ゲーム)による啓発、内閣府が実施する避難生活支援リーダー・サポーター研修の受講、開設実働訓練の実施が重要だと感じています。行政側としては、アクションカードや避難所運営ボックスを整備しておくなど。感覚的に動ける仕組みをつくることが重要です。

避難所運営の「最低限」

避難所でまず意識してほしいのは、福祉避難スペースの確保です。健常者の方が先に到着するからこそ、要配慮者のための空間を意図的に確保しなければなりません。また、車中泊避難の車両数やアレルギーの有無、子どもの学年や人数の把握も必要です。そして最も重要なのは、避難所職員は災害対策本部への「パイプ役」だということです。人数報告だけでは不十分。困り事を吸い上げ、上にあげる。それが役割だと心得ましょう。

また、避難者名簿は3~5日以内に整理してください。退所者がどこへ行ったのか、在宅避難なのか、縁故避難なのか。その把握が、その後の支援につながるからです。さらに、開設直後から「1週間後にレイアウト変更を行う」と伝えることも大切です。間仕切りや段ボールベッドは後から入りますから、最初に場所を固定すると後のトラブルの原因になります。事前に周知するだけで、運営は格段にスムーズになります。

自主運営の促しも重要です。どの業務を住民に担ってもらうのか、事前に整理しておくことが必要です。引き継ぎ書の作成も欠かせません。

被害の推計から始まる戦略

災害対応は、被害の推計・確定・分析から始まります。避難者数の把握は、物資供給数や応援職員の要請、仮設住宅の必要戸数にも直結します。また、ライフラインの復旧状況の把握も重要です。水道が復旧すれば在宅避難者は減り、避難所を縮小できます。避難者の推移を見ながら、閉鎖や統合を計画的に進めましょう。

災害時、在宅避難者は見えにくい存在であることも心得ておきましょう。輪島では、携帯電話の電波数を活用し、深夜3時の通信数を基準に推計して人口や二次避難者数と照合することで、在宅避難者の概数を把握しました。この数値をもとに、要配慮者の訪問支援につなげることができました。データを使うことで、支援は迅速になるため——ITの得意な団体と連携することも有効です。

民間との連携という選択肢

大規模災害時、企業も通常業務が止まります。いなべ市では民間企業と協定を結び、企業として、そのとき何ができるのかを一緒に考えました。例えば、社員寮の風呂を避難者に活用してもらう巡回バスや避難所運営の一部サポートなどです。災害対応は総合戦略で、行政だけで完結するものではありません。人的資源、物的資源を把握し、「オールコミュニティー」で備えることが重要だと考えています。

最後にお伝えしたいのは、有事では1つの判断ミスが命取りになるということです。平時にどれだけ備えられるかが「想定外」に応える力になる。それぞれの自治体で、自分たちの最大被害想定を把握し、そこに合わせた準備を進めてください。皆さま一人ひとりの行動が、被災者の命と生活を支えます。

混乱しない災害対応を実現する防災DX

第2部に登壇したのは、ナイスモバイル株式会社の橋本正好氏。災害時に氾濫する情報に対する解決策として、MAXHUB「All in One Meeting Board」を活用した情報整理のコツや導入事例を伺いました。

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【講師】
橋本 正好 氏
ナイスモバイル株式会社
東京支店 営業部 マネージャー

大学卒業後、広告代理店営業職を経験。現在はナイスモバイル東京支店営業部マネージャーとして、日々、民間企業・自治体などへ会議DX/防災DXのご提案を行っている。2025年に防災士資格を取得。

MAXHUB「All in One Meeting Board」とは

ナイスモバイル株式会社は長野県松本市に本社を置き、札幌から熊本まで全国12拠点で展開しています。事業内容は「会議DX事業」で、会議にまつわる製品の企画・輸入・販売から、保守・メンテナンス・サポートまで担っています。中でも私たちのメイン商材が、インタラクティブホワイトボード(電子黒板)のMAXHUB「All in One Meeting Board」(以下、ミーティングボードという)です。大型のタッチパネルに加え、Web会議やリアルタイム共有に必要なカメラ・マイク・スピーカーなどを一体化しており、全国で450件以上の自治体導入実績があります。

災害対応の現場では、遠隔地の関係機関や現場とつながりながら、映像・資料をリアルタイムで共有し、情報を集約・整理し続ける必要があります。ミーティングボードは、複数アプリや複数デバイスを同時に投影できるため、一度に多くの情報を並べて確認・整理できます。さらに、ボード上で編集した内容は本体保存やスマホ・PCへの保存、メール配信など、多様な方法でデータ化でき、ノウハウの蓄積にもつながります。

情報の洪水を判断材料に変えるために

災害発生時の情報収集・共有について、自治体向けの市場調査では、重視されている項目の上位が「現地職員や避難所から情報をリアルタイムに把握すること」「関係部署・機関からの情報を一元的に収集して管理すること」でした。この2つは密接につながっていて、膨大な情報を効率よく整理し、共有することが迅速な対応と被害拡大防止につながる、というのが私たちの問題意識です。

私は、災害対応の遅れは「情報が少ない」よりも「情報が溢れている」ことが原因になっている場面が多いと考えています。裏を返せば、整理・共有ができれば判断は早くなるはずです。その根拠として、デジタル庁の実証では、マイナンバーカード等を活用して避難所受け入れや報告業務をデジタル化した結果、定期報告業務が50.7%削減され、約90%が「意思決定に有益」と回答したとされています。

ここで重要なのは「カードを使ったこと」そのものではなく、情報を整理し、同じ情報を関係者で共有できる形にすると、判断が早くなる点だと捉えています。

災害対策本部では、モニター、PC、Webカメラ、スピーカーフォン、ホワイトボード、貼り紙、ケーブル類など、複数の機器や情報が並びがちです。ミーティングボードは、それらを1台に集約し、同じ画面を見ながら情報共有と意思決定のスピードを上げることをねらいます。

また、今年1月に東京都江東区で行われた災害訓練では、実際にミーティングボードを使用いただきました。手書きの修正・更新の負担が減ること、電子ホワイトボードで「1個にまとめて」被害状況を整理できること、複数の関係機関と瞬時に共有できることなど、使い勝手の良さを実感していただいています。

ミーティングボードで、対策本部と避難所運営はこう変わる

導入効果は大きくわけて次の3点です。

情報を集約し、混乱を防ぐ
「最新情報はここ」と判断の起点を一本化し、情報の迷子を防ぎます。

複数の情報を並べて判断できる
画面分割などを活用し、被害状況・避難所・道路情報といった情報を同時に俯瞰することで、全体最適の判断につなげます。

判断の過程やノウハウを残せる
編集内容をデータ保存できるため、振り返りや引き継ぎがしやすくなり、組織の知見として次に活かせます。

さらに私たちは、災害対策本部の初動対応を支えるテンプレート(自治体 災害対策本部 初動対応テンプレート)も開発しています。従来の立ち上げ時は、ホワイトボードにルールなく情報が書かれ、何が重要かがその場の人にしか分からず、経験依存になりがちでした。テンプレートでは、項目があらかじめ決まっているため、抜け漏れを防ぎ、情報を一元管理し、全体像を把握しやすくします。そして私が特に重要だと考えるのが、「誰が使っても同じ基準で判断できる」ことです。販売開始は5月以降を予定しています。

費用対効果

自治体の皆さまからは、「日々の会議も効率化したい」「災害時だけの機器は予算化しづらい」といった声もあります。ミーティングボードは平時の会議・Web会議・ホワイトボードとして日常利用でき、普段使っているから緊急時にもスムーズに使える、という“フェーズフリー”の考え方に合う点もポイントです。

ナイスモバイルは全国12拠点のネットワークがあり、主要都市の支店はショールームとして実機を確認できますし、出張・オンラインを問わずデモも行っています。気になった方は、ぜひお問い合わせください。

発災時の初動対応から生活再建支援までを迅速化する防災DX

第3部に登壇したのは、富士フイルムシステムサービスの竹中稔氏。防災・減災DX事業におけるソリューション「防災プロアクティブハブ」を始めとした、防災DXについて紹介していただきました。

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【講師】
竹中 稔 氏
富士フイルムシステムサービス株式会社
デジタル戦略推進部 部長

1992年4月富士ゼロックスシステムサービス株式会社(現富士フイルムシステムサービス株式会社)入社。2007年カスタマーサービス部長、2009年システム開発部長、2014年EPS統括部副統括部長、2018年経営基盤管理部長を経て、2021年より現職。グロービス経営大学院パートナーファカルティ(講師)。

開発の軸は「現場の思い・経験・知見」

私たちが大切にしているのは、「お客さまの想い・経験・知見」を反映することです。自治体職員の皆さまが災害現場で直面してきた課題、そしてその先にある住民の生活再建――そこに本当に効果をもたらすものをつくる。単に“できる”だけでなく“効く”ことを重視して、様々なサービスを開発してきました。

開発は5年前に開始し、多くの自治体との共同研究を通じて磨いてきました。罹災証明迅速化ソリューションは令和5年6月にリリースし、令和6年3月には「デジ田(デジタル田園都市国家構想交付金)支援」で内閣総理大臣賞を受賞しています。

「意思決定が遅れる」ボトルネックに切り込む

災害現場で多く見受けられるのが、初動の意思決定に時間がかかり後手にまわることです。意思決定の遅れは、避難指示の遅れによる逃げ遅れ、自衛隊応援要請の遅れによる救助作業の遅れ、孤立集落対応の遅れなどにつながり得ます。内閣府ガイドラインでは「何をすべきか(ToDo)」までは整理されていますが、実際の現場で必要な「意思決定の選択肢」や「判断基準」は暗黙知化し、職員の定期異動もあって蓄積されにくい。結果として同じ過ちが繰り返される――これが課題認識です。

そこで、私たちが構想しているのが「防災プロアクティブハブ」です。これは、災害対応業務にかかる意思決定ノウハウを体系化するソリューションで、第一弾として、現場で広く浸透している“ホワイトボードでの情報整理”に着目し、業務ごとの情報整理テンプレートを用意しています。

テンプレートには目的やToDoを定義し、不要な情報収集に振り回されないようにする。初動アクションをいかにとるかに着目し、経験がなくても優先順位を付けて動き出せるようにする。情報整理に必要な表をあらかじめ定義し、必要情報の網羅性を高めつつ、情報収集が目的化しないよう意思決定を促すところにねらいがあります。

被害調査の計画と実務を支える「統合」

次に、すでに提供している「罹災証明迅速化ソリューション」と「生活再建支援ナビ」についてです。全体の中核となるのが「被害調査統合システム」で、被害状況・調査状況の可視化、班編成・計画策定、申請受付のデジタル化などを担います。

住家調査では、調査班の編成、日々の計画策定、応援職員の入れ替わり、調査対象の更新、計画通りに進まない現実――こうした変動に合わせて計画を立て直し続ける負担が大きくなります。そこで、災害規模に応じた必要人員の算出や調査スケジュール策定を支援し、計画見直しや生産性管理の自動化まで目指しています。

従来フローでは、罹災証明書を受け取った住民が各課をまわって申請を行いますが、支援メニューが多く、申請先も分かれます。本人が「自分に該当する支援」を瞬時に選ぶのは難しく、未申請による支援漏れが起きやすい。職員側も、申請情報を住民基本台帳などと突合しながら運用する負担が大きいといった課題がありました。

そこで、生活再建支援ナビでは、被害判定結果に応じて該当する支援メニューと申請先を一覧化し、住民が把握した上で申請できるようにします。さらに、支援状況を可視化し、申請漏れが発生している対象者を抽出して通知することで、支援漏れ防止につなげる考え方です。

実災害での効果

大分県日田市では、罹災証明書の申請受付から発行までのプロセスにおいて、導入前比で57%の改善効果を実現し、特に帰庁後のデータ整理が100%削減されています。

また、過去の「100棟以上の豪雨被害」では発行開始まで14日以上かかっていたところ、令和5年度7月豪雨被害では7日で発行開始できたこともわかっています。

さらに、被災者支援ソリューション・生活再建支援ナビ(被災者支援台帳機能)は福島市と共同研究において製品開発をいたしました。令和4年福島県沖地震の際の業務時間と比較して業務工数を大幅に削減する効果が見込まれております。


■職員視点の改善効果
被災家屋の判定結果に基づき、適用支援制度が自動的に可視化されるため、
ミス防止と負荷軽減
世帯単位の支援経過をリアルタイムで進捗管理可能
申請受付時の申請者情報と住民基本台帳連携で支援課職員の大幅な業務削減と一気通貫一元管理

■住民視点の改善効果
支援メニュー正確に把握
通知があるので支援漏れ防止


熊本県では被災7自治体を同時支援

最後に、システムの活用実績です。令和7年8月の熊本県豪雨災害では、被災7自治体への同時支援を実施しました。私たちのシステムをご提供すると同時に、現地での支援もさせていただきました。

これからも支援を通じて私たちのシステムをブラッシュアップしていき、皆さまと2人3脚で災害に向き合いながら努力してまいりたいと思います。

官民連携の被災者支援で災害関連死を防ぐ!

第4部に登壇したのは、黒濱綾子氏。様々な災害現場に従事してきた経験から、災害者支援における役割や官民連携による被災者支援体制など、災害関連死に向けた連携の必要性について語っていただきました。

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【講師】
黒濱 綾子 氏
内閣府 政策統括官(防災担当)付 参事官(避難支援)付

保健師・助産師・看護師・介護支援専門員・防災士・総務省災害マネジメント総括支援員保健師として東日本大震災、西日本豪雨、令和2年7月豪雨などに従事。令和6年能登半島地震ではNPO活動として災害ケースマネジメントに関わり、令和7年度より徳島県鳴門市から内閣府(防災)へ派遣。

「災害関連死」を正しく捉える

災害関連死とは、災害による負傷の悪化や、避難生活などの身体的負担による疾病で死亡し、「災害弔慰金の支給等に関する法律」にもとづき災害が原因で死亡したと認められたものを指します。ここで重要なのは、災害関連死は申請から始まるという点です。例えば独居で身寄りがない方など、申請されないケースは認定に至らないことがあります。また、司法解剖のように医学的に確定するものではなく、医師・弁護士等の有識者による審査会を経て、市町村が行政上「因果関係あり」と認定したものが災害関連死になります。認定基準は自治体や災害種別で差があり得ることも、前提として共有しておきたいところです。

では、それらを踏まえて今年1月に策定した「能登半島地震における災害関連死の事例集」から概要を見ていきます。資料によると、死亡時年齢は80歳以上が8割超で、既往症は「あり」と答えた割合が94%でした。

死亡までの期間は、発災から3カ月以内が66%と、多いことが示されています。

また、死亡直前の生活環境は、病院34.3%・介護施設29.4%で6割超。続いて自宅等13.3%、避難所11.2%です。避難所環境(TKB)の整備は重要ですが、能登では病院・施設・在宅にいた方の比重も大きく、避難所以外への支援や見守りが欠かせない、という視点が浮き彫りになったと私は捉えています。

直接死因は「循環器・呼吸器・老衰」で7割超

死因区分では、循環器系30.4%、呼吸器系28.0%、老衰等24.1%で、3分類で7割超です。ただしこれは「最も死亡に影響した直接死因」の分類。例えば、基礎疾患がある方が避難生活の途中で感染症に罹患し、その後肺炎で亡くなった場合、分類上は呼吸器疾患に入り、感染症の影響が見えにくくなります。数字だけでは実態がこぼれる、という点も共有しておきたいところです。

そこで私は、死因や経緯における「個別の事情」を、発災後フェーズごとにキーワード抽出した表を作っています。

例えば一番左側の発災1週間以内では循環器系での死亡が多く、被災のショックに加えて停電や断水、それから急激な避難行動などの影響、あとは空調の問題や緊急搬送の遅れなども出てきていました。また、発災1週間から1カ月以内では、今度は呼吸器系疾患が少しずつ増えてきています。

被災のショックや停電断水に加えて、施設での停電断水の影響、避難所での心身の負担、自宅での避難生活や避難場所の移動などもキーワードとして出てきています。このように個別の事情をフェーズごとに見ることで、優先的に対応しなければいけないことが少しずつですが明らかになってくるのではないかと考えています。災害関連死の事例集に目を通す際は、数字だけを見るのではなく、個別の事情や事例の1つひとつをケーススタディーとして読み、何ができるのかを考え、今後の関連死対策に役立てていただけたら幸いです。

関連死を防ぐ5つのポイント

これまでの内容を踏まえ、能登半島地震の事例集からのポイントを5つ挙げます。

1 ライフライン・インフラの復旧対策
停電・断水は、医療機器や空調停止などを通じて命に直結します。避難所だけでなく、介護施設・在宅も含めて、場所を問わず早期確保が必要です。

2 心身のケア
被災のショック、不安、家族分離などが食欲低下や体調悪化につながる事例が多い。早期からの心のケアが重要です。

3 移動・転所は必要最小限に
1.5次避難や二次避難の移動は身体的負担だけでなく、孤独・不安など心理的影響も大きい。移動判断の整理と、そもそも移動させなくてよい環境づくりが課題です。

4 避難所以外に避難した方への支援
支援の軸を「場所」から「人」へ。避難所以外(在宅等)にいる人への支援・見守りを組み込む必要があります。

5 感染症対策の徹底
直接死因に出にくい一方で、現場負荷は大きい。誰でも実行できる感染症対策は関連死防止につながります。

加えて、これらは「起きてから」では間に合わない部分が多い。耐震化やインフラ整備、実効性あるBCPや個別避難計画など、事前防災の推進が前提になります。

声を上げられない人を見つける仕組み

ここからは「災害ケースマネジメント」についてです。「災害ケースマネジメント」とは、被災者一人ひとりの状況や課題を個別相談で把握し、必要に応じて専門職や関係者と連携しながら、継続的に支援して生活再建を進める取り組みです。特徴は「アウトリーチ(個別訪問)での発見・状況把握」「官民連携による支援」「課題に応じた支援の検討・つなぎ」「支援の継続的な実施」の4点です。

実際には、アウトリーチをして、その結果をアセスメントし、ケース会議によって支援を検討・実施するというサイクルを、フェーズに合わせて何度もまわしていきます。なぜ1回ではないのかと言うと、フェーズによって課題も変わってきますし、その時には見えていなかったお困り事が出てくることもあるからです。また、「情報連携会議」として地域の全体的な課題を捉えたり、支援策を検討・共有する場も開催されます。

この取り組みをまわすには、人もモノもカネも必要です。そこで活用してほしい制度は以下のようなものです。

応急対策職員派遣制度

総括支援、避難所運営、物資調達輸送、罹災証明発行支援など、人手の応援受け入れに使えます。

災害救助法

避難所設置、食・水・寝具等に加え、法改正で「福祉サービスの提供」も位置づけられています(DWAT等)。こちらは要請しないと来ないため、要請の仕方も含めて押さえておく必要があります。

災害救助事務取扱要領

保健師や災害支援ナースの健康相談・観察、士業の総合相談も福祉サービスとして取り扱える旨が示されています。

被災高齢者等把握事業

アウトリーチを進めるために活用でき、民間団体への委託も可能。

被災者見守り・相談支援事業

長期の見守りや相談支援を、社協やNPO、雇用した地域人材などと進める枠組み。

官民連携で「継続支援」をまわす

被災者の課題は多様で、行政だけでは解決できません。個々に寄り添い、継続的に支援するには官民連携の体制づくりが重要です。

では、現在はどのような支援が行われているか。実際の支援例として、保健師・社協・NPOによるアウトリーチ、仮設住宅での見守り相談や転居支援、家屋の修繕支援などがあります。

また、静岡県牧之原市では、住家被害認定結果を踏まえたワンストップ相談窓口を設け、士業・福祉関係者・行政が一体となって相談対応した事例もあります。

平時の潜在的な社会課題は、災害時に顕在化します。地域のハザードだけでなく、社会課題も分析して事前防災を進めることが、関連死防止に直結します。災害現場には、個人や地域の取り組みも数多くあります。行政はそれを後押しする組織であってほしい。災害時は総力戦であり、官民連携が大きな鍵になる――私はそのように考えています。

低コストで実装可能な防災トイレの考え方

第5部に登壇したのは、トレーラーハウスデベロップメント株式会社の西川徹氏。災害時におけるトイレ確保の現状と課題を通し、自社で開発している移動型トイレの仕組みと活用イメージを紹介していただきました。

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【講師】
西川 徹 氏
トレーラーハウスデベロップメント株式会社
執行役員 アンドコンパクト事業部 部長

2022年3月、現社長のスカウトにより入社。飲食事業部を任され、 赤字で低迷していた焼き肉店およびラーメン店の立て直しを担当し、いずれも黒字化を実現。2025年より新規事業として開始したコンパクト型トレーラーの製造・販売事業の責任者に就任。スタートアップのため日々邁進中。

移動できる「インフラ」としてのトレーラーハウス

トレーラーハウスデベロップメント株式会社は国内自社工場で製造するトレーラーハウス、トレーラーハウス専用シャーシを中心に全国へ出荷しており、日々100台以上を生産しています。CSRとしては、栃木市、荒川区、埼玉県、沖縄県豊見城市と災害支援協定を締結し、能登半島地震では災害時NGO等の広域支援拠点として複数台を無償貸与したほか、新型コロナ対策では医療用トレーラーハウスとして20台を無償貸与しました。

トレーラーは“非常時だけ”のものではありません。普段は宿泊施設(ビジネスホテル)として運用し、非常時は被災地へ駆けつけられる――この「移動できる」点が強みです。

設置例としては、グランピング・キャンプ場の施設、サウナ、オフィス用途など多様です。

自治体向けでは、喫煙トレーラーなどの導入例もあります。このほか、低床型の障害者向けトイレ、ショップ、移動交番としても使われています。

災害時に「当たり前のインフラ」であるトイレ・水・電気は、最も早く止まり、最も早く求められます。そこで私は「誰もが牽引して必要な場所に届けられる」小型トイレトレーラーを提案しています。

トレーラーハウスのメリットは、建築確認が不要、固定資産税が不要(自治体による)、建築よりコストダウンできる、自由に移動できる――といった点ですが、一方で、設置できる土地条件に制約がある、定期車検が必要、牽引免許が必要な場合が多い、といったデメリットもあります。

だからこそ私たちは、「普通免許さえあれば誰でも牽引できる」サイズ(総重量750kg未満)に振り切ったトレーラーを作りたいと考え、最初のプロダクトをトイレに定めました。

いま主流の「タンク式」が抱える限界

弊社も災害時は自治体さまから要請を受けてからになりますが、トレーラーを牽引して現地入りします。その中で炊き出し活動をしているNPOの方から「食事提供をしても、トイレに行きたくなくなったら困るという理由で断る人も結構多い」という声を聞いたことがありました。ですので、このボランティア団体は必ず食事提供と一緒にタンク式のトイレトレーラーも持っていくそうです。

ただ、タンク式トイレは仕組みがシンプルで故障が少なく、水洗で慣れているので清潔に感じられる、というメリットがある一方で、水がなくなると詰まる、くみ取りしないと使えない、放置すると感染症の原因になるといった運用上の問題が起きやすいという課題を抱えています。

水を使わない「トイレ&コンパクト3.0」

また、ある災害医療NGOが現場に入る際は「貴重な現地のトイレを救助側が使うわけにはいかない」という考え方で、ラップ式(フィルム式)のトイレを持っていくと聞きました。そこで私たちは、水を使わないトイレに振り切り、「トイレ&コンパクト3.0」を開発しました。

「トイレ&コンパクト3.0」は、サイズ3.0m×2.0m、総重量650kg(積載100kg)で、牽引免許不要の小型トレーラーです。

特徴は「4つの不要」です

水不要:フィルム式トイレで場所を選ばず設置
くみ取り不要:タンクレスで汚物滞留による感染症リスクを下げる
外部電源不要:バッテリー搭載でオフグリッド運用
けん引免許不要:総重量750kg以下で、普通免許で牽引可能

さらに小さなボックス内に「4つの部屋」を設け、トイレだけでなく授乳室・更衣室などプライベートスペースとしての活用も想定しています。全室、内側から施錠できるのもポイントです。

搭載するのは自動ラップ式トイレで、1回ごとに熱圧着で密封し、においを封じたうえで可燃ごみとして捨てられます。
※ラップされた袋や紙おむつの処理は自治体によって異なります。

実証の手応え

「トイレ&コンパクト3.0」は、埼玉県内での首都直下地震を想定した合同防災訓練や「上里町防災フェスティバル」で展示したほか、福島県南相馬市の「ワールドロボットサミット2025」ではイベントスタッフ用として実証的に利用していただき、大変良い反応をいただきました。

今、世の中の様々なものが進化しています。それに比べると、災害用トイレの進化はとても遅れているのではないかと感じています。自治体さまのトイレカーやトイレトレーラーの入札条件を見ると、タンク式であることが条件として付けられているのを昨年もよく見ました。これでは、新しいものを作ろうと思ってもなかなかできません。ぜひ、これからの新しい災害用トイレというものを一緒に見つけていけたらうれしいです。

【お問い合わせ】

ジチタイワークス セミナー運営事務局
TEL:092-716-1480
E-mail:seminar@jichitai.works