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SMSを活用して徴収率UPを実現⁉元東京都主税局特別滞納整理担当部長が語る効果的な滞納整理手法とは?

2020(令和元)年度には地方税の滞納額が5092億円を超え、各自治体は税金未納者への対応に苦心している。徴収業務に関わるマンパワー不足も原因の1つだ。そんな中、効率的な徴収手段としてショートメッセージサービス(以下、SMS)を使った滞納者への連絡方法が注目を集めているという。元東京都主税局特別滞納整理担当部長の藤井朗さんに、徴収業務の課題と今後の展望について話をうかがった。

藤井 朗(ふじい あきら)さん

1979年、東京都入庁。2000年より都税事務所の納税課長となり、その後要職を歴任。定年後は再任用所長として江戸川都税事務所長、荒川都税事務所長を終了し、現在は全国で年間約20件の研修講師を務める。

著書に「地方税の徴収担当になったら読む本」(学陽書房)など。
 

Point

1.日本全体の滞納額は5000億円超え。徴収業務は、マンパワーだけでは限界。
2.SMSを使って未納者にコンタクトを取ると5割の反応があった。
3.最初にSMSを使うと臨戸する件数が絞り込める。
4.滞納整理業務にSMSを採用する際のポイントは、入口にあり。
5.「明るく・楽しく・前向きに」自信を持って業務にあたろう。

今、全国の自治体が抱えている徴収業務の課題とは

種子田:藤井さんは長い間、地方税の徴収業務に携わっていたということですが、通常税金が未納の方たちに対してはどのような対応をされているのでしょう。

藤井さん:例えば、1000件の新規滞納が発生したとします。通常は、まず文書催告をします。そうすると3割の方が納付されるので、次は未納の方に電話催告をします。そこでまた3割が納付されるわけです。それでも納付のない方たちに臨戸(訪問)します。文書も電話も反応がない人に接触を取るのです。臨戸の反応もやはり約3割。最終的に未納は350件、この方々に対して、全く反応がなければ財産調査をしています。

種子田:基本的に職員の方が臨戸されるわけですよね?

藤井さん:そうです。ですからなるべく、数を絞り込んでから行かないと件数が多くて対応できません。最後に残った臨戸でも、マンパワーが理由で訪問しきれないケースもあると思います。最近は、その手順の中にSMSを使うやり方が活用できると考えています。

種子田:なぜSMSが滞納整理業務と相性がいいとお考えなのでしょうか。

藤井さん:都内のある市役所でSMSを活用したシステムを取り入れた人がいたんですね。その人は「滞納者がSMSを見て市役所に電話してくれた。その反応率は5割あった」とおっしゃっていました。データもちゃんと取ったらしいんです。その話を聞いて、「あ、これは使えるな」と思ったわけです。同様にマンパワーを必要としないSMSを活用するのであれば、最初に5割さばけてしまう。業務の半分が終了するわけです。そう考えたら、今後もっとSMSを活用すればいいのではないかと思っています。個人情報の関係で滞納者の携帯電話番号を把握できていれば、SMSで滞納者の数を少なくしていくという手段もあると。

SMSで徴収率をUPさせるために必要なのは

種子田:SMSの有効性というのは、催告文書も見なかった、電話も通じなかった、訪問しても駄目だったという人に対して、SMSなら見る可能性があるということでしょうか。

藤井さん:どちらかというと、SMSは文書催告と電話催告をミックスしたものだと考えてもいいかもしれません。どの順番で使うかはそれぞれの自治体の判断だとは思いますが。

種子田:いろいろ連絡をしていく中で滞納者が「これは本当に納税しないとまずいな」と思われるかもしれないということでしょうか。

藤井さん:そうですね。そういう風にして納税を促していくというふうに、考えたほうがいいかもしれませんね。

種子田:やはり文書、電話、臨戸以外にも、もっと新しいリーチ方法も試していかないと、徴収率が上がらないということでしょうか。

藤井さん:従来の方法に加えてSMSという手段も取り入れるのはいいでしょうね。それをどのタイミングで利用するのかは別として。トライアルとしてやってみるだけの価値はあると思います。

種子田:ご承知だとは思うのですが、郵送するよりもSMSの方が金額も安いので、費用対効果を意識されるのであれば、一番最初に使ってみるというのもありですね。

藤井さん:費用対効果の面で言うと郵送よりもSMSの方がコストはかかりません。通常の封書は切手代で84円かかるところを、SMSの通信料はその半分以下です。これだけ見ても、費用対効果が見込め、SMSを早めに使うメリットはあると思います。

滞納整理業務にSMSを使用するときの注意点は

種子田:実際にSMSを活用する場合は、どのタイミングで未納者にコンタクトを取ったらいいとお考えでしょうか。

藤井さん:例えば市町村において、固定資産税は年4回納期が定められています。そして、個人住民税も特別徴収でなければ年4回です。自動車税などは年1回ですが、それぞれの納期が過ぎてから、早めにSMSを使うと効果があるのではないかと思います。

種子田:実際にSMSを滞納者に送ると想定した場合に、課題はありますか。

藤井さん:一番の問題は個人情報の携帯電話番号をいかに蓄積できているかだと思います。私がいつも研修でお話ししているのは、最初のタイミングで納税者に個人情報をきちっと書いてもらうということです。例えば転入されたときに課税の問題で、今後、問い合わせをすることがあるかもしれません。そういって自宅、会社の電話番号、携帯電話番号を聞く。そういう情報が事前に全部あればいいですが、ほとんど課税課では情報収集をしていません。だから滞納者の情報がまわって来たときに、いざ調べようと思っても分からないわけですね。まして、最近は電話帳もありませんから。

種子田:今、おっしゃっていたように単にSMSを導入するだけでなく、業務フローの入口のところから、つまり根本の情報収集のところから変えていかないとならないということですね。

藤井さん:私は常にそう思っています。それが一番の根本解決です。ただツールを使うだけではなく、小さなところからの意識改革が今自治体に求められていると思うのです。

種子田:私たちも少しでも職員の方の業務効率が上がったり、その先の徴収率が上がったり、結果的には住民サービスを向上させられるかなと思ってSMSを普及させていきたいなと思っているんです。自前で調べてみたところ、現在、100程度の自治体がSMSを使っているのではないかという結果になりました。これはもう少し広げていけるのでないかなと考えています。

藤井さん:意外とこういうSMSの活用の仕方があることは皆さん知らないんじゃないかと思います。前さばきで使うには、SMSは連絡手段の1つとして非常に有効だと思います。

「明るく・楽しく・前向きに」の頭文字“ATM”を心掛ける

種子田:最後に、滞納整理業務に日々奮闘している全国の職員の方がたにメッセージをお願いします。

藤井さん:常に研修で言っているのですが、「誰のために、何のために」この仕事をしているのかということを考えてほしい、つまり、市でいえば、市民のため市税確保のためにこの滞納整理をしているんだ、そういう気持ちを一人ひとりが持ってほしい、と。それから、「明るく・楽しく・前向きに」取り組んでほしいと思います。私はそれぞれの言葉の頭を取って“ATM”と呼んでいます(笑)。笑ってください。そういう雰囲気、環境づくりをすることが大切です。あとは仕事の中で、これができた、やり遂げた、と思える達成感や満足感を見つけることです。もうひとつ言わせてもらうなら、滞納整理の職員は修羅場をいっぱいくぐること。怖いからといって動かないといつまでたってもできません。それが、自分の経験知につながっていきます。その次は、自身の経験を組織の中に還元していき、マネジメント力を身につけてほしい。これが身につくと、ほかの部署でも同様の仕事ができるわけです。私は各自治体の徴収部門から自治体の意識改革をしてほしいと思います。これは私の夢です。

種子田:ありがとうございます。すごく腹落ちしました。マネジメントができるようになれば、その後どんな職場でも応用ができますもんね。

滞納整理で身につけた能力で活躍の場を広げてほしい

藤井さん:私は平成7年に、初めて滞納整理の任につきました。そんなある日、1人のおばあさんが窓口に来て、持参した貯金箱から小銭を出し「固定資産税の1期分を納めたい」とおっしゃったんです。当時はバブル崩壊後で滞納者も多く、理不尽な罵声を浴びせられたこともありました。そうした状況の中での出来事だったんです。私は、おばあさんが帰られる後ろ姿を見て「この人のために仕事をしよう」と決意しました。徴税吏員は、まじめに納税されている方のために働かなければなりません。

藤井さん:最後になりますが、私はもう20数年、研修講師やっていますから、研修に思いを寄せる心は人並みではないと思っております(笑)。1995(平成7)年に滞納整理をはじめて、翌年から自分の失敗談をみんなに伝え始めるようになり、今は管理職だけじゃなくて滞納整理1、2年生にもマネジメントを取り入れてほしいと思っています。そして、公務員として、滞納整理をやっていた職員として、ほかの部署でも活躍してほしいというのが私の思いです。

 


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ジチタイSMS_対談_4ハガキや封書は印刷、発送手続きなどの手間とコストがかかり、ほかの郵便物に埋もれる可能性もある。SMSであれば簡単操作で相手のスマホ・携帯電話に直接届くため、印刷費や発送コストだけでなく、封入作業や発送手続きや電話をかける人件費など、見えないコストの削減まで見込める。

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サービス提供元企業:株式会社ジチタイワークス

担当:ビジネス開発室 種子田(たねだ)

住所:福岡県福岡市中央区薬院1-14-5 MG薬院ビル7F
TEL:092-716-1480
E-mail:jw_biz@zaigenkakuho.com

※株式会社ホープのジチタイワークス事業は、2021年12月1日付で「株式会社ジチタイワークス」に分社化しております

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