ジチタイワークス

岐阜県高山市

アフターコロナ(インバウンド回復期)に備えるための3段階アクション!

昭和61年に国際観光モデル地区に指定され、以来30年以上、インバウンドの取り組みを地道に進めてきた高山市。令和元年度の外国人宿泊者数は過去最高の61万人を超え、これまでになく好調だったという。その矢先のコロナ禍。先人たちが築いてきた国際観光都市の誇りを維持するため、コロナ禍の状況に合わせた3つのアクションで、インバウンドを推進する同市の新しい戦略が始まった。

※下記はジチタイワークスVol.16(2021年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

危機的状況だからこそ足元を見つめ直し、今できる準備を。

北アルプスの山あいに位置する同市。近くに空港や新幹線の駅はなく、「このように不便な地にわざわざ来てくれた観光客に対して、温かくお迎えし、もてなす文化が古くからありました」と、飛騨高山プロモーション戦略部の清水さん。そのような風土、また、交通に不便な土地という環境が宿泊を伴った滞在を促し、観光入込客数、外国人宿泊者数ともに右肩上がりを続けてきた。

しかし、令和2年4月、緊急事態宣言が発令。渡航者の入国に制限が出されたこの月に、外国人観光客はゼロになった。「これを受け、職員と関係者が一丸となって協議を重ねました。その結果、インバウンド復活時に向けた準備として、3つのアクションを設定し、できることを愚直に推進することを決めました」と、海外戦略課の永田さん。

3つのアクションとは、外国人観光客が入国できない今、高山を忘れさせないための“Dreaming”、コロナ禍収束期に同市訪問の計画を促す“Planning”、そしてインバウンド再開後、訪問者にがっかりさせない“Welcoming”という段階的な取り組みだ。

双方向の交流を大事にしながら高山の“今”を世界へ発信!

現在取り組んでいるのは、Dreamingアクション。WEBやSNS、動画配信などのオンラインプロモーションを強化している。令和2年度には、海外向け情報発信のプラットフォームとなる特設サイトを開設。WEB広告を活用し周知を行ったところ、サイトへの訪問者は19万人を超えたという。さらに、在日アメリカ人のユーチューバーを起用した動画を作成し、サイトと連動。過去に同市を訪問した外国人旅行者からは「また高山へ行きたい」などのコメントが寄せられ、同市を忘れず、想起することへつなげている。

Dreamingと同時に進めているのが、Welcomingアクション。安全・安心であると実感してもらうために、市内の多くの事業者が、補助金を活用して感染防止対策を実施。今後、そのことを観光客へも発信していく。また、受け入れ環境の整備として、インバウンド再開までの期間に、体験プログラムを拡充する予定だ。さらに、「この機会にできることとして、今一度、多文化共生について住民へ啓発することにしました」と永田さん。これは、コロナ禍で生じる可能性のある“外国人に対する厳しい目”を懸念してのことだという。「同市の外国人居住者に向けたFacebookページを作成したり、コロナ禍での正しい情報を住民へ発信したりするなど、相互理解を深める取り組みを行っています」。

人気ユーチューバーが高山を巡る動画を2本作成。

■アフターコロナを見据えた高山市の取り組み

様々な団体や事業者と連携を組み、官民一丸で推進。

これらのアクションを進めながら、新型コロナウイルス感染症収束期に取り組む予定なのがPlanningアクションだ。現在、海外の旅行博への出展は難しいが、同市が職員を派遣しているJNTO(日本政府観光局)主催のオンライン商談会を活用するなどして、PR活動を行う予定。また、近隣の他自治体と連携し、各自治体への周遊を促す観光ルートづくりなども継続して行っていくという。

現在、新規ホテルの建設ラッシュが続いているという同市。「当市のインバウンドの戻りを期待しているのだろうと思いますが、それにより既存の宿泊施設との競争が激しくなります。いかに客室数に見合った観光客を呼べるかは、私たちの取り組みとつながっています。これまで培ってきた“人をもてなす文化”を軸に、今後も官民一丸でインバウンド事業を推進していきます」と清水さん。アフターコロナを見据えた歩みはすでに始まっている。

高山市
左:飛騨高山プロモーション 戦略部  部長 清水 雅博(しみず まさひろ)さん
右:同部 海外戦略課 課長 永田 友和(ながた ともかず)さん

コロナ禍になって、多くの外国人観光客に支えられて、高山は成り立っていると再認識しました。やがて来る復活の時に備え、今できることをしっかりやっていきます。

課題解決のヒント&アイデア

1.訪問者が少ない今を“準備期間”と捉えて行動する

非接触型決済の導入やトイレの洋式化など、経営者の高齢化などを理由に、これまで進まなかった受け入れ環境の整備を促進。コロナ禍の現状を、快適な滞在を提供するための準備期間として前向きに取り組む。

2.関係各所の情報や意見を集約し、オンラインPRを実施

インターネットを介してのPRは未開拓の分野だったため、JNTOに派遣中の同市職員を通じてプロモーションに関する情報を収集。様々な助言をもとに事業を設計した。民間企業のノウハウも積極的に活用している。

3.住民の異文化理解を深めるコンテンツをSNSで配信

同市の在留外国人向けSNSでは、生活情報の配信とともに、外国人に分かりやすい“やさしい日本語”の使い方を紹介。日本人が外国人と接する際に参考になる点が多く、住民の多文化共生意識の醸成が期待できる。

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