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【セミナーレポート】Day2:TikTokの事例で学ぶ自治体広報&プロモーション 動画&ライブ情報発信3Days

自治体が発信するメッセージは、ネット社会で大量に行き交う情報の中、時に埋もれてしまうことがあります。必要なのは強い訴求力と、変化への適応力です。本セミナーでは、3日間にわたって産学官の知見を集め、最新の動画事情と活用事例、今後の可能性を共有しました。各回の内容を3回シリーズでお伝えします。

概要

□タイトル:TikTokの事例で学ぶ自治体広報&プロモーション 動画&ライブ情報発信3Days
Day2:学ぶ/事例に学ぶ動画の効果的な使い方
□実施日:2021年12月22日(水)
□参加対象:自治体職員
□開催形式:オンライン(Zoom)
□参加者数:559人
□プログラム:
第1部:SNSや動画を活用した自治体の広報広聴と情報発信/PRDESIGN JAPAN(株)代表取締役 佐久間 智之 氏
第2部:非公開
第3部:非公開
第4部:なぜ行政情報の発信にショートムービーを使うのか?Day2/広島県 石田 雅之 氏
第5部:被災地と呼ばれる浪江町の「今」を伝える挑戦/浪江町 及川 里美 氏


Day2:学ぶ/事例に学ぶ動画の効果的な使い方

本セミナーの2日目は“学ぶ”がテーマ。自治体広報に関して幅広い知識を持つ民間事業者からのアドバイスを皮切りに、中央と地方、それぞれの行政における課題と、動画発信による施策の効果について情報を交換した。

<講師>

佐久間 智之 氏
早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
自治体広報アドバイザー
PRDESIGN JAPAN(株)代表取締役
厚生労働省 年金広報検討構成員
 

石田 雅之 氏
広島県 総務局 ブランド・コミュニケーション戦略チーム グループリーダー
 

及川 里美 氏
浪江町 企画財政課 主事


SNSや動画を活用した自治体の広報広聴と情報発信/PRDESIGN JAPAN(株) 代表取締役 佐久間 智之 氏

自治体がSNSの運用を始めるにあたって、まずは組織としての目的と目標を持たなくてはいけません。「SNSをやる」が目的化するのは当然NGですし、やる気のある職員が「ツイッター始めました」と頑張っても、異動の際に継承されなければ廃虚のようなアカウントが残ってしまいます。最初に「なぜSNSなのか」という点を明らかにして、ガイドラインをつくり、目標を決めましょう。

目標は、“「いいね」が1日10件以上”といった低めのものから始めるのがオススメです。その上でPDCAをまわしていくことが重要。KPIを設定し、効果や反応を見ることは、モチベーションアップにつながります。こうしたSNSの運用では、シェアされる・共感されるということが大切で、それを広げるためのポイントは以下の三つです。

これら三つを軸として守りつつ、工夫を重ねていくことが成功への道。先ほど「共感が重要」だと伝えましたが、もちろんそれだけではありません。SNSの運用で大事なものとして、共感を含めた五つの「S」があります。

この五つの「S」を踏まえて情報を届け、住民のニーズと行政がやりたいことの乖離を埋めなくてはいけません。また、「エンゲージメント率」はSNS活用で外せない部分です。よくいわれる「インプレッション」は、タイムライン上の表示数を意味し、取りあえず視界に入っているというものです。これに対し、エンゲージメントは手を止めて「いいね」を押したとか、リンクを見たとか、何らかの反応をした人を指します。この両者を分析し、エンゲージメント率を伸ばすことが重要です。こうした情報はアナリティクスで拾えます。

例えばYouTubeのアナリティクスでは、最初の離脱率が分かります。動画においてこの点は非常に大事で、最初の3秒で見るか見ないかがジャッジされるのです。冒頭で結論をいってあげるとか、何らかの工夫をしないと離脱される可能性が高いので、そうした点も把握しておく必要があります。

ここからはTikTokの話をします。私がTikTokをオススメする理由はいくつかあります。例えばSNSを利活用している人の割合を2020年のデータで見ると、TikTokは10代で57.7%、20代も28.6%と若年層の支持率が非常に高い。動画で情報を届ける際に、この数字は見逃せません。

また、基本的にJASRACの許可を得ているので好きな音楽を使えます。これも若い人たちの共感を生むポイントです。そして、動画を簡単につくることができる。適当に撮ったものを三つくらい並べただけで完成度の高いものができますし、エフェクトをかけたり映像に好きな音楽をのせたりと、オシャレで面白い映像も簡単に作れるというのが大きなポイントです。

もう一つ、スマホがなくてもPC上でアップロードして、分析などもPC上でCSVに出力して対応できるというのもTikTokの強みだと思います。ここで、動画の視聴数を伸ばすポイントについてお伝えします。主要なものは以下の4点です。

(1)最初の1~2秒でユーザーの興味を引く
(2)ユーザーが飽きない工夫を凝らす
(3)あえてツッコミどころをつくる
(4)「中の人」の人となりを見せる

前にも述べた通り、動画は最初の1~2秒が大事です。視聴者にインパクトを与え、その上で(2)~(4)の工夫を重ねていきます。飽きないように音を入れたりテンポに合わせたり、中身まで質を高めないと視聴数はなかなか伸びません。

もう一つ、長い動画はバズらないものです。もちろん中身をしっかり伝えたい場合もあると思いますが、その動画をバズらせたいのか、あるいはドキュメンタリーにしたいのかなど、用途に合わせて編集する必要があります。

最後に、自分が見たい動画をつくる、ということも忘れてはいけません。「アップしても反応ないだろうな」と作り手が思う動画で、再生回数が伸びる訳がない。しっかりと目的意識を持って、PDCAをまわして分析しつつ企画を練り、数値を追って対策を立てながら、メッセージを発信していきましょう。

 

なぜ行政情報の発信にショートムービーを使うのか?Day2/広島県 石田 雅之 氏

私からは、なぜ行政情報の発信にTikTokを使っているのかという点についてお伝えします。1日目のプログラムではコロナ関連の取り組みについて説明したので、今回はそれ以外の事例を中心にお話しします。

広島県でのTikTok活用は、きっかけがコロナ関連の啓発や情報伝達だったのですが、その結果として若い方に情報が届いているということが分かりました。そこで、コロナ以外の施策にも活用できないかと考え、新しく始めたものの一つが、ライブ配信というTikTokの機能を活かした取り組みです。

広島では、毎年8月6日に平和記念公園で平和記念式典を開催していますが、これをより多くの方にTikTokを通して見ていただくことで、県内外の若い方にも平和の大切さを改めて考える機会としていただければと思い、ライブ配信を始めました。

本年度に関しては、県の平和施策を担当する部署が、ハッシュタグキャンペーンをツイッター上で行うという計画が進んでいたので、それにTikTokも連携させるかたちで、TikTok上にハッシュタグ、あるいは専用ステッカーを入れて投稿してください、という呼びかけをしました。この平和記念式典は、県内のテレビでも生放送されているのですが、時間帯が通学中ということもあり若年層には見ていただきづらいので、スマホで発信するということも意識してのライブ配信実施でした。結果としては、視聴者数が約3万5,000人。ハッシュタグキャンペーンに関しては、国内外を問わず幅広く声が集まり、投稿数は約6,000。総視聴者数が740万と、かなり良い取り組みになったと考えています。

ライブ配信についてはもう一つ、広島FMという地元のFM局が中高生向けラジオ番組を毎週月~木曜の夜に放送しているので、そこに知事が毎月出演しています。コロナ対策に関する呼びかけや、県の施策の紹介などを語るといった内容ですが、通常は耳でしか入手できない情報を、スタジオからの動画配信で同時にやるということで、広島県の取り組みへの理解や、県政は知事を身近に感じていただくことにつなげたいと考えています。

ちなみに、動画の投稿に関しては、県の施策ばかりだと共感が得にくい部分もあるので、広島にまつわる様々な動画を作成して公開しています。例えば、お好み焼きを実際につくる短尺動画や、職員が出張先などでスマホで撮影した動画や写真をつなぎ合わせてムービーにしたものをTikTokで配信するなど、地域の情報も幅広く発信しています。ほかにも、若者のネット通販における消費者被害に関する注意喚起を、実際に職員が出演してスマホで実演しながら説明するものなどもあります。

こうした中で私たちが心掛けているのは、共感が得られるような内容にしていきたいということ、そして必要な部分はクリエイターの方につくっていただきつつも、できるだけインハウスでスピード重視で進めていこうということです。TikTokのユーザーと年代が近い、若い担当者を中心に今後も様々な企画を進めていこうと考えています。

被災地と呼ばれる浪江町の「今」を伝える挑戦/浪江町 (なみえまち)及川 里美 氏

浪江町の及川と申します。当町では、県外開催のイベントで来場者などに町をPRしつつ、浪江町のイメージをヒアリングすることがあるのですが、よく聞く答えは以下のような内容です。

ご覧の通り、あまり明るいイメージではありません。ただ、東日本大震災や福島第一原子力発電所の事故からもうすぐ11年。実際の浪江町の様子はこうしたイメージと違う部分が多いのです。

浪江町は「被災地」ときには「原発被災地」と呼ばれていますが、普通に人が生活していますし、様々な事業も行われていて、最近では「水素」を活用した事業など新しいことも生まれています。町に戻った人や新しく入った人が協力し合って、町の伝統文化をつなげていったり、新しい目線でのまちづくりをしたりする中で、日々様々な"チャレンジ"と"ワクワク"が生まれている町です。

そんな浪江町でなぜTikTokを始めたかというと、震災後全国に避難された町民の皆さんや、町を知らない人たちに町の情報を伝えるためです。従来、町民の皆さん向けの情報発信は広報紙や案内文の郵送、メールマガジンなどを活用して伝えていたのですが、文章や写真だけでは情報が伝わりづらい、何より町の復興の様子や避難先で頑張っている町民の皆さんの様子を感じてもらえないと考え、動画での情報発信に挑戦をしました。

まず2014年、YouTubeで「なみえチャンネル」を開設しました。動画で町のできごとやイベントの様子、新しく町にオープンしたお店などの紹介を週に1~2回行っており、こちらは現在も続いています。この他にもFacebookやツイッター、インスタグラムなどSNSも使って発信中です。そんな中、2020年の末に、私たちがやっている情報発信が皆さんに伝わっているのか振り返る機会があったのですが、調査の結果、Facebookの主な利用者世代は40~50代だと分かりました。また、YouTubeの利用者も40代以上の方がメイン。ツイッターは主に30~40代の方だということも分かり、10~20代への情報発信が弱いことが分かったのです。

10~20代の皆さんは震災の記憶が薄い世代ですが、今後の日本を担っていく世代でもあります。そうした方々に、復興の様子や東日本大震災のできごとを伝えていく必要があると考えていたときに、TikTokから一緒にやりませんかとお声掛けをいただきました。TikTokは無関心層へのアプローチができるということだったので、そこに魅力を感じて導入することにしたのです。

浪江町のTikTokは2021年の3月に始まり、同月にライブ配信に挑戦しました。これはTikTok主催の「3.11#あれから10年」という企画で、浪江町と近隣の大熊町が協力してライブ配信を実施。町の現状や復興の課題、町の特産品や、水揚げされた魚の紹介などを行った結果、コメント数6,775件で、さらに、ご覧になった方の90%以上が25歳以下というデータも出ました。このライブ配信で分かったことは、10年経った今も被災地への意識が高いということと、その被災地を応援する気持ちを持っている方がたくさんいるということです。そして、普段できないターゲットへのアプローチがTikTokで可能になるということも分かり、やって良かったと安心すると同時に、TikTokを活用した情報発信の大きな可能性を感じました。

TikTokの動画は、今でも定期的に投稿しています。バズるものもあればそうでないものもあり、試行錯誤の日々ですが、今後は浪江町に住んでいる皆さんを紹介する動画を投稿していきたいと思っています。

浪江町は東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故により「被災地」と呼ばれ、本来の町の姿とは違う面で有名になってしまいました。復興もマイナスからのスタートでしたが、「ワクワクやチャレンジがいっぱいの楽しい町」と感じていただきたく、今後もTikTokでの動画投稿や、SNSを活用した情報発信に挑戦していきたいと考えています。

 

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